不動産権利証と登記識別情報:相続登記での役割を分かりやすく解説

不動産の権利証と登記識別情報の違いとは?相続登記で必要になる?
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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 4

不動産の権利証とは、土地や家の所有権を証明する書類であり、正式名称は「登記済権利証」といいます。
権利証は不動産売却や贈与など、登記変更を行う際に必要です。
その一方で所有者の死亡により、所有権が移転する相続登記では原則として不動産の権利証は必要ありません。

また権利証は平成17年頃までしか発行されておらず、平成18年以降は各地域の法務局ごとにオンライン化され順次、「登記識別情報」が発行されるようになりました。
本記事では、不動産の権利証とは何か、登記識別情報との違いや権利証を紛失したときの対処法を紹介していきます。


1章 権利証とは

登記済権利証の見本

不動産権利証とは、土地や家の所有権移転登記や所有権保存登記が完了したことを証明する大切な書類です。
正式名称を「登記済権利証」といい、不動産の購入や相続などをしたときに法務局から発行してもらえます。

不動産登記法が改正され、登記情報の管理がオンライン化されたことにより、平成18年以降は権利証ではなく登記識別情報が発行されるようになりました。
亡くなった方が所有していたはずの権利証が見つからない場合には、権利証ではなく登記識別情報が発行されている可能性もあります。

1-1 登記識別情報との違い

権利証は「原本」そのものに価値があるのに対し、登記識別情報は紙に記載されている「情報(パスワード)」に価値があります。先ほど解説したように、権利証は平成17年3月6日までに発行されていた書類です。
不動産登記法の改正により、平成17年3月7日以降は法務局ごとに順次、登記識別情報が発行されるようになりました。
権利証と登記識別情報の違いは、主に以下の通りです。

権利証登記識別情報
発行年平成17年3月6日までに登記された不動産に発行される平成17年以降に登記された不動産に発行される
(法務局ごとに移行期間が異なり、平成18年から平成19年にかけて順次変わっていった)
効力発行された権利証そのものに効力がある登記識別情報に記されているパスワードに効力がある(12桁の数字・アルファベットの組み合わせ)

上記の通り、権利証は紙自体に効力があるので、登記申請の際には権利証の原本の提出が必要です。
それに対して、登記識別情報は情報そのものに意味があるので、数字とアルファベットの組み合わせさえわかればコピーの提出でも、手書きでパスワードを提出しても問題ありません。
下記は、登記識別情報通知の見本です。

登記識別情報通知の見本

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2章 権利証や登記識別情報を使用するとき

権利証や登記識別情報は、不動産の売却や贈与、抵当権の設定など登記変更をする際に必要です。
不動産の売却や贈与、抵当権の設定などは、土地や家の持ち主に対してデメリットがある登記です。
そのため、登記申請に間違いがなく、所有者本人の意思で登記を行うと証明するために、権利証や登記識別情報の提出が必要になります。

一方で相続登記を行う際には、原則として権利証や登記識別情報の提出は不要です。
相続は亡くなった方の死亡によって自然発生するため、不動産所有者の意思は関係しないからです。
ただし一部の相続では、登記時に権利証や登記識別情報の提出が必要になります。詳しく確認していきましょう。

2-1 相続登記で権利証は原則不要【例外あり】

相続登記は、不動産所有者の死亡が原因で行われる登記です。
所有者本人の意思は関係なく行われるので、一般的に相続登記の際には権利証や登記識別情報を提出する必要がありません。
ただし以下のケースでは、相続登記であっても権利証や登記識別情報の提出が必要になります。

  • 亡くなった方の最終住所と登記記録上の住所が繋がらない場合
  • 相続人以外の第三者に遺贈する場合

住民票の保存期間は、転出や死亡等で住民票が除かれてから5年間であり、戸籍の附票も保存期間は5年間となっています。
そのため死亡して5年以降経過した方の相続登記を行おうとすると、亡くなった方の住民票を発行できず、登記情報として記録されている住所と繋がらなくなってしまう恐れがあります。
この場合には、以下の書類を提出すれば相続登記が可能です。

  • 権利証もしくは登記識別情報
  • 相続人全員からの上申書
  • 相続人全員の印鑑証明書

また上記のケース以外でも、受遺者と遺言執行者が共同で申請を行う遺贈による登記の場合にも、権利証や登記識別情報の添付が必要です。

【不動産の名義変更(相続登記)していない方は司法書士へ相談しよう!】

2024年より相続による不動産の名義変更(相続登記)は義務になります
もし相続した不動産の名義変更がお済みでないのであれば、まずは相続登記を行いましょう。

相続登記は司法書士に代行してもらうことも可能ですし、相続登記を司法書士に依頼すれば、土地活用の相談や必要に応じて不動産会社や税理士など別の専門家も紹介してもらえます。

