- 空き家が発生する原因
- 空き家を放置し続けることで起きうる問題
- 空き家問題を解決・回避する方法
骨を埋めるつもりで購入した持ち家でも、高齢になり介護施設に入所することになった、車を手放すため駅に近いマンションに引っ越すことになったなど、何らかの理由で空き家になってしまうことは少なくありません。
「住宅ローンは完済しているのだから、賃貸と違って家賃もかからないし放置しても良いのでは?」と考えるかもしれませんが、空き家を放置していると価値も下がり活用や売却がどんどん難しくなってしまいます。
高齢化や人口の都市集中などが原因で空き家は年々増え続けており、空き家問題は社会問題にもなっています。
今後、国や自治体が空き家問題に本格的に対応してくる可能性もあるので、活用予定のない空き家を持っている人は早めに対策しておきましょう。
本記事では、空き家を放置する場合に起きうる問題や解決方法を紹介します。
空き家を相続した場合は、下記の記事も合わせてお読みください。
目次
1章 空き家問題は年々増加傾向
高齢化社会が進んだため、空き家は年々増加傾向にあり、社会問題となりつつあります。
総務省が行った「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年の空き家率は過去最多であり13.8%を記録しています。
空き家であっても売却や賃貸しようと募集していれば良いですが、長期間放置されているだけの空き家は犯罪の温床になるリスクがあるなど様々な問題が起きる可能性もあるので、注意しなければなりません。
2章 空き家になってしまう原因
空き家の数が年々増加傾向にあるのは、主に下記の理由です。
- 住人が高齢になり引っ越し・もしくは亡くなった
- 空き家を相続したものの自分は活用予定がなく放置している
- 空き家のリフォーム・解体費用を用意するのが難しく放置している
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 住人が高齢になり引っ越し・もしくは亡くなった
住人が高齢になり介護施設への入所、立地の良いマンションへ引っ越しなどをして、これまで住んでいた自宅が空き家となってしまうことも多いです。
他にも、住人が亡くなり住む人がいない場合も空き家になってしまいます。
日本は高齢化がどんどん進んでいるので、今後も住人の高齢化による空き家問題は増えると予想されるでしょう。
2-2 空き家を相続したものの自分は活用予定がなく放置している
住人が亡くなり空き家を相続したものの自分たちは住む予定がない、立地も悪いので活用も難しい場合は、放置されてしまうことも多いです。
日本では、高齢化が進んでいるだけでなく、人口の都市集中も進んでいます。
特に、若い人は都市部で仕事を探す、子供を育てたいと考える人も多いため、田舎の空き家を持て余してしまう人も多いでしょう。
2-3 空き家のリフォーム・解体費用を用意するのが難しく放置している
空き家を活用、売却したいと考えるものの、そのままの状態では建物が老朽化しており活用・売却できないこともあるでしょう。
かといって、リフォーム費用や解体費用を捻出できない場合、空き家をどうすることもできず放置してしまう場合もあります。
このように、空き家を放置してしまう原因としてはいくつか考えられます。
しかし、空き家を放置していても問題が解決する可能性は低いですし、それどころか空き家の価値がどんどん下がってしまうリスクもあるのでご注意ください。
次の章では、空き家を放置すると生じる問題について詳しく見ていきましょう。
3章 空き家を所有・相続することで発生する7つの問題
「自分の所有物だし、別に空き家にしていても問題ないのでは?」と思うかもしれませんが、空き家をそのまま所有したり相続することで発生する問題もあります。
空き家を放置してしまうと、下記の問題が発生する恐れがあります。
- 犯罪・放火に巻き込まれるリスクが上がる
- 景観の乱れや害獣による近隣住民への被害のリスクが上がる
- 建物の老朽化による倒壊の危険がある
- 「特定空き家」に認定され処分の対象になる
- 固定資産税が最大6倍になる恐れがある
