
- 親の終活を子供が手助けするメリット
- 親の終活において子供が手助けできること
- 親が元気なうちにしておくべき相続対策・認知症対策
親の終活は、親本人だけでなく、子供にとっても大切なことです。
親が元気なうちから終活に一緒に取り組むことで、遺品整理や相続の負担を減らせるだけでなく、親の意思を尊重した形で老後を支えることができるでしょう。
子供が親の終活を手伝うことで、不用品の処分や家具の解体など体力が必要な部分でも、親の負担を軽減できるはずです。
本記事では、終活を手伝うメリットや具体的なサポート方法について解説します。
目次
1章 親の終活を子供が手助けするメリット
親の終活を子供が手助けすることで、以下のようなメリットがあり、親が1人で終活するよりも負担を軽減できます。
- 遺品整理の負担を減らせる
- 親の資産の内容を把握しやすくなる
- 親の希望や意志を子供が把握しやすくなる
- 不用品の処分など体力が必要な作業を手伝える
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1 遺品整理の負担を減らせる
親の終活を子供がサポートするメリットのひとつは、遺品整理の負担を軽減できる点です。
親が元気なうちに「残すもの」と「処分するもの」を整理しておけば、親が亡くなった後に大量の荷物を前に途方に暮れることを避けられます。
家一軒分の荷物を一気に片付けるのは想像以上に時間と体力を要する作業です。
また、親が亡くなった後に子供が遺品整理をすると、「どれを捨てて良いのかわからない」と心理的な負担も生じる恐れがあります。
親自身が判断して整理しておくことで、「これは捨ててはいけないものだった」「もっと探せばよかった」といった後悔を子供が抱かずに済みます。
また、親子で一緒に片付ける過程で思い出を振り返る機会も生まれ、心の準備を整えるきっかけにもなるでしょう。
1-2 親の資産の内容を把握しやすくなる
親の終活を子供が手助けすることで、資産内容を自然と把握できます。
終活の際に、預貯金や不動産、保険契約、借入金などといった資産と負債を整理して一覧化しておけば、将来の相続手続きがスムーズになります。
加えて、子供がその作業を手伝うことにより、いざ親が亡くなったときに「どこに何があるのか分からない」と慌てるリスクを軽減可能です。
特に、近年はネット銀行やネット証券などオンライン取引が増え、通帳や証券が紙で残らないケースも多く、相続財産調査が難航することもあります。
親と一緒に資産を確認しておけば、財産の所在や契約状況を把握でき、遺産の名義変更手続きも円滑に進められるでしょう。
1-3 親の希望や意志を子供が把握しやすくなる
終活は単にモノやお金を整理するだけではなく、「親がどのように生き、どのように最期を迎えたいか」を考える機会でもあります。
例えば、終活をすることで、親自身が以下のような希望を整理しやすくなるでしょう。
- 延命治療を望むのか
- 自宅での療養を希望するのか
- 葬儀は家族葬にするのか
- 埋葬はどうするのか
これらのことを、親が何も伝えないままでいると、子供は「これで良かったのだろうか」と迷いや後悔を抱えることになりかねません。
また、子供が複数いる場合では、終末期医療や葬儀の方針について兄弟姉妹で揉めてしまう可能性もあるでしょう。
子供が終活を一緒に進めることで、親の意思を確認・共有でき、将来その希望を尊重した選択をしやすくなります。
加えて、エンディングノートや遺言書の作成をしておけば、書面にて親の希望を残せるので、遺族の負担を減らせます。
1-4 不用品の処分など体力が必要な作業を手伝える
子供が親の終活を手伝えば、不用品の処分や家具の解体など体力が必要な作業を子供が親の代わりに行えます。
終活の実作業で大変になるのは、不用品の処分や家具の片付けといった体力を使う作業です。
高齢の親が1人で重い荷物を運ぶのは難しいですし、無理にやった結果、けがの原因になることも少なくありません。
子供が一緒に手伝えば、片付けの負担を大幅に減らせるだけでなく、安全面でも安心です。
また、行政の粗大ごみ収集やリサイクル業者の利用方法を調べたり、フリマアプリで出品をサポートしたりといったことも、子供世代であればスムーズに行えるでしょう。
2章 親の終活において子供が手助けできる7つのこと
終活といっても様々な作業や準備がありますが、親の終活において子供が手助けできることは、主に以下の通りです。
- エンディングノートの作成を手伝う
- 財産目録を一緒に作成する
- 不用品の処分や断捨離を手伝う
- デジタル資産の整理を手伝う
- 介護・医療やお墓・葬儀の希望を聞いておく
