家族や親族が亡くなり相続が発生したときには、故人が契約していた公共料金の名義変更手続きや解約手続きも必要です。
具体的には、各契約会社に連絡をして必要な手続きを行っていきます。
そのため、まずは故人が契約していた会社を料金明細書などで確認をしていきましょう。
特に公共料金を銀行引き落としにしていて契約者の口座が凍結された場合、引き落とし不能となって不払い状態になるので注意が必要です。
ところが、公共料金の解約や名義変更のやり方がわからない方もたくさんおられます。
今回はご家族が亡くなられた際の公共料金の名義変更や解約の方法、必要書類や連絡先などが全部わかるように、相続の専門家である司法書士が簡単に解説します。
なお、家族や親族が亡くなると準確定申告以外にも様々な手続きが必要です。
家族や親族が亡くなったときの手続きの流れは、下記の記事でも解説しているのでご参考にしてください。
目次
1章 相続発生後に行う公共料金の名義変更
公共料金の契約者であった方がお亡くなりになったとき、何もしなければ誰も使っていなくても料金が発生し続けます。誰も使わないなら「解約」しましょう。
また同居していた方が引き続き電気ガス水道を使いたい場合、契約の「名義変更」が必要です。
名義変更とは、公共料金の契約者名義を変更することであり、例えば夫が契約者だった場合に妻名義に変更したりします。
- 誰も使わない:解約
- 誰かが使う:名義変更
電気やガス、水道の名義変更をする際には、それぞれ契約している会社や水道局に連絡します。
なお、故人が公共料金の引き落としを口座振替にしていた場合、相続発生後は銀行口座の凍結により公共料金の支払いができなくなってしまう恐れがあります。
そのため、相続発生後はできるだけ早く公共料金の解約や名義変更を行うのが良いでしょう。
電気やガス、水道の名義変更手続きを解説していきます。
1-1 電気の解約・名義変更方法
電気の解約や名義変更をする場合には、東京電力や関西電力などの各電力会社に連絡をします。
今は電気が自由化されていてソフトバンク電気やau電気などの新電力を契約している人もいるので、契約会社をよく確認しましょう。
亡くなった人が契約していた電力会社や契約番号を確認するには、電力会社から届く領収済通知書や料金計算書などを探すのが手っ取り早くおすすめです。
解約や名義変更の連絡をするには電話がスムーズですが、電力会社によってはネットでの手続きに対応しているところもあります。
領収済通知書などの書類がない場合、契約している電力会社に直接電話などで連絡を入れて、本人の氏名や生年月日と死亡したことを伝え、どうすれば良いか聞きましょう。
なお、亡くなった人が一人暮らしであり相続人が部屋の後片付けなどをする場合、先に電気契約を切ってしまうのはやめましょう。
電気が切れた部屋では掃除機を使用することができませんし、真っ暗な部屋で片付けをしなければならなくなってしまいます。
1-2 ガスの解約・名義変更方法
ガスの解約や名義変更をする場合には、東京ガスや大阪ガスなどの各ガス会社に連絡をします。
ガスについても自由化されているので、従来の地域のガス会社とはガス会社が異なる可能性があります。
ガス会社から毎月届く領収済通知書や料金計算書に連絡先や契約番号が書かれているので、そちらの電話番号に電話をするのがもっともスムーズです。
解約の場合にはネットで手続きできるガス会社もあります。
ガス料金の締め日を超えると利用がなくても基本料金が発生するので、ガスは早めに解約するのが良いでしょう。
1-3 水道の解約、名義変更について
水道は、電気やガスと違って自由化していないため各自治体が運営しており、連絡先も各自治体の運営している水道局です。
具体的な連絡先は2ヶ月に1回届く水道料金の領収済通知書や料金の計算書に書かれているので、確認しましょう。
水道局は電気やガスとは違い、行政機関が管理しているので、民間の会社が契約先である可能性はありません。
水道局における名義変更や解約の手続きは、基本的に電話で行います。
自治体、水道局によってはネットでの解約や名義変更を受付をしているケースもあります。
2章 公共料金以外に名義変更や解約しないといけないもの一覧
