遺産分割に納得できない時の対処法!遺産分割協議のやり直しは可能?

遺産分割に納得できない時の対処法!遺産分割協議のやり直しは可能?
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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 7

相続時には遺産の分割方法に納得できず、相続人間でしこりが残ってしまうケースも多いです。
故人が遺した財産が現金や預貯金など分割しやすい財産のみで相続人全員で公平に分けられるケースは稀だからです。

また、金額的には公平に財産を分け合ったとしても、生前の故人との関係性によっては相続に不公平感を持つ人もいるでしょう。
遺産分割のトラブルが泥沼化してしまうと当事者間での解決は難しくなってしまいます。
トラブルになりそう、納得できないと思った時点で、相続に詳しい司法書士や弁護士への相談をご検討ください。

本記事では、遺産分割に納得できない主な原因や対処法を紹介します。
遺産分割協議に関しては、下記の記事でも詳しく解説しています。

遺産分割協議とは?やり方や注意点・相談できる専門家まとめ

1章 遺産分割に納得できない6つの原因

まずは、遺産分割に納得できない、不公平だと感じやすい原因を6つ見ていきましょう。

  1. 遺産分割の提案が不公平だった
  2. 遺言書の内容に納得できない
  3. 遺言書があるのに遺産分割協議をしようと言われた
  4. 一部の相続人が生前贈与を受けていた
  5. 故人への貢献が遺産分割に反映されていない
  6. 相続財産が正当に評価されていない

それぞれ詳しく解説していきます。

1-1 遺産分割の提案が不公平だった

他の相続人から提案された遺産分割の内容が自分に不利、不公平だと納得できないと感じる人も多いです。故人が遺言書を用意していなかった場合、相続人全員で遺産分割協議を行わなければなりません。

遺産分割協議とは、誰がどの遺産をどれくらいの割合で受け継ぐか決める話し合いです。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要がありますが、相続人の中で年長者が中心となって話をまとめるケースも多いです。

中心となっている相続人が偏った内容の遺産分割を提案してきても、合意する必要はありません。
一度、遺産分割の内容に合意し遺産分割協議書を作成してしまうと、やり直しは非常に困難になるのでご注意ください。

1-2 遺言書の内容に納得できない

故人が遺言書を作成していた場合、原則として遺言書の内容通りに遺産分割を行う必要があります。
ただ、遺言書の内容が偏っている場合や自分にとって不利な内容だと納得できないと感じる人もいるはずです。

ただし、遺言書よりも遺留分は優先されるので、故人の配偶者や子供は遺言書の内容に関わらず最低限度の遺産は受け取り可能です。

1-3 遺言書があるのに遺産分割協議をしようと言われた

遺言書の内容に納得できなかった相続人が、遺言書の存在や内容を認めず遺産分割協議を求めるケースもあります。
自分が遺言書の内容に不満を感じていない場合、他の相続人の主張に困惑してしまうでしょう。

遺言書は亡くなった人が最期に自分の気持ちや希望を伝えるものです。
可能であれば、遺言書通りに遺産分割を行うよう他の相続人にはたらきかけましょう。

1-4 一部の相続人が生前贈与を受けていた

故人から生前贈与を受けていた相続人がいる場合には、遺産分割の際に不公平感を持つ人もいるはずです。

  • 学費
  • 住宅取得資金
  • 結婚・子育て費用

上記の理由による生前贈与は金額も大きくなりがちなので、不公平感もそれだけ生まれやすいです。
なお、相続人の中に故人から生前贈与を受けていた人がいる場合には、特別受益の持ち戻しを請求可能です。

特別受益とは、相続人が故人から個別に受けていた利益であり生前贈与などが該当します。
特別受益の持ち戻しが認められると、過去に行われた生前贈与を相続財産に含み遺産分割協議を行えます。