- 空き家を所有しているだけでも管理コストがかかり続ける
- 土地の地価が低下するリスクがある
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 犯罪・放火に巻き込まれるリスクが上がる
ずっと空き家にし続けていると、犯罪に巻き込まれるリスクが高くなることが考えられます。
泥棒などの窃盗犯は、まず初めに何回か下見に来て侵入できそうか決めることが多いです。
生活感の残ったままの空き家があると分かれば、侵入リスクの少ない家だと見なされ犯行に及ぶ可能性が高くなります。
空き家自体には盗むものが残されていなくても、犯罪者が逃げ込む場所として活用されるリスクもあるので注意しましょう。
また、空き家は住民の監視がきかないため、不法投棄や放火などの対象となる可能性も居住中の家と比べて高くなってしまいます。
3-2 景観の乱れや害獣による近隣住民への被害のリスクが上がる
空き家にしていると、当然家の手入れをする人がいないため庭の雑草や木がどんどん生い茂ってしまいます。
ツタや雑草が成長してしまい壁に絡まっている空き家を目にしたことがある人もいるのではないでしょうか。
雑草を放置していると虫が発生する、景観が悪くなるなどの理由で、近隣住民から苦情を受ける可能性もあります。
他にも、空き家だと知りモラルのない人が、空き缶やタバコの吸い殻などのポイ捨て場にする可能性もあるでしょう。
他にも、ネズミやハクビシンなどの害獣が住処にしてしまう、スズメバチが巣を作ってしまう場合もあり、近隣住民とトラブルにもなりかねません。
3-3 建物の老朽化による倒壊の危険がある
空き家を放置していると、建物の老朽化による倒壊や建材が剥がれる危険性が上がります。
空き家の築年数が古い場合、耐震性が十分でない可能性もありますし、建物の老朽化によりさらに倒壊リスクが上がってしまうからです。
3-4 「特定空き家」に認定され処分の対象になる
特に問題が起きてないからと言って、空き家をずっと放置していると「特定空き家」に認定され、処分の対象になるので注意が必要です。
特定空き家に認定されると固定資産税の軽減措置から除外され、固定資産税が最大6倍になってしまう恐れがあります。
加えて、特定空き家を放置していると自治体が空き家を強制的に取り壊す「行政代執行」を行う可能性もあります。
行政代執行の費用は空き家の持ち主に対して請求されるので、ご注意ください。
3-5 固定資産税が最大6倍になる恐れがある
住宅は固定資産税の減額特例が適用されていますが、荒れ果ててしまい「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定されると、減額特例が適用されなくなってしまいます。
下記の住宅は、特定空き家や管理不全空き家として、指定されてしまいます。
特定空き家 | 放置すれば倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある空き家 |
管理不全空き家 | このまま放っておくと特定空き家になりそうな物件 |
そのため、特定空き家や管理不全空き家に指定されてしまうと、固定資産税が最大6倍になってしまうので注意が必要です。
次の章では、特定空き家と指定されるまでの流れを紹介していきます。
3-6 空き家を所有しているだけでも管理コストがかかり続ける
空き家に対しても固定資産税や都市計画税はかかり続けてしまいますし、近隣住民などとのトラブルを避けるために適切に空き家を管理しようとすると、管理コストがかかってしまいます。
固定資産税や都市計画税は年間10万円を超える場合もありますし、雨漏り対策やシロアリ対策、害獣対策なども建物の状態によっては十数万円近くかかる場合もあります
使い道のない空き家を所有しているだけで、これらの費用がかかり続けることは理解しておきましょう。
3-7 土地の地価が低下するリスクがある
日本は高齢化社会かつ人口の都市集中が進んでいるため、田舎にある空き家は今後も価値が上がらない可能性があります。
「今すぐに活用や売却をするのは難しい」と考えて空き家を放置したとしても、将来も土地の価値が上がる可能性は低いです。
