遺言書で指定された遺言執行者が死亡した場合、相続手続きを進めるためには家庭裁判所へ新たな遺言執行者の選任申立を行う必要があります。
遺言執行者が亡くなったからといって遺言書自体が無効になるわけではありません。
この手続きは相続人などの利害関係者が行うことができますが、専門的な知識が求められるため、専門家への相談を検討することをおすすめします。
目次
遺言執行者が死亡しても遺言書は無効にならないのでご安心ください
遺言執行者が死亡した場合でも、遺言書そのものが無効になることはありません。
遺言の効力と遺言執行者の存在は直接的に連動するものではないためです。
遺言執行者がいなくなった場合、相続人や利害関係者は家庭裁判所に新たな遺言執行者の選任を申し立てることで、遺言の内容を実現するための手続きを継続できます。
【状況別】遺言執行者が亡くなった場合の2つのケース
遺言執行者が死亡する状況は、遺言者が亡くなる前と後の二つのケースに大別されます。
どちらのタイミングで亡くなったかによって、とるべき対応が異なります。
それぞれの場合における具体的な対処法を正しく理解し、適切に行動することが重要です。
ケース1:遺言者が亡くなる前に遺言執行者が死亡した場合
遺言者の生前に、指定した遺言執行者が先に死亡した場合は、遺言者が遺言書を書き直すことで対応できます。
被相続人である遺言者は、新たな遺言執行者を指定し直したり、遺言の内容自体を変更したりすることが可能です。
この段階であれば、家庭裁判所での手続きは不要であり、遺言者自身の意思で柔軟に対処できます。
ケース2:遺言者の死亡後に遺言執行者が任務の途中で死亡した場合
遺言者が亡くなり相続が開始された後、遺言執行者が任務の途中で死亡した場合は、相続手続きが滞ってしまいます。
この場合、遺言執行者の任務を誰も引き継げないため、利害関係者が家庭裁判所に新たな遺言執行者の選任を申し立てる必要が生じます。
選任された新たな執行者によって、中断していた遺産の名義変更や解約手続きなどが再開されることになります。
注意:遺言執行者の地位は相続人に引き継がれません
遺言執行者という地位や任務は、亡くなった執行者の相続人に引き継がれることはありません。
これは、遺言執行者の職務が遺言者との信頼関係に基づく一身専属的な性質を持つためです。
したがって、遺言執行者の子が自動的にその任務を継ぐことはできず、必ず家庭裁判所での選任手続きを経る必要があります。
新たな遺言執行者を家庭裁判所で選任する手続き
遺言執行者が不在または死亡した場合、遺言の内容をスムーズに実現するためには、家庭裁判所へ「遺言執行者選任申立」という法的な手続を行う必要があります。
この申立てが認められると、裁判所が新たな遺言執行者を選任し、その者が遺言の執行業務を担当します。
遺言執行者選任の申立てができる利害関係者の範囲
遺言執行者選任の申立てができるのは「利害関係人」に限られます。
申立人になれる利害関係人とは、具体的には相続人、包括受遺者、特定受遺者のほか、遺言者の債権者や債務者などが該当します。
これらの立場にある者が、手続きを進めるために家庭裁判所へ申立てを行います。
家庭裁判所への申立てから選任までの具体的な流れ
申立てから選任までの流れは、まず必要書類を収集し、申立書を作成して遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。
その後、裁判所が申立て内容や候補者が適格であるかを審理します。
問題がなければ、裁判所が遺言執行者を選任し、申立人や選任された者へ審判書が送付されることで手続きが完了します。
申立てに必要な書類の一覧
申立て手続には、以下の書類を準備する必要があります。
・遺言執行者選任申立書
・遺言者の死亡の記載がある戸籍謄本
・遺言執行者候補者の住民票または戸籍附票
・遺言書の写しまたは遺言書検認調書謄本の写し
・利害関係を証明する資料(相続人であれば戸籍謄本など)
事案によって追加書類を求められる場合もあるため、事前に裁判所へ確認をしておくとよいでしょう。
申立てにかかる費用と期間の目安
申立てにかかる費用は、主に収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手代です。
郵便切手の金額は各家庭裁判所によって異なります。
申立てから選任までの期間に法律上の期限はありませんが、一般的には1か月から2か月程度かかることが多いです。
ただし、事案の複雑さや候補者への照会状況によって期間は変動します。
将来のトラブルを防ぐ!遺言書作成時にできる3つの対策
遺言執行者が死亡するリスクに備え、遺言書を作成する段階で対策を講じることが可能です。
