相続放棄が認められない4つの事例|失敗とトラブルを防ぐポイントは?

相続放棄が認められない4つの事例|失敗とトラブルを防ぐポイントは?
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 4

亡くなった人に多額の借金が見つかった場合、相続放棄が認められるかどうかで、今後の人生が変わると言っても過言ではありません。

相続放棄は借金や相続トラブルから逃れることができるのため、とても有効的な手段ですが、事例によっては相続放棄が認められない場合もあります。

この記事では、相続放棄が認められない4つの事例と、認めてもらうために抑えておきたいポイントを解説いたします。相続放棄を考えている方はぜひ参考にしてみてください。

相続放棄の手続きについては下記の記事でも詳しく解説しています。

相続放棄とは?検討すべきケース3つや手続きの流れ・注意点まとめ

1章 相続放棄とは?どういう場合に使う?

相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の財産の相続権を全て放棄することです。

主に、相続放棄を行うケースは以下の通りです。

  • 亡くなった人に借金があるケース
  • 相続人間のトラブルに巻き込まれたくないケース

亡くなった人の借金を肩代わり…となると、相続放棄を考えるのも一つの手と言えますし、遺産が少なく手続きが面倒な場合や相続トラブルを避けたい場合も、相続放棄は有効です。

相続放棄するには「家庭裁判所で手続きを行う必要」がありますが、万が一裁判所で認めてもらえないとなると、大変困ったことになります。

次章では、相続放棄が認めらない事例を確認してみましょう。

相続放棄を検討中の方へ。実績がある、経験がある。だから確実でスピーディー。

2章 相続放棄が認められない4つの事例

相続放棄が裁判所で認められない主な事例は次のとおりです。

  1. 相続する意思があるとみなされ認められなかった
  2. 相続放棄できる期間を過ぎてしまい認められなかった
  3. 提出書類に不備があり認められなかった
  4. 相続放棄が本意ではなかった

それぞれの事例を詳しく確認していきましょう。

①相続する意思があるとみなされ認められなかった

相続する意思があると判断されると、裁判所に相続放棄が認められなくなるのでご注意ください。
相続する意思があると判断される事例は、主に下記の通りです。

  • 遺産を使い込んでしまった
  • 相続財産を捨てたり壊した
  • 相続対象の固定資産を改修した
  • 相続財産を譲った
  • 相続財産の名義変更をした
  • 被相続人の口座預金を自分の口座に入金した
  • 被相続人が持っている賃貸物件の賃料を借主に請求した・振込先を自分の口座に変更した
  • 相続財産に担保権を設定した
  • 被相続人の株主総会での議決権を行使した
  • 遺産分割協議に参加した
  • 被相続人の遺品を持ち帰った、配った
  • 期日未到来の相続債務を相続財産から返済した
  • 相続財産を隠して自分のものとした

上記のように、亡くなった人の預貯金や不動産などの財産に手をつけてしまうと、相続する意思があるとみなされるため相続放棄が認められなくなります。

よくある例としては、『遺品は家族で分け合い、残りは相続放棄する』『親が亡くなったため家や車の名義を子どもに変更した』『被相続人の口座を自分の名義に変更した』などが挙げられます。

ただし、遺産分割協議は、相当の理由があり、被相続人の債務がないと思って参加した場合は相続放棄が認められる可能性もあります。

また、形見分け程度なら問題ないとされる場合もあります。しかし、あくまで可能性なので相続放棄を考えている際は、遺産には一切手をつけないことをおすすめします。

②相続放棄できる期間を過ぎてしまい認められなかった

2つ目は、相続放棄できる期間を過ぎてしまったため、認められなかった事例です。

  • 相続放棄ができる期限内(3ヶ月以内)に相続放棄の手続きをしなかった

相続放棄ができる期間は、相続開始を知った時から3か月と言われています。

相続放棄が認められない事例について。まずは相続放棄の期限のスタート地点について解説

被相続人が亡くなってから3ヶ月以上経っていたとしても、自分が相続人であると知った時から期限がスタートするので「自分が知らないまま借金を相続させられることになっていた」ということにはならないのでご安心ください。

もし、相続放棄するかどうか迷っているうちに相続放棄できる期間が過ぎてしまいそうだと感じた場合は、期限の延長をすることも可能です。

相当な理由がない限り、相続放棄の期限が切れた場合は認められないため、延長を考えている方は以下の記事を参考に手続きしましょう。

【相続放棄の期限は3ヶ月】期限の延長方法と期限過ぎた場合の対処法

③提出書類に不備があり認められなかった

3つ目は、提出書類に不備があり認められなかった事例です。

  • 書類に不備があったが、家庭裁判所の補完指示を無視してそのままにした

相続放棄を認めてもらうには、相続放棄申述書のほか、必要書類の提出が必要となります。

相続放棄申述書作成の流れについて

もし、提出書類に不備があった場合は家庭裁判所から連絡がありますが、すぐに対応しないと期限切れ…ということにもなりかねません。

慣れない作業で時間がかかるのは間違いないので、期限内に終わらせるためにも余裕を持ったスケジュールで行いましょう。

もし、被相続人に多額の借金があり「絶対に何がなんでも相続放棄したい」というのであれば、司法書士や弁護士に依頼するのも一つの方法です。費用はかかってしまいますが、今後の借金のことを考えると確実に相続放棄できる方が安心ではないでしょうか。

