路線価とは、主要な道路に面した1㎡あたりの土地価格です。
路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」がありますが、一般的には「路線価=相続税路線価」を指すことが多いです。
路線価が上がると、相続税や贈与税、固定資産税などの税金が上がってしまいます。
一方で、路線価が上がり資産価値が上昇すると、不動産を高値で売却しやすくなるなどのメリットがあります
路線価が上がった土地や将来上がることが予想される土地を所有している場合は、早めに相続対策をしておくことも肝心です。
本記事では、路線価や地価が上がるメリット、デメリットや上がる要因について解説します。
1章 路線価とは
路線価とは、主要な道路に面した1㎡あたりの土地価格です。
路線価には①相続税路線価と②固定資産税路線価があり、それぞれ下記のように用途が異なります。
- 相続税路線価:相続税および贈与税の計算に使用する
- 固定資産税路線価:固定資産税および都市計画税の計算に使用する
なお、路線価といった場合には、一般的に相続税路線価を指すことが多いです。
そして、路線価以外にも土地の評価額はあり、それぞれ下記の違いがあります。
土地評価額 | 概要 | 使用目的の例 |
実勢価格 | 過去に実際に取引された価格 |
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公示価格 | 国土交通省が発表する1㎡あたりの標準価格 |
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固定資産税評価額 | 固定資産税の計算に使用される評価額 |
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基準地価 | 各都道府県が発表している1㎡あたりの標準価格 |
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不動産鑑定評価額 | 不動産鑑定士が経済価値を鑑定した評価額 |
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2章 路線価や地価が上がるメリット
路線価や地価が上がると、不動産の売却代金が上がりやすくなる、担保の価値が上がり融資を受けやすくなるなどのメリットがあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1 不動産を高値で売却しやすくなる
路線価や公示地価にど土地の評価額が上がると、土地を売却したときの代金が上がりやすくなります。
例えば、相続した土地を売却しようと考える人にとって、路線価が上がっているのはメリットになるはずです、
2-2 不動産を担保にお金を借りやすくなる
路線価や公示地価など土地の評価額が上がると、土地を担保にして金融機関などから融資を受けやすくなります。
路線価が上がったことにより、土地の担保価値も上がると考えられるからです。
例えば、事業を営んでおり、自分が所有している土地を担保に融資を受けてさらに設備投資や事業拡大したい人にとっては路線価が上がるとメリットが大きいといえるでしょう。
3章 路線価や地価が上がるデメリット
路線価などの土地の評価額が上がると、土地にかかる贈与税や相続税の負担が大きくなる、固定資産税が上がるなどのデメリットがあります。
路線価が上がるデメリットは、主に下記の通りです。
- 相続税や贈与税が上がる
- 固定資産税が上がる
- 不動産の購入価格が上昇してしまう
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1 相続税や贈与税が上がる
相続税路線価が上がると、土地を贈与、相続したときの贈与税や相続税の負担が重くなってしまいます。
贈与税は年間110万円を超える贈与を受けると発生し、相続税は遺産総額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除を上回るとかかります。
先祖代々受け継いでいる土地をお持ちの人は、相続税路線価が上がったことにより税負担が重くなってしまうデメリットがあるでしょう。
3-2 固定資産税が上がる
固定資産税路線価が上がると、毎年かかる固定資産税や都市計画税が上がってしまいます。
固定資産税や都市計画税は、その年の1月1日時点に土地を所有している人にかかる税金です。
例えば、今後も売却を考えていない自宅の土地の路線価が上がった場合、本記事の2章で紹介した恩恵も受けられず、路線価が上がったことによる悪影響を多く受けてしまう恐れがあります。
3-3 不動産の購入価格が上昇してしまう
路線価が上がると、土地の購入価格も上がってしまい、予定していた土地を購入できない、余計にコストがかかってしまう恐れがあります。
路線価は実際の売買金額である実勢価格にも影響しているからです。
ただ路線価が上がった土地は需要が高まっている土地であるとも考えられるので、購入後に何らかの理由で売却することになったときには土地を高値で売れる可能性もあるでしょう。
4章 路線価や地価が上がる原因
路線価などの土地の評価額が上がる原因としては、土地需要の増加や土地へ資金が多く流入するなどが原因として考えられます。
路線価や地価が上がる原因は、主に下記の通りです。
- 需要の増加
- 金融緩和による資金流入や不動産投資の活発化
- インバウンド需要の増加
- 周辺地域の人口増加
- 都市開発
それぞれ詳しく見ていきましょう。
4-1 需要の増加
