相続したマンションの売却時にかかる税金はいくら?計算方法とは?

相続したマンションの売却時にかかる税金はいくら?計算方法とは?
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 10

マンションを相続したものの「自宅をすでに購入している」「職場から遠く今後も住む可能性がない」などの理由で売却したいと考えている人も多いはずです。
マンションを売却したときには、下記の4種類の税金がかかります。

  1. 譲渡所得税・住民税
  2. 印紙税
  3. 登録免許税
  4. 消費税

上記のうち、譲渡所得税と住民税は税率が高くマンションを売った際に発生した利益額によっては数百万円近い税金がかかる場合もあります。
さらに、マンション売却時にかかる譲渡所得税と住民税は、売却した翌年の2月16日から3月15日に税金の申告、納税が必要なので売却代金をすべて使い切ってしまうと納税資金を用意できない恐れもあります。

相続したマンションを売却する際には、あらかじめ発生する税金を計算し納税資金を用意しておくことが大切です。
本記事では、相続したマンションを売却したときにかかる税金や計算方法を詳しく紹介します。

相続した不動産の名義変更手続きについては、下記の記事で詳しく解説しています。

親から子に家の名義変更する方法やかかる費用・節税方法まで簡単解説

1章 相続したマンションを売却したときにかかる税金

相続したマンションやアパートを売却するときとは、相続税とは別に下記の4つの税金がかかります。

税金の種類目安額
譲渡所得税・住民税譲渡益の×20.315~39.63%
印紙税売買価格に応じて1~16万円程度かかる
登録免許税固定資産税評価額の0.4%
消費税
  • 相続したマンションの売却自体には消費税がかからない
  • 不動産会社に支払う仲介手数料や司法書士への報酬には消費税がかかる

それぞれどんな税金なのか詳しく見ていきましょう。
なお、それぞれの税金の詳しい計算方法については、本記事の2章で解説します。

1-1 譲渡所得税・住民税

相続したマンションを売却するときに、一番注意が必要であり金額が大きくなるのが譲渡所得税および住民税です。
譲渡所得税や住民税は、不動産を売却した利益(譲渡所得)に対してかかる税金です。
譲渡所得に対して、所有期間に応じた譲渡所得税・住民税の税率を掛けて納税額を計算します。
譲渡所得税および住民税の税率は、それぞれ下記の通りです。

種類税率
所有期間が5年を超える
(長期譲渡所得)
譲渡所得税率:15.315%
住民税率:5%
合計:20.315%
所有期間が5年以下
(短期譲渡所得)
譲渡所得税率:30.63%
住民税率:9%
合計:39.63%

相続したマンションの譲渡所得税や住民税を計算する際には、下記の点にご注意ください。

  • 不動産の所有期間は亡くなった人の所有期間を引き継げる
  • 不動産の取得費は亡くなった人が購入・建設時に払った取得費を使用できる

例えば、亡くなった人が相続開始10年前に購入したマンションを相続後に売却する場合は、所有期間が5年を超えると判断され、長期譲渡所得として譲渡所得税や住民税を計算可能です。

土地を売却した際にかかる譲渡所得税とは?計算方法と節税方法を解説<

1-2 印紙税

印紙税とは、不動産の売買契約書を作成したときに課税される税金です。
売買契約書は売主と買主がそれぞれ保管する用に2部作成するので、双方が半額ずつ負担するケースが多いです。

1-3 登録免許税

登録免許税とは、法務局にて土地やマンションの登記申請をした際にかかる税金です。
相続したマンションを売却する際には、下記の2つの登記申請を行います。

種類登録免許税の計算方法
相続登記不動産の固定資産税評価額×0.4%
抵当権抹消登記不動産1件につき1,000円
(土地と建物はそれぞれ1件として数える)

相続登記とは、亡くなった人から相続人に土地やマンションの名義を変更する手続きです。
抵当権抹消登記とは、相続した土地やマンションに抵当権が残っていたときに削除してもらう手続きです。

なお、不動産売却時には、売主から買主に名義の変更手続きをする所有権移転登記も行われます。
ただし、所有権移転登記に関しては買主が負担するケースが一般的なので、売主側が払う必要はありません。