家族や親族が死亡すると、電気・ガス・水道といった公共料金以外にも名義変更や解約が必要となる契約、また名義変更が必要となる財産がたくさんあります。
以下で一覧にまとめますので、確認しながら進めていきましょう。
財産や契約 | 期限、時期 | 手続きを行うときの連絡先や場所 |
クレジットカード | 特になし | 契約しているクレジットカード会社 |
銀行預貯金 | 遺言書があれば死亡後速やかに、なければ遺産分割協議成立後 | 各銀行 |
株券や債券など | 遺言書あれば死亡後速やかに、遺言書がない場合、遺産分割協議成立後 | 証券会社、非上場株式の場合には株式発行会社 |
不動産 | 遺言書があれば死亡後速やかに、遺言書がない場合、遺産分割協議成立後 | 不動産を管轄する法務局 |
車 | 車を売却するか廃車にするなら速やかに、誰かが引き継いで使用する場合には遺産分割協議成立後 | 管轄の陸運支局 |
ゴルフ会員権 | 遺言書がない場合、遺産分割協議成立後 | ゴルフ場や管理会社 |
自動車保険 | 死亡後速やかに | 各自動車保険会社 |
マンション、駐車場等の賃貸借契約 | 死亡後速やかに | 個人や法人の賃貸人、管理会社、住宅供給公社など |
電話代 | 死亡後なるべく早めに(料金発生前が好ましい) | NTTなどの電話会社 |
インターネット通信 | 死亡後なるべく早めに(料金発生前が好ましい) | 契約している通信会社 |
引き落とし口座の変更 | 死亡後速やかに(凍結されると引き落とし不能となる) | 各契約先(たとえばクレジットカード会社や家賃管理会社など)新たに引き落としを設定する場合には、金融機関への設定も必要 |
火災保険 | 死亡後なるべく早めに(解約時まで料金がかかるため) | 損害保険会社 |
信用金庫や組合への出資金 | 死亡後なるべく早めに | 信用金庫や組合 |
特許権などの知的財産権 | 死亡後速やかに(早めに名義変更しないと混乱や権利侵害が起こる可能性がある) | 特許庁 |
JASRACに音楽著作権を登録している場合 | 死亡後速やかに(早めに名義変更しないと混乱が起こる可能性がある) | JASRAC音楽著作権協会 |
酒類販売などの各種許認可 | 死亡後速やかに死亡の事実を届け出る。許認可を引き継ぐ場合には、承継人の届も必要となる | 各監督官庁 |
3章 銀行口座が凍結されると公共料金の引き落としができなくなる
金融機関が口座名義人の死亡を確認すると、銀行口座を凍結してしまいます。
凍結された銀行口座では、入出金や口座振替が一切できなくなってしまい、口座凍結を解除するには相続人全員で預貯金の解約手続きなどをしなければなりません。
故人の銀行口座が凍結されてしまうと、公共料金の引き落としなどができなくなってしまいます。
故人と同居していた家族がいる場合、公共料金を滞納したことにより、インフラがストップしてしまう恐れもあるのでご注意ください。
そのため、公共料金の解約や名義変更は故人の銀行口座が凍結される前に行うのが良いでしょう。
口座凍結後に公共料金の解約や名義変更をする場合は、滞納分を支払ってから各種手続きを行わなければならない場合もあります。
3-1 名義変更時には「口座振替依頼書」の提出が必要
電気・ガス・水道を引き続いて利用する場合、引継人も銀行引き落としを利用するのであれば、新たに引き落とし口座の登録をしなければなりません。
そのためには、引き落とし予定先の銀行に行って「口座振替依頼書」を提出する必要があります。
銀行によっては、電気ガス水道の引き落とし口座の設定を一気にできるケースもあります。
窓口の開いている時間に届出印を持って銀行に行き、手続きを行いましょう。
4章 手続きが面倒なときは専門家に依頼することもできる
家族や親族が亡くなったときは、公共料金の名義変更以外にも行うべき手続きがたくさんあります。
相続手続きの中には期限があるものもあるので、家族や親族が亡くなった後は効率よく手続きを行いましょう。
家族や親族が亡くなったときの手続きの流れは、下記で詳しく解説しているのでご参考にしてください。
4-1 不動産の名義変更は非常に手間がかかる
相続手続きの中でも非常に手間がかかるのは、不動産の名義変更です。
亡くなった人から相続人へ不動産の名義変更をする際には、法務局にて登記申請を行わなければなりません。
