- 相続登記の義務違反をしたときに課される過料とは何か
- 相続登記の義務に違反したときの過料は相続人全員に発生するのか
- 相続登記の義務違反を避ける方法
2024年から相続登記が義務化され、相続発生から3年以内に登記申請をすませないと10万円以下の過料が発生する恐れがあります。
相続登記の義務化に違反した場合に発生する過料は、不動産ごとに対して発生するのか、相続人ごとに発生するのかは現段階では不明です。
とはいえ、相続登記の義務化は所有者不明の土地が増加している問題を解決する目的で設立されたので、不動産ごとではなく、相続人ごとに過料が発生する可能性は十分にあるでしょう。
本記事では、相続登記義務化の過料は相続人全員に発生するのか、過料を避ける方法はあるのかを解説していきます。
目次
1章 相続登記の義務化とは
2024年から相続登記が義務化され、相続発生から3年以内に登記申請をすませないと10万円以下の過料が発生する恐れがあります。
相続登記の義務化は、所有者不明の土地が増え続ける問題を解決するために設立されました。
なお、相続登記の義務化は、過去に発生した相続についても適用されます。
そのため、過去に相続した不動産の登記申請がおすみでない人は、早めに相続登記をすませましょう。
相続登記は自分で行うこともできますが、司法書士に数万円程度で依頼することも可能です。
グリーン司法書士法人でも、相続登記についての相談をお受けしていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
2章 相続登記義務化の過料は相続人全員に発生する?
先ほど解説したように、相続開始から3年以内に登記申請をすませないと、10万円以下の過料が発生する恐れがあります。
2024年6月時点では、相続登記の義務化の過料が相続人全員に対してそれぞれ発生するのか、不動産に対して発生するのかは不明です。
相続登記の義務違反による過料の取り扱いは、下記の通りです。
- 遺産分割協議が完了していない場合は相続人全員に過料が発生する可能性がある
- 共有名義で相続した場合は名義人全員に過料が発生する可能性がある
- 遺産分割協議完了後は不動産の取得者に過料が発生する
- 正当な理由があると認められると過料は発生しない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1 遺産分割協議が完了していない場合は相続人全員に過料が発生する可能性がある
遺産分割協議が完了しておらず、相続登記できていない不動産については、相続人全員に過料が発生する可能性があります。
遺産分割協議が完了していない場合、亡くなった人が所有していた不動産は相続人全員の共有財産となるからです。
なお、2024年6月時点では、相続人一人ひとりに対して過料が発生するか、不動産ひとつにつき過料が発生するのかは不明です。
ただし、予想としては不動産に対して過料が発生するのではなく、相続人全員に対してそれぞれ過料が発生する可能性が高いでしょう。
2-2 共有名義で相続した場合は名義人全員に過料が発生する可能性がある
亡くなった人が所有していた不動産を相続人が共有名義で相続した場合、登記申請をしないと名義人全員に過料が発生する可能性があります。
加えて、共有名義による相続は、将来相続が発生すると権利関係者が増えてしまう、活用や売却が難しいなどのリスクがあります。
そのため、可能であれば共有名義による相続は避けた方が良いでしょう。
相続に詳しい司法書士や弁護士であれば、相続人や不動産の状況に適した遺産分割方法を提案可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
2-3 遺産分割協議完了後は不動産の取得者に過料が発生する
遺産分割協議が完了しているにもかかわらず、相続登記が行われない場合は、不動産を取得すると決まった人物にのみ過料が発生します。
不動産を取得しない相続人は、過料が課されないのでご安心ください。
ただし、遺産分割協議が完了しているかどうかを法務局や裁判所が判断する手段がないため、不動産を受け継がない相続人も相続登記についての催告が届く恐れはあります。
その場合は、放置せず法務局や裁判所に遺産分割協議が完了していることや自分が不動産を相続しないことを伝える必要があるでしょう。
また、不動産を取得する相続人に対して登記申請を行うように裁判を起こすことも可能です。
2-4 正当な理由があると認められると過料は発生しない
正当な理由があると認められる場合は、相続登記の義務違反による過料が発生しません。
相続登記がすぐにできない正当な理由として認められるものは、主に下記の通りです。
- 相続人の人数が極端に多いケース
- 相続不動産について遺言書の有効性や遺産の範囲などで争っているケース
- 相続登記の義務者が重病であるケース
- 相続登記の義務者が配偶者からDVを受けているケース
