
- 共有不動産の固定資産税は誰が払うのか
- 代表者が共有不動産の固定資産税を払わないとどうなるのか
- 共有者が固定資産税を払ってくれないときの対処法
共有不動産の固定資産税は、共有者全員で連帯納付義務を負います。
納税通知書は代表者宛てに届くものの、固定資産税は共有持分に応じて負担する必要があるからです。
他の共有者の固定資産税を立て替えて払ったにもかかわらず、支払いに応じてもらえない場合には、内容証明郵便の送付などをして請求しましょう。
また、そもそもの問題として、不動産の共有状態には様々なリスクやデメリットがあります。
そのため、固定資産税の納税についてトラブルにならなかったとしても、早めに共有状態を解消することが望ましいでしょう。
本記事では、共有不動産の固定資産税は誰が払うのかや、共有者が払わない場合の対処法を解説します。
固定資産税については、下記の記事でも詳しく解説しているのでよろしければ併せてお読みください。
目次
1章 共有不動産の固定資産税は共有者全員で払う必要がある
不動産を複数人で共有している場合、固定資産税の納税義務は共有者全員に課せられます。
共有不動産における固定資産税の取り扱いは、主に下記の通りです。
- 納税は代表者がまとめて行う
- 代表者が固定資産税を滞納すると残りの共有者に請求が届く
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1 納税は代表者がまとめて行う
不動産を共有している場合でも、納税通知書は代表者1名に対して送られます。
通知を受け取った代表者は、そのまま納税手続きを行うことになりますが、実際には他の共有者と持分割合に応じて固定資産税を折半します。
代表者が固定資産税を立て替えて支払った場合には、他の共有者から精算してもらえます。
1-1-1 固定資産税の金額は原則として持分割合で計算される
共有者同士の固定資産税の負担割合は、登記簿上の持分割合に応じて計算されることが一般的です。
例えば、2人でそれぞれ2分の1ずつ所有していれば、固定資産税も50%ずつ負担することになります。
共有者同士で合意していれば、持分と異なる割合で支払うケースも認められますが、トラブル回避のためにも書面で取り決めておくとよいでしょう。
1-1-2 代表者は自治体が選出する
納税通知書の送付先となる代表者は、自治体が独自の基準により選出します。
一般的には、下記のような条件をもとに選ばれる傾向があります。
- 持分割合が最も大きい人
- 登記上の住所が対象不動産に最も近い人
- 管理状況などから実質的な管理者とみなされる人
ただし、代表者は自治体が便宜上、取り決めているだけに過ぎず、代表者のみが納税義務者というわけではありません。
固定資産税の納税義務は共有者全員で連帯して負っているため、代表者が支払いを怠った場合には、他の共有者にも責任がおよびます。
1-2 代表者が固定資産税を滞納すると残りの共有者に請求が届く
代表者が納税通知書を受け取ったものの、支払わずにそのままにしておいた場合には、他の共有者にも請求が届きます。
加えて、督促や差押えについても、共有者全員に対して行われるのでご注意ください。
固定資産税は共有者全員で連帯納付義務を負うため、自分の持分割合の固定資産税だけ支払っていたとしても、請求が続く場合や延滞税が発生する場合もあります。
2章 代表者が共有不動産の固定資産税を払わないとどうなる?