相続登記の義務化に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

【相続登記の義務化】知っておくべき期限と放置すると生じるリスク


3章 権利証を紛失した・見つからないときの対処法

不動産の権利証や登記識別情報は、一度しか発行されず、失くしたとしても再発行はできません。
そのため不動産の売却や贈与、一部の相続などで権利証や登記識別情報が必要になった際には、以下の対処が必要になります。

  1. 司法書士へ本人確認情報の作成を依頼する
  2. 相続が発生してから相続登記する
  3. 遺贈の場合は遺言執行者を選任しておく

それぞれ詳しく解説していきます。
不動産の権利証を紛失したときの対処法は、以下の記事でも詳しく解説していきます。

3-1 司法書士へ本人確認情報の作成を依頼

不動産の売却や贈与の際に司法書士へ登記代行を依頼するのであれば、合わせて本人確認情報の作成を依頼するのがおすすめです。
司法書士が作成する本人確認情報とは、司法書士や弁護士といった専門家が不動産所有者の代理人となり、不動産の所有者及び登記申請の内容を証明してくれる書類です。

本人確認情報の作成は、登記代行と合わせて依頼できるのでスムーズに売却や贈与の手続きを進められるのがメリットといえるでしょう。
一方で登記代行に加えて本人確認情報の作成を司法書士に依頼した場合、登記代行費用とは別に追加で数万円程度の費用がかかるのがデメリットです。

3-2 相続が発生してから相続登記する

本記事ですでに解説したように、一般的な相続登記では権利証や登記識別情報の提出は必要ありません。
そのため売却や贈与の予定がなく、自分が亡くなった後は相続人に引き継ぐつもりであれば、相続発生後に速やかに相続人に相続登記してもらうのでも良いでしょう。

相続登記が完了したら新しい登記識別情報が発行されるので、そちらを大切に保管しておけば問題ありません。
ただし、2024年以降相続登記は義務化され、期限までに相続登記をすませないと罰則が科されますので、少なくとも期限内には登記を行うようご注意ください。

3-3 遺贈の場合は遺言執行者を選任しておく

相続人以外の第三者に遺贈として不動産を相続してもらう場合には、相続登記であっても権利証や登記識別情報の提出が必要です。
遺贈を希望していて、権利証や登記識別情報をなくしてしまった場合には、遺言執行者を選任しておきましょう。

遺言執行者を選任すれば、遺贈による所有権移転登記でも遺言執行者が単独登記することが可能です。
権利証や登記識別情報を添付せずに登記申請をした場合でも、遺言執行者宛に登記内容に問題がないか通知が届くので、登記申請をスムーズに進めやすいです。

なお遺言執行者を選任せず、遺贈で不動産を相続した受遺者が権利証等を添付せず登記申請を行うと、相続人全員に登記内容に問題がないか確認する書類が届きます。
相続人全員が2週間以内に「登記内容に間違いはない」と書類の返送を行えば、登記申請手続きは進められます。
受遺者と相続人全員の関係が円滑であれば、こちらの手段を選択しても問題ないでしょう。

遺言書の作成や遺言執行者の選任、相続登記に関しては不動産や相続に関する専門的な知識も必要です。
個人で行うこともできますが、必要に応じて司法書士や弁護士といった専門家への相談や依頼もご検討ください。

遺言執行者とは|誰がなれる?選任方法や仕事内容を徹底解説【完全版】

まとめ

土地や家の権利証とは、名前の通り不動産の所有権を証明する書類です。
所有権移転登記や所有権保存登記などの手続きが完了した際に、法務局から発行してもらえます。
ただし不動産登記法の改正により、登記事務のオンライン化が進められているので、平成18年から平成19年にかけて順次、権利証ではなく登記識別情報が発行されるようになりました。

また登記申請時に権利証が必要になるのは、売却や贈与など所有者の意思によって行われる登記の場合です。
所有者の死亡により発生する相続登記に関しては、原則として権利証や登記識別情報の提出は不要となっています。

そのため万が一、権利証を紛失してしまった場合には、相続登記時に登記識別情報が新たに発行されるまでそのままにしておくのも選択肢のひとつです。
ただし相続人以外の第三者に相続する遺贈の場合には、相続登記であっても権利証の提出が必要なのでご注意ください。

グリーン司法書士法人では、相続登記を始めとした相続手続きの相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能なので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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よくあるご質問

権利証はどこでもらえる?

権利証は所有権移転登記が完了したときにもらえます。
再発行はできないので、万が一紛失したときには下記の手続きが必要です。
・司法書士へ本人確認情報の作成を依頼する
・相続が発生してから相続登記する
・遺贈の場合は遺言執行者を選任しておく
▶権利証の発行方法について詳しくはコチラ

権利証の再発行はできる?

権利証は所有権移転登記完了時に発行されるのみで再発行はできません。
▶権利証について詳しくはコチラ

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