相続した土地は活用しなくても、固定資産税や管理コストがかかり続けます。
活用予定のない土地を相続した場合は、売却してしまうことも検討しましょう。
ただし、土地の売買は需要と供給によって決まるため、土地の立地や売却価格によっては売りたくても売れない恐れがあります。
相続した土地が売れないときには、売却条件の変更や不動産会社による買取も検討しましょう。
なお、相続した不動産を売却する際には、事前に名義変更手続きをすませておく必要があります。
本記事では、相続した土地が売れないときのリスクやデメリット、対処法を解説します。
相続した土地を売却する流れは、下記の記事で詳しく解説しているのでご参考にしてください。
1章 相続した土地が売れないときのリスク・デメリット
相続した土地が売れないと、固定資産税や管理コストが気かり続けてしまいます。
加えて、自分も亡くなった場合、遺された配偶者や子供、孫に土地の管理や処分を任せることになり負担をかけてしまう可能性もあります。
相続した土地が売れないときのリスクやデメリットは、主に下記の通りです。
- 土地の固定資産税がかかり続ける
- 土地の管理義務が発生する
- 土地の管理を怠ると損害賠償請求される恐れがある
- 自分が亡くなったときに次の世代に負担がかかってしまう
️それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1 土地の固定資産税がかかり続ける
土地は使用、活用していなくても、所有しているだけで固定資産税がかかり続けてしまいます。
固定資産税とは、その年の1月1日時点に土地や建物を所有していた人に対してかかる税金です。
土地の固定資産税評価額は「土地の課税標準額×税率(1.4%)」で計算されます。
例えば、課税標準額2,000万円の土地を所有している場合は、28万円の固定資産税がかかる計算です。
このように、固定資産税は決して安い金額ではなく、土地を所有している限りかかり続けるので、活用予定のない土地は早めに売却してしまうのが良いでしょう。
相続した不動産を売却、活用する際には、事前に故人から相続人へ名義変更手続きをすませなければなりません。
相続した不動産の名義変更手続きは、法務局にて登記申請を行う必要があります。
相続登記は自分で行うこともできますが、司法書士に数万円程度で依頼することも可能です。
グリーン司法書士法人でも、相続登記を税込3万3,000円からお受け可能ですので、お気軽にお問合せください。
1-2 土地の管理義務が発生する
使用、活用していない空き地だとしても、所有している限り管理義務が発生します。
そのため、年に数回は雑草取りなどの手入れを行う必要があるでしょう。
土地を放置してしまうと、雑草が生え周辺環境に悪影響を及ぼす恐れもあります。
加えて、管理されていない土地や建物は放火や不法投棄などの犯罪に使用されるリスクも上がってしまうため注意が必要です。
1-3 土地の管理を怠ると損害賠償請求される恐れがある
土地の管理を怠っていると、最悪の場合、損害賠償請求される恐れもあるので注意が必要です。
例えば、実家を相続したものの放置してしまい建物が老朽化して崩れ、隣人や歩行者が負傷した場合は損害賠償請求される可能性があります。
1-4 自分が亡くなったときに次の世代に負担がかかってしまう
自分が相続によっていらない土地を受け継いでしまったように、自分が亡くなったときには遺された配偶者や子供が土地を受け継ぎます。
その結果、子供が使う予定のない土地の固定資産税を払い続けなければならなくなりますし、管理義務も負い続けます。
少子高齢化が進み地方の過疎化がますます進む中、現時点で売れない土地や活用しにくい土地の価値が上がるとは考えにくいです。
子供や孫などの次世代の負担を減らしたいと考えるのであれば、自分の代で土地を処分してしまいましょう。
2章 相続したが売れない土地の特徴
土地を売る際には買い手を見つける必要がありますが、土地の立地や形状によっては一向に買い手が見つからない場合があります。
売れない土地の特徴は、主に下記の通りです。
- 狭い土地・形が悪い土地
- 再建築不可の土地
- 周辺環境が悪い土地
- 隣地との境界が確定していない土地
- 周辺地域の土地需要が低い土地
- 地盤が悪い土地
- 売却優先度が低い土地
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1 狭い土地・形が悪い土地
土地の面積が狭すぎる、三角形や歪な形の土地は建物を建築しにくく活用が難しいので、買い手が見つかりにくいです。
一方で、土地の面積が大きすぎる場合も購入価格や固定資産税が高くなることや活用しにくいことが懸念され買い手が見つかりにくくなります。
一戸建ての住宅を建てる際の土地の広さは40〜70坪程度であることが多いです。
そのため、40〜70坪の範囲に収まらない土地や形が悪い土地は売れにくい可能性があります。
2-2 再建築不可の土地