代表者が固定資産税を納めずにいた場合、残りの共有者も含め、下記の問題が発生します。
- 延滞税がかかる
- 督促状が送られてくる
- 不動産などが差し押さえられる
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 延滞税がかかる
納付期限までに固定資産税を支払わなかった場合には、翌日から延滞税が課せられてしまいます。
延滞税は、納期限の翌日から完納する日までの日数に応じて課せられるものであり、法定利率に基づいて計算されます。
延滞期間が長引くと、それだけ延滞税の負担も大きくなってしまうのでご注意ください。
2-2 督促状が送られてくる
固定資産税を払わずにいると、督促状が送付されます。
納付期限を20日以上経過した場合に、督促状が送付されることが一般的です。
2-3 不動産などが差し押さえられる
督促状が届いても固定資産税を払わないでいると、不動産などの差押えが行われる場合があります。
差押えされる財産は預貯金や給料などが多いですが、固定資産税滞納の場合には、対象不動産が差し押さえられることもあります。
3章 共有者が固定資産税を払ってくれないときの対処法
代表者が固定資産税を立て替えて納付したものの、共有者が固定資産税を負担してくれないといったトラブルも中にはあります。
このような事態に陥った際には、下記の方法で対処していきましょう。
- 口頭で請求する
- 内容証明郵便を送り請求する
- 訴訟を起こす
- 強制執行で財産や給与を差し押さえる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1 口頭で請求する
まずは、固定資産税を払ってくれない共有者に対し、口頭で請求しましょう。
相手が家族や親戚であれば、電話や対面で「〇年分の固定資産税〇〇円を支払ったので、あなたの持分である〇〇円を負担してほしい」と伝えるだけで済むケースもあるからです。
この段階では感情的にならず、領収書や納税通知書などの証拠書類を準備した上で、説明しましょう。
事実に基づいて冷静に説明すれば、相手も反発せず対応してくれる可能性もあります。
ただし、相手が支払いを拒否する場合や、話し合いが平行線のままとなる場合には、次の段階へ進む必要があります。
3-2 内容証明郵便を送り請求する
口頭での請求が上手くいかない場合には、内容証明郵便を送付しましょう。
内容証明郵便は「いつ・誰が・どのような内容で請求したか」を証拠として残せる手段であり、裁判手続きへ進む際の準備としても有効です。
固定資産税の支払いについて、内容証明郵便を送付する際には、下記の内容を記載しましょう。
- 固定資産税を立て替えた事実とその金額
- 相手の持分に応じた負担額
- 支払期限(例:〇月〇日までに振込むこと)
- 支払われない場合は法的措置を取る旨の通知
口頭では請求に応じてくれなかった相手でも、内容証明郵便が届いたことで支払いに応じてくれるケースも珍しくはありません。
また、内容証明郵便を送付する際には、配達証明を付けて送ることで、到達の事実を証明することも大切です。
3-3 訴訟を起こす
内容証明郵便を送っても、共有者が支払いに応じない場合には、民事訴訟を起こして法的に請求する(求償する)ことも検討しましょう。
ただし、訴訟を通じて共有者に求償するには、下記の書類や証拠を用意しなければなりません。
- 納税通知書や領収証
- 登記簿謄本(共有持分が確認できるもの)
- 支払いを求めた内容証明郵便の写し
- 支払いを求めた経緯や、やり取りの記録(メールやLINEなどもでも可)
裁判所が請求を認めれば、判決によって相手に支払義務があることが法的に確定し、強制執行へと手続きを進められます。
3-4 強制執行で財産や給与を差し押さえる
民事訴訟を行い判決が確定した後も、共有者が固定資産税を支払わない場合には、強制執行を申し立てることができます。
強制執行を申し立てれば、支払いに応じてくれない共有者の財産を差し押さえて、未払い分を回収可能です。
ただし、強制執行を行うには、下記の条件を満たさなければなりません。
- 判決(または調停調書などの債務名義)を取得していること
- 相手の財産や勤務先、銀行口座などの情報を把握していること
強制執行を行う際には、先ほど解説した民事訴訟を行っておく必要があります。
民事訴訟や強制執行の準備や手続きには、専門的な知識も必要となるので、弁護士に相談することをおすすめします。
4章 【ケース別】共有者が認知症や行方不明・死亡したときの対処法
共有不動産の固定資産税は、共有者全員で分担する必要がありますが、実際には、共有者のうちの誰かが認知症になったり、行方不明になったりしていて払えないケースもあります。
本章では、共有者が下記の状態に陥ったときの対処法を解説します。
- 共有者が認知症の場合は成年後見人の選任を申し立てる
- 共有者が行方不明の場合は不在者財産管理人の選任を申し立てる
- 共有者が死亡した場合は相続人に請求する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
4-1 共有者が認知症の場合は成年後見人の選任を申し立てる
共有者の1人が認知症などで判断能力を失った場合、自分で財産管理や契約行為を行えなくなります。
このような状態では、共有不動産の固定資産税を払うことも難しいですし、共有不動産を適切に管理することも難しいでしょう。
共有者の1人が認知症になった場合には、成年後見人の選任を申し立てる必要があります。
