未登記建物の相続登記は自分でできる?手続きの流れや注意点

未登記建物の相続登記は自分でできる?手続きの流れや注意点
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司法書士山中泉

 監修者:山中泉

この記事を読む およそ時間: 5
この記事でわかること

  • 未登記建物の相続登記は自分でできるのか
  • 未登記建物の相続手続きをする流れ
  • 未登記建物を相続したときの注意点

未登記建物を相続した場合、「もともと登記されていないから、何もしなくてもいい」と考えてしまう方も少なくありません。
しかし、登記簿に記録がない建物は、法的には所有者不明の状態となり、売却や活用が難しくなります。

さらに、相続登記の義務化により、相続した未登記建物を放置していると過料の対象となる可能性もあるのでご注意ください。
本記事では、未登記建物の相続登記の流れや注意点をわかりやすく解説します。


1章 未登記建物とは

未登記建物とは

未登記建物とは、建物の所有者が法務局に登記申請を行っておらず、登記簿上にその存在が記録されていない建物です。

建物の登記は、所有権を法的に証明するための制度であり、登記されていない建物は、法律上は存在しますが、登記がなければ他の相続人や第三者に所有権を主張しづらくなります。

未登記建物とは?放置するリスク・デメリットや登記方法を簡単解説

1-1 未登記建物を放置するリスク・デメリット

未登記建物は「現状、住めているんだから問題ないのではないか」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、未登記建物を放置すると、以下のようなリスクやデメリットがあります。

  • 相続登記が複雑になる
  • 売却・贈与ができない
  • 担保にできない
  • 行政手続きや補助金申請で不利になる
  • 相続人同士でトラブルが起こりやすい

上記のような問題を回避するためにも、未登記建物を所有している場合や相続した場合には、できるだけ早く手続きすることをおすすめします。


2章 未登記建物の相続登記は自分でできるがおすすめできない

法律上は、未登記建物を相続した場合、相続人が自分で登記申請を行うことも可能です。
しかし、実務上は非常に複雑であり、専門家でない方が正確に手続きを進めるのは難しいでしょう。

まず、未登記建物は登記簿を新たに作るための「表題登記」をしなければなりません。
この表題登記は、建物の構造・用途・床面積などを正確に測量・確認したうえで申請しなければならず、土地家屋調査士の専門分野にあたります。

そして、表題登記が完了したら、ようやく「相続登記」を進めます。
相続登記では、故人が生まれてから死亡するまでの連続した戸籍謄本類などを収集する必要があり、手続きに手間がかかります。
なお、相続登記は土地家屋調査士ではなく、司法書士の専門分野です。

このように、未登記建物の相続登記は複数の申請をしなければならないため、土地家屋調査士と司法書士が連携して対応するのが最も確実な方法といえるでしょう。


3章 未登記建物の相続手続きをする流れ

未登記建物を相続した場合、表題登記をした後に所有権保存登記の手続きを行います。

具体的には、以下のような流れで手続きしましょう。

  1. 未登記建物を相続する人物を決める
  2. 表題登記をする
  3. 所有権保存登記をする

それぞれ詳しく解説していきます。

STEP① 未登記建物を相続する人物を決める

まず、故人が所有していた未登記建物を、誰が相続するかを確定させる必要があります。
ただし、未登記建物の場合は登記簿謄本で不動産の所有者を確認することができません。
そのため、建物の固定資産税納税通知書や建築当時の資料などから、被相続人の所有であることを確認する必要があります。

未登記建物が故人が所有していた不動産であるとわかったら、以下のような流れで相続する人物を決定しましょう。

  1. 故人が遺言書を用意していたか確認する
  2. 相続人調査をする
  3. 他の遺産も含め、相続財産調査をする
  4. 遺産分割協議をする

遺産分割協議とは、相続人全員で誰がどの遺産をどれくらいの割合で相続するかを決める話し合いです。
遺産分割協議がまとまったら、決定した内容を遺産分割協議書にまとめ、名義変更手続きの準備を進めていきます。

遺産分割協議とは?やり方や注意点・相談できる専門家まとめ

STEP② 表題登記をする

遺産分割協議で相続人が決まったら、次に行うのが表題登記です。
表題登記とは、法務局に「この場所にこういう建物が存在する」という事実を初めて登録する手続きです。

表題登記が完了することで、新たに登記簿が作成されます。

この登記には、建物の構造・種類・床面積などの詳細な情報を図面付きで申請する必要があり、土地家屋調査士が代行できます。
表題登記に必要な書類は、主に以下の通りです。

  • 印鑑証明書
  • 申請人の住民票
  • 固定資産税の納付証明書
  • 建物図面や各階平面図
  • 建築確認書・検査済証
  • 建築代金の領収書
  • 施工業者からの引き渡し証明書

など

表題登記は、現況と登記内容が一致していなければ受理されません。
例えば、増築や改築で面積や構造が変更されている場合は、その内容を正確に反映する必要があるのでご注意ください。

