
- 配偶者に遺産を遺さないようにする方法
- 配偶者に渡る遺産を少なくする方法
配偶者に遺産を遺したくない、あるいはできるだけ少なくしたいと考えるケースは珍しくありません。
しかし、日本の法律では配偶者は必ず法定相続人になりますし、遺留分も保障されているため、完全に遺産を渡さないことは難しいでしょう。
配偶者に少しも遺産を渡したくないのであれば、生前のうちに離婚するしかありません。
一方、配偶者に渡る遺産を減らしたいだけであれば、遺言書の作成や生前贈与、生命保険の加入などで事足りる場合もあります。
本記事では、配偶者に遺産を遺さないことはできるのかや、配偶者に渡る遺産を少なくする方法を解説します。
目次
1章 配偶者に遺産を遺さないようにするには離婚するしかない
配偶者に遺産を一切渡したくないと考えた際に、最も確実な方法は、生前のうちに離婚することです。
配偶者には法定相続人であり遺留分も保障されているため、遺言などで「配偶者には何も相続させない」「長男にすべての遺産を相続させる」などと指定しても、配偶者の相続権を完全に奪うことはできないためです。
しかし、配偶者と離婚し夫婦関係が解消されれば、自分が亡くなったときに配偶者に財産が渡ることはありません。
1-1 死後離婚(姻族関係終了届)は被相続人からは使えない
死後離婚と呼ばれる制度もありますが、こちらでも配偶者の相続権を奪うことはできません。
死後離婚とは、姻族関係終了届を提出することであり、亡くなった配偶者の親族との関係を終了させられる制度です。
死後離婚は、あくまで生存している側の意思で行うものであり、死亡した配偶者の側から、一方的に婚姻関係を解消する手段ではありません。
また、死後離婚は、あくまで亡くなった配偶者の親族との関係を終了させる手続きであり、すでに発生している相続権には影響しません。
1-2 相続欠格にあたる場合は相続権を失う
相続人が相続権を失う類型のひとつに相続欠格があります。
相続欠格とは、法律で定められた一定の重大な非行があった場合に、相続権を永久に失う制度です。
相続欠格が認められる行為は、主に下記の通りです。
- 故人や相続人を殺害したもしくは殺害しようとした
- 故人が殺害されたことを知りながら告発・告訴をしなかった
- 故人に詐欺や強迫を行い遺言の作成や変更・取消を妨害した
- 故人に詐欺や強迫を行い遺言の作成や変更・取消をさせた
- 遺言書の偽装・変造・破棄・隠蔽した
上記のような行為を配偶者が行った場合には、相続欠格となり相続権を失います。
とはいえ、相続欠格に該当する行為は限られているため、意図的に欠格事由を作り出すことは難しいでしょう。
1-3 相続人廃除が認められれば相続権を失う
相続欠格と同様に、相続人廃除が認められれば、配偶者は相続権を失います。
相続人廃除とは、被相続人に対して、著しい虐待や重大な侮辱をした場合などに相続権を剥奪する制度です。
相続人廃除が認められる行為の例は、主に下記の通りです。
- 故人を虐待した
- 故人に対して重大な屈辱を与えた
- 故人の財産を不当に処分した
- ギャンブルなどの浪費による多額借金を故人に返済をさせた
- 度重なる非行や反社会勢力へ加入
- 犯罪行為を行い有罪判決を受けている
- 愛人と同棲するなど不貞行為を働く配偶者
- 財産を目的とした婚姻
- 財産目当ての養子縁組
相続欠格と異なり、相続人廃除は自動で認められるわけではありません。
廃除したい相続人がいる場合には、家庭裁判所に申し立てをして、廃除を認めてもらう必要があります。
単純に「配偶者が嫌いだから」「他の人に遺産を譲りたいから」などといった理由で、相続人廃除が認められることはないと理解しておきましょう。
2章 配偶者の遺産相続を少なくする3つの方法
先ほどの章で解説したように、配偶者の相続権を奪うには、生前のうちに離婚することが確実です。
しかし、下記の方法で相続対策を行えば、配偶者に渡る遺産を少なくすることは可能です。
- 遺言書を作成する
- 生前贈与をする
- 生命保険に加入する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1 遺言書を作成する
遺言書を作成すれば、希望の人物に財産を譲れるので、配偶者の相続分を少なくすることも可能です。
例えば「全財産を子供に相続させる」などといった遺言を遺しておけば、原則として、遺言内容通りに遺産分割が行われます。
ただし、配偶者には遺留分が保障されているため、完全に相続分をなくすことはできません。
それでも、遺言によって配偶者に渡る遺産を減らすことは十分可能ですし、遺言が遺留分を侵害する内容だったとしても、配偶者が遺留分侵害額請求をしなければ遺言内容通りの相続を実現できます。
2-2 生前贈与をする
生前贈与をすれば、希望の人物に資産を譲ることができ、遺産を減らせるので、配偶者の相続分も減らせます。
遺留分の計算対象に含まれる生前贈与は限られているので、遺留分対策として生前贈与を行うことも有効です。
しかし、年間110万円を超える贈与を受けると、贈与税がかかる場合がある点に注意しなければなりません。
また、相続人に行った生前贈与が特別受益にあたると判断されると、過去の贈与財産を遺産分割の対象に含める必要もあるのでご注意ください。
生前贈与をしたものの、当初の目的を果たせなかったなどということがないように、贈与を検討している段階で司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
2-3 生命保険に加入する
生命保険への加入も、配偶者が受け取る遺産を減らす方法のひとつです。
生命保険金は、原則として遺産分割の対象にならず、受取人固有の財産として扱われます。
例えば、子供を受取人とした生命保険に加入しておけば、その分だけ配偶者の相続分を減らせるでしょう。
ただし、遺産に対して生命保険金の金額が高額すぎる場合には、生命保険金を遺産分割の対象としなければならないこともあります。
生命保険金が遺産分割の対象になるかはケースバイケースですので、事前に税理士などに相談しておくと安心です。
また、生命保険会社では生命保険金の受取人として指定できる人物を「配偶者と二親等以内の血族」などと限定していることがほとんどです。
例えば、夫婦の間に子供がおらず、配偶者に遺産を渡したくない場合、生命保険に加入しようとしても受取人になれる人物がいない可能性があります。
まとめ
配偶者に遺産を遺さないためには、原則として、生前に離婚するしかありません。
配偶者と離婚することが難しい場合や、少しは配偶者が相続することを許容できる場合は、遺言書の作成や生前贈与、生命保険の加入などといった相続対策を行いましょう。
相続対策には複数の方法があり、それぞれメリットとデメリットがあります。
自分に合った対策をするためにも、相続に精通した司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
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