
赤楚衛二さん主演のドラマ『相続探偵』(毎週土曜 夜9:00~)が、ついに最終回を迎えました。
『相続探偵』は、同名の漫画を原作とするドラマで、その名の通り「相続」をめぐる人々の人間模様や、遺産を巡るミステリーが織り込まれた作品です。法律知識がベースになりながらも、エンターテインメント性が高く、出演者の方々の熱演も相まって各方面で好評を博していました。
最終話の解説となる今回は、司法書士の視点から、この『相続探偵』最終話(第10話)「遺言書が導く未来」の内容に絡めて、現実の相続で役立つ知識をご紹介します!
目次
ドラマ『相続探偵』とは…
ドラマ『相続探偵』は、原作:西荻弓絵、作画:幾田羊による同名の漫画を原作としたヒューマンミステリーです。
主人公の灰江七生(演・赤楚衛二)は、元弁護士でありながら、現在は相続専門の探偵として活躍する変わり者の男。
そんな彼が、「遺言書は愛する人に出す最後の手紙」という信念のもと、コミカルかつ痛快に、遺産相続に関する難解な事件を解決していくのが本作の要点となっています。
『相続探偵』最終話(第10話)「遺言書が導く未来」の概要
1. 最終話(第10話)「遺言書が導く未来」あらすじ(ネタバレなし)
灰江七生(赤楚衛二)のもとに、協力者となった羽毛田香(三浦貴大)から一通の遺言書が届きます。
18年前に父・和宏(鈴木浩介)が起こしたバス事故をめぐる真相を追い続けてきた灰江は、法曹界の重鎮であり実父でもある地鶏健吾(加藤雅也)の罪を暴こうとしていました。しかしその矢先、羽毛田が何者かに襲撃され、姿を消してしまいます。
羽毛田の遺言と共に託されたメッセージ、そして灰江を支えようとする令子(桜田ひより)の奮闘。彼らの努力が少しずつ真実を明らかにしていくなか、灰江はついに国家を相手に訴訟を起こそうとします。
しかし、予想外の事態が起こり、灰江と朝永(矢本悠馬)は逮捕されてしまう――。物語はいよいよ最終局面へ!
ここに注目!
「相続」をテーマとする本作のクライマックスを彩るのは、やはり「遺言書」。羽毛田が灰江に託した遺言書、令子が記した遺言書、そして灰江の父・和宏が遺していた遺言書が、物語の重要なキーとなっていました。
ここで浮かび上がるのが「遺言者が生きている場合に、その遺言書は有効なのか?」という問題と、遺言書に記された法律関係以外のメッセージ、即ち「付言事項(ふげんじこう)」の取り扱いです。
2. 司法書士が解説!相続に関する重要ポイント
1. 遺言者が生存している場合の遺言書の効力は?
遺言書は「死亡によって効力が発生する」文書です。 つまり、遺言者が生存しているうちは、遺言書はまだ法的には効力を持ちません。
ただし、遺言書の内容が死後を前提とするものであり、死後に効力を発生させる意図で書かれたものであれば、後に遺言者が死亡した時点で効力が発生します。
したがって、「万一自分に何かあったときのために」あらかじめ遺言書を託しておくこと自体は、形式としてはおかしくないものの、遺言者が死亡するまでは実際の効力は持たない点に注意が必要です。
なお、遺言者の生存中に家族などが勝手に遺言書を開封してしまった場合や、死亡後であっても家庭裁判所の検認手続きを経ないで開封してしまった場合は、過料のペナルティを科されることはありますが、それによって遺言書が無効になるわけではありません。
2. 遺言書に書かれる「付言事項」とは?
遺言書には、法律上の効力を持つ「遺産分割に関する指定」や「死後認知」などのほかに、法的効力を持たない「メッセージ」や「お願い事」なども記載することができます。これを「付言事項」といいます。
たとえば、
- 「長男にはこれまでの介護に感謝している」
- 「相続人同士で争わないように願います」
- 「自分の葬儀はこのように行ってほしい」
といった内容は、遺言者の思いや価値観を示す部分であり、法的な強制力は持たないまでも、相続人の理解や円満な相続に大きな影響を与えることもあります。
3. 視聴者の疑問に司法書士が答えます!
Q1. 生きている内に遺言書を誰かに見てもらうのはおかしい?
作中で羽毛田や令子が見せた行動のほか、一般に、「あなたのために財産を遺そうと考えている」などと、遺言書の内容を生前のうちに人に伝えるのはおかしいことではありません。
ただし、遺言は「死後」に効力を発揮するものです。生きている内に人目に触れさせることに意味がある場合は、あえて「遺言」という名目にしないほうが適切なこともあります。
Q2. 遺言書の付言事項って無視していいの?
付言事項には法的効力はありませんが、遺言者の思いが込められた大事な部分です。相続人がそれを尊重することで、争いを防ぐ一助になります。
まとめ
『相続探偵』の最終話では、遺言書という重要なアイテムを通して、「死後の意思の伝え方」や「遺言の真の役割」に焦点が当てられました。
遺言は、単なる法的文書ではなく、遺される人への「最後の手紙」であることを、改めて実感させてくれるエピソードでした。
相続をめぐるトラブルを防ぐためには、正しく遺言を作成し、適切に保管し、そして思いも伝えることが大切です。ドラマをきっかけに、遺言や相続について考える人が一人でも増えることを願っています。