特に、あらかじめ予備的な遺言執行者を指定しておく方法は、将来の手続きを円滑に進める上で非常に有効です。
ここでは、事前にできる3つの対策を解説します。
対策1:もしもの場合に備えて予備的遺言執行者を指定する
最も効果的な対策は、予備的遺言執行者を指定しておくことです。
これは、最初に指定した遺言執行者が死亡、または就任を辞退した場合に備えて、第二順位、第三順位の執行者をあらかじめ遺言書で指定しておく方法です。
この予備の指定があれば、家庭裁判所での選任手続きを経ずに、スムーズに次の執行者へ任務を引き継げます。
対策2:複数人の遺言執行者を指定しておく
遺言執行者は単独でなく、複数人を指定することも可能です。
複数人を指定しておけば、そのうちの一人が死亡しても、残りの執行者が任務を続行できます。
ただし、遺言に別段の定めがない限り、任務の執行は過半数の同意で決定する必要があるため、意見が対立する可能性がある点は考慮すべきです。
対策3:専門家である弁護士や信託銀行などの法人を指定する
個人ではなく、法人を遺言執行者に指定する方法も有効です。
弁護士法人や信託銀行などの金融機関は、組織として永続的に存在するため、担当者が変わっても業務が滞る心配がありません。
特に財産が多岐にわたる場合や、相続関係が複雑な場合に、中立的かつ専門的な立場で手続きを進めてくれるため、身内への負担を避けたい場合に適しています。
遺言執行者の選任手続きは弁護士への相談がおすすめな理由
家庭裁判所への遺言執行者選任の申立ては、ご自身で行うことも可能ですが、手続きには専門的な知識が求められます。
戸籍の収集や書類作成が煩雑であるため、スムーズかつ確実に手続きを進めたい場合は、相続問題に精通した弁護士への相談がおすすめです。
複雑な申立て手続きを迅速かつ正確に進められる
弁護士に依頼すれば、申立に不可欠な戸籍謄本などの書類収集から、申立書の作成、裁判所とのやり取りまで、一連の手続を代行してもらえます。
相続人を確定させるための戸籍収集は非常に手間がかかる作業ですが、専門家が対応することで迅速かつ正確に手続きを完了できます。
特に相続関係が複雑化している場合には、大きなメリットとなります。
他の相続人とのトラブル発生を未然に防げる
遺言執行者の候補者を誰にするかで、他の相続人と意見が対立するケースも少なくありません。
弁護士が第三者として候補者になったり、申立ての代理人として他の相続人への説明を行ったりすることで、感情的なしこりを防ぎ、円滑な合意形成を促せます。
また、遺留分など将来発生しうる法的な紛争リスクを事前に洗い出し、適切な対応をとることが可能です。
遺言執行者の死亡に関するよくある質問
ここでは、遺言執行者が死亡した場合に関して、特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
手続きを進める上での疑問点や不安を解消するためにお役立てください。
遺言書で指定された遺言執行者が死亡していたら、遺言書も無効になりますか?
遺言執行者が死亡していても、遺言書自体が無効になることはありません。
遺言の内容は有効なままです。
相続人などの利害関係者が家庭裁判所に申し立て、新しい遺言執行者を選任してもらえば、その者によって遺言の内容を実現するための手続きを進めることが可能です。
新しい遺言執行者の選任申立てに期限はありますか?
遺言執行者の選任申立てには、法律で定められた明確な期限はありません。
しかし、申立てをしないまま放置すると、遺言の内容を実現できず、不動産の名義変更や預貯金の解約といった相続手続きが一切進まなくなります。
そのため、事実上、速やかな申立てが必要です。
亡くなった遺言執行者の相続人は何かすべきことがありますか?
遺言執行者の地位は相続されないため、任務を引き継ぐ義務はありません。
ただし、故人が遺言者から預かっていた財産がある場合、それを相続財産の管理人や新たな遺言執行者に引き渡す必要があります。
また、相続人らに執行者死亡の事実を通知することも求められます。
まとめ
遺言執行者が死亡した場合でも遺言は有効であり、家庭裁判所での選任申立てによって新たな執行者を立てることができます。
この手続きは民法で定められており、遺言の内容を実現するために不可欠です。
遺言書を作成する際は、公正証書遺言であっても執行者死亡のリスクに備え、予備的執行者の指定や内容の変更を検討することが望ましいです。
相続開始後に執行者の死亡が判明した場合は、速やかに専門家へ相談し、適切な手続きを進めることが重要となります。
グリーン司法書士法人では、相続全般についての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。






