生命保険金の受取人は誰?保険金が相続財産に含まれるケースとは

生命保険金の受取人は誰?保険金が相続財産に含まれるケースとは
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 4

故人が亡くなったときに支給される生命保険金は、原則として遺産分割の対象にならず、受取人固有の財産として扱われます。
一方で、受取人が相続人と指定されている場合や遺産に対して生命保険金が多い場合は遺産分割の対象になる可能性があります。

生命保険金の取り扱いや遺産分割の方法や割合でトラブルに発展しそうな場合は、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談するのも良いでしょう。
本記事では、相続人おける生命保険金の取り扱いや受け取り時の注意点を解説します。

生命保険で相続対策をしたい場合は、下記の記事もご参考にしてください。

相続税対策に生命保険を検討してる方【必見】活用方法と注意点を解説

1章 生命保険金は指定された受取人が受け取る

故人の死亡により支給される生命保険金は、原則として遺産ではなく受取人固有の財産として扱われます。
そのため、遺産分割の対象にはなりません。

相続における生命保険金の取扱いは、下記の通りです。

  1. 原則として生命保険金は受取人固有の財産となる
  2. 受取人が「相続人」と指定されていた場合は遺産分割の対象になる
  3. 生命保険金が特別受益に該当する場合は遺産分割の対象になる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1-1 原則として生命保険金は受取人固有の財産となる

生命保険金は故人の遺産ではなく、契約によって指定された受取人固有の財産として扱われます。
したがって生命保険金は遺産分割の対象にはなりません。

原則として、遺産分割は生命保険金などを除いた故人の遺産に対して行われます。
故人が生命保険に加入していた場合の遺産分割の例は、本記事の2章で詳しく解説します。

1-2 受取人が「相続人」と指定されていた場合は遺産分割の対象になる

故人が加入していた生命保険の契約で受取人が「相続人」と指定されていた場合、生命保険金は他の遺産同様に遺産分割の対象になります。
受取人が相続人とされている生命保険金は、相続人全員の共有財産として扱われるからです。

1-3 生命保険金が特別受益に該当する場合は遺産分割の対象になる

本記事の1-1では受取人が指定されている場合、生命保険金などは受取人固有の財産として扱われ、原則として遺産分割の対象にならないと解説しました。
ただし、遺産に対して生命保険金の金額が多すぎる場合は、生命保険金が特別受益に該当する恐れがあります。

特別受益とは、ある相続人が亡くなった人から特別に得ていた利益です。
生命保険金が特別受益と判断された場合は、生命保険金も遺産分割の対象に含めなければなりません。
生命保険金が特別受益の対象になるかは、遺産の総額や生命保険金の金額によって個別に判断されます。

そのため、特定の相続人に生命保険金を多く遺そうとするケースや生命保険で相続対策をしようとするケースでは、将来トラブルが起きることを防ぐために相続に詳しい司法書士や弁護士に相談しておくのが得策です。

特別受益とは|持ち戻しの計算方法や具体例・トラブル回避のための対策
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2章 故人が生命保険に加入していた場合の遺産分割の例

本記事の1章で解説したように、原則として生命保険金は遺産分割の対象になりません。
一方で、生命保険金の受取人が相続人と指定されていたケースや生命保険金が特別受益に該当する場合は、遺産分割の対象になります。

本章では、生命保険金が遺産分割の対象にならないケース、なるケースの遺産分割について具体例付きで解説します。

2-1 生命保険金が遺産分割の対象にならないケース

まずは、生命保険金が遺産分割の対象にならないケースを見ていきましょう。
相続人および遺産、生命保険金に関する条件は、下記の通りです。

【条件】

  • 相続人:長男、長女、次男の計3人
  • 遺産:預貯金6,000万円
  • 生命保険金:長男を受取人とした生命保険金が1,000万円支給された
  • 備考:生命保険金は特別受益に該当しない

上記のケースでは、長男が受け取る生命保険金は遺産分割の対象にならず、対象になる財産は「6,000万円」のみです。
相続人は子供たち3人であり、法定相続分に従えば等分し、それぞれが預貯金2,000万円ずつを相続します。

2-2 生命保険金が遺産分割の対象になるケース

続いて、生命保険金が遺産分割の対象になるケースの相続例を確認してみましょう。
相続人および遺産、生命保険金に関する条件は下記の通りです。

【条件】

  • 相続人:長男と長女の計2人
  • 遺産:預貯金4,000万円
  • 生命保険金:長男を受取人とした生命保険金が2,000万円支給された
  • 備考:生命保険金は特別受益に該当する可能性がある