④相続放棄することが本意ではなかった

最後、4つ目は相続放棄を望んでいなかった事例です。

  • 相続放棄申述書を偽造され勝手に手続きされた
  • 自分の子供と一緒に相続人の立場になった親が裁判所の許可を得ずに子供だけ相続放棄させた
  • 被相続人に借金があると騙されて相続放棄の申立てをした
  • 相続放棄をするように脅されて相続放棄をした

このように他の相続人に相続放棄させるよう嘘をつかれたり、脅されたりした場合は相続放棄が認められません。「もし本当の情報を知っていたら相続放棄はしていない」となれば、裁判所も相続放棄を認める訳にはいかないからです。

例え、相続放棄が認められた後に発覚したとしても、相続放棄の取消ができる可能性もあるので、泣き寝入りすることはありません。


3章 相続放棄ができない場合はどうなる?

相続放棄が認められず、不受理となった場合は、相続放棄申述受理通知書を受け取った翌日から2週間以内に、「即時抗告」の申し立てができます。

しかし、一旦不受理と判断されたものなので、覆すための相当な理由を用意しなければ即時抗告も不受理となってしまいます。ですので、高等裁判所で覆ることはあまり期待しない方が良いでしょう。

受理される可能性を少しでも上げたい方は、相続放棄に詳しい弁護士や司法書士に依頼して、申述書や照会書を作成してもらうと良いでしょう。


4章 相続放棄を認めてもらうために抑えておくべき3つのポイント

相続放棄を確実に認めてもらうためにも、ぜひ以下の3つのポイントを抑えておきましょう。

①遺産を全て把握してから判断する

正しい選択をするためにも、まずは遺産を全て把握してから相続放棄を行うか判断しましょう。

遺産をしっかり調べたとしても、後からポロポロ出てくるのはよくあることです。「こんな資産を持っていたの!」という嬉しい誤算から「隠れて借金していたみたい…」という嫌な情報まで、全て把握してから相続放棄を判断するようにしましょう。

期限が3ヶ月ということで焦ってしまい、負債が見つかった時点で相続放棄を決断したくなりますが、よく調べたら財産で借金を返済してもまだ取り分がある…ということもあります。

まずは落ち着いて、遺産を全て把握してから相続するかどうか話し合いましょう。

②相続放棄するかどうかの判断は期限を決める

亡くなってから葬儀に遺産の調査にバタバタしていると、あっという間に期限が近付いてしまいます。

借金のみだった場合は決断が早いですが、どちらもある場合は悩んでしまうことでしょう。余裕を持って相続放棄の手続きを行うためにも「迷うのは1ヶ月以内!」など、あらかじめ期限を決めておきましょう。

ポイントとしては、相続対象者共通の期限を決めることです。自分が決めていたとしても兄弟がまだ迷っていて手続きに入れないということもあるからです。もし、自分だけ相続放棄をして兄弟が期限切れになって借金を背負う…となれば家族間でトラブルになるのは明白です。

円満な家族関係を維持するため、相続対象者共通の期限を決めるようにしましょう。

③迷ったら専門家へ相談する

「財産も負債もあってどっちが得なのか分からない」「もしかしたら相続税も入れたらマイナスになるかも」…ということがあれば、専門家に相談するのをおすすめします。

「専門的な用語や知識が多く分かりにくい上に、税金や借金の返済で結局全然残らなかった」というケースも多いです。少しでも相続放棄の可能性が残っているのであれば、専門家のアドバイスを聞くのも手ではないでしょうか。

最善の選択を行うためにも、ぜひ相続放棄の経験豊富な司法書士・弁護士に相談してみましょう。


まとめ

期限切れや書類の不備は自分で注意すれば防ぐことができます。しかし、無意識のうちに遺産に手をつけてしまい認められなかった事例は少なくありません。

つい事務的に名義変更などの手続きを行いがちですが、相続放棄の可能性がある場合は一旦全て保留としましょう。

トラブルを防ぎ、相続対象者全員が納得のいく相続を行うためにも、損得が難しいと判断したらぜひグリーン司法書士法人の無料相談へお越しください。

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よくあるご質問

相続放棄の注意点とは?

相続放棄の注意点は、下記の通りです。
・相続放棄の期間は3ヶ月
・相続放棄は原則撤回できない
・亡くなった人が残した財産に手を付けてしまうと相続放棄ができなくなる
・相続放棄をしても保証人から外れられない
・生前に相続放棄をすることはできない
・一部財産だけの相続放棄はできない
▶相続放棄について詳しくはコチラ

相続放棄の手続きの必要書類とは?

相続放棄の必要書類は、絶対に必要な書類と状況によって必要な書類の2種類があります。
相続放棄の申立時に絶対に必要になる書類は以下のものがあります。
・申述書
・亡くなった人の住民票の除票もしくは除籍附票
・相続放棄する人の戸籍謄本
・収入印紙(1人あたり800円)
・連絡用の切手(裁判所によって金額が異なります)
詳しくは下記リンク先をご参考にしてください。
▶相続放棄の必要書類について詳しくはコチラ

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