
- 認知症が原因で要介護認定を受けられるのか
- 要介護認定のレベル
- 認知症が原因で要介護認定を受ける流れ
- 要介護認定をスムーズに受ける方法
認知症は高齢者が要介護認定を受ける最大の原因とされており、症状の進行に伴って生活全般に支障をきたすことが少なくありません。
介護保険制度では、要支援から要介護まで7つのレベルが設けられており、認定結果によって利用できるサービスや支給限度額が異なります。
親や祖父母などが認知症になり、介護サービスを受けたい場合には、市区町村に要介護認定の申請をしましょう。
本記事では、認知症を理由に要介護認定を受ける仕組みや流れ、スムーズに認定を進める方法を解説します。
1章 認知症が原因で要介護認定を受けられる
厚生労働省の2022年(令和4年)国民生活基礎調査の概況によれば、要介護として認定された方の「介護が必要となった主な原因」の第1位は認知症であり、割合は23.6%と最も高い水準にあります。
一方、要支援の段階においては、認知症は上位の原因には挙がらず、「関節疾患、高齢による衰弱(17.4%)」といった身体機能の衰えに起因する事柄が多く見られます。
この差は、認知症が進行すると生活全般に影響が及び、より重度の支援・介護を必要とする要介護段階に移行しやすいことを示しているといえるでしょう。
2章 要介護認定には7つのレベルがある
要介護認定は、要支援1~2と要介護1~5の計7段階に分かれており、数字が大きいほど介護の必要度が高くなります。
本章では、各段階に応じた要介護認定等基準時間に基づく目安時間を紹介します。まとめた表を作成しました。
| 段階・区分 | 要介護認定等基準時間(1日あたり) |
|---|---|
| 要支援1 | 25分未満 |
| 要支援2 | 25分以上32分未満 |
| 要介護1 | 32分以上50分未満 |
| 要介護2 | 50分以上70分未満 |
| 要介護3 | 70分以上90分未満 |
| 要介護4 | 90分以上110分未満 |
| 要介護5 | 110分以上 |
数字の大きいレベルほど、介護にかかる時間が長く、結果として支給される介護サービスの限度額も増加します。
要支援状態とは、日常生活上の基本的動作はほとんど自分で行えることが可能な状態とされています。
一方、要介護状態とは、日常生活上の基本的動作を自分で行うことが難しく、何らかの介護を要する状態とされています。
3章 認知症が原因で要介護認定を受ける流れ
認知症によって日常生活に支障が出てきた場合、介護保険制度に基づき「要介護認定」を受け、公的な介護サービスを利用できるようになります。
認知症により要介護認定を受ける流れは、以下の通りです。
- 地域包括支援センターや役所に相談・申請をする
- 認定調査員による訪問調査を受ける
- 一次判定を受ける
- 二次判定を受ける
- 認定結果が通知される
それぞれ詳しく解説していきます。
STEP① 地域包括支援センターや役所に相談・申請をする
最初の窓口となるのは、市区町村の役所や地域包括支援センターです。
申請は本人だけでなく、家族やケアマネジャー、入院先の医療機関が代行することも可能です。
申請書には基本情報のほか、かかりつけ医の意見書が必要となるため、事前に医師へ相談しておくと良いでしょう。
STEP② 認定調査員による訪問調査を受ける
市区町村の役所や地域包括支援センターへの申請後は、市区町村から委託を受けた認定調査員が自宅や施設を訪問し、本人の心身の状態を調査します。
調査項目は74項目におよび、「記憶障害の有無」「意思疎通の状況」「移動や食事の自立度」などが細かくチェックされます。
認知症の症状が見られる場合には、物忘れの程度だけでなく、日常生活にどのような影響を及ぼしているかが重要となってきます。
STEP③ 一次判定を受ける
訪問調査の結果とかかりつけ医による主治医意見書の内容をもとに、一次判定が行われます。
一次判定は、統計的なデータに基づいて機械的に判定するものであり「非該当」「要支援」「要介護」のいずれの段階に該当するかが算出される仕組みです。
STEP④ 二次判定を受ける
一次判定の結果を踏まえ、介護認定審査会による二次判定が行われます。
審査会は医師や看護師、介護福祉士などの専門家で構成され、訪問調査の内容や主治医意見書、一次判定結果を総合的に検討します。
