不動産を夫婦共有名義で購入する方も少なくないでしょう。
共有名義での購入は、ローンの審査に通りやすくなるなど、メリットも多くあります。
しかし、離婚をするとなると、共有名義の不動産はやっかいです。
と言うのも、離婚時には財産分与として、夫婦の共有財産を分け合うこととなりますが、不動産は現金のように分け合うことはできないため、特にローンがある場合はどちらかの単独名義にすることは簡単ではないからです。
だからといって、共有名義のまま離婚をすることは、様々なリスクがあるためおすすめできません。
この記事では、
- 不動産を共有名義のまま離婚するリスク
- 離婚時に共有名義の不動産がある場合の対処法
- 共有名義の不動産を単独名義にする手続き
などについて解説します。
目次
1章 不動産を共有名義のまま離婚するのは避けるべき4つの理由
共有名義の不動産がある場合、そのまま離婚するのは避けるべきです。
不動産を共有名義のまま離婚すると、以下のようなリスクがあります。
- 相手の合意なく売却することができない
- 税金の支払いでトラブルになる
- 相手方がローンを支払わなくなる可能性がある
- 相続時にトラブルになる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1−1 相手の合意なく売却することができない
共有名義の不動産は、共有者全員の合意がなければ売却することができません。
売却したいと思った時は、元配偶者に同意を得る必要があります。
また、同意を得て売却できたとしても、持分に応じた分配をしないときは、贈与税などがかかる可能性があるため注意が必要です。
1−2 相続時にトラブルになる
共有名義の不動産は、それぞれの共有者が持分に応じて権利を持っています。
したがって共有者の一方が亡くなると、その不動産は共有持分だけが相続されます。
そうなると、不動産は、元配偶者の「後妻(夫)」や「後妻(夫)との子」などと、共有することになってしまいます。
元配偶者の家族は、赤の他人。不動産を売却したい時に同意を得るのはかなり面倒ですし、不動産の活用や管理方法についてトラブルになる可能性もあるでしょう。
1−3 税金の支払いでトラブルになる
不動産の固定資産税は、共有者全員が負担することになっていますが、市区町村は持ち分に応じて固定資産税を按分し、共有者各人に納付書を送付するような親切なことはしてくれません。固定資産税の納税通知書が届くのは、共有者のうち一人です。
誰に届くかは、住んでいる場所や、持分割合、登記順位などをもとにして市区町村が決定します。該当する不動産に暮らしている人がいれば、その人に届くでしょう。
毎回、固定資産税を折半するよう連絡を取り合わなければいけませんし、支払いを拒否されるとトラブルになります。
1−4 相手方がローンを支払わなくなる可能性がある
住宅ローンの支払いが続いている場合、共有者の相手方がローンを支払わなくなる可能性も否めません。
ローンが支払われない場合、その家が差し押さえられてしまいます。その後、競売にかけられる可能性も高いので注意が必要です。
2章 離婚時に共有名義の不動産がある場合の対処法
離婚時に共有名義の不動産がある場合には、今後のトラブルを防止するため「どちらかの単独名義にする」か「協力して一緒に売却する」か、どちらの方法で対処できないか検討する必要があります。
それぞれの方法について、詳しく解説します。
2−1 単独名義にする
どちらかが家に住み続ける場合には、その人の単独名義にすることを検討しましょう。
単独名義にする方法は「住宅ローンが残っている場合」と「住宅ローンを完済している(完済できる)場合」で異なります。
住宅ローンが残っている場合
住宅ローンが残っている場合、勝手に単独名義にすることを銀行は認めてくれません。勝手に単独名義にしてしまうと、住宅ローンの一括払いを求められる可能性があります。
住宅ローンが残っている不動産を単独名義にする場合、名義から外れる側が自分が借り入れたローンを完済する必要があります。
完済できる資金があれば良いですが、ない場合には実家などからお金を貸してもらったり、別の銀行にローンを借り換えしたりして完済する必要があります。
住宅ローンを共有名義で組む場合、双方がお互いの連帯保証人になっているケースがあります。
住宅ローンの名義をどちらかの単独名義にしても、連帯保証人から外れることはありません。
そのため、不動産の名義人になった人がローンの支払いを怠った場合、連帯保証人がローンの一括払いを命じされる可能性があります。
連帯保証人になっている場合にはその点にも配慮して、離婚協議を進めるようにしましょう。
住宅ローンがない場合
住宅ローンがない場合(もしくはいつでも完済できる場合)には、どちらかの名義にするよう登記手続きすれば問題ありません。
具体的な方法は以下の2通りです。
- ①持分を相手方から買い取る(代金が必要)
- ②持分を財産分与としてもらう(代金は不要)
代償金の金額は合意で決めればよく、持分に応じて厳格に決定する必要はありませんが、贈与税など課税される可能性もあるので注意が必要です。また、代金の支払いなく家を「財産分与」してもらうことも可能です。
2−2 売却する
家を残す必要が特にないのであれば、売却してその売却益や残債を分け合うのが楽ちんです。
住宅ローンの残債が売却益より高い場合
住宅ローンの残債が売却益よりも高い場合、売却後に残ったローンを2人で一括返済します。
なお、債務の負担割合が決まっていない場合は、ローンの返済を負担する人・負担する額を夫婦で話し合って決めます。必ずしもきっちり平等である必要はありません。