- 相続登記の義務者が登記申請の費用を用意できないケース
何らかの理由により登記申請が難しい場合は、正当な理由に該当するか相続に詳しい司法書士に確認してもらうのも良いでしょう。
3章 相続登記義務化の過料を避ける方法
相続登記の義務違反による過料を避けるには、相続から3年以内に登記申請をすませる必要があります。
万が一、遺産分割協議がまとまらず期限内に相続登記をするのが難しい場合は、相続人申告登記や法定相続による相続登記を行いましょう。
相続登記の義務違反の過料を避ける方法は、主に下記の通りです。
- 相続発生から3年以内に相続登記をすませる
- 相続人申告登記を行う
- 法定相続による相続登記を行う
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1 相続発生から3年以内に相続登記をすませる
相続登記の義務違反による過料を避けたいのであれば、相続発生から3年以内に登記申請をすませましょう。
自分で相続登記を行うのが難しい場合や平日日中は仕事をしており、相続登記に必要な書類を収集できない場合は、司法書士に登記申請を依頼しても良いでしょう。
司法書士であれば、数万円程度で相続登記を行ってくれるので、相続登記の義務違反による過料を払うよりも安くすむ可能性があります。
また、相続に詳しい司法書士であれば、相続登記の手続きだけでなく、相続人や遺産の状況に適した遺産分割の方法も提案可能です。
3-2 相続人申告登記を行う
万が一、相続登記の期限までに遺産分割協議が間に合わない場合は、相続人申告登記を行いましょう。
相続人申告登記とは、不動産の所有者が亡くなったことおよび自分が相続人であることを申告する手続きです。
相続人申告登記を行えば、相続登記の義務を果たした扱いとなり、過料は発生しません。
加えて、後述する法定相続による登記申請と比較して、手続きが簡単であり登録免許税も不要というメリットがあります。
一方で、相続人申告登記を行う際には、下記の点に注意しなければなりません。
- 相続人申告登記の後に遺産分割協議が完了した場合は、相続登記を行う必要がある
- 相続人申告登記だけでは、相続不動産の活用や売却は原則としてできない
相続人申告登記の手続き方法および必要書類は、下記の通りです。
手続きできる人 |
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手続き先 | 相続不動産の住所地を管轄する法務局 |
手続き方法 |
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費用 | 無料 (戸籍謄本類の収集費用は別途かかる) |
必要書類 |
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3-3 法定相続による相続登記を行う
どうしても遺産分割協議がまとまらず、相続登記の期限に間に合わない場合は、法定相続による登記申請を行うことも可能です。
法定相続による相続登記とは、法律によって決められた相続割合で不動産を共有相続したとして登記申請を行うことです。
法定相続による相続登記を行えば、亡くなった人から相続人へ不動産の名義変更手続きが完了するので過料は発生しません。
しかし、法定相続による相続登記には下記のデメリットもあります。
- 遺産分割協議がまとまった場合は、相続登記をやり直さなければならない
- 不動産を共有名義で相続した場合、活用や売却をしにくくなる
- 将来的に不動産の権利関係者が増えて、相続登記や活用、売却をしにくくなる
上記のように、共有名義で不動産を相続するとリスクやデメリットがあるのでご注意ください。
また、遺産分割協議が完了した場合は、再び相続登記を行う必要があり、登録免許税も再び払う必要があることも理解しておきましょう。
相続登記の義務化に伴い、3-2で解説した相続人申告登記が設立されたので、遺産分割協議がまとまらない場合に法定相続による相続登記を行うメリットは、ほとんどありません。
まとめ
2024年4月からは相続登記が義務化され、相続発生から3年以内に登記申請を行わないと10万円以下の過料が発生する恐れがあります。
相続登記の義務違反による過料は、遺産分割協議が完了しているかや不動産を相続する人物が誰かによって払う人が異なります。
なお、2024年6月時点では、過料が不動産に対して発生するのか、相続人ごとに発生するのかは明確になっていません。
とはいえ、相続人一人ひとりにかかる可能性は十分にあるので、不動産を相続したら早目に登記申請をするのが良いでしょう。
相続登記は自分で行うこともできますが、司法書士に依頼すれば数万円程度で手続きしてくれます。
グリーン司法書士法人では、相続登記についての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。