特別受益とは|持ち戻しの計算方法や具体例・トラブル回避のための対策

1-5 故人への貢献が遺産分割に反映されていない

長年にわたり故人の介護をしていた相続人や故人の事業を無償で手伝っていた相続人がいる場合、貢献度に応じた遺産分割協議を希望するケースもあるでしょう。
故人と相続人同士の関係性や故人への貢献を無視して法定相続分通りの遺産分割を行おうとした場合、納得できないと感じる人もいるはずです。

相続人による故人の介護や事業の手伝いは、寄与分として認められれば働きに見合った金額を遺産から受け取り可能です。

1-6 相続財産が正当に評価されていない

相続財産は現金や預貯金などのように、誰が見ても金銭的な価値がはっきりわかるものばかりではありません。
不動産や有価証券などの相続財産は、故人が死亡してから各相続人に分配されるまでに絶えず価値が変動します。

  • いつの時点の価値で遺産分割を決定するのか
  • どのような方法で財産を評価するのか

上記について、相続人全員で納得いく方法を見つけられず不公平感が生まれてしまう場合もあります。
相続財産の価値の評価方法で問題が起きやすいのは、代償分割を行う場合です。

代償分割とは、相続人の1人が不動産や有価証券などの財産を取得し、他の相続人に対して金銭を支払う遺産分割方法です。
例えば、不動産の評価方法が時価より安ければ、代償金を受け取る相続人は遺産が少なくなってしまいます。
そのため、相続財産の評価方法をめぐってトラブルになってしまうケースもあります。

代償分割とは?|メリット・デメリットから協議書の記載方法まで
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2章 遺産分割に納得できないときの対処法

先ほどの章で紹介したように、遺産分割に納得できない原因は複数考えられます。
原因ごとに対処法が異なるので、自分に合う対処や主張をしていくことが重要です。

  1. 法定相続分通りに遺産分割をする
  2. 遺言書があっても遺産分割協議を行う
  3. 遺留分侵害額請求を行う
  4. 特別受益の持ち戻しを主張する
  5. 寄与分を主張する
  6. 遺産分割調停・審判を申立てる

遺産分割に納得できないときの対処法は、主に上記の6つです。
それぞれ解説していきます。

2-1 法定相続分通りに遺産分割をする

遺産分割協議を行ったものの内容が公平でなかった場合には、法定相続分通りの遺産分割を提案してみましょう。
法定相続分とは、法律によって決められた相続分であり下記のように決められています。

法定相続人法定相続分備考
配偶者のみ配偶者100%
配偶者+子配偶者1/2子が複数人いる場合は均等に分配
1/2
配偶者+両親などの直系尊属配偶者2/3・親が複数人いる場合は均等に分配
・被相続人に最も近い世代のみが相続人となる。親・祖父母ともに存命の場合でも、親のみが相続人となります。
両親などの直系卑属1/3
配偶者+兄弟・姉妹配偶者3/4
兄弟・姉妹1/4
子のみ子100%
両親などの直系尊属のみ両親100%親が複数人いる場合は均等に分配
兄弟・姉妹のみ兄弟・姉妹100%兄弟・姉妹が複数人いる場合は均等に分配

例えば、相続人が故人の配偶者および子供2人の場合には、法定相続分は下記の通りです。

  • 配偶者:4分の2
  • 子供:4分の1ずつ

法定相続分に関わらず長男がすべての遺産を相続しようとしている場合には、遺産分割協議に同意せず法定相続分での遺産分割を提案しましょう。

相続権とは?|法定相続人の範囲と相続割合をわかりやすく解説

2-2 遺言書があっても遺産分割協議を行う

原則として遺言書は遺産分割協議より優先されますが、下記のケースでは遺言書があっても遺産分割協議を行えます。

  • 法定相続人全員が遺言書の存在を知っている
  • 法定相続人全員が遺産分割協議を行うことに同意している
  • 受遺者や遺言執行者も遺産分割協議を行うことに同意している
  • 遺言書によって遺産分割協議が禁止されていない