そのため、希望価格で売却が難しいとしても空き家を所有し続けるのではなく、早い段階で売却してしまうのも選択肢のひとつです。
4章 空き家を有効活用し解決する5つの方法
空き家問題を解決するには、空き家を売却して手放す、活用するなどの方法が有効です。
空き家問題の対策は、主に下記の5つです。
- 空き家を売却する
- リフォームをして賃貸する
- 取り壊して駐車場収入を得る
- 空き家管理サービスを利用する
- 空き家バンクに登録する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
4-1 空き家を売却する
1つ目は空き家を売却することです。
一番簡単かつ売却代金も手に入れられるため、今後誰も住む予定がない場合は売却するのも良いでしょう。
ただし、築数十年も経っている持ち家の場合、そこまでのお金にならない場合もよくあります。
「空き家を所有し続けるよりは多少でもお金になる方が良い」という場合は売却するのも手です。
他の使い道よりも今後の手間がないので、早く空き家問題を解決したい場合にもおすすめです。
4-2 リフォームをして賃貸する
学校やオフィス街が近い立地や主要駅から近い立地の場合は、リフォーム後に賃貸やルームシェアとして貸し出して家賃収入を得るのも方法のひとつです。
特に、人気のエリアでは住みたい人が多いためすぐに入居者が見つかる可能性もあります。
ただし、リフォーム費用などそれなりの初期投資が必要なので、もし予算に余裕がある場合は検討しましょう。
4-3 取り壊して駐車場収入を得る
リフォームではなく、家を取り壊して駐車場収入にする方法もあります。
特に、都内など駐車場が少ない住宅街に駐車場を建てるなど需要が見込める場合では月極の収入を得ることが可能です。
土地の広さによっては、生活していけるくらいの収入を見込める可能性もあります。
ただし、住宅用の土地ではなく資産用の土地になるため、土地に対して固定資産税・都市計画税の軽減措置が適用されなくなります。
駐車場収入はあるが、かえって税金で損をしてしまったということがないように、取り壊す前に月いくらくらいになるのか確認しておきましょう。
4-4 空き家管理サービスを利用する
空き家を売却したり取り壊しは考えていないけれど、忙しかったり所有者が高齢化になり手入れができないという場合は空き家管理サービスを利用しましょう。
空き家管理サービスとは、月々一定の額で建物の点検をしてくれたり敷地内のゴミや庭の手入れをしてくれるサービスのことです。
具体的に空き家管理サービスを利用することで、下記を行ってもらい空き家を適切に管理できます。
- 郵便ポストのチラシの回収による空き巣防止
- 定期的な通水や換気で悪臭防止
- 庭の草むしりや草木の確認で近所トラブル防止
例えば、実家の親が介護施設に入所した場合や亡くなり自宅を受け継いだものの、実家が遠方にあり自分では管理が難しい場合は、空き家管理サービスを活用しても良いでしょう。
4-5 空き家バンクを利用する
最後は、自治体が主体となって運営している空き家バンクを利用する方法です。
空き家バンクとは、空き家の利用を希望する人に空き家を紹介する制度のことです。
所有している空き家を登録しておくことにより、賃貸や土地の購入をしたいという人が出てきたら譲ることが可能です。
売却とは異なり、すぐに売ることは難しいですが、空き家を欲しいと思ってくれる人の手元に渡るため、思い入れのある家を有効活用してほしいという場合におすすめの方法です。
空き家バンクは国土交通省のサイトページなどで空き家情報のリンクを確認できるので、利用を検討している方はぜひ参考にしてみましょう。
5章 空き家問題を回避するために対策しておくべきこと
空き家問題を回避するためには、空き家になる前に相続対策や売却などの対策をしておくのがおすすめです。
いざ空き家ができてしまったときに困らないためにも、ぜひ今のうちから家族と話し合っておきましょう。
具体的には以下の4点を検討しておきましょう。
- 不動産の名義を調べておく
- 誰が家を相続するのかを決めておく
- 転居が決まった時点で売却する
- 空き家になった時の使い道を考えておく