上記のケースでは、生命保険金が特別受益に該当するため、遺産分割の対象になる財産は「預貯金4,000万円+生命保険金2,000万円=6,000万円」です。
相続人は子供2人なのでそれぞれ3,000万円ずつ遺産を受け取れます。

しかし、長男は生命保険金2,000万円を受け取っているため、それぞれが受け継ぐ財産は下記のようになります。

【長男】

  • 預貯金:1,000万円
  • 生命保険金:2,000万円

【長女】

預貯金3,000万円

上記のように生命保険金が特別受益と判断されると、生命保険金を受け取った相続人は他の遺産の相続割合が減る場合があります。

相続権とは?|法定相続人の範囲と相続割合をわかりやすく解説

3章 相続発生時に生命保険金を受け取るときの注意点

生命保険金は原則として遺産分割の対象になりませんが、一方でみなし相続財産として相続税の課税対象にはなるのでご注意ください。
家族が亡くなり生命保険金を受け取るときの注意点は、下記の通りです。

  1. 生命保険金には相続税がかかる
  2. 孫を生命保険金の受取人にすると相続税が2割加算になる
  3. 生命保険金を受け取ると相続放棄できない場合がある

それぞれ詳しく見ていきましょう。

3-1 生命保険金には相続税がかかる

生命保険金は遺産分割の対象にはなりませんが、相続税の課税対象になる「みなし相続財産」です。
生命保険金は他の相続財産と同様に、故人の死亡を原因として得るお金だと考えられるからです。

なお、生命保険金を相続人が受け取った場合は「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が用意されています。
そのため、相続人に財産を遺す場合は預貯金より生命保険に加入した方が相続税を節税できる可能性があります。

みなし相続財産とは?該当例や非課税枠の計算方法について解説

3-2 孫を生命保険金の受取人にすると相続税が2割加算になる

生命保険金は配偶者や子供などの相続人だけでなく、孫を受取人にすることも可能です。
生命保険金の受取人を孫にした場合、一世代飛ばして財産を譲れるメリットがありますが、下記のデメリットもあります。

  • 相続人でない孫が生命保険金を受け取っても非課税枠は適用されない
  • 相続人でない孫が財産を受け継ぐと、相続税が2割加算される

生命保険金の非課税枠は、あくまでも法定相続人が受取人だった場合のみ適用可能です。
また、配偶者や一親等の血族以外が財産を受け継ぐと相続税が2割加算となります。

孫に財産を遺して節税しようとした結果、相続税負担が重くなってしまったなんてことがないように、相続税対策をする際には、相続に強い税理士に相談しながら行いましょう。

孫に遺産を相続させる4つの方法と相続権がある場合の相続割合と税金

3-3 生命保険金を受け取ると相続放棄できない場合がある

受取人が指定されている生命保険金は受取人固有の財産として扱われるため、相続放棄をしても受取可能です。
一方で、受取人が相続人と指定されている場合や受取人が指定されていない場合に受け取ってしまうと、相続放棄できなくなる恐れがあります。

故人の遺産を受け取る、勝手に処分すると、相続する意思があると判断され、相続放棄が認められなくなってしまうからです。
従って、相続放棄を検討している人が故人の生命保険金を受け取りたい場合は、保険の契約内容を確認した上で受け取って良いか判断しなければなりません。

生命保険金の受け取り以外にも、相続放棄をする際には故人の遺品整理や携帯電話の解約など判断が難しく注意すべきことが多いです。
自己判断で行動してしまい、相続放棄できなくなったなんてことがないように、相続放棄をする際には司法書士や弁護士に相談することを強くおすすめします。

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まとめ

受取人が指定されている生命保険金は、原則として受取人固有の財産として扱われ、遺産分割の対象になりません。
一方で遺産に対して生命保険金の金額が高すぎる場合は、生命保険金が特別受益に該当する恐れがあるのでご注意ください。

「世話になった長男に財産を遺すため生命保険に加入しよう」と思っての行動だとしても、相続人に理解を得ていないケースや生命保険金の金額によっては相続発生後に遺族が揉める恐れもあります。

相続対策には複数の方法があり、相続人や遺産の状況によってベストな選択肢は変わります。
相続トラブルを回避したい、自分が希望する人物に財産を確実に遺したい場合は、相続人詳しい司法書士や弁護士に相談するのが良いでしょう。

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