登記申請は必要書類の数が多く、登記申請書も自分で作る必要があります。
相続登記は自分で行うこともできますが、司法書士に数万円程度で依頼も可能です。
平日日中は仕事をしていて役所で書類申請や登記申請を行うのが難しい人や故人が複数の不動産を所有していた場合は、相続登記を司法書士に依頼することも検討しましょう。
これまで相続登記は義務化されておらず、相続人の意思によって行うとされていました。
しかし、2024年4月からは相続登記が義務化され、相続発生から3年以内に相続登記をしない場合には10万円以下の過料が科される恐れがあります。
なお、相続登記の義務化は過去に発生した相続においても適用されます。
そのため、まだ相続登記がおすみでない土地をお持ちの人は早めに手続きをすませましょう。
相続登記は自分でも行えますが、司法書士に依頼すれば数万円程度で代行可能です。
グリーン司法書士法人でも相続登記に関する相談をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。
4-2 遺産の中にたくさんの預貯金・株式があると手間がかかる
相続財産の中に預貯金や株式などの有価証券が多数ある場合にも注意が必要です。
これらは、各金融機関や証券会社(非上場会社の場合には株式発行会社)に個別に連絡をして名義変更などの手続きをしないといけないので、数が増えると非常に煩雑になるからです。
万が一、書類に不備があれば差し戻しになってしまうので大変な時間と労力がかかります。
相続人の方が普段お忙しくしている場合、自分達だけで対応すると大きな負担になるでしょう。
預貯金などの名義変更も同じく司法書士に依頼することができるので、必要に応じて検討してみることをおすすめします。
まとめ
家族や親族が亡くなると、公共料金の名義変更をしなければなりません。
故人が生前一人暮らしをしており、電気やガス、水道を継続して利用しない場合は、解約手続きをしましょう。
解約手続きをしないと料金がかかり続けてしまいます、金融機関が口座名義人の死亡を確認すると銀行口座が凍結され、公共料金の引き落としができなくなってしまいます。
また、家族や親族が亡くなった際には様々な手続きが発生します。
相続手続きの中には期限があるものもありますので、何から始めて良いかわからない場合は、相続に詳しい司法書士や行政書士などの専門家に相談するのもおすすめです。
グリーン司法書士法人では、相続手続きに関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
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公共料金の名義変更方法は?
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名義変更が必要な公共料金の主なものは、電気・ガス・水道があります。
電気の場合は、東京電力や関西電力などの各電力会社に連絡をします。電気が自由化されてからはソフトバンク電気やau電気などの新電力もあるので、契約内容を確認しましょう。
ガスの場合は、東京ガスや大阪ガスなどの各ガス会社に連絡をします。ガスも自由化されているので、地域のガス会社ではない可能性があるので、契約内容を確認しましょう。
水道については、電気やガスと異なり、各自治体が運営しているので、各自治体が運営している水道局に連絡しましょう。
具体的な連絡先は、水道料金の領収済通知書や料金の計算書に書かれています。
詳しくは、下記リンク先をご参考にしてください。
▶公共料金の名義変更方法と問い合わせ先 -
水道を解約しないとどうなる?
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水道の解約手続きを忘れてしまうと、基本料金がかかり続けてしまいます。
▶相続時の公共料金の名義変更・解約については詳しくはコチラ
電気の名義変更手続きは、東京電力や関西電力などの各電力会社に連絡をします。
今は電気が自由化されていて、ソフトバンク電気やau電気などの新電力を契約している方もいるので契約相手をよく確認しましょう。
▶電気の名義変更手続きについて詳しくはコチラ