ここで、認知症特有の徘徊や幻覚・妄想などといった本人や家族に大きな負担を与える症状が考慮され、一次判定から修正されるケースも少なくありません。
STEP⑤ 認定結果が通知される
最終的な判定結果は、原則として申請から30日以内に通知される仕組みです。
通知書には「非該当」「要支援1・2」「要介護1〜5」のいずれかが記載されており、これに応じて利用できる介護サービスの範囲や支給限度額が決まります。
認知症により、介護が必要と判断された場合、訪問介護や通所介護、福祉用具貸与など、多様なサービスを組み合わせて支援を受けられます。
4章 要介護認定をスムーズに受ける方法
認知症による要介護認定をスムーズに受けるには、以下のようなことを意識すると良いでしょう。
- 訪問調査時には普段の様子や困りごとを具体的に伝える
- かかりつけ医とコミュニケーションを取っておく
- 本人に自覚がない場合はその旨を相談時に伝えておく
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 訪問調査時には普段の様子や困りごとを具体的に伝える
訪問調査の際には、本人の様子を見てもらうだけでなく、家族が普段の様子を正しく伝えることが重要です。
訪問調査では、調査員が本人の状態を確認し、日常生活における自立度や介護の必要性を評価します。
例えば、「食事は1人でできるが、冷蔵庫に何度も同じものをしまってしまう」「服薬管理が難しく、薬を飲みすぎてしまいそうなことがあった」など、日常で起きている困りごとを具体的に説明することが望まれます。
一方で、調査の場面では本人が一時的に元気に振る舞うことがあります。
認知症の特性として、調査員の前ではしっかり受け答えができるが、普段は会話が成立しにくいといったケースも珍しくありません。
そのため、本人の様子を見てもらうだけでなく、家族が日常生活での実際の困難さを隠さずに説明することが非常に重要となってきます。
4-2 かかりつけ医とコミュニケーションを取っておく
要介護認定の判定には、主治医の意見書が必ず必要となります。
意見書は、本人の身体状況や認知機能の低下、生活への影響などを反映する極めて重要な資料です。
そのため、普段からかかりつけ医としっかりコミュニケーションを取り、日常生活の困りごとや家族の負担を共有しておくことが大切です。
本人がかかりつけ医の前ではしっかりした様子で振舞ってしまう場合や、かかりつけ医が認知症患者の様子に詳しくない場合は、詳細な意見書を書いてくれない恐れがあるからです。
診察時に「最近、着替えに時間がかかる」「薬の飲み忘れが多い」などといった困りごとを伝えておけば、主治医意見書に具体的な状況を反映してもらえる可能性が高まります。
結果として、一次判定・二次判定においてもより実態に即した判断がなされ、必要な介護度が認定されやすくなるでしょう。
4-3 本人に自覚がない場合はその旨を相談時に伝えておく
認知症の症状や進行によっては、本人が自分の症状を自覚できないケースも多々あります。
例えば「自分はしっかりしているから介護なんて必要ない」と主張したり、実際には困難があるのに「大丈夫」と答えてしまうことがあります。
こうした場合、訪問調査や認定審査の場面で実際の困難さが正しく反映されない恐れがあるので注意しなければなりません。
そのため、申請時や調査員の訪問前に、「本人は自覚が乏しく、困っていることをうまく説明できない可能性がある」と伝えておくことが有効です。
調査員や審査会は、その点を考慮した上で質問や評価を行ってくれるため、より実態に近い判定を受けやすくなります。
まとめ
認知症は要介護の主な原因として位置づけられ、適切な時期に要介護認定を受けることで公的サービスを活用できるようになります。
認定は申請から訪問調査・判定を経て決定され、家族による情報提供や医師との連携が結果を大きく左右します。
申請時や調査員の訪問時には、普段の困りごとを具体的に伝え、本人に自覚がない場合も状況を補足することで、実態に即した介護度が認定されやすくなるでしょう。
家族が正しい知識を持ち、準備して臨むことが円滑な介護生活への第一歩となるはずです。
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