
- 現金と不動産はどちらを相続させるのが得なのか
- 不動産を遺すメリット・デメリット
- 現金を遺すメリット・デメリット
- 不動産を遺す際の注意点
相続を考えるとき、多くの方が迷われるのが「現金と不動産のどちらを遺すべきか」ということです。
相続税の負担だけを見れば、不動産のほうが有利になる一方、円滑な遺産分割という観点では現金のほうが扱いやすく、どちらが正解とも言い切れません。
本記事では、現金・不動産を遺すメリットやデメリットについて解説します。
目次
1章 現金と不動産はどちらを相続させるのが得?
相続対策を考える上で、「現金と不動産のどちらを子どもに遺した方が得なのか」は、多くの方が悩まれるポイントのひとつです。
結論から言えば、相続税の負担のみを考えた場合、現金より不動産を遺した方が有利になることが多くあります。
一方で、公平な遺産分割のしやすさや相続トラブルの回避を考えると、不動産よりも現金のほうが扱いやすいという特徴があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1 相続税のみで考えると不動産の相続が得である
相続税の観点から見ると、現金より不動産を相続させた方が節税につながる可能性があります。
相続税は「評価額」をもとに計算されますが、評価額を算出する方法は現金と不動産で大きく異なります。
まず現金は、額面通りが相続税評価額になります。1,000万円の現金があれば、評価額もそのまま1,000万円です。
一方、不動産の相続税評価額は以下のように計算され、市場価格(実勢価格)の7〜8割程度になることが一般的です。
- 土地:路線価方式または倍率方式で評価
- 建物:固定資産税評価額が基準
例えば、時価3,000万円で売却できる土地であっても、相続税評価額は2,100万〜2,400万円程度に収まるケースもよくあります。
相続税評価額が低くなることによって、相続税の負担を抑えやすいメリットがあります。
また、不動産には「小規模宅地等の特例」など、相続税の節税につながる特例も用意されています。
特例を利用すれば、現金を相続させたときと比較して、さらに相続税の負担を軽減可能です。
1-2 公平な遺産分割のみで考えると現金が適している
一方で、遺産分割のしやすさや相続トラブルを避けることを重視した場合、不動産より現金を相続させた方が良いケースもあります。
現金は、以下の理由から分割しやすい資産といえます。
- 価値が明確で、誰が見ても平等に分けやすい
- 不動産のように共有名義にしなくてよい
- 維持管理の負担や固定資産税が発生しない
- 売却の手間がなく相続人が自由に使える
子供が複数いるご家庭では、不動産をそのまま相続させてしまうと、相続トラブルが発生することも珍しくありません。
2章 不動産を遺すメリット・デメリット
現金で遺すより不動産で遺した方が相続税の節税につながりやすい一方で、遺産に不動産が多いと相続トラブルが起きるリスクが上がります。
不動産を遺すメリットとデメリットを詳しく解説していきます。
2-1 不動産を相続させるメリット
現金ではなく不動産を遺すと、以下のようなメリットが期待できます。
- 相続税の節税効果が期待できる
- 将来の値上がりが期待できる
- 住まいとして活用しやすい
- 賃貸に出せば収益化できる
不動産の相続税評価額は時価の7〜8割程度ですので、現金で相続させるより相続税を節税できる可能性があります。
また、小規模宅地等の特例の適用を受けられれば、個人が所有していた土地の相続税評価額をさらに軽減可能です。
また、現金と異なり不動産は価値が上がる可能性もありますし、賃貸不動産として活用することもできます。
2-2 不動産を相続させるデメリット
不動産を相続させることにはメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあるので注意しなければなりません。
- 相続人同士で分けにくい
- 管理コストがかかる
- 売却したくてもすぐに売れないことがある
現金と異なり不動産は公平に遺産分割することが難しい財産でもあります。
そのため、相続人や不動産の状況によっては、相続トラブルが起きてしまうこともあるでしょう。
また、不動産を相続したら、固定資産税や管理費用などがかかり続けます。
相続人によっては、管理費用や手間を負担に感じることもあるでしょう。
3章 現金を遺すメリット・デメリット
現金は不動産に比べて扱いやすい一方、節税面では不利になることもあります。
本章では、遺産に現金を遺すメリットとデメリットを詳しく解説していきます。
3-1 現金を相続させるメリット
遺産を不動産ではなく現金の形で遺すメリットは、主に以下の通りです。
- 分割がしやすく、家族が揉めにくい
- 不動産より自由度が高い
- 換金の手間が不要
- 固定資産税や管理コストがかからない
不動産と異なり、現金は相続人同士で公平に分割しやすい点がメリットといえるでしょう。