古い家屋であり、図面や確認資料が残っていない場合には、現地調査と測量が必要となることもあります。

STEP③ 所有権保存登記をする

表題登記が完了すると、建物が正式に法務局の登記簿上に登録されます。
次は、所有権保存登記(相続登記)を行いましょう。

所有権保存登記では、以下のような書類を提出します。

  • 故人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍・改製原戸籍
  • 故人の住民票の除票(または戸籍の附票)
  • 法定相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 相続関係説明図(家系図の様式でも可)
  • 遺産分割協議書(全員の署名・実印による押印、割印)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 固定資産評価証明書、納税通知書(財産の評価額を確定するため)
  • 登記申請書(所有権移転登記用)
  • 登録免許税(主に収入印紙で納付)

なお、上記の書類は、遺産分割協議による相続登記を行う際に必要となるものです。
遺言や法定相続による相続登記をする場合は、必要書類が異なることもあるのでご注意ください。

相続登記は自分で行うこともできますが、司法書士に数万円程度で依頼することも可能です。

相続登記に必要な書類を完全解説|パターン別リストと取得方法

4章 未登記建物を相続したときの注意点

未登記建物を相続した場合、通常の不動産相続とは異なる点がいくつかあります。
具体的には、以下のような点に注意しましょう。

  • 建物を取り壊すのであれば表題登記は不要である
  • 表題登記の申請を怠ると過料が科せられる恐れがある
  • 相続登記は相続開始3年以内に行わないと過料が科せられる恐れがある

それぞれ詳しく解説していきます。

4-1 建物を取り壊すのであれば表題登記は不要である

相続した未登記建物を今後も利用する場合は、表題登記と所有権保存登記を行う必要がありますが、建物を取り壊す予定であれば、わざわざ登記を行う必要はありません。

建物の存在を登記簿上に記録する前に取り壊してしまえば、そもそも登記の対象ではなくなるからです。
ただし、そのまま放置するのではなく、市区町村役場に「家屋滅失届出書(家屋減失届)」を提出する必要があります。
家屋減失届出書を提出しないと、固定資産税がかかり続ける恐れがあるからです。

4-2 表題登記の申請を怠ると過料が科せられる恐れがある

建物を新築した場合や未登記建物を相続により取得した場合には、一定の期限内に表題登記を行わなければなりません。
法律では、建物の新築から1か月以内に表題登記を申請しなければならないと定められているからです。正当な理由なく、これを怠った場合、10万円以下の過料が科せられる恐れがあります。

そして、相続で未登記建物の所有権を取得した場合も、やはり1ヶ月以内に表題登記を申請することが義務付けられているので、早めに手続きすることが大切です。

4-3 相続登記は相続開始3年以内に行わないと過料が科せられる恐れがある

2024年4月からは相続登記が義務化され、相続発生から3年以内に登記申請をしないと、10万円以下の過料が科せられる恐れがあります。

相続した建物が未登記建物であることは、相続登記をしない正当な理由とは判断されないのでご注意ください。
未登記建物を相続した場合は、表題登記をしてから相続登記をしなければなりません。
通常の相続登記より時間がかかることが予想されるため、できるだけ早く準備することが大切です。

相続登記の期限はいつ?2024年義務化の内容・罰則・対処法を解説

まとめ

未登記建物の相続登記は、最初に表題登記を行い登記簿を作成してから、相続登記を行う必要があります。
手続きは自分で行うこともできますが、必要書類の数も多く手続きも複雑なので、土地家屋調査士や司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続した未登記建物の登記申請が完了しないと、不動産の活用や売却を行うことができないのでご注意ください。
また、相続登記の義務化により、相続発生から3年以内に登記をしなければ過料が科せられる可能性もあります。

グリーン司法書士法人では、相続登記についての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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よくあるご質問

未登記建物の相続登記は誰に依頼すれば良いですか?

未登記建物を登記する場合、まずは表題登記を行い、その後に所有権移転登記を行う必要があります。
表題登記を専門分野としているのは、土地家屋調査士であり、所有権移転登記は司法書士に依頼するのが一般的です。

未登記建物をそのまま相続登記することはできないのですか?

結論から言うと、未登記建物をそのまま相続登記することはできません。
登記簿上に存在していない建物は、そもそも登記名義人がいない状態のため、相続登記の対象にならないからです。
そのため、相続登記を行うには、表題登記を行い不動産を登記簿に登録しなければなりません。
表題登記が完了した後に、所有権移転登記を行い、相続人が所有者であると申請します。

未登記建物も解体することはできますか?

はい、未登記建物でも解体することは可能です。
登記されていない建物であっても、実際に存在していれば所有物として扱われるからです。
したがって、相続人がその所有権を有している限り、解体工事を行うことに支障はありません。
ただし、解体後には「家屋滅失届出書(家屋減失届)」を市区町村役場に提出する必要があります。
提出しないと、建物の固定資産税がかかり続ける恐れがあります。

未登記建物の相続登記は司法書士と土地家屋調査士のどちらに頼むのですか?

未登記建物の相続登記には、司法書士と土地家屋調査士の両方が関わります。
それぞれの役割は、以下の通りです。
・土地家屋調査士:表題登記を担当
・司法書士:所有権保存登記を担当
つまり、まず土地家屋調査士が「建物が存在する」という事実を登記簿に反映し、その後に司法書士が「誰の建物であるか」を登録するという流れになります。

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