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相続したマンションを売却するときには相続登記が必要

相続したマンションを自分で活用する予定がなく売却をしたいと考えたときには、売却前に名義変更手続きをしなければなりません。
相続したマンションの名義変更手続きは、法務局で相続登記を行う必要があります。
マンションを売却せずに第三者に貸し出す場合でも、相続登記は必要なので早めにすませるのが良いでしょう。

また、2024年4月からは相続登記が義務化され、3年以内に相続登記をしない場合には10万円以下の過料が科されます。
相続登記は自分で行うこともできますが、数万円程度で司法書士に依頼することも可能です。

相続登記の義務化は2024年4月!法改正で変更される4つのポイント

1-4 消費税

相続したマンションの売却自体には消費税がかかりませんが、不動産会社に支払う仲介手数料や登記手続きを依頼する司法書士への報酬、その他売却費用に関しては消費税がかかります。

とはいえ、不動産会社や司法書士などは費用や報酬計算時に消費税も含めて計算してくれます。
そのため、譲渡所得税や住民税と異なり、自分で計算する必要はありません。

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2章 相続したマンション売却時の税金を計算・申告する流れ

1章で解説したように、相続したマンションを売却する際には様々な税金がかかります。
また、納税タイミングもそれぞれ税金の種類によって異なるので売却時には注意が必要です。
相続したマンションを売却する際にかかる税金の計算、申告の流れは、下記の通りです。

  1. 相続登記時の登録免許税を計算する
  2. 売買契約時にかかる印紙税を計算する
  3. 譲渡所得を計算する
  4. 譲渡所得税を計算する
  5. 譲渡所得税の確定申告をする

それぞれ具体例とともに詳しく解説していきます。

STEP① 相続登記時の登録免許税を計算する

まずは、亡くなった人からマンションを相続する人へ名義変更手続きをする際にかかる登録免許税の計算、納税を計算しましょう。
例えば、固定資産税評価額が5,000万円のマンションを相続した場合の相続登記にかかる登録免許税は「5,000万円×0.4%=2万円」です。
登録免許税は、法務局に登記申請書を提出する際に収入印紙を貼り付けて納税します。

固定資産税評価額は毎年4~5月頃に届く固定資産税の納税通知書に明細としてついてくる「課税明細書」で確認するのが手軽でおすすめです。
亡くなった人の自宅などを整理する際に固定資産税の課税明細書がないか探してみましょう。

万が一、課税明細書が見つからないときには、マンションの住所地を管轄する市町村役場や都税事務所にて「固定資産評価証明書」を請求すれば固定資産税評価額を確認できます。
固定資産税評価証明書の取得方法は、下記の通りです。

取得できる人
  • 不動産の所有者
  • 相続人
  • 成年後見人
  • 代理人
請求先不動産の住所地を管轄する市町村役場
(東京都23区内の場合は都税事務所)
費用約300円程度
(自治体によって異なる)
必要書類
  • 「死亡」と記載されている亡くなった人の戸籍
  • 亡くなった人との続柄がわかる請求者の戸籍謄本

なお、相続登記は相続したマンションを売却しない場合でも必要です。
2024年4月からは相続登記が義務化され、相続発生から3年以内に相続登記をしない場合には10万円以下の過料が科されるので早めに登記手続きをすませましょう。

STEP② 売買契約時にかかる印紙税を計算する

不動産の売買契約を締結し売買契約書を作成したら、印紙税を計算および納税しましょう。
印紙税の税額は、売買契約書に記載されている金額によって下記のように決まっています。

契約金額税額
1万円未満非課税
1万円以上50万円以下200円
50万円超え100万円以下500円
100万円超え500万円以下1,000円
500万円超え1,000万円以下5,000円
1,000万円超え5,000万円以下1万円
5,000万円超え1億円以下3万円
1億円超え5億円以下6万円
5億円超え10億円以下16万円

なお、上記の印紙税の税額は、令和6年3月31日までに売買契約書を作成した際に適用される軽減措置を適用した税額です。
例えば、相続したマンションを6,000万円で売却する際の印紙税は3万円です。

印紙税は、売買契約書に収入印紙を貼り付けて納税します。

STEP③ 譲渡所得を計算する

相続したマンションを売却したら、譲渡所得を計算します。
譲渡所得は、下記の方法で計算できます。

譲渡所得=売却代金-(不動産の取得費+売却費用)