- 親族や親の友人・知人の情報を共有しておく
- 相続対策・認知症対策をしてもらう
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 エンディングノートの作成を手伝う
親がエンディングノートを作成するにあたり、子供が記載内容の整理を手伝っても良いでしょう。
エンディングノートとは、自分の最期や介護、入院に関する希望や財産の概要、連絡先などといった何かあったときに必要な情報を自由に書き残すためのノートです。
遺言書のような法的拘束力はありませんが、自由に情報をまとめられるので、必要な情報を家族に残す手段となります。
エンディングノートは形式が決まっておらず、自由に書き込むことができるため、親が1人で作成しようとすると、何を書けば良いか迷ってしまうこともあります。
そんなときに、子供が質問役となり「治療や介護の希望はある?」「葬儀はどんな形にしたい?」と聞き出してあげることで、スムーズにエンディングノートを作成できるはずです。
エンディングノートの作成を通じて、親のこれまでの人生を振り返ってみたり、残りの人生でやってみたいことを整理したりするのも良いでしょう。
2-2 財産目録を一緒に作成する
預貯金や不動産、生命保険、有価証券などの財産を一覧化した「財産目録」を親と一緒に作成することもおすすめです。
財産目録があれば、親が亡くなった後の相続手続きをスムーズに進められるようになります。
近年では、ネット銀行やネット証券のように紙での書類が残らない財産も増えているので、家族に財産の全容を伝えておくことが非常に大切です。
財産の種類が多い場合、手書きで財産目録を作成するのは手間がかかります。
そのため、子供がエクセルなどでリスト化を手伝い、必要に応じて最新情報を反映できるようにしておくと良いでしょう。
2-3 不用品の処分や断捨離を手伝う
親の終活の手伝いで多いのが、家にある大量の不用品の整理です。
思い出の品を前にすると、親の手が止まってしまうこともありますが、子供が一緒に関わることで「本当に残したいもの」を見極めやすくなります。
また、大きな家具の解体や粗大ごみの手配などを子供が担うことで、親の負担を大幅に減らせるはずです。
2-4 デジタル資産の整理を手伝う
財産目録を作成するだけでなく、デジタル資産の整理を子供が手伝うのも良いでしょう。
近年では、ネットバンキングや電子マネー、SNSアカウントなど「デジタル資産」も増えてきています。
そして、これらのデジタル資産は、本人以外は全容がわかりにくく、IDやパスワードも本人のみが管理していることがほとんどです。
具体的には、親のプライバシーを考慮しつつ、以下のようなことを確認しておくと良いでしょう。
- どのサービスを使っているのか
- IIDやパスワードはどのように保管しているのか
場合によっては、各種サービスのログイン情報を紙のリストやパスワード管理アプリを活用し、まとめておくと安心です。
2-5 介護・医療やお墓・葬儀の希望を聞いておく
親が元気なうちに、介護や医療に関する希望を具体的に聞いておくことも大切です。
以下のようなことは、本人の希望を第一にしたいものですし、親の希望がわからないまま子供が決めるのは心理的な負担が大きくなるからです。
- 延命治療を希望するかどうか
- 自宅療養と施設のどちらを希望するのか
- 誰に介護をお願いしたいか
上記のような希望を確認しておき、早めに家族で話し合うことで何かあったときに慌てずに済みます。
また、葬儀やお墓に関する希望を共有しておくと、亡くなった後に子供が判断に迷うことや兄弟姉妹でのトラブルも減らせるでしょう。
2-6 親族や親の友人・知人の情報を共有しておく
親が元気なうちに、親族や親の友人、知人の情報や連絡先も共有しておくと安心です。
親が亡くなった後、葬儀や相続の連絡を誰にすべきか分からず困るケースは少なくないからです。
親と一緒に連絡先リストを作成しておくと、いざというときに速やかに対応できます。
また、親の友人や知人情報を教えてもらう際には、どの方に葬儀についての連絡をしてほしいのかも確認しておくと良いでしょう。
2-7 相続対策・認知症対策をしてもらう
最後に、相続や認知症に備えた法的な対策を検討することも重要です。
例えば、元気なうちに遺言書を作成しておけば、親が希望した人物に財産を受け継いでもらうことができます。
他にも、家族信託や任意後見制度を利用すれば、親が認知症になり判断能力を失った後でも、財産の管理や運用、処分を子供などが行えるようになります。
3章 親が元気なうちにしておきたい相続対策・認知症対策