成年後見人とは、認知症や知的障害などで判断能力を失った人の代わりに財産管理や法的手続きをサポートする人物です。
成年後見人の選任は、家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
申立ての準備から実際に成年後見人が選任されるまでには、数ヶ月かかることが一般的です。
そのため、不動産の共有者の1人が認知症であるとわかったら、早めに成年後見人の選任申立ての準備を進めておきましょう。
成年後見人が選任されたら、立て替えた固定資産税を成年後見人に請求できます。
4-2 共有者が行方不明の場合は不在者財産管理人の選任を申し立てる
共有者の1人が長期間連絡が取れず、どこにいるかもわからないといった場合には、不在者財産管理人の選任を申し立てる必要があります。
不在者財産管理人とは、行方不明者に代わって財産の管理を行う役割を担う人物です。
不在者財産管理人が選任されれば、行方不明者の代わりに共有不動産の管理や、固定資産税の支払いを行ってくれます。
不在者財産管理人の選任は家庭裁判所に申し立てる必要があり、申立て方法と必要書類は、下記の通りです。
申立する人 | 行方不明者の利害関係人 |
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申立先 | 行方不明者の最終の住所地を管轄する家庭裁判所 |
申立費用 |
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必要書類 |
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4-3 共有者が死亡した場合は相続人に請求する
不動産の共有者がすでに亡くなっていた場合、相続人に対して立て替えていた固定資産税を請求可能です。
相続人は不動産などのプラスの資産だけでなく、借金や納税義務などマイナスの財産も受け継ぎます。
ただし、亡くなった共有者と相続人が生前疎遠だった場合や、相続人が複数いる場合は、請求に応じてもらうのに時間がかかる場合もあります。
このようなケースでは、亡くなった共有者の相続人が誰か特定した上で、固定資産税を請求しなければなりません。
5章 共有不動産の固定資産税を払うときの注意点
共有不動産の固定資産税は共有者全員で連帯納付義務を負っています。
共有不動産の固定資産税を支払うときには、以下のような点に注意しましょう。
- 共有者とトラブルが起きる場合には共有名義の解消も検討する
- 固定資産税を1年以上にわたり払わなければ強制的に持分を買い取れる
- 共有者に固定資産税を請求する権利は立替後5年で消滅する
それぞれ詳しく解説していきます。
5-1 共有者とトラブルが起きる場合には共有名義の解消も検討する
固定資産税の支払いなどを巡って、他の共有者と意見が合わず、繰り返しトラブルが起こる場合には、不動産の共有状態自体を解消することも検討しましょう。
そもそも不動産の共有には、下記のようなデメリットがあります。
- 不動産の活用や売却に共有者の合意が必要である
- 固定資産税など費用負担のトラブルが発生しやすい
- 共有者が亡くなり相続が発生すると、権利関係者が増え管理が複雑になる
将来的なリスクを減らすためにも、早い段階で共有状態を解消しても良いでしょう。
不動産の共有状態を解消する方法は、主に下記の通りです。
- 他の共有者に持分を売却する
- 自分が他の共有者の持分を買い取る
- 共有物分割訴訟により裁判所に分割を求める
5-2 固定資産税を1年以上にわたり払わなければ強制的に持分を買い取れる
共有不動産において、自分以外の共有者が、1年以上にわたって固定資産税の支払いを怠っている場合には、その共有者の持分を強制的に買い取ることが可能です。
この手続きは共有物買取請求と呼ばれる制度であり、請求するには下記の条件を満たす必要があります。
- 共有不動産の管理費を肩代わりしている
- 他の共有者に、立て替えた管理費用を請求したにもかかわらず、1年以上支払ってもらえていない
なお、共有持分の買取価格については、当事者間で合意が得られない場合には、調停や裁判などの手続きも取ることが可能です。
5-3 共有者に固定資産税を請求する権利は立替後5年で消滅する
固定資産税を代表者などが立て替えた場合、他の共有者に対して持分割合に応じた費用を請求する権利(求償権)が発生します。
ただし、求償権には時効があり、5年で消滅してしまうのでご注意ください。
例えば、下記のようなケースでは、他の共有者に請求できなくなる恐れもあるのでご注意くだそ。
- 毎年代表者が立て替えているが、他の共有者に請求していない
- 他の請求者が音信不通で請求できず、放置してしまった
- 数年分をまとめて請求しようと思っていたが、時効が過ぎていた
このような事態を避けるためにも、求償権の時効を迎えそうであれば、内容証明郵便を送付して時効の中断をすることも検討しましょう。
まとめ
共有不動産の固定資産税は代表者宛に納税通知書が届きますが、納付義務自体は共有者全員にあります。
代表者が他の共有者の固定資産税を立て替えたにもかかわらず、支払ってもらえない場合には、内容証明郵便の送付などで請求しましょう。
また、共有不動産は活用や売却をしにくいなどのデメリットもあるので、早いうちに共有状態の解消もご検討ください。
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