例えば、下記の条件でマンションを売却した場合の譲渡所得を計算してみましょう。

  • 売却金額:6,000万円
  • 取得費:3,000万円(亡くなった人が購入した)
  • 売却費用:500万円

上記の譲渡所得は「6,000万-(3,000万+500万)=2,500万円」となります。
相続した不動産を売却する場合、亡くなった人が払った取得費を用いて譲渡所得を計算可能です。

取得費を計算する際には、不動産を購入したときの売買関係書類を確認するのが良いでしょう。
亡くなった人の自宅を整理する際に、相続したマンションの売買関係書類がないか確認してみてください。
万が一、売買関係書類が見つからない場合にはマンションの購入代金が記載されている通帳や住宅ローンを払っていた口座の通帳で代用できる可能性があります。

STEP④ 譲渡所得税・住民税を計算する

譲渡所得を計算した後は、所有期間に応じた税率を掛けて譲渡所得税および住民税を計算します。
所有期間別の譲渡所得税および住民税の税率は、それぞれ下記の通りです。

種類税率
所有期間が5年を超える
(長期譲渡所得)
譲渡所得税率:15.315%
住民税率:5%
合計:20.315%
所有期間が5年以下
(短期譲渡所得)
譲渡所得税率:30.63%
住民税率:9%
合計:39.63%

相続したマンションを売却する際には、亡くなった人の所有期間を引き続いて譲渡所得税や住民税を計算できます。
そのため、亡くなった人が死亡する10年前に購入したマンションを相続後に売却した場合は長期譲渡所得の税率を適用可能です。

例えば、譲渡所得2,500万円の場合には「2,500万円×20.315%=507万8,700円」の譲渡所得税・住民税がかかります。(100円未満の税金は切り捨てられます)

このように、譲渡所得の金額によっては数百万円近い譲渡所得税や住民税がかかります。
譲渡所得税と住民税の確定申告時に納税資金が不足して困らないように、税額はあらかじめ計算しておくと安心です。

STEP⑤ 譲渡所得税・住民税の確定申告をする

譲渡所得税と住民税の確定申告は、売却した翌年の2月16日から3月15日の間に行います。
確定申告書の提出方法や必要書類は、下記の通りです。

提出先申告する人の住所地を管轄する税務署
提出・納税期限売却した翌年の2月16日から3月15日
主な必要書類
  • 譲渡所得の内訳書
  • 不動産売却や特例に関する証明書類
  • 確定申告書
相続した不動産を売却するときに確認しておく3のこととかかる税金

3章 相続したマンション売却時の節税に使える控除・特例

相続したマンションを売却する際には、譲渡所得税や住民税を節税できる控除や特例がいくつか用意されています。
控除や特例はそれぞれ適用要件が決められていますが、要件を満たす場合には譲渡所得税や住民税を大幅に節税できる可能性があります。

具体的には、下記の3つの控除や特例を適用できないか確認してみるのが良いでしょう。

  1. 居住用財産の3,000万円特別控除(マイホーム特例)
  2. 10年超所有軽減税率の特例
  3. 取得費加算の特例

それぞれ詳しく解説していきます。

3-1 居住用財産の3,000万円特別控除(マイホーム特例)

マンションを相続し、一度は自分で住んだものの売却する場合には「居住用財産の3000万円特別控除」を適用可能です。
居住用財産の3000万円特別控除とは、マイホームとして使用していた建物や土地を売却したときに使える控除であり、適用すると譲渡所得から3,000万円控除できます。

適用要件や制度の概要は、それぞれ下記の通りです。

適用要件
  • 自分が住んでいる家屋や家屋と土地を売ったとき
  • 以前住んでいた住宅を売る場合には、住まなくなってから3年経過する年の12月31日までに売却する
控除額3,000万円
必要書類
  • 確定申告書B
  • 譲渡所得の内訳書
  • マイナンバーカード
  • 本人確認書類の写し
  • 売買契約書
  • 売却するときにかかった費用の領収書
  • 売却した物件を購入したときの売買契約書
  • 売却した物件を購入したときにかかった費用の領収書

なお、居住用財産の3,000万円特別控除を適用し、譲渡所得が0円になったとしても確定申告は必要になるのでご注意ください。

「相続空き家の3,000万円特別控除の特例」はマンション売却時に使えない】

相続した不動産を売却するときに利用できる特例のひとつに「相続空き家の3,000万円特別控除の特例」があります。
相続空き家の3,000万円特別控除の特例は、亡くなった人が住んでいた自宅を相続した人が自宅もしくは敷地を売却したときに譲渡所得から3,000万円控除できる特例です。

