代償分割とは、遺産を多く相続する代わりに他の相続人に代償金を渡す遺産分割方法です。
代償分割を行えば、不動産など分割しにくい財産を売却できずに公平に相続できます。
しかし、代償分割は財産を多く受け継ぐ相続人が他の相続人に対して代償金を支払わなければなりません。
財産を多く受け継ぐ相続人が代償金となる現金を用意できない場合は、分割払いや現金以外で代償金を用意することも検討しましょう。
代償金の分割払いや現金以外で支払う際には、後々のトラブルを避けるため遺産分割協議書に明記しておくなどの対策も必要です。
本記事では、代償分割時に現金が用意できないときの対処法や注意点をわかりやすく解説します。
相続財産が土地しかなく代償分割を検討している人は、下記の記事もご参考にしてください。
1章 代償分割とは
代償分割とは遺産分割方法のひとつであり、遺産を相続する代わりに他の相続人に代償金を渡す方法です。
例えば、土地などの不動産を相続した相続人が他の相続人に対し、代償金を支払うケースなどが該当します。
代償分割には相続財産が不動産など分割しにくいものしかないケースでも、相続人間で公平な遺産分割を行えるメリットがあります。
一方で、代償分割を行う際には財産を多く受け継ぐ相続人が他の相続人に支払う代償金を用意しなければなりません。
代償金は現金一括払いが一般的ですが、代償金の金額によっては用意するのが難しいケースもあるでしょう。
次の章では、代償分割で現金を用意できないときの対処法を解説します。
2章 代償分割で現金がないときの対処法6つ
代償分割で土地などを相続したいものの他の相続人に払う現金がない場合は、下記の6つの方法で対処しましょう。
- 代償金の分割払いを提案する
- 代償金として現金ではなく他の資産を提供する
- 不動産ローンを利用する
- 現物分割もしくは換価分割を検討する
- 土地を分筆する
- 生命保険で代償金を用意しておく
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 代償金の分割払いを提案する
相続人全員が同意すれば、代償金の支払いを分割にできます。
代償分割で代償金を分割払いにするときは、遺産分割協議書の中で支払い方法や期限について明記しておきましょう。
2-2 代償金として現金ではなく他の資産を提供する
代償金は現金で支払われるケースが多いですが、相続人全員が同意すれば他の不動産や有価証券等で支払うことも認められています。
ただし、代償分割で代償金を現金以外の資産で払うときは、下記の点に注意しなければなりません。
- 不動産や非上場株式を支払いに用いる場合、評価方法で揉める可能性がある
- 現金以外で代償金を支払うと支払った側に譲渡所得税が課税される場合がある
代償金として支払う不動産や非上場株式の評価方法で揉めないようにするには、相続に詳しい司法書士や弁護士など専門家を頼るのも良いでしょう。
代償金を支払った側に譲渡所得税がかかるケースについては、本記事の後半で解説します。
2-3 不動産ローンを利用する
代償金として支払う現金を用意するために不動産担保ローンを利用するのも選択肢のひとつです。
不動産担保ローンとは、名前の通り不動産を担保にして行う借り入れです。
無担保のローンと比較して、不動産担保ローンは低金利、審査に通りやすいなどのメリットがあります。
2-4 現物分割もしくは換価分割を検討する
代償金として支払う現金を用意できないのであれば、他の遺産分割方法も検討しなければなりません。
遺産分割は代償分割だけでなく、下記のように複数の方法があります。
遺産分割方法 | 概要 |
現物分割 |
|
換価分割 |
|
なお、上記以外にも土地の分筆を行って遺産分割する方法や共有状態で不動産を相続する方法もあります。
ただし、共有分割は将来的なリスクがあるのでおすすめできません。
どの遺産分割方法にもそれぞれメリットとデメリットがあるので、相続人や相続財産の状況に応じて選択する必要があります。
どの遺産分割方法が適しているか判断が難しいときには、相続に詳しい司法書士や弁護士に一度相談してみるのも良いでしょう。
2-5 土地を分筆する
ひとつの土地を複数の部分に分けて登記をする分筆を行えば、代償分割を行わなくても公平な遺産分割を行えます。
また、分筆を行うことで土地の評価額が下がった場合、相続税や毎年発生する固定資産税が安くなる可能性もある点もメリットです。
一方で、分筆はすべての土地で行えるわけではないですし、土地家屋調査士に測量や境界確定、登記申請を依頼する必要があるので5~数百万円程度の費用がかかる恐れがあります。
2-6 生命保険で代償金を用意しておく
相続発生後に慌てて相続人が代償金を用意するのではなく、不動産を相続させたい相続人に対し生命保険で代償金を用意しておくのもおすすめです。
生命保険金は受取人固有の財産として扱われるので、遺産分割の対象になりません。
例えば、不動産を長男に遺したいと考えるのであれば、生前のうちに長男を受取人とした生命保険に加入することもご検討ください。
生命保険金は長男の財産として扱われますし、相続手続き完了前に保険金を受け取れるので代償金や相続税の納税費用に充てられます。
3章 現金がないのに代償分割をするときの注意点
本記事の2章で紹介したように、代償分割を行いたいものの財産を多く取得する相続人が現金を用意できない場合、分割払いや現金以外の資産で払うなどいくつか選択肢があります。