相続対策や認知症対策は親に何かあってからでは対策できない恐れがあるため、元気なうちに行っておくことが何よりも大切です。
相続対策や認知症対策にはいくつかありますが、代表的なものは以下の通りです。
- 家族信託の利用
- 遺言書の作成
- 任意後見制度の利用
- 生前贈与
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 家族信託の利用

家族信託とは、自分が信頼する家族に財産の管理や運用、処分を任せる制度です。 家族信託を利用すれば、親が認知症になった後も、子供などが代わりに財産を管理できます。
家族信託は他の認知症対策と比較して、柔軟な財産管理を行えるのが特徴であり、裁判所を通さずに家族同士で契約を完結させられるのもメリットです。
ただし、自分たちに合った家族信託の契約書を作成するには専門的な知識が必要となります。
自分たちで契約書を作成し手続きを進めることは現実的ではないので、家族信託に精通した司法書士や弁護士に依頼するのが良いでしょう。
3-2 遺言書の作成
遺言書を作成しておけば、親が希望する人物に希望の財産を受け継がせることが可能です。
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を相続するかを話し合わなければなりません。
話し合いに応じない相続人や一方的な主張ばかりする相続人がいた場合、なかなか遺産分割協議がまとまらないこともあります。
親が元気なうちに遺言書を作成していれば、このようなトラブルが起きることも防げますし、相続手続きもスムーズに進められるでしょう。
遺言書にはいくつか種類がありますが、信頼性が高く、原本を公証役場で保管してくれる公正証書遺言を作成することをおすすめします。
3-3 任意後見制度の利用
任意後見制度とは、将来、認知症や病気で判断能力が不十分になったときに備え、あらかじめ信頼できる人に財産管理や生活のサポートを任せておく制度です。
法定後見制度と異なり、親が自分で後見内容や後見人となってくれる人物を指定できる点がメリットといえるでしょう。
ただし、任意後見制度はあくまで本人に判断能力が残っている場合に利用できる制度です。
すでに認知症の症状が進行しており、判断能力が失われている場合には、法定後見制度しか利用できないのでご注意ください。
3-4 生前贈与
親が元気なうちに子供や孫に財産を譲りたいのであれば、生前贈与が有効です。
生前贈与をすれば、その時点で資産の所有権が受贈者に移るので、受贈者が自由に財産を管理、処分できます。
例えば、親が子供に実家の不動産を贈与し、必要なタイミングで売却してもらい、介護資金に充ててもらうこともできるでしょう。
ただし、年間110万円を超える贈与を受けると、贈与税がかかる点に注意しなければなりません。
親や祖父母といった直系尊属から子供や孫といった直系卑属への贈与では、贈与税の控除や特例を適用し、贈与税を節税できる場合もあります。
まとまった金額を贈与する場合には、控除や特例を適用できないか、贈与税に詳しい税理士に一度相談してみるのが良いでしょう。
4章 親に終活をしようと伝える方法
「親が元気なうちに終活をしてもらいたい」と子供が考えていたとしても、親がなかなか終活をしたがらないことも珍しくありません。
乗り気でない親に終活を促すには、以下のような方法で終活のメリットや終活は珍しいものではないことを伝えてみると良いでしょう。
- テレビなどの終活特集を観ながら話を切り出す
- 身の回りの人の話をもとに切り出す
- 自分も終活を始めてみる
- 終活をするメリットを伝える
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 テレビなどの終活特集を観ながら話を切り出す
終活の話題は、親にとって「自分の死後を想定する」内容でもあり、話題にすら出したくないと考えている方もいます。
まずは、テレビや新聞、雑誌で「終活特集」が取り上げられているタイミングで自然に終活の話を切り出してみるのが良いでしょう。
「こういう特集を見たけど、うちでもやってみたらどうかな?」と軽く提案することで、会話がスムーズに始まることもあります。
特に、ワイドショーや生活情報番組で紹介されると、親世代にも身近に感じやすく、「他人ごとではない」と意識してもらいやすくなるはずです。
4-2 身の回りの人の話をもとに切り出す
「親しい親族や友人が終活を始めた」「亡くなった後の整理で家族が大変だった」といった身近なエピソードを話すことで、親が終活について意識しやすくなります。
「○○さんの家では荷物が多くて片付けが大変だったみたいだよ」と具体的な話を伝えると、親も現実感を持ちやすくなり、終活について前向きになるでしょう。
