不動産の等価交換とは?メリット・デメリットや注意点について

不動産の等価交換とは?メリット・デメリットや注意点について
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 6

不動産の等価交換とは、土地の所有者が土地を提供し、開発業者などが建築費を負担することです。
建物の完成後は、土地の所有者と建築費を負担した方がそれぞれの出資割合に応じて、共有持分で土地と建物を所有します。

不動産の等価交換を行えば、土地の所有者は建築費用を負担することなく、土地開発を行えるのがメリットです。
相続した土地の活用方法に悩んでいる人や土地を相続したものの現金がなく建物を建設できないと悩んでいる人におすすめです。

また、等価交換をして建築できる建物には様々な種類がありますし、複雑な手続きが必要です。
そのため、等価交換を検討している場合は信頼できるデベロッパーなどを見つけなければなりません。

ただし、不動産の等価交換にはデメリットもありますし、注意すべきポイントもあります。
本記事では、不動産の等価交換のメリットやデメリット、注意点をわかりやすく解説していきます。


1章 等価交換とは

不動産の等価交換とは、土地の所有者と開発業者などが土地と建設費用をそれぞれ提供し、建物が完成した後は出資比率に応じて土地と建物をそれぞれ共有持分で所有する方法です。
等価交換のイメージは、下図の通りです。

不動産の等価交換の仕組み

上記のように、土地と建物を同じ価値ずつ交換するので、等価交換と呼ばれています。
なお、不動産の等価交換は個人間で行うこともできますが、土地を所有している個人とデベロッパーが行うケースが多いです。

等価交換では、土地の所有者は建築費用を負担することなく、土地開発をできるので借入などのリスクを減らせるのがメリットです。
次の章では、等価交換のメリットを詳しく解説していきます。

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2章 等価交換のメリット

土地を所有している側にとって、不動産の等価交換は建設費用を負担する必要がないなど様々なメリットがあります。
具体的なメリットは、主に以下の4つです。

  1. 自己資金や借り入れがなくても土地活用できる
  2. 譲渡税優遇措置を利用できる
  3. 相続税対策になる
  4. 将来的に遺産分割をしやすくなる

それぞれ詳しく解説していきます。

2-1 自己資金や借入がなくても土地活用できる

等価交換を行う場合、土地の所有者は土地を提供するだけで、建物を取得できます。
そのため、建物の建設費用を自分で用意する必要がなく、まとまった現金がない方や借入をしたくない方にも利用可能です。

例えば、相続で土地を手に入れたもののまとまった現金を用意できない方や借入リスクを負いたくない方にも等価交換はおすすめです。

2-2 譲渡税優遇措置を利用できる

不動産の等価交換では「立体買い替えの特例」という譲渡税優遇措置を活用できます。
立体買い替えの特例では、等価交換を行い土地と建物を交換したタイミングでは譲渡所得税がかからず、納税を全額繰り延べ可能です。

特例によって繰り延べた税金は、将来建物を売却するときに支払う必要があります。
また、立体買い替えの特例を利用する際には、以下の点に注意が必要です。

・土地と建物の交換に加えて現金を受け取った場合には、受け取った分に対して譲渡所得税がかかる

・等価交換によって手に入れた建物は一定期間内に自宅もしくは事業用に使用する必要がある

2-3 相続税対策になる

等価交換によって更地に建物を建てることができれば、相続税の節税にもつながります。
というのも、更地のままでは土地の評価額がそのまま相続税の課税対象財産になりますが、賃貸住宅などを建てていれば入居割合に応じて評価額が減額されるからです。
さらに賃貸アパートやマンションを建てている土地は要件を満たせば、小規模宅地等の特例を利用でき、更に相続税計算時の土地の評価額を下げられます。

小規模宅地の特例で賢く相続税を抑えましょう!【3つの活用事例】
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2-4 将来的に遺産分割をしやすくなる

不動産の等価交換は、将来的に遺産分割をしやすくなるメリットもあります。
相続財産が更地のままだと、分割方法や分割割合でトラブルが起きがちです。
しかし、等価交換を利用して土地の上に賃貸アパートやマンションなどを建てておけば、部屋数や収益によって遺産分割をしやすくなります。

このように、不動産の等価交換には様々なメリットがある一方で、デメリットもあるので注意が必要です。
次の章では、等価交換のデメリットを詳しく解説していきます。


3章 等価交換のデメリット

等価交換にはメリットだけでなく、残念ながらデメリットもあります。
等価交換を行う際には、メリットとデメリットを把握して、どちらが自分にとって大きいか検討するのが大切です。
等価交換のデメリットは、主に以下の5つです。

  1. 土地の権利を一部手放す必要がある
  2. 立地が良くない土地では利用しにくい
  3. 土地の権利関係が複雑になる
  4. 専門家の関与が必要
  5. 交渉成立までに時間と手間がかかる

それぞれ詳しく解説していきます。

3-1 土地の権利を一部手放す必要がある

等価交換は、建物完成後に所有している土地と完成した建物を交換します。
建物の所有権は得られるので損をするわけではないですが、先祖から代々受け継いでいる大切な土地の場合には、よく検討する必要があるでしょう。

