相続人の嫁は相続に口出しできる?嫁の口出しによる相続トラブルの対策

相続人の嫁は相続に口出しできる?嫁の口出しによる相続トラブルの対策
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 6

「相続の話に嫁が口を出してきてややこしくなっている」

相続の場面で、このようなケースは少なくありません。

相続について家族間で平和的に話し合っていても、相続人の嫁がいらぬ口出しをしてくることで、トラブルや紛争に発展することもあります。

「相続人の嫁」というのは、相続においては部外者であるものの、家族である以上、無下にできないのが困るところです。

この記事では、よくある「相続人の嫁が口出しをしてくるケース」や「嫁が口を出してきた場合の対処法」、「生前にできる対策」などについて解説します。

なお、この記事をご覧になっている方で、まだ相続が発生していないという方は、ぜひ対処法を参考にしてください。


1章 相続人の嫁は相続に口を出す権利があるのか?

そもそも、相続人の嫁には「相続に口を出す」権利があるのでしょうか?

結論から言うと、相続人の嫁には口を出す権利はありません。

なぜなら、相続人の嫁には相続権はありませんし、相続に関する話し合いは「相続人のみ」で行うからです。

法律上は、どのようになっているかを踏まえ、詳しく解説します。

1−1 相続人の嫁は法定相続人ではない

相続人は、法律で決められています。これを「法定相続人」といいます。

法定相続人は、以下順位に沿って決定します。

法定相続人の順位

常に相続人:配偶者
第一順位:子などの直系卑属
第二順位:両親などの直系尊属
第三順位:兄弟姉妹・代襲相続人

上記を見て分かる通り、法定相続人は被相続人(亡くなった方)の血のつながった家族・親族のみです。

相続人の嫁が相続人となることは、被相続人が生前に嫁を養子に入れない限りあり得ないのです。

ただし、遺言書に「長男の嫁に遺産を譲る」といった内容がある場合、その嫁には遺言の内容に沿って遺産を受け取る権利があります。この場合、相続人ではなく「受遺者」となります。

1−2 相続の話し合いは法定相続人で行う

相続の内容についての話し合いを「遺産分割協議」と言いますが、この「遺産分割協議」は通常、法定相続人のみで行うため、法律上、相続人の嫁が口をはさむ余地はありません。

そして、遺産分割協議が決着し、その内容をまとめる「遺産分割協議書」の作成時には法定相続人全員が署名・捺印をします。

つまり、相続人の嫁が遺産分割協議にいくら口出しをしても、法定相続人たちが話し合った上で、遺産分割協議書に署名・捺印をすれば、法的に相続についての話し合いを終結することができるということです。

相続で取得した財産は「相続人個人の財産」であることを理解しておこう

夫が相続で取得した財産は、あくまで「夫個人の財産」です。夫婦の共有財産にも含まれません。

相続において「相続人の嫁」はあくまで第三者であり、関与する権利はありません。

遺産分割はその家族(相続人間)の問題です。特段事情がないのであれば、なるべく口を出すのは避けましょう。

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2章 よくある相続人の嫁が口を出すケース

ここでは、よくある相続人の嫁が口を出すケースについて解説します。

事前に理解しておくことで、対策を練ることにも繋がりますので、ご自身の状況と重なることがないか一度確認してみてください。

2−1 夫の取得分が少なくて納得がいかない

遺産の取得分は「法定相続分」として法律で決まっているものの、相続人全員が合意をすれば、話し合った内容を優先することができます。

兄弟・姉妹の法定相続分は均等ですが、ご家族によって事情は様々ですから

  • ■同居していた長男の取り分を多くする
  • ■マイホームの購入費の支援などがあった兄弟の取り分は少なくする
  • ■早くから働いて、家に多くお金を入れていた分取り分を多くする