負担割合がある場合は、負担割合どおりに負担しないと、贈与税がかかる可能性があるので注意が必要です。
もし、資金が足りない場合には、任意売却を検討する必要があります。(任意売却とは、債権者に了承を得た上で、住宅ローンが完済できない状況で不動産を売却する方法です)
住宅ローンの残債を売却代金が上回る場合/住宅ローンがない場合
住宅ローンの残債を売却代金が上回る場合や、住宅ローンを完済している場合には、売却益を分け合えば問題ありません。
売却益を平等に分けるか、どちらかがすべて受け取るかは夫婦の協議で決定します。
売却益は持分に応じて分配するのが原則です。数十万の差は良いにしても、100万円を越える場合は贈与税に注意しましょう。
3章 共有名義の不動産を単独名義にする際の手続き
共有名義の不動産を単独名義に変更するには、「所有権移転登記」という手続きをします。
所有者移転登記の手続き方法の詳細は、こちらの記事を御覧ください。
3−1 協議離婚の場合
夫婦で話し合い離婚をする「協議離婚」の場合、夫婦揃って所有者移転登記をする必要があります。
ただし、手続きをするのは離婚したあとでなければいけません。離婚後は、相手と連絡が取れなくなったり、非協力的になったりする可能性があるので、離婚前からしっかりと準備しておきましょう。
なお、司法書士に依頼すれば、離婚前に両者から委任状を渡しておくことで、離婚後に手続きを任せることができるので安心です。
協議離婚の場合の必要書類は以下のとおりです。
協議離婚の場合、夫婦双方で書類を集める必要があります。
財産分与を受ける方(登録権利者) | |
書類 | 備考 |
住民票 |
|
印鑑 | 認印可 |
財産分与をする方(登記義務者) | |
書類 | 備考 |
不動産の登記済権利証または、登記識別情報通知 | |
印鑑証明書 |
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実印 | 印鑑登録をしている印鑑 |
固定資産評価証明書 |
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離婚の記載のある登記謄本 |
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司法書士に用意してもらうもの | |
書類 | 備考 |
司法書士への委任状 | 司法書士に手続きを依頼する場合に必要です 双方の署名・押印をしたものを用意する |
登記原因証明情報 | 登記に至った原因や法律行為を記載する書面 自身で作成するのは難しいため、司法書士に作成してもらうことが一般的です |
所有者移転登記申請書 | 登記をする際に必要な申請書です。 自身で作成することも一応可能ですが、通常は専門家である司法書士が作成します。 |
3−2 裁判上の離婚の場合
離婚調停や訴訟など、裁判上の離婚の場合、裁判上で決定した内容に沿って不動産を取得する人が単独で登記申請することが可能です。
その場合、調停調書など裁判所が作成した書類に「申立人は、相手方に対し、離婚に伴う財産分与として、別紙物件目録記載の不動産を譲渡することとし、本日付け財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする」と記載されている必要があります。
もし、裁判上で不動産の譲渡に関する取り決めをしていない場合には、協議離婚の場合と同じ手続きをします。
裁判上の離婚で必要な書類は以下のとおりです。不動産を取得する側だけが書類を用意すれば問題ありません。
財産分与を受ける方(登記権利者) | |
書類 | 備考 |
住民票 |
|
印鑑 | 認印可能 |
固定資産評価証明書 | 登記する年度のもの |
登記原因証明情報 | 調停証書、審判書、和解調書など |
3−3 財産分与による名義変更にかかる費用
財産分与による名義変更にかかる費用は以下の3つです。
- 登録免許税
- 書類取得費用
- 司法書士への依頼費用
それぞれ詳しく見ていきましょう。
登録免許税
登録免許税とは、登記手続きをする際にかかる税金です。
登録免許税の税額は、財産分与による名義変更の場合、固定資産税評価額の2%です。例えば、評価額が1,000万円の場合、20万円の登録免許税がかかります。
書類取得費用
登記申請に必要な書類の多くは、取得費がかかります。
司法書士への依頼費用
所有権移転登記の手続きを司法書士に依頼した場合、当然、司法書士への依頼費用がかかります。
依頼費用は不動産の価値や依頼する範囲によって増減しますが、報酬の相場は6〜15万円程度です。
司法書士には、登記手続き以外にも、財産分与契約書の作成も依頼可能です。
所有権移転登記について詳しくは、こちらの記事を御覧ください。
4章 まとめ
不動産を共有名義のまま離婚することは、さまざまなリスクがあるため、おすすめできません。
単独名義にしたり、売却したりするようにしましょう。
不動産の名義を単独名義にする場合には、所有権移転登記が必要です。協議離婚の場合、離婚後に両者揃って登記手続きをする必要があります。
離婚後ですと、連絡が取れなくなったり、相手が手続きに非協力的だったりして、スムーズに手続きができない可能性があります。
司法書士に依頼すれば、代理で手続きをしてくれますので安心です。
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