子供が複数人いる場合や、相続人同士の関係が悪い場合には、現金で遺した方がトラブルが起きにくいはずです。
また、現金は相続人が自由に使用できる点もメリットです。
相続税の納税資金として活用することもできますし、子育て費用や老後資金に充てることもできます。
3-2 現金を相続させるデメリット
遺産に現金を多く遺すデメリットは、主に以下の通りです。
- 額面=相続税評価額となる
- インフレによる価値の目減りリスクがある
- 現金であっても、相続トラブルが起きる恐れがある
現金は額面がそのまま相続税評価額となるので、不動産と異なり相続税の節税効果は得られません。
また、インフレが起きた場合、価値が目減りしてしまうこともあるでしょう。
他にも、相続人の状況や故人の関係性によっては、現金で公平な遺産分割をしてもトラブルが起きることがあります。
例えば、故人の介護をしていた相続人とそれ以外の相続人の相続分が同じ場合、介護をしていた相続人が不公平感を持つこともあるはずです。
4章 【具体例】現金と不動産の相続税額のシミュレーション例
遺産が現金のみの場合と不動産の場合では、相続税額がどれほど変わってくるのかイメージしにくい方も多いでしょう。
本章では、遺産が現金のみだった場合と不動産のみだった場合のシミュレーション結果を紹介します。
4-1 遺産が現金のみの場合
まずは、遺産が現金のみだったケースを考えてみましょう。
条件
- 遺産:現金(預貯金)1億円のみ
- 相続人:配偶者と子供2人
- 法定相続分通りに相続する
上記のケースの場合、相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」であり、課税対象額は5,200万円となります。
それぞれ法定相続分で分けた際の相続税額は、下記のように計算可能です。
- 配偶者:5,000万円×20%−200万円=800万円
- 子供:2,500万円×15%−50万円=325万円ずつ
配偶者については、配偶者控除を適用できるため、実際の相続税額は、下記の通りです。
- 配偶者:0円
- 子供:325万円ずつ
- 合計:650万円
4-2 遺産が不動産のみの場合
続いて、遺産が不動産のみだった場合を見てみましょう。
条件
- 遺産:不動産(時価1億円・相続税評価格8,000万円)
- 相続人:配偶者と子供2人
- 法定相続分通りに相続する
上記のケースでは、課税対象額は「8,000万円-4,800万円=3,200万円」と計算できます。
法定相続分で分けた場合の相続税額は、下記の通りです。
- 配偶者:1,600万円
- 子供:800万円
配偶者控除を適用できるため、実際の相続税額は、以下のようになります。
- 配偶者:0円
- 子供:800万円×10%=80万円ずつ
- 合計:160万円
子供が故人と同居しており、小規模宅地等の特例の適用を受けられるケースなどでは、相続税額をさらに減額できる可能性もあります。
このように現金と不動産の相続税額を単純に比較した場合、不動産を相続させた方が相続税の負担を軽減できる可能性が高いでしょう。
5章 不動産を遺す際の注意点
不動産を多く遺そうと考えている場合には、以下のような点に注意しなければなりません。
- 相続税の納税資金を用意しておく
- 相続対策だけでなく認知症対策もしておく
- 相続人も賃貸経営を続けたいのか確認しておく
それぞれ詳しく解説していきます。
5-1 相続税の納税資金を用意しておく
不動産を多く遺したい場合には、相続税の納税資金も必ず用意しておきましょう。
具体的には、不動産の売却や生命保険の加入などを行っておくことをおすすめします。
5-2 相続対策だけでなく認知症対策もしておく
遺産に不動産を遺す場合には、相続対策だけでなく認知症対策もしておきましょう。
認知症になり判断能力を失ってしまうと、不動産の管理や売却をできなくなってしまうからです。
具体的には、家族信託や任意後見制度を利用して、認知症対策をしておくことをおすすめします。
5-3 相続人も賃貸経営を続けたいのか確認しておく
賃貸不動産を遺そうと考えている場合には、相続人も賃貸経営を続けたいと思っているのか確認しておきましょう。
相続人によっては、本業が忙しく、賃貸経営まで手が回らないと考える方もいますし、賃貸経営のリスクを背負いたくないと考える方もいるからです。
相続人が賃貸経営をしたくないと考えている場合には、不動産を自分の代で現金化しておくことも検討しておきましょう。
まとめ
現金と不動産のどちらを遺すべきかは、節税や遺産分割、家族の負担という3つの視点で判断することが重要です。
相続税の負担を抑えるなら不動産が有利ですが、遺産分割のしやすさや管理の負担軽減を重視するなら現金が適しています。
不動産を遺す場合には、納税資金の確保や認知症対策などもあわせて行っておきましょう。
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