周辺地域の開発が進んだ、周辺地域に学校やオフィスが多いなどの理由により、土地の需要が増えると路線価などの評価額が上がりやすいです。
日本の人口は減少傾向にありますが、都市部では人口が集中しており、いまだ土地の需要が高くなっています。
そのため、路線価が上がった地域や中々下がらない地域もあるでしょう。
4-2 金融緩和による資金流入や不動産投資の活発化
日本では2013年以降、超低金利政策が実施されており、不動産へ投資資金が流れています。
土地などの不動産購入に資金が流れることにより、土地の需要が増加し、路線価が上がりやすくなっています。
また近年では円安が進んでいるため、海外投資家による不動産需要も増えています。
4-3 インバウンド需要の増加
外国人環境が増加しインバウンド需要が増したことにより、宿泊施設や商業施設の需要も増えています。
観光客が多い地域や都市部では、インバウンド需要の増加により路線価が上がることもあるでしょう。
4-4 周辺地域の人口増加
周辺地域の人口が増えると、住宅や商業施設、オフィス需要が上がるため、土地の需要が高まり必然的に路線価も上がりやすくなります。
将来的に価値が下がりにくい土地を購入したいのであれば、周辺地域の人口推移も確認しておくと良いでしょう。
4-5 都市開発
交通機関の整備が行われると、アクセスが良くなり土地の路線価が上がる場合があります。
また、都市開発によって土地および建物の供給が増え路線価上昇が抑えられる一方で、開発により利便性が高まったことが路線価上昇につながるケースもあります。
このように、路線価や地価が上がる要因には様々なものがあり、それぞれ影響しあっています。
将来の土地の価格推移を正確に予想することは難しいですが、購入予定や相続予定の土地や周辺地域に関する情報は普段から集めておくことが大切です。
5章 路線価が上がったときにしておきたい相続対策
路線価が上がった場合、将来相続が発生したときに税負担が重くなる可能性があります。
そのため、路線価が上がった場合や将来的に上がることが予想される場合は、生前贈与や賃貸活用などを検討しておくのがおすすめです。
路線価が上がったときにしておきたい相続対策は、主に下記の3つです。
- 次世代に土地を生前贈与する
- 土地を売却して現金化しておく
- 賃貸アパートやマンションを建築する
それぞれ詳しく解説していきます。
5-1 次世代に土地を生前贈与する
将来的に路線価が上がることが予想されるのであれば、早い段階で次世代に土地を生前贈与することも検討しましょう。
生前贈与した場合、贈与時点の相続税路線価をもとに贈与税を計算するからです。
また、贈与税の負担を抑えつつ土地を贈与するのであれば、相続時精算課税制度の利用をおすすめします。
相続時精算課税制度とは、60歳以上の祖父母や父母から18歳以上の子や孫へ贈与をすると2,500万円までの贈与であれば贈与税が非課税になる制度です。
相続時精算課税制度を利用すれば贈与税の負担を抑えつつ、将来価値が上がりそうな不動産を生前贈与できます。
5-2 土地を売却して現金化しておく
路線価が上がったタイミングで不動産を売却し、現金化してしまうのも良いでしょう。
路線価が上がったタイミングで売却すれば、売却代金が高値になる可能性もありますし、不動産よりも現金の方が遺産分割しやすいからです。
不動産を遺産分割する方法は複数ありますが、それぞれメリットとデメリットがあり、相続トラブルが発生することも珍しくありません。
また、各相続人に譲れるように複数の不動産を所有しているケースでも、そのうちの一つの土地の路線価が上がり他の不動産とのバランスが取れなくなる恐れもあります。
結果として、各相続人が受け継ぐ不動産の価値に差が生じてしまい、トラブルに発展する可能性もあります。
不動産を現金化してしまえば、公平な遺産分割を行いやすいため、相続トラブルを回避したいときにはおすすめです。
5-3 賃貸アパートやマンションを建築する
路線価が上がった土地に十分な広さがあるならば、賃貸アパートやマンションの建築を検討しても良いでしょう。
賃貸アパートやマンション経営をすれば、賃貸収入を得られるようになりますし、土地および建物の相続税評価額を軽減できるからです。
賃貸アパートおよびマンション経営が相続税対策になる理由は、主に下記の通りです。
- 不動産は現金より相続税評価額が安くなる
- アパート経営している土地は小規模宅地等の特例を適用できる
- アパートローンは相続時に債務控除できる
ただし、賃貸需要の少ない土地でアパートやマンションを建築しても入居者が集まらない可能性がありますし、不動産経営にはリスクもあります。
土地の広さや周辺環境によっても行うべき相続対策は変わってくるので、相続に詳しい司法書士や税理士、不動産会社などに相談してみるのが良いでしょう。
まとめ
路線価とは主要な道路に面した1㎡あたりの土地価格であり、路線価が上がり土地の資産価値が上がれば、高値で売却しやすくなるなどのメリットがあります。
一方で、路線価は相続税や贈与税、固定資産税などの計算に使用されるため、路線価が上がると土地にかかる税金が高くなるデメリットがあります。
所有している土地の路線価が上がった場合や将来上がることが予想される場合は、早い段階で相続対策をしておくのがおすすめです。
例えば、生前贈与すれば贈与時点の相続税評価額で贈与税を計算できるため、将来相続税を払うよりも節税できる可能性もあります。
相続対策には複数の方法があるため、自分に合う方法を知りたい場合は、相続に強い司法書士や税理士などの専門家に相談しましょう。
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