など、兄弟で納得した上で、取得分に差をつけることもあるでしょう。

しかし、他の兄弟に比べて取得分が少ないことに納得ができない嫁もいます。

それによって「なぜ、相続権は平等なのに、うちだけ少ないのか」「平等に遺産をもらってくるように」と口を出してくることが多くあります。

2−2 生前、相続人の嫁が被相続人の面倒をみていた

被相続人の生前に、同居していた人の場合、相続人の嫁が被相続人の介護をしたり、身の回りの世話をしたりしているケースがあります。

その場合、嫁としては「面倒を看たぶん、遺産を多くもらう権利がある」と思うでしょう。夫の親の介護や身の回りの世話は、非常に大変であり、負担も大きいので、そのように考えるのも当然の心理です。

そのような心情を度外視にして、他の兄弟と同等な取得分、それどころか少ない取得分であれば、嫁が口を出すのも仕方がありません。

後述しますが、生前に被相続人の介護などをしていた場合には「寄与分」として遺産の一部を取得する権利が認められる可能性もあります。

血縁関係のない、夫の親の面倒を献身的にみてくれた嫁に対しては、相応の配慮をするようにしましょう。

寄与分が認められる行為(寄与行為)

  • 【家事従事】
    亡くなった人の事業の手伝い、相続財産の維持・形成に貢献したこと。
    (例)実家の農家や酒屋などを手伝った場合
    なお、寄与行為として認められるのは、その手伝いが無償または一般的な報酬より低額な場合に限ります。

  • 【出資】
    亡くなった人の事業に出資をして、相続財産の維持・形成に貢献したこと。
    (例)実家の農業に使う機器の購入、劣化したお店のリフォーム代の支払いなど
    なお、寄与分として認められるのは、出資したことによる効果が持続的かつ、相続開始時までその効果が残っている場合に限ります。「今だけ商品を仕入れるお金が足りないから、1ヶ月分だけ援助をした」というケースでは認められない可能性があります。

  • 【療養看護】
    亡くなった人の介護や身の回りの世話などをして、その人が介護施設やヘルパー、看護などにかかる費用の支払いをせずに済んだことによって相続財産の維持に貢献したこと。
    なお、寄与分として認められるには、通常の扶養義務の範囲を超えて扶養した場合に限ります。

  • 【扶養】
    亡くなった人を金銭的に援助し、その人が生活費などの出費を抑えたことによって相続財産の維持に貢献したこと。
    なお、寄与分として認められるには、通常の扶養義務を超えて扶養した場合に限ります。

  • 【財産管理】
    亡くなった人の財産の管理や維持費の負担をして出費を抑えたことによって相続財産の維持に貢献したこと。
    (例)不動産の維持管理の費用負担や税金の負担など。

3章 相続人の嫁が遺産取得の権利が主張できるケース

1章では、相続人の嫁には相続権がないと解説しましたが、相続権以外にも遺産を取得する権利が発生するケースがあります。

そのため、「相続に口を出す」という形ではなく「遺産を取得する権利を主張する」という形で相続に関わる可能性があることは理解しておきましょう。

3−1 被相続人の生前に介護など献身的に貢献をした実績がある

被相続人の生前に介護をしたり、身の回りの世話をしたりした人には「寄与分」として、遺産の一部を取得することができる可能性があります。

寄与分が認められた場合には、遺産全体から認められた寄与分を差し引き、残りの額を相続人で分配することとなります。

そのため、相続人以外でも寄与分を受け取ることが可能です。

3−2 遺言書で指定されている

遺言書に「長男の嫁A子さんに、遺産を譲る」といった内容が書かれている場合、法律上の相続人でなくても遺産を取得する権利があります。法律上の相続人・相続分よりも、遺言の内容が優先されるからです。

この場合、遺言で遺産の取得を指名された人は「相続人」ではなく「受遺者」となります。受遺者として取得する場合、夫婦の共有財産ではなく、受遺者の個人の財産として取得することとなります。