相続空き家の3,000万円特別控除の特例の適用要件には「区分所有建物(マンション)ではないこと」と明記されているため、相続したマンションを売却するときには利用できません。

相続空き家の3,000万円特別控除の特例とは?適用要件まとめ

3-2 10年超所有軽減税率の特例

10年超所有軽減税率の特例とは、売却した不動産の所有期間が10年を超えていれば、譲渡所得税と住民税の税率が下記のように軽減できる特例です。

譲渡所得が6,000万円以下の部分譲渡所得が6,000万円以下の部分
譲渡所得税:10.21%
住民税:4%
合計:14.21%
譲渡所得税:15.315%
住民税5%
合計:20.315%

なお「居住用財産の3,000万円特別控除」と同様に、自宅として使用していた建物や土地を売却したときのみに適用できます。
マンションを相続したものの自分で住んでいない場合には、適用できないのでご注意ください。

10年超所有軽減税率の特例の適用要件や概要は、それぞれ下記の通りです。

適用要件
  • 譲渡した年の1月1日時点でマイホームの所有期間が10年以上
  • 親子や夫婦などへの売却ではない
  • 住まなくなった日の3年後の12月31日までに売却する
  • 居住用財産の3,000万円特別控除以外の特例を活用していない
  • 過去3年間に軽減税率の特例を活用していない
必要書類
  • 確定申告書B
  • 譲渡所得の内訳書
  • マイナンバーカード
  • 本人確認書類の写し
  • 売買契約書
  • 売却するときにかかった費用の領収書
  • 売却した物件を購入したときの売買契約書
  • 売却した物件を購入したときにかかった費用の領収書
  • 売却したマンションの登記事項証明書

10年超所有軽減税率の特例は、先ほど紹介した「居住用財産の3,000万円特別控除」とも併用できる点も魅力となっています。
一方で、下記の控除や特例などとは併用できず、それぞれ3年に1度しか適用できません。

  • 特定居住用財産の買換え特例
  • 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
  • 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  • 住宅ローン控除

例えば「相続し自宅として活用していたマンションを売却し、代金を自宅の頭金として活用したい」と考えている人は注意が必要です。
相続したマンションの売却時に10年超所有軽減税率の特例を適用してしまうと、翌々年まで住宅ローン控除は適用できなくなってしまいます。

併用できない特例のうちどの特例を適用すべきかどうかの判断は、自分でするのが難しいケースもあるでしょう。
最も節税できる控除や特例を知りたい、節税に関するアドバイスを受けたい場合には相続に詳しい税理士に相談することもご検討ください。

3-3 取得費加算の特例

取得費加算の特例とは、相続発生から3年10ヶ月が経過するまでに不動産を売却した際に活用できる特例です。
取得費加算の特例を適用すれば、譲渡所得の計算時に支払った相続税の一部を取得費に加えられます。
なお、取得費に加えられる相続税額の計算方法は複雑なので、相続に詳しい税理士に相談し計算してもらうのがおすすめです。

取得費加算の特例の適用要件や必要書類は、下記の通りです。

適用要件
  • 相続もしくは遺贈で不動産を取得した人
  • 不動産の取得により相続税が課税されている
  • 相続発生から3年10ヶ月が経過するまでに不動産を売却している
必要書類
  • 確定申告書B
  • 譲渡所得の内訳書
  • マイナンバーカード
  • 本人確認書類の写し
  • 売買契約書
  • 売却するときにかかった費用の領収書
  • 売却した物件を購入したときの売買契約書
  • 売却した物件を購入したときにかかった費用の領収書
  • 相続税の計算明細書
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まとめ

相続したマンションを売却する際には譲渡所得税や住民税を始めとする様々な税金がかかります。
それぞれの税金は計算方法や納税方法、納税時期が異なるので、払い忘れのないように注意しましょう。

また、マンションを相続した場合には売却、活用するしないに関わらず相続登記が必要です。
これまで相続登記は義務化されておらず放置していても大きなデメリットがありませんでしたが、2024年4月からは相続登記が義務化されます。

2024年4月からは、相続発生から3年以内に相続登記をしない場合には10万円以下の過料が科されるのでご注意ください。
まだ、相続したマンションの登記手続きがおすみでない人は早めに手続きのするのが良いでしょう。

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