しかし、代償金を現金一括払い以外で行うケースはデメリットやリスクが多いのも事実です。
少しでもトラブルや避けるために、下記の4点に注意しておきましょう。
- 現金以外を代償に払うと譲渡所得税がかかる恐れがある
- 代償分割を行う際には遺産分割協議書に明記しておく
- 共有分割にはリスクがある
- 分割払いは滞納されるリスクがある
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 現金以外を代償に払うと譲渡所得税がかかる恐れがある
代償金を現金以外の不動産や株式等で支払った場合、支払った側に譲渡所得税がかかるときがあります。
現金以外の資産で代償金を支払うと、譲渡が行われたと税務署に判断されます。
具体例と共に詳しく見ていきましょう。
- 長男は次男に対して代償金1,000万円を支払うことになった
- 代償金として長男が元々所有していた不動産を次男に支払う
- 長男は不動産を500万円で購入した
上記のケースでは、長男が代償金支払い時に不動産の譲渡を行ったと判断され、1,000万円-500万円=500万円の譲渡所得が発生したとして扱われます。
譲渡所得500万円に関して、譲渡所得税および住民税がかかる可能性があるのでご注意ください。
また、不動産を代償金として受け取った相続人は登録免許税や不動産取得を支払う必要があります。
3-2 代償分割を行う際には遺産分割協議書に明記しておく
代償分割をするときには、遺産分割協議書に代償分割を行うことを明記しておかなければなりません。
遺産分割協議書に代償分割について記載がないと、代償金の支払いでなく贈与として税務署に判断される恐れがあるからです。
代償金の支払いではなく贈与と判断されると、代償金を受け取った相続人は贈与税の申告および納税をしなければなりません。
代償分割を行う際の遺産分割協議書を作成するときは、トラブルの発生や記載漏れを防ぐために相続に詳しい司法書士や弁護士に依頼するのが確実です。
グリーン司法書士法人であれば、遺産分割協議書の作成から相続した不動産の名義変更手続きまで一括で対応できるので、お気軽にお問い合わせください。
3-3 共有分割にはリスクがある
代償分割時に払う現金を用意できないからといって、共有状態で遺産分割をするのは避けましょう。
故人が所有していた不動産を相続人が共有持分で受け継ぐと、下記のリスクが発生します。
- 将来所有者がどんどん増えてしまう
- 共有持分のみ売却することは難しい
- 不動産すべてを売却するには所有者全員の同意が必要
- 不動産の活用も所有者の過半数の同意が必要
上記のように、共有状態で不動産を相続すると活用や売却が難しくなってしまいます。
また、共有者が亡くなり相続が発生すると相続人の数がネズミ算式に増えてしまう恐れもあるでしょう。
代償分割が難しいからといって、安易に共有状態で相続するのはおすすめできません。
現金を用意できず代償分割を行えない、どんな方法で遺産分割すれば良いかわからないとお悩みの人は、グリーン司法書士法人までお問い合わせください。
3-4 分割払いは滞納されるリスクがある
代償金の分割払いは滞納されてしまう可能性もゼロではありません。
そのため、分割払いで代償金を受け取ることに合意したのであれば、滞納リスクに備えておきましょう。
具体的には、下記の対応をしておくことをおすすめします。
- 共有不動産を代償分割する場合、代償金を受け取ってから共有持分の移転登記を行う
- 遺産分割協議書を公正証書にしておく
代償金の支払い方法や期限を明記した遺産分割協議書を公正証書にしておけば、万が一代償金を滞納されたとき強制執行を行い財産を強制的に回収できるからです。
まとめ
代償分割を行い不動産を相続する際には、他の相続人に対して代償金を払わなければなりません。
代償金として支払う現金を用意できないのであれば、分割払いや現金以外の財産で代償金を支払う選択肢もあります。
また、代償分割以外にも現物分割や換価分割など遺産分割の方法にはいくつかあります。
相続人や相続財産の状況によっては、そもそも代償分割ではなく他の遺産分割方法が適しているケースもあるでしょう。
遺産分割方法に悩んだときや自分たちに合った方法で遺産分割をしたいと考える人は、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談するのがおすすめです。
グリーン司法書士法人では、遺産分割協議や相続手続きに関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
代償金が支払えないときの対処法は?
代償金の現金が用意できないときの対処法は、下記の通りです。
・代償金の分割払いを提案する
・代償金として現金ではなく他の資産を提供する
・不動産ローンを利用する
・現物分割もしくは換価分割を検討する
・土地を分筆する
・生命保険で代償金を用意しておく
▶代償分割で代償金が払えないときの対処法について詳しくはコチラ代償分割のデメリットとは?
代償分割のデメリットは、主に下記の3つです。
・代償金を用意しなければならない
・不動産の評価額でトラブルになる可能性がある
・相続税の納税資金を用意する必要がある
▶代償分割のデメリットについて詳しくはコチラ