そのため、相続人の嫁が受遺者となった場合には、他の人は遺言の内容に口を出すことはできません。

ただし、遺言が「長男の嫁A子さんに、“すべての”遺産を譲る」と言ったように、偏った内容であり、相続人が遺産を取得できないようば場合には遺留分を請求できる可能性はあります。

遺留分について詳しくはこちらを御覧ください。

遺言があっても遺留分請求される!【効果的な5つの遺留分対策とは】

3−3 被相続人と養子縁組をしている

被相続人と養子縁組をしている場合、法律上、被相続人と親子関係が成立するため、相続人の嫁であっても、「被相続人の子」として相続権を有することなります。

つまり、他の相続人と同じように、遺産分割協議に参加し、相続する権利があるということです。

相続税の節税のために、生前に養子縁組をするというケースもあるため、その点はしっかりと確認しておくべきでしょう。

養子縁組で相続対策する人が知っておくべき知識と節税効果を徹底解説
養子の相続|これだけは知っておきたい7つのポイント【相関図付き】

4章 相続人の嫁の口出しでトラブルにならないための対策

相続人の嫁が相続に関して口を出すと、トラブルになる可能性があります。

本来であれば、家族間で決着していてスムーズに進むはずだった相続が、嫁によって複雑化してしまうのは避けたいですよね。

そこでここでは、トラブルにならないための対策について解説します。

4−1 法律上の相続人を明確にしておく

遺産分割協議を開始する前に、法律上の相続人を明確にし、その上で「相続人は私だから」と嫁に伝えておきましょう。

そもそも、遺産分割協議は法定相続人全員で行う必要があります。

1人でも欠けたまま協議を進めてしまうと、後から再度やり直さなければいけません。

そういったトラブルを避けるためにも、戸籍などを調べて、しっかりと法定相続人を明確にしておくことが大切です。

4−2 相続人だけで話し合いをする

相続に関する話し合いは、法定相続人だけで行うようにしましょう。

相続人の嫁など、関係のない人を交えて協議を行うとトラブルの原因となります。

仮に、家などで嫁が相続に関して口を出したとしても、遺産分割協議の場では「自分の意見」として話すようにしましょう。

「〜〜と嫁が言っていたから」などと、余計なことを言ってしまうと、他の相続人がおもしろくないと感じてしまう可能性がありますし、トラブルの原因にもなりかねません。

4−3 遺産の全容や生前贈与の有無を明らかにしておく

遺産には「どのような財産が」「どれほどあるのか」というのを、明らかにし、財産目録としてまとめておくようにしましょう。

財産目録とは、遺産の内容を項目ごとにまとめたものです。

財産目録には、必ずプラスの財産だけでなくマイナスの財産も記載してください。

また、生前贈与があった場合には、それについてもまとめておくようにしましょう。

遺産や生前贈与の内容がひと目でわかる財産目録があれば、相続人の嫁に対して、遺産分割の内容を説明する際にも役に立ちます。

4−5 寄与分の有無を確認する

相続人の嫁が介護など、生前に被相続人の財産形成に貢献する行為(寄与行為)をしていないか確認をしましょう。

もし、寄与行為の事実があれば、相続人の嫁には寄与分を取得する権利がある可能性があります。

なお、相続人の嫁に寄与行為が認められる場合には、その行為を無下にせず、しっかりと対応することが大切です。

4−6 遺産分割協議書を作成する

遺産分割に関する話し合いが、比較的スムーズに終わっても、必ず話し合いで決まった内容で「遺産分割協議書」を作成するようにしましょう。

相続人全員の署名・捺印が揃った遺産分割協議書があれば、いくら相続人の嫁が口を出してきても覆すことはできません。

また、口頭だけの話し合いだと「言った・言わない」のトラブルになる可能性がありますし、遺産分割協議書は不動産の名義変更など、さまざまな相続手続きで必要になります。

遺産分割協議書は、不備や不足がないと公証人が証明をしてくれる公正証書にしておくことをおすすめします。