再建築不可の土地も、新しい建物を建築できないため売却難易度が上がります。
再建築不可の土地とは、今建っている建物を解体しても新たに建物を建てられない土地です。
再建築不可の土地は、新しく建物を建てることができないため売れにくい傾向にあります。
再建築不可の土地は接道義務を満たしていない土地であり、下記の土地などが該当します。
- 土地が建築基準法上の道路と全く接していない
- 土地が建築基準法上の道路と接しているが、接している幅が2m未満である
- 土地が幅員4m未満の道路や、私道とのみ接している
再建築不可の土地は接道義務を満たしている隣地もまとめて購入する、現在建っている建物をリフォーム、リノベーションして住むなど選択肢が限られるので、売却が難しくなります。
2-3 周辺環境が悪い土地
土地の面積や形状に問題がなくても、周辺環境が悪い土地は買い手が見つかりにくいです。
具体的には、下記に該当する土地は売れにくい可能性があります。
- 田舎にあって不便な土地
- 近隣住民とトラブルがある土地
- 騒音や土壌汚染などの問題がある土地
2-4 隣地との境界が確定していない土地
隣地との境界未確定の土地も、なかなか売れないためご注意ください。
境界未確定の土地とは、名前の通り隣地所有者や公道との境界が未確定になっている土地です。
特に、隣地との境界未確定の土地の場合は建築時に隣地の所有者とトラブルになるリスクや裁判リスクがあります。
このように、境界未確定の土地はリスクがあるため、通常の土地より売れにくくなってしまいます。
2-5 周辺地域の土地需要が低い土地
駅から遠い土地や周辺に商業施設がなく、土地需要が低い場合はそれだけ売却しにくくなります。
土地を売却する際には、周辺地域の状況やずっと売り出し中になっている土地がないかなど確認しておきましょう。
2-6 地盤が悪い土地
相続した土地の地盤が悪い場合も売れにくい可能性があります。
特に、盛土や埋立地などは地盤が弱い土地もあるのでご注意ください。
近年は水害や台風などの自然災害が多く発生しているため、土地の購入者も地盤がしっかりしている土地を希望するケースが増えています。
相続不動産を早く売りたいのであれば、地盤調査などを行い、土地の信頼性を高めるのもおすすめです。
2-7 売却優先度が低い土地
不動産会社の中で売却優先度が低いと判断された土地は、なかなか売れない可能性があります。
不動産会社は売り出し中の不動産を常に複数抱えている状態であり、その中でも売れやすい土地や利益が出やすい土地を優先して売却活動を行います。
不動産会社が売れにくいと判断し優先順位を下げた場合は、積極的に販売活動を行わないため土地が売れ残る場合もあるでしょう。
そのため、売却優先順位が低いと判断された場合は、積極的に販売活動がされない可能性があります。そういった場合は、なかなか売れません。
3章 相続した不動産が売れないときの対処法
相続した不動産が売れない場合は、売却価格などの条件の見直しなどを検討しましょう。
建物付きで売却しようとしている場合は、更地にしてしまった方が売却できる可能性もあります。
相続した土地や建物が売れないときには、下記の方法をお試しください。
- 売却条件を変更する
- 相続した土地を売れやすい状態にする
- 不動産会社に買取してもらう
- 不動産会社を変更する
- 相続した土地を寄付・贈与する
- 空き家バンクに登録する
- 相続放棄する
- 相続土地国庫帰属制度を利用する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1 売却条件を変更する
不動産の売却額を下げるなど、売却条件を変更すれば相続した不動産が売れる可能性があります。
ただし、売却条件を下げすぎてしまうと、不動産会社に支払われる仲介手数料も下がってしまいます。
その結果、不動産会社の売却優先順位が下がってしまう恐れもある点には注意が必要です。
3-2 相続した土地を売れやすい状態にする
相続した不動産を建物付きで売却しようとしているのであれば、建物を解体し更地にした方が売れやすくなる可能性もあります。
特に、建物が老朽化していて、価値がほとんどない場合には解体することも検討しましょう。
ただし、建物の解体には費用がかかるので、解体をして更地にすべきかどうか、不動産会社にも相談してみることをおすすめします。
他にも土地の地盤調査をする、境界未確定の土地であれば土地家屋調査士の立会いのもと、境界を確定するなども有効です。
3-3 不動産会社に買取してもらう
相続不動産がなかなか売れず、相続税の申告期限が迫っているなどの事情がある場合は、不動産会社による買取も視野に入れましょう。
不動産会社は通常、仲介と言って買い手と売り手の間に立ち、手数料を受け取ります。
しかし、買取の場合は不動産会社が買主となるため、売却活動を行わなくてすみ短期間での売却が可能です。
