- 子供名義の貯金を親が使うのは違法になるのか
- 子供名義の貯金を親が使ったときの税金・刑罰の取扱い
- 子供名義の貯金が親の名義預金と判断される条件
お年玉やお祝いなど子供がもらったお金を親が管理しておくことは、よくあることです。
しかし、子供名義のお金を親が勝手に使うことは法に触れるのでしょうか。
結論から言うと、親が子供名義のお金を勝手に使った場合、刑事罰に問われることはありませんが、子供から損害賠償請求される恐れがあります。
また、親が子供名義の預貯金を管理していると名義預金に該当し、相続税や贈与税がかかる恐れもあるので注意しなければなりません。
本記事では、子供名義の貯金を親が使うと違法になるのか、刑罰や税金についての取り扱いを解説します。
目次
1章 子供名義の貯金を親が使うのは違法になる?
結論から言うと、子供名義の貯金を勝手に親が使ったとしても刑事罰に問われることはありません。
お金の使い込みは「横領罪」や「窃盗罪」に問われる場合がありますが、親子など家族間での使い込みは罪に問われないとされているからです。
ただし、罪に問われないのは刑事罰についてであり、親が勝手に子供の貯金を使い込んだ場合は子供から損害賠償請求をされる恐れがあるので注意しなければなりません。
次の章では、子供名義の貯金を親が使ったときの税金や刑罰の取り扱いについて見ていきましょう。
2章 子供名義の貯金を親が使ったときの税金・刑罰の取扱い
先ほどの章で解説したように、子供名義の貯金を親が使ったとしても刑事罰に問われることはありません。
一方で、使い込みの内容や子供の年齢によっては、子供から損害賠償請求される可能性があるのでご注意ください。
子供名義の貯金を親が使ったときの税金や刑罰の取り扱いは、主に下記の通りです。
- 刑事罰の対象にはならない
- 損害賠償請求の対象になる可能性はある
- 名義預金として相続税がかかる場合がある
- 子供から親へ贈与税がかかる場合がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1 刑事罰の対象にはならない
親が勝手に子供名義の貯金を使い込んだとしても、刑事罰の対象になることはありません。
家族間での資産の使い込みは、刑事罰の対象にならないと決められているからです。
また、子供が未成年の場合は親が代理人として子供名義の貯金を管理できるとされているので、子供名義の貯金を親が引き出し使用しても罪に問われません。
2-2 損害賠償請求の対象になる可能性はある
親が子供名義の貯金を使い込んだとしても刑事罰の対象にはなりませんが、子供から損害賠償請求される恐れがあります。
民事上の損害賠償請求は親子間でも行えるとされているからです。
子供が損害賠償請求をし、裁判所に認められた場合は親が使い込んだ貯金を返還しなければならない可能性があります。
2-3 名義預金として相続税がかかる場合がある
名義は子供であるが、実質的には親が管理し使用している貯金は「名義預金」と判断される恐れがあります。
名義預金とは、口座名義人と実際に口座を管理している人物が異なる貯金口座です。
名義預金は口座名義人の資産ではなく、実際に口座を管理している人物の資産として扱われるのでご注意ください。
したがって、子供名義の貯金が名義預金だと判断された場合、口座を管理していた親が亡くなると相続税がかかります。
名義預金を相続税の計算対象から除いてしまうと、申告漏れとなってしまい、ペナルティを課せられる恐れがあるので注意しましょう。
2-4 子供から親へ贈与税がかかる場合がある
子供名義の貯金を親が使用していると、子供から親への贈与として判断される場合があります。
子供から親への贈与と判断された場合、贈与税がかかる可能性もあるのでご注意ください。
とはいえ、子供が実家を出て遠方に住んでいて「困ったときに使って」と親に貯金を渡しているケースもあるでしょう。
その場合、贈与税がかからないようにお金が必要になったときに都度贈与をする、お金を使った場合は明細を必ず残しておくなどの対策が必要です。
親子は互いに扶養義務があるので、生活や教育に必要な資金を都度贈与するのであれば、贈与税はかかりません。
3章 子供名義の貯金が親の名義預金と判断される条件
「自分が亡くなったとき、子供に少しでも遺してあげたい」と考え、子供名義で貯金をしている親御さんもいるのではないでしょうか。
また、相続税対策として自分名義ではなく、子供や孫名義で貯金をしようと考えている人もいるかもしれません。
ただし、親が子供名義で貯金をしていると「名義預金」と判断され、結果として相続税対策にならない恐れがあるのでご注意ください。
子供名義の貯金が親の名義預金であると判断されるケースは、主に下記の通りです。
- 親が通帳や印鑑の管理をしている
- 子供名義の預貯金の存在・入金されていることを子供が把握していない
- 届出印を子供と親で共有している
- 口座作成時の住所が親の住所となっている
- 年間110万円以上の入金があったのに子供が贈与税の申告をしていない
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 親が通帳や印鑑の管理をしている
口座名義人である子供ではなく、親が通帳や印鑑の管理をしている場合は、名義預金であると判断される可能性があります。
名義預金と判断されないようにするには、通帳やキャッシュカード、印鑑などを子供に渡しておきましょう。
3-2 子供名義の預貯金の存在・入金されていることを子供が把握していない
親が子供名義の口座を作成し、勝手に入金していた場合は名義預金と判断されてしまいます。