4-3 自分も終活を始めてみる
「終活は高齢者だけのもの」というイメージを持つ方も多くいますが、実際には年齢を問わず誰にでも関係があるものです。
例えば、万が一の事故や病気に備えてエンディングノートを書いたり、生命保険や医療保険の見直しをしたりするのは、働き盛りの世代でも必要なことです。
子供である自分自身が終活に取り組み、その姿を親に見せることで「自分もやってみようかな」「少しでも子供の負担を減らしてあげよう」といった気持ちを引き出すことができるでしょう。
4-4 終活をするメリットを伝える
親に終活を勧める際には、ネガティブな面よりもメリットを強調することが大切です。
具体的には、以下のような日常に直結するメリットを多く伝えると、親も終活に前向きになるはずです。
- 自宅が片付いてすっきりする
- 残りの人生でやりたいことを整理できる
- これまでの人生で大切だったものを子供や孫とも共有できる
また、「子供に迷惑をかけないように」という思い自体は多くの親が持っています。
その気持ちを尊重しつつ「終活をしてくれると、私たちも安心できるよ」と伝えれば、親にとってもモチベーションになるでしょう。
さらに、終活は単なる片付けや相続準備にとどまらず、親がこれまでの人生を振り返り、これからの時間をより豊かに過ごすきっかけにもなります。
そうした前向きな価値を伝えることで、親子にとって有意義な対話へとつなげられます。
5章 親の終活を子供が手伝うときの注意点
親の終活を子供が手伝うときには、親に強制しすぎず、以下のようなことに注意することが大切です。
- 親に無理強いしない
- 他の兄弟姉妹とも情報を共有しておく
- 親が元気なうちから行う
それぞれ詳しく解説していきます。
5-1 親に無理強いしない
親の終活をサポートする際に最も大切なことは、親の意思を尊重する姿勢です。
子供の立場から見ると「早めに整理してほしい」「しっかりしているうちに書類を作っておいてほしい」と思うことも多々あるでしょう。
しかし、親が乗り気でない時に無理に進めると反発を招き、親子関係に溝をつくる恐れがあります。
特に、遺言書や財産管理のようにデリケートなテーマでは「財産を狙っているのでは」と疑念を抱かせてしまうこともあるため注意しなければなりません。
あくまで「親が安心して老後を過ごせるように」「家族みんなが困らないように」という前向きな目的を共有し、親のペースに合わせて終活を進めていきましょう。
5-2 他の兄弟姉妹とも情報を共有しておく
親の終活を手伝う際、子供のうち1人が中心となるケースも多々あります。
しかし、そのようなケースでは、終活を手伝う子供とそれ以外の子供で情報共有をしておくことが大切です。
終活では、財産目録の作成や遺言書の作成などを行うこともあり、特定の子供のみが情報を把握していると、財産隠しや遺産の一人占めを疑われる恐れもあるからです。
後になって「遺産を隠しているのではないか」「自分に有利なように遺言書を書かせたのではないか」といった疑念を持たれないようにしておきましょう。
具体的には、エンディングノートや財産目録の作成、遺言の準備などを進める際には、できる限り兄弟姉妹に経過を共有しておくことをおすすめします。
「今日は親と一緒に通帳を整理したよ」「遺言を作ることを考えているみたい」といった報告をしておけば、後々のトラブルを未然に防ぎやすくなるでしょう。
5-3 親が元気なうちから行う
終活は、親が健康で判断能力がしっかりしているうちに取り組むことが非常に重要です。
認知症や病気などで判断能力が低下してからでは、遺言書の作成や任意後見制度の契約が認められない場合もあるからです。
また、不用品の整理などについても、体力や気力が低下してしまうと、取り組もうと思っても難しくなってしまうことがあります。
「まだ早い」「死ぬときのことを考えているみたい」と思ってしまうかもしれませんが、親が元気なうちから無理のない範囲で少しずつ始めておくと良いでしょう。
まとめ
親の終活を子供が手伝えば、親が負担に感じる作業を子供が行えますし、親子で相談しながら相続対策や認知症対策を進められます。
しかし、人によっては終活と聞くと「自分の死の準備」と考えてしまい、拒否感を示す方もいます。
親が終活に消極的な場合には、無理に進めるのではなく、テレビや身近な話題をきっかけに自然な流れで進めていくことをおすすめします。
親に無理強いせず、他の兄弟姉妹とも情報共有しながら進めることで、後々のトラブルも起きにくくなるはずです。
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