行政書士と司法書士はどちらも相続手続きを依頼できる専門家です。
ただし、行政書士と司法書士は業務範囲が異なるので、依頼する際には任せたい内容を整理した上で専門家を選ばなければなりません。
相続手続きを行政書士や司法書士に依頼すべきケースは、それぞれ下記の通りです。
専門家 | 依頼がおすすめな人の特徴 |
司法書士 |
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行政書士 |
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本記事では、行政書士と司法書士の相続手続きにおける業務範囲の違いを解説します。
なお、相続手続きは司法書士や行政書士以外にも、ケースに応じて税理士や弁護士などの専門家へ依頼することもあります。
他士業との比較は下記でご覧ください。
目次
1章 行政書士と司法書士の業務範囲の違い
相続手続きを依頼できる専門家には、司法書士や行政書士などがいます。
司法書士は様々な相続手続きに対応できるのが特徴で、相続登記に関しては司法書士のみが対応可能です。
行政書士は、許認可など官公庁に関する手続きを行う他に、相続人調査や遺産の名義変更手続きなどを行えます。
1-1 相続登記ができるのは司法書士のみ
相続した不動産の名義変更手続きである「相続登記」ができるのは、司法書士のみです。
行政書士では相続登記を行えないので、不動産を相続したときには司法書士に依頼するのが良いでしょう。
相続登記はこれまで義務化されていませんでしたが、2024年4月から相続登記が義務化されます。
2024年4月以降は相続発生から3年以内に相続登記をしない場合には、10万円以下の過料が科される恐れがあるのでご注意ください。
なお、相続登記の義務化は過去に発生した相続に関しても適用されます。
相続登記は自分でも行えますが、司法書士であれば数万円程度で相続登記を代行可能です。
1-2 行政書士のみができる独占業務は自動車の名義変更手続きのみ
相続手続きの中で司法書士が行えず行政書士のみが行える手続きは、自動車の名義変更手続きのみです。
行政書士の独占業務のひとつには、車庫証明など自動車の登録や許認可の申請などがあります。
そのため、相続した自動車の名義変更手続きを依頼する場合には行政書士に依頼しましょう。
1-3 行政書士は司法書士より若干費用が安め
行政書士は司法書士と比較して独占業務が少なく、以下の相続手続きは行政書士と司法書士の両方が行えます。
- 金融機関の相続手続き
- 遺産分割協議書の作成
- 遺言書の作成
行政書士は司法書士と異なり、上記の業務を単独で依頼可能です。
例えば、遺産分割協議書のみを作成したい場合や金融機関での相続手続のみを依頼したい場合は、行政書士への依頼が適しているでしょう。
一方で、司法書士は上記の業務を遺産整理業務として一括で請け負います。
そのため「遺産分割協議書のみを作成してほしい」などの依頼には対応できませんし、相続手続きを一括で請け負うため費用も高額になりやすいです。
相続手続き全体を任せたいのではなくピンポイントで依頼したい業務がある場合には、行政書士の方が費用が安くなる可能性があります。
ただし、依頼費用は行政書士か司法書士かだけでなく事務所ごとに変わりますので、依頼時には複数の事務所に相談し見積もりを出してもらうのが良いでしょう。
2章 相続手続きを司法書士に依頼すべきケース
相続した不動産の名義変更手続きは司法書士しかできないので、相続財産に不動産が含まれる場合には司法書士に依頼するのが良いでしょう。
他にも、下記のケースでは司法書士への相談をご検討ください。
- 不動産を相続したとき
- 遺言書の作成や生前贈与など相続対策をしたいとき
- 遺言書の検認手続きが必要なとき
- 相続放棄を検討しているとき
- 遺産整理業務を依頼したいとき
- 専門家の手で平等に遺産分割や相続手続きを行ってほしい人
司法書士は行政書士と異なり、遺産整理業務という形で相続手続きを請け負いますので、相続人全員の信任を得てすべての相続手続きを一括で行えます。
遺産整理業務を引き受けられるのは、士業の中でも司法書士と弁護士のみです。
3章 相続手続きを行政書士に依頼すべきケース
行政書士は、相続手続きの中でも自動車の名義変更手続きを行えます。
他にも、許認可申請も行政書士の独占業務なので、個人事業主の相続や事業承継が必要な相続に依頼するのがおすすめです。