上記の条件を満たす場合、遺言書があっても遺産分割協議を行い相続人全員で合意した通りの相続を行えます。

2-3 遺留分侵害額請求を行う

一部の相続人や受遺者にすべて財産を相続させるなどの遺言書が用意されていた場合には、遺留分侵害額請求を行いましょう。
遺留分とは、故人の配偶者や子供に認められている遺産を最低限度受けとれる権利です。

遺言書の内容が遺留分を侵害している場合には、遺産を多く受け取った相続人や受遺者に対して遺留分侵害相当額の金銭を請求できます。
ただし、遺留分侵害額請求権は下記の時効が設定されています。

  • 遺留分が侵害されていることを知ってから1年
  • 相続開始から10年

上記を過ぎると、遺留分侵害額請求を行えないのでご注意ください。

遺言よりも遺留分が優先される!【効果的な5つの遺留分対策とは】

2-4 特別受益の持ち戻しを主張する

故人から生前贈与を受けた相続人がいる場合には、特別受益の持ち戻しを主張すれば公平な遺産分割を行えます。
特別受益の持ち戻しを行えば、過去に行われた生前贈与も相続財産に含め遺産分割協議を行えるからです。
特別受益の具体例は、下記の通りです。

  • 生活費の援助
  • 不動産の贈与
  • 養子縁組したときに家を用意した
  • 車の贈与
  • 持参金
  • 事業を始めるときの援助
  • 学資の援助
  • 無償で家に居住させていた

上記を受け取っていた相続人がいる場合には、特別受益の持ち戻しができないか検討してみましょう。
ただし、遺言書に「特別受益の持ち戻しを禁止する」と記載されていた場合には、生前贈与が行われていても他の相続人は特別受益の持ち戻しを主張できません。

2-5 寄与分を主張する

寄与分とは、亡くなった方の財産の維持や増加に貢献していた相続人が他の相続人よりも多く財産を相続できる制度です。
寄与分が認められれば、法定相続分よりも多く遺産を相続できる可能性があります。

寄与分が認められる主なケースは、下記の通りです。

  • 亡くなった方の事業に相続人が従事していた
  • 亡くなった方に対し自分の資金を負担していた
  • 亡くなった方の介護や療養を相続人が行っていた
  • 亡くなった方を相続人が扶養していた
  • 亡くなった方の財産を相続人が管理していた

例えば、10年以上にわたり無償で故人の介護を行っていたケースなどは、寄与分を主張できる可能性が高いです。
ただし、寄与分を主張するときには下記の点に注意が必要です。

  • 寄与分を主張できるのは法定相続人のみ
  • 寄与分の主張により受け取れるのは、故人の財産の維持や増加に貢献した相当分

寄与分の主張が認められても、相続割合が増えるわけではありません。
相続人が行っていた介護を外注した場合の実費相当分などのように、受け取れる金額はあくまでも故人の財産の維持や増加に貢献した分となります。

2-6 遺産分割調停・審判を申立てる

他の相続人が提示した遺産分割の内容に納得できない場合や遺留分や特別受益、寄与分などに不満がある場合には、遺産分割調停や審判の申立てもご検討ください。
遺産分割調停では、調停委員が間に立ち、相続人間で遺産分割に関する話し合いを行います。
あくまでも調停は話し合いであり不成立になった場合には、遺産分割審判へと手続きが進みます。
遺産分割審判では裁判官が具体的な遺産の分割方法を決定し、相続人は内容に従わなければなりません。

【遺産分割調停】申立てから解決までの手続き・費用・期間を解説
相続の揉め事は弁護士に相談する

遺産分割調停や審判を行うなど、相続トラブルが顕在化してしまうと解決できる専門家は弁護士しかいません。
特に、遺産分割審判では相手方の相続人も弁護士を用意している可能性があるので、対抗するためにも弁護士に依頼するのがおすすめです。

一方で、遺産分割に納得ができていないで不満を抱えている段階では、弁護士ではなく司法書士が解決できるケースもあります。
相続に強い司法書士に遺産分割協議を依頼すれば、公正明大に財産目録を作成したり、中立的な立場で遺産分割方法のパターンをアドバイスしたり、相続手続きを行うことが可能です。