ただし、不動産会社による買取価格は仲介での取引価格より低くなってしまうことが多く、状況によっては不動産会社に買い叩かれてしまう場合もあります。
加えて、不動産会社はすべての土地を買い取ってくれるわけではなく、利益が出ない、需要がない土地と判断されると買取を断られてしまいます。
3-4 不動産会社を変更する
不動産会社の担当者と合わない、販売活動を積極的にしてくれない場合は、不動産会社を変更するのも良いでしょう。
不動産会社によって販売活動の内容も異なりますし、買取需要も変わってくるからです。
ただし、売却を依頼する不動産会社を変更する際には、媒介契約の内容に注意しなければなりません。
媒介契約の内容が選任媒介もしくは専属選任媒介となっている場合は、契約期間中は不動産会社の変更ができません。
3-5 相続した土地を寄付・贈与する
相続した不動産がどうしても売れない場合は、土地の寄付や贈与も検討しましょう。
寄付や贈与をした場合、売却と違って利益を出すことはできませんが、土地を手放せるので固定資産税や管理義務からは逃れられます。
寄付先としては、国や自治体、地域の企業などが考えられます。
ただし、活用しにくい土地や価値が低い土地は、寄付を受け付けてくれない可能性が高いことは理解しておきましょう。
相続した土地が住宅地にある場合は、隣家に引き取ってもらえないか確認するのもおすすめです。
ただし、隣家に土地を譲る場合は贈与扱いになるため、受け取った側に贈与税や不動産取得税がかかります。
3-6 空き家バンクに登録する
相続した土地や建物が売れない場合は、各自治体が運営する空き家バンクに登録してみましょう。
空き家バンクとは、活用予定のない土地や空き家を登録し、土地を借りたい人や買いたい人に対して情報提供できるサービスです。
ただし、空き家バンクは不動産会社による仲介と異なり、購入希望者と自分で交渉、契約する必要があります。
全国各地の空き家バンクのURLは、国土交通省による全国地方公共団体空き家・空地集情報サイトリンク集で確認可能です。
3-7 相続放棄する
相続した不動産の立地や形が悪く売れそうにない場合は、相続した段階で相続放棄を検討しましょう。
相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しなくなる手続きです。
下記の場合は、そもそも土地を受け継がず相続放棄をすることをおすすめします。
- 故人が多額の借金を遺していた
- 遺産が売れそうになく活用予定もない土地しかない
- 相続人の仲が悪く相続トラブルが発生しそう
ただし、相続放棄は自分が相続人になってから3ヶ月以内に手続きを行わなければなりません。
相続放棄に詳しい司法書士や弁護士に相談すれば、相続放棄すべきかの判断や相続財産調査まで行ってもらえます。
なお、相続放棄は家庭裁判所での申立て手続きが必要であり、手続き方法および必要書類は下記の通りです。
提出先 | 故人の住所地を管轄する家庭裁判所 |
手続きする人 | 相続放棄する人(または法定代理人) |
手数料の目安 |
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必要なもの |
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3-8 相続土地国庫帰属制度を利用する
相続した土地が売れず、それでも手放したい場合は相続土地国庫帰属制度を利用しましょう。
相続土地国庫帰属制度とは、相続によって取得したものの使う予定がなくいらない土地を国に返却できる制度です。
相続放棄と異なり相続土地国庫帰属制度を利用すれば、預貯金のみを相続し売れない土地のみ国に返却することもできます。
ただし、相続土地国庫帰属制度は返却できる土地や申請者に適用要件が決められており、すべてのケースで利用できるわけではありません。
相続土地国庫帰属制度を利用できない土地の条件は、主に下記の通りです。
- 建物が建っている土地
- 担保権等の設定がされている土地
- 通路などで他人が使用している土地
- 汚染されている土地
- 境界が明らかでない土地
- 崖のある土地
- 工作物や樹木、車両がある土地
- 除去が必要なものが地下にある土地
- 争訟をしなければ使用できない土地
なお、相続土地国庫帰属制度を利用する際にも事前に相続登記をすませておく必要があります。
まとめ
相続した土地が売れなくても、固定資産税や管理義務が発生し続けます。
自分が亡くなると子供や孫が売れない土地を管理しなければならないため、早めに手放すことをおすすめします。
相続した土地が売れないときには、売却条件の見直しや不動産会社の変更、買取などを検討しましょう。
なお、相続した土地を売却する際には事前に故人から相続人へ名義変更手続きをすませなければなりません。
グリーン司法書士法人では、相続登記に関する相談をお受けしています。
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