この場合、受贈者である子供の合意を得ていないため、そもそも贈与が成立していないと判断されるのでご注意ください。
3-3 届出印を子供と親で共有している
名義預金と判断されないようにするには、銀行の届出印も親子で共有しないようにしましょう。
親が子供名義の口座を作るときに、自分が使用している届出印を流用してしまう場合があるのですが、やめておきましょう。
未成年の子供の口座を作成するときにも、子供が成人した後に銀行口座を引き継いでもらうことを考え、親子で銀行の届出印を分けておくのがおすすめです。
3-4 口座作成時の住所が親の住所となっている
子供名義の口座を作成するときに、親子が別居しているにもかかわらず、子供の住所ではなく親の住所を届出するのもやめておきましょう。
子供の住所ではなく親の住所を記載していると、実質的に口座の管理をしているのは親であると判断される恐れがあるからです。
3-5 年間110万円以上の入金があったのに子供が贈与税の申告をしていない
子供名義の口座に親が年間110万円以上を入金したにもかかわらず、子供が贈与税の申告をしていない場合も、名義預金に該当する恐れがあります。
親子であっても、年間110万円を超える贈与を受けた場合は贈与税の申告・納税が必要だからです。
子供が贈与税を申告しなかった場合、親が亡くなったときに名義預金であると税務署から指摘され、子供名義の口座であっても相続税の計算対象に含めなければならない可能性があります。
4章 未成年の子供の貯金を親が管理しても名義預金と判断されることはほぼない
先ほどの章までで解説してきた「名義預金」が問題になってくるのは、成人した子供の貯金口座を親が管理しているケースです。
未成年者である子供の貯金口座を親が管理することは問題にはならず、名義預金とも判断されないことが多いのでご安心ください。
お祝いやお年玉を子供名義で貯金し親が管理しておく、児童手当を子供名義で貯め将来の学費とする行為は、社会通念上よくある行為だと考えられているからです。
しかし、子供が成人してからもお祝い金を親が管理し続けるケースは、名義預金に該当する恐れがあるので、子供が成人すると共に口座の管理を任せるのが良いでしょう。
5章 子供名義の貯金を親が使わなくてすむようにする方法
本記事で解説してきたように、子供名義の貯金を親が勝手に使用する行為は名義預金に該当する恐れがありますし、子供から損害賠償請求されトラブルに発展する可能性があります。
そのため、そもそも子供名義の貯金を親が使わなくて良い環境にしておくのがおすすめです。
子供名義の貯金を親が使ってしまう場合、主に下記の理由が考えられるはずです。
- 親が子供名義の口座に学費などを貯金し、必要になったときに引き出している
- 親が相続税対策として子供名義の貯金に入金し、老後資金が不足したタイミングで引き出している
それぞれの対策方法について詳しく見ていきましょう。
5-1 親子間の生活費・教育費の贈与には税金がかからないと理解しておく
そもそも、親子は互いに扶養義務があるので、生活費や教育費を贈与する場合、金額にかかわらず贈与税はかかりません。
そのため、子供の学費を貯金する場合、わざわざ子供名義で貯金せず親名義で貯金し、必要になったときに親が支払う形で問題ありません。
むしろ、子供名義で学費を貯金してしまうと、子供の年齢が上がると貯金を引き出す、学費を振り込むときに子供が銀行の窓口で手続きしなければならなくなります。
親だけでは手続きできず、振り込み期日までに子供が平日の日中に銀行に足を運ばなければならず、かえって手間が増える可能性も高いでしょう。
5-2 正しい方法で相続対策・認知症対策をしておく
そもそも名義預金と判断されると相続税対策の効果がなくなることを理解しておきましょう。
自分が亡くなったときの相続税の負担を軽減するために、子供名義で貯金していても名義預金と判断されると実際に口座を管理していた親が亡くなったときに相続税の課税対象となるからです。
名義預金と判断される間違った方法で子供に資産を遺すのではなく、正しい方法で相続対策や認知症対策をしておくことが大切です。
例えば、相続対策や認知症対策には、下記の方法があります。
上記であれば、相続発生時にトラブルが起きるリスクを減らせます。
生前贈与では贈与税がかかると懸念される人もいますが、親子間の贈与であれば控除や特例を利用し、贈与税を大幅に節税できる場合もあります。
相続対策や認知症対策は複数あり、自分に合う方法を選び正しく手続きするには専門的な知識が必要です。
自分たちで行うのは現実的ではないので、相続に詳しい司法書士や弁護士、税理士に相談するのが良いでしょう。
まとめ
子供名義の貯金口座を親が使ったとしても、刑事罰に問われることはありません。
ただし、使い込みの理由によっては子供から損害賠償請求をおこされ、使い込んだ資金を返還しなければならない可能性があります。
また、親が子供名義の口座を作成、入金し、親が管理する行為は名義預金に該当する恐れがあるのでご注意ください。
名義預金は口座名義人の資産ではなく、実際に口座を管理している人の資産として扱われます。
したがって、親が亡くなったときに名義預金にも相続税がかかる恐れがある点に注意しておきましょう。
子供のために資産を遺したいのであれば、遺言書の作成や生前贈与、家族信託等適切な方法で行うのがおすすめです。
自分に合う相続対策がわからない場合やどのように手続きを進めればよいかわからない場合は、相続に詳しい司法書士や弁護士、税理士に相談するのが良いでしょう。
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