また、司法書士は世間的にも紛争のイメージがないので「家族だけだとトラブルになりそうだし、穏便に相続手続きを進めたい」というご家族からの依頼が多くあります。

グリーン司法書士法人では、遺産分割協議を始めとする相続問題に関する相談をお受けしています。
まずはお気軽にお問い合わせください。

相続の相談をする専門家の正しい選び方と資格別の特徴【比較表付き】

3章 遺産分割協議のやり直しができるケース

遺産分割協議は一度内容を決定し、遺産分割協議書にまとめてしまうと後からやり直すのは非常に困難です。
一方で、法定相続人全員が合意すれば遺産分割協議のやり直しを行えますし、相続財産に漏れがあった場合には再び遺産分割協議をしなければなりません。

3-1 遺産分割協議時に相続財産に漏れがあった

遺産分割協議を行う際に財産に漏れがあった場合には、新たに判明した財産に関し、再び遺産分割協議を行わなければなりません。
また、財産の漏れが重大であり「その財産の存在が最初からわかっていたら、当初の遺産分割に合意しなかった」と考えられるケースでは、相続人は最初に行った遺産分割協議の無効を主張できます。

追加された財産のみ遺産分割協議を行うにしろ、遺産分割協議全体をやり直すにしろ非常に手間がかかることには変わりありません。
余計な時間と手間、相続人間のトラブルを避けるためにも、遺産分割協議前には相続財産の調査を徹底的に行いましょう。

相続に詳しい司法書士や弁護士であれば、相続財産調査から遺産分割協議、各財産の名義変更手続きまでワンストップで代行可能です。

相続財産とは?【簡単】正しく理解するために知っておくべき基礎知識

3-2 法定相続人全員が遺産分割協議のやり直しに合意した

遺産分割協議が無効になる原因がなかったとしても、法定相続人全員がやり直しに合意すれば、再び遺産分割協議を行えます。
ただし、遺産分割協議のやり直しを行う際には下記の点に注意が必要です。

  • すでに相続税を納めている場合、納め過ぎた税金は戻ってこない
  • 遺産分割協議のやり直しで財産の移動があると、贈与税がかかる場合がある
  • 不動産の所有者が変更になった場合には、名義変更手続き時に登録免許税がかかる

上記のように、遺産分割協議のやり直し自体は可能であっても、余計な税金や手間がかかってしまいます。はじめから相続人全員が納得する遺産分割協議を行えるのが最善なので、疑問点や不審な点がある場合には遺産分割協議に合意しないようにしましょう。

また、相続人同士で公平な遺産分割協議を行うのが難しいケースでは、相続に詳しい司法書士や弁護士に依頼するのもおすすめです。

遺産分割協議をやり直さなければならないケース

先ほど解説したケースでは、遺産分割協議のやり直しが認められますが、一方で遺産分割協議をやり直さなければならないケースもあります。

  • 参加していない相続人がいた
  • 判断能力のない相続人が参加していた
  • 遺産分割協議の中で騙されたり脅迫されたりした事実があった

具体的には、上記のケースでは遺産分割協議そのものが無効になってしまうので、相続手続きを進める際にはやり直しが必要です。
例えば、相続人の中に認知症の人がいた場合には、遺産分割協議が無効になる恐れがあるのでご注意ください。

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まとめ

遺産分割の内容に納得できない、不公平だと感じる原因には様々なものがあります。
原因ごとに対処法が違うので、まずは自分がどうして遺産分割に納得できないと感じるのかを整理しましょう。

原因がはっきりしたら、相続人間で話し合い双方納得のいく遺産分割の方法を探します。
相続に同士での解決が難しい場合には、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談するのもおすすめです。
相続に精通した専門家であれば、過去の事例から双方ともに納得のいく提案も可能です。

グリーン司法書士法人では、相続に関する様々な相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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