相続手続きを行政書士に依頼すべきケースは、下記の通りです。
- 依頼費用を抑えるため戸籍調査や遺産分割協議書の作成のみ依頼したいケース
- 預貯金や自動車の相続手続きのみを依頼したいケース
- 相続人同士で信頼関係を築いているケース
行政書士には、戸籍調査や遺産分割協議書の作成など希望の手続きをピンポイントで依頼可能です。
一括で遺産整理業務を依頼できないデメリットはありますが、対応してほしい業務のみを依頼でき場合によっては費用を抑えられる可能性もあるでしょう。
また、行政書士が相続手続きを引き受ける場合には、相続人の代表者から依頼を受ける形になります。
行政書士が金融機関での相続手続きを引き受けた場合、故人から相続人の代表者名義に預金を移すことは可能です。
相続人の代表者名義から各相続人に預金を分配する行為は行政書士では行えず、相続人同士で行う必要がある点には注意しましょう。
このように、司法書士と行政書士では業務範囲や対応方法が異なります。
例えば、自動車と不動産を相続した人などは行政書士と司法書士のどちらに相談すれば良いのか迷ってしまうケースもあるでしょう。
相続手続きの手間を減らすために依頼する専門家の窓口を減らしたい場合には、行政書士と司法書士の両方が在籍している事務所や法人に依頼するのがおすすめです。
グリーン司法書士法人では、行政書士や司法書士を始めとする総勢80名を超えるスタッフが相続に関する相談をお受けしています。
4章 行政書士・司法書士では対応できない相続手続き
相続手続きを依頼できる専門家は行政書士と司法書士だけではなく、弁護士や税理士にも依頼できます。
弁護士と税理士はそれぞれ独占業務を持っていますので、依頼したい内容によっては弁護士や税理士に相談するのが良いでしょう。
弁護士と税理士の相続手続きにおける独占業務を詳しく解説していきます。
4-1 相続税の計算・申告は税理士のみ対応できる
相続税の計算や申告ができるのは、税務関係のプロである税理士のみです。
- 相続税がかかるか判断してほしいケース
- 相続税の計算、申告をしてほしいケース
- 相続税対策をしたいケース
上記のケースでは、税理士に依頼するのが良いでしょう。
4-2 相続トラブルの解決は弁護士のみ対応できる
弁護士は幅広い相続手続きに対応できますが、中でも相続トラブルの解決は弁護士のみが行えます。
司法書士でも相続トラブルが発生しないように予防は行えますが、トラブルが顕在化してしまい訴訟などに発展すると弁護士しか対応できません。
まとめ
相続手続きを依頼できる専門家には複数いますが、行政書士や司法書士にも依頼可能です。
行政書士も司法書士も、遺言書の作成や遺産分割協議書の作成を行える点は共通しています。
一方で、不動産の名義変更手続きは司法書士しか行えませんし、行政書士は自動車の名義変更手続きや許認可申請を独占業務として行えます。
相続手続きを依頼する際には、専門家の業務範囲を理解して、相談先を選ばなければなりません。
「複数の相続手続きを依頼したいが、相談先の窓口を絞りたい」と考える場合には、各士業で連携し合っている事務所や行政書士と司法書士の両方が在籍している事務所や法人に依頼するのが良いでしょう。
グリーン司法書士法人では、相続手続きに関する相談をお受けしています。
行政書士や司法書士を始めとする総勢80名を超えるスタッフが在籍していますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
相続は司法書士と行政書士のどちらに依頼すべき?
不動産を相続した人は司法書士に依頼するのがおすすめです。遺産に不動産がなく、相続人同士で信頼関係を築けている場合は行政書士に依頼でも良いでしょう。
▶相続における行政書士と司法書士の違いについて詳しくはコチラ相続で行政書士ができないことは何?
相続した不動産の名義変更手続きである「相続登記」ができるのは、司法書士のみです。
他にも相続税申告や相続トラブルの解決は行政書士では行えません。
▶相続手続きを依頼できる専門家について詳しくはコチラ相続手続きにおける行政書士と司法書士の違いとは?
司法書士は様々な相続手続きに対応できるのが特徴で、相続登記に関しては司法書士のみが対応可能です。
行政書士は、許認可など官公庁に関する手続きを行う他に、相続人調査や遺産の名義変更手続きなどを行えます。