
- 相続時に親族間の揉め事が発生しやすいケース
- 親族間の揉め事に巻き込まれたくないときに相続放棄は有効なのか
- 相続放棄の申立て方法・必要書類
- 相続放棄をする際の注意点
家族や親族が亡くなり相続が発生すると、遺産を巡って親族間でトラブルが生じるケースも珍しくありません。
特に、相続人同士が疎遠だったり、故人に借金があったりする場合などには、感情的な対立に発展することもあります。
このような揉め事に巻き込まれたくない方にとって、有効な手段となるのが「相続放棄」です。
本記事では、親族間の揉め事に巻き込まれたくない場合に相続放棄が適している理由や申立て方法などについて詳しく解説します。
目次
1章 相続時に親族間の揉め事が発生しやすいケース
相続が発生すると、遺産分割を巡って親族間で揉め事が起きることは少なくありません。
特に、以下のようなケースでは、トラブルが発生しやすくなります。
- 相続人同士が疎遠だった場合
- 故人に多額の借金や負債がある場合
- 特定の相続人が故人の介護や生活支援をしていた場合
- 相続財産に不動産が含まれる場合
このような事情があると、遺産分割協議が難航し、相続人同士の関係の悪化や訴訟に発展することもあります。
2章 親族間の揉め事に巻き込まれたくないなら相続放棄も有効!
相続に関するトラブルに巻き込まれたくない場合や、そもそも話し合いや手続きに関わりたくない場合には、「相続放棄」も有効な選択肢のひとつです。
理由を詳しく解説していきます。
2-1 相続放棄すれば遺産分割協議に参加しなくて済む
相続放棄をすれば、その人物は「初めから相続人でなかったもの」とみなされます。
よって、遺産分割協議に参加する必要がなくなり、他の相続人との交渉や対立を避けることが可能です。
2-2 相続放棄は自分1人だけでも手続きできる
相続放棄をするには、他の相続人の同意を得たり、手続きを待つ必要はありません。
自身の意思のみで家庭裁判所に申立て、手続きを完了させられます。
誰にも相談せず、自分1人でも完結できるため、相続人同士が疎遠な場合や険悪な場合でも手続きしやすいでしょう。
2-3 相続放棄すれば遺産の管理義務も負わなくなる
相続人は遺産の名義変更や管理などを行う義務がありますが、相続放棄をすればその義務も免れます。
特に、相続不動産が遠方にある場合や、相続に関する煩雑な手続きを避けたい人にとっては大きなメリットといえるでしょう。
2-4 相続放棄すれば故人の借金も背負わなくて済む
相続放棄の最大の利点は、故人が遺した借金を受け継がずに済む点です。
故人が多額の借金を遺している場合や、借金の額がわからず不安な場合などでは、相続放棄を検討しても良いでしょう。
3章 相続放棄の手続き方法・必要書類
相続放棄をするには、家庭裁判所に申立てをしなければなりません。
申立て方法や必要書類は、以下の通りです。
提出先 | 故人の住所地を管轄する家庭裁判所 |
---|---|
手続きする人 | 相続放棄する人(または法定代理人) |
手数料の目安 |
|
必要なもの |
など |
4章 相続放棄する際の注意点
相続放棄は家庭裁判所への申立てが必要なだけでなく、以下のような点にも注意しなければなりません。
- 相続放棄には期限がある
- 相続放棄をするとプラスの遺産もすべて受け取れない
- 相続放棄が認められると原則として取り消せない
- 遺産を使用・処分すると相続放棄が認められなくなる
- 相続放棄すると次の相続人に迷惑がかかる場合がある
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 相続放棄には期限がある
相続放棄は、「自分が相続人であることを知ってから3ヶ月以内」という期限が設定されています。
期限を過ぎると、原則として、相続放棄は認められず、相続を承認したものとみなされてしまうため注意しましょう。
4-2 相続放棄をするとプラスの遺産もすべて受け取れない
相続放棄をすると、預貯金や株式、不動産などといったプラスの遺産も一切受け取れなくなります。
相続放棄は「プラスの財産」も「マイナスの財産」も一切引き継がないという選択だからです。
4-3 相続放棄が認められると原則として取り消せない
相続放棄が家庭裁判所で受理されると、原則として撤回することはできません。
後から「やっぱり遺産が欲しい」「借金がなかったと分かった」と思っても、放棄を取り消すことは非常に困難です。
相続放棄すべきか判断に迷ってしまう場合には、相続に精通した司法書士や弁護士に一度相談してみることをおすすめします。
4-4 遺産を使用・処分すると相続放棄が認められなくなる
遺産を使用、処分してしまうと「単純承認」したとみなされ、相続放棄が認められないことがあります。
遺産の使用や処分は、以下のようなものも含まれます。
- 遺産を使い込んでしまった
- 相続財産を捨てたり壊した
- 相続対象の固定資産を改修した
- 相続財産を譲った
- 相続財産の名義変更をした
- 被相続人の口座預金を自分の口座に入金した
- 被相続人が持っている賃貸物件の賃料を借主に請求した・振込先を自分の口座に変更した
- 相続財産に担保権を設定した
- 被相続人の株主総会での議決権を行使した
- 遺産分割協議に参加した
- 被相続人の遺品を持ち帰った、配った
- 期日未到来の相続債務を相続財産から返済した
- 相続財産を隠して自分のものとした
遺品整理や故人の自宅の片付けも遺産の処分にあたる可能性があるのでご注意ください。
確実に相続放棄したい場合には、司法書士や弁護士に相談し、遺品整理や故人の自宅の片付け方法などについてアドバイスを受けることを強くおすすめします。
4-5 相続放棄すると次の相続人に迷惑がかかる場合がある
相続放棄をすると、次の順位の相続人に相続権が移り迷惑がかかる恐れがあります。
同順位の相続人全員が相続放棄をすると、相続権は次順位の相続人に移るからです。
例えば、子供全員が相続放棄をした場合には、故人の親に相続権が移り、親もすでに他界している場合は兄弟姉妹が相続人になります。
なお、相続放棄が受理された後、家庭裁判所が次の相続人に連絡をすることはありません。
そのため、自分が相続放棄したことや理由について、次に相続人になる人物に連絡をしておきましょう。
まとめ
相続放棄を選択することで、遺産分割協議への参加や遺産管理の煩わしさ、借金のリスクなどから解放されます。
ただし、相続放棄には期限があり、一度認められると原則取り消せないなどの注意点も存在します。
さらに、相続放棄をすると、次の相続人に迷惑がかかる恐れもあるので、安易に判断せず、事前に遺産の内容を確認し、司法書士や弁護士に相談するのが良いでしょう。
グリーン司法書士法人では、相続放棄についての相談をお受けしています。
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