5章 相続人の嫁に遺産を遺したいなら事前準備しておこう

もし、相続人の嫁に遺産を遺したいという想いがあるのなら、必ず生前に準備をしておきましょう。

相続人の嫁は、相続権を持たないため、生前の準備なしに遺産を渡す手段はありません。

ここでは、生前にできる準備について解説します。

5−1 遺言書を書く

遺言であれば、相続人以外の人にも遺産を譲ることが可能です。

ただし、遺言書を作成する場合には遺留分に注意する必要があります。

遺留分とは、法定相続人に認められている遺産の最低限の取得分です。

遺産のすべてを長男の嫁A子さんに譲る」といった内容にしていると、他の相続人から遺留分を請求される可能性があります。

遺留分について詳しくはこちらを御覧ください。

遺言があっても遺留分請求される!【効果的な5つの遺留分対策とは】

5−2 生前贈与する

相続人の嫁に財産を遺したいのであれば、生前贈与をするのも1つの手段でしょう。

ただし、一度にたくさんの財産を生前贈与すると、多額の贈与税が課税されます。

暦年贈与であれば、年間110万円までは非課税となりますが、相続開始前3~7年以内の生前贈与については、相続財産として課税対象となります。

そのため、生前贈与をご検討であれば、なるべく早くから始めるようにしましょう。

【徹底解説】生前贈与は非課税になる?金額やパターンを紹介!
【簡単シミュレーション付】贈与税の計算方法と6つの節税方法を解説
生前贈与加算が死亡前3年から7年に延長されます

2024年1月1日以降は生前贈与加算が死亡前3年から7年に延長され、生前贈与をしてから7年以内に贈与者が亡くなると、贈与財産を相続税の課税対象財産に含めなければなりません。
これまで贈与財産を相続税の課税対象財産に含めなければならないのは、死亡前3年以内に行われた生前贈与だったのに対して2024年以降は死亡前7年以内と期間が延長されてしまいます。

そのため、贈与者が高齢の場合、暦年贈与が難しくなったともいえるでしょう。
なお、死亡4~7年以内に行われた生前贈与を相続税の課税対象財産に含めるときには、合計金額に対して100万円の控除を適用できます。

また、生前贈与加算の対象になる人物は、相続や遺贈によって財産を受け取った人のみです。
そのため、財産を遺贈で取得していない子供の配偶者や孫に死亡直前に贈与していたとしても、生前贈与加算の対象にはなりません。

5−3 生命保険を活用する

相続人の嫁を、生命保険の受取人としておくのも良いでしょう。

生命保険であれば、相続と切り離して取り扱われるため、比較的スムーズに財産を渡すことが可能です。

ただし、生命保険金はみなし相続財産として相続税がかかります。相続人の嫁は相続人ではないため、生命保険金における相続税の控除「500万円×法定相続人の人数」も適用されないので注意が必要です。

みなし相続財産(生命保険金)について詳しくはこちらをご覧ください。

みなし相続財産とは?当てはまるもの一覧と注意点・節税方法を解説!

6章 まとめ

相続人の嫁は相続権を有さず、相続に口を出す法的な権利はありません。

しかし、相続人の嫁が相続に口を出すことによってトラブルになる可能性はあります。

相続に関して話し合う際には、できるだけ相続人のみで進めるようにしましょう。

また、相続人の嫁に財産を残したいというケースでは、遺言書や生前贈与などで生前に対策しておく必要があります。

不安がある場合には、司法書士などの専門家に相談するようにしましょう。

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よくあるご質問

嫁の相続権は?

相続人の嫁は法定相続人ではないので相続権は一切ありません。
ただし、相続人の嫁が遺言書で遺贈を指定されている場合には、相続権を持ちます。
▶嫁の相続権について詳しくはコチラ

遺留分とは何?

遺留分とは亡くなった人の配偶者や子供、両親などが遺産を最低限度受けとれる権利です。
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