それぞれ詳しく解説していきます。
5-1 不動産の名義を調べておく
今後、住む人がいなくなる可能性がある場合、不動産の名義を調べておくようにしましょう。
所有者不明のまま空き家になると相続するにせよ売却するにせよ、いざという時に誰に権限があるのか分からない状態になってしまいます。
名義を調べた頃には所有者が亡くなっていたり、判断能力がなくて困ったケースも珍しくありません。
空き家になる前に現時点で誰が不動産の名義になっているのかを調べておきましょう。
また、親の持ち家だと思っていた実家がそもそも借家であるとわかったケースもあります。
この場合、親が亡くなった時点で賃貸契約を解除するだけで良いので、空き家問題を対策する必要はなくなります。
不動産の持ち主を調べる方法は、下記の記事で詳しく紹介しています。
5-2 誰が家を相続するのかを決めておく
もし親や祖父母が所有者で持ち家に住むのが難しくなった場合、誰が家を相続するのかを決めておきましょう。
相続先が決まっていないまま住人が不在になると、空き家の管理が難しくなり本記事の3章で紹介した問題に発展する恐れもあるからです。
また、親や祖父母の持ち家を相続をする場合、相続登記は必須になるのでこちらも忘れずに行いましょう。
2024年からは相続登記が義務化され、相続から3年以内に登記申請を行わないと10万円以下の過料が課せられる恐れもあるのでご注意ください。
5-3 転居が決まった時点で売却する
もし誰も相続しないことが決まっているのであれば、現状の持ち家の所有者の転居が決まった時点で売却するのもひとつの手です。
特に所有者が高齢者の場合、判断能力があるうちに速やかに現金化しておけば、介護費用や医療費の捻出をしやすくなる点もメリットといえるでしょう。
反対に、所有者が認知症になり判断能力を失ってしまうと、法律行為や契約を行えなくなるので自宅の売却が難しくなってしまうのでご注意ください。
5-4 空き家になった時の使い道を考えておく
理想を言えば、転居が決まった段階や住宅の所有者が亡くなったときに、誰が住宅を受け継ぐかを話し合うのではなくもっと早い段階から、持ち家が空き家になった場合の活用方法や売却について計画しておくのがおすすめです。
例えば、将来的に空き家になる可能性が高いのであれば、家族信託を用いて空き家の管理や運用、処分を行う方法もあります。
家族信託とは、信頼する家族に財産の管理や運用、処分を行ってもらえる制度です。
家族信託は手続きが完了し信託契約が開始されれば、家族間で完結するため柔軟な財産管理を行えるのが特徴です。
例えば家族信託を活用すれば、住宅の所有者が認知症になり介護施設に入所するタイミングで、受託者がリフォームして賃貸に出す、住宅を売却するなどを判断できます。
家族信託を活用すれば、空き家になった住宅を適切に管理しやすくなりますが、自分たちに合う信託契約書を作成するには専門的な知識が必要です。
自分たちで家族信託の契約書を作成する、手続きを進めることは難しいので、まずは家族信託や認知症対策に精通した司法書士や弁護士に相談してみるのが良いでしょう。
まとめ
空き家問題は放置していても解決する可能性は低く、むしろどんどん空き家の管理が難しくなる、価値が下がってしまうリスクがあります。
そのため、空き家問題は放置せずに早期解決を目指すのが良いでしょう。
また、まだ空き家問題が発生していないのであれば、今後発生しないように早いうちから空き家の活用、売却について計画しておくことも大切です。
高齢になり不動産の管理が難しい、いつまで自宅に住み続けられるかわからないと感じた場合、家族信託などで不動産の管理をする準備をしておくと安心です。
高齢になった後の住宅の管理方法はいくつかありますし、空き家の活用や売却方法も複数の種類があります。
ベストな対策は、空き家の状態や立地、ご自身の希望にも異なるので、まずは相続や認知症対策に詳しい司法書士や弁護士に相談するのが良いでしょう。
グリーン司法書士法人では、家族信託などの認知症対策についての相談をお受けしています。
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