3-2 立地が良くない土地では利用しにくい

等価交換は全ての土地で利用できるわけではなく、ある程度、収益が見込める土地でないと建物を建設してくれる業者や相手を見つけにくいです。
相続によって手に入れた土地などで、周辺地域の土地勘がない場合や将来性がわからない場合には、不動産会社やデベロッパーなどに一度、相談をしてみるのも良いでしょう。

3-3 土地の権利関係が複雑になる

不動産の等価交換を行うと、自分と建設費用の出資者が土地と建物をそれぞれ共有名義で所有します。
土地を自分だけで所有していたときよりも、権利関係が複雑になる点は注意しておく必要があるでしょう。

例えば、等価交換によって分譲マンションを建設したとします。
建設費用を負担したデベロッパーが分譲マンションの各部屋を販売した場合、建物と土地の所有者がどんどん増えてしまいます。

等価交換後の相続などで問題が発生したときに、土地や建物の権利を持っている方が複数いることでトラブルが複雑化してしまう可能性もゼロではありません。

3-4 専門家の関与が必要

不動産の等価交換は、土地を所有している個人と建設費用を負担するデベロッパーで行うケースが一般的です。
等価交換を行いたいのであれば、信頼できるデベロッパーを見つける必要があります。

もちろん、個人間でも等価交換を行えますが、税務関係の処理や各手続きなどで専門家の助けが必要になる場合が多いです。

3-5 交渉成立までに時間と手間がかかる

等価交換はやろうと思ってすぐにできるわけではなく、交渉成立までに手間と時間がかかります。
土地の所有者と建設費用を負担する相手は、それぞれ自分が所有する持分を増やしたい、有利に計画を進めたいと考えがちだからです。

場合によっては、両者がずっと希望を譲らず交渉が平行線をたどってしまう可能性もあるでしょう。
不動産の等価交換の持分を決める方法には、以下の2種類があります。

  1. 出資比率による方法
  2. 売価還元による方法

どちらの方法で持分を決めるにせよ、相手に持分割合の計算を任せていると、不利な結果になってしまう可能性もあります。
等価交換は、決して楽な土地活用方法ではないと認識しておきましょう。

ここまで解説したように、不動産の等価交換にはメリットとデメリットがあります。
メリットとデメリットを把握した上で、自分や所有している土地に等価交換は向いているか検討するのが重要です。
次の章では、等価交換が向いている人や土地の特徴を紹介していきます。


4章 等価交換が向いているケース

本記事で解説したように、等価交換にはメリットやデメリットがあり、全ての方におすすめできるわけではありません。
等価交換が向いている人や土地の特徴を解説していきます。

4-1 等価交換が向いている人の特徴

等価交換がおすすめな人の特徴は、主に以下の通りです。

  • 土地を所有しているものの建設費用を用意できない人
  • 金融機関から借入を行うのは避けたい人
  • 更地ではなく賃貸マンションやアパートを建てて相続対策したい人

等価交換の最大のメリットは、土地の所有者が建設費用を負担せずに、土地に建物を建てられる点です。
土地は持っているけれど、現金を用意できない、借入リスクも負いたくない人にはぴったりの土地活用方法といえるでしょう。

4-2 等価交換が向いている土地の特徴

等価交換に向いている土地の特徴は、主に以下の通りです。

  • 駅から近いなど好立地な土地
  • 100坪以上など広い面積の土地

極端な話、デベロッパーなど建物の建設費用を負担してくれる相手が開発する価値のある土地だと判断しなければ、等価交換を行ってもらえない可能性が高いです。
そのため、田舎にある土地を相続したケースでは、土地の所有者が等価交換を行いたいと思っても、実現できないかもしれません。


5章 等価交換を行う流れ

等価交換を行うときには、様々な手続きが必要です。主な流れは、下記の通りです。

等価交換を行う流れ

等価交換はデベロッパーから提案されるケースもありますし、土地の所有者が建物を建ててくれる業者を探すケースもあります。
上記の流れで重要な部分は、建設費用を負担してくれる相手との交渉です。
相手の交渉内容にそのまま合意するのではなく、共有持分の割合が妥当か検討しましょう。

不動産投資に関する知識が少なく自分だけで判断できない場合には、不動産鑑定士などの専門家にコンサルティングを依頼するのもおすすめです。

【相続した土地の等価交換を行うには相続登記が必要です】

相続した土地を等価交換する際には、事前に相続登記が必要です。
さらに、2024年より相続登記を行うことが義務になります
もし相続した不動産の変更登記がお済みでないのであれば、まずは相続登記を行いましょう。

相続登記は司法書士に代行してもらうことも可能です。

相続登記の義務化に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

【相続登記の義務化】知っておくべき期限と放置すると生じるリスク


6章 等価交換を行うときの注意点

等価交換を行うときには、いくつか注意しなければならないことがあります。
等価交換にはデメリットもあり、交渉内容によっては土地の所有者の利益が少なくなってしまう恐れがあるからです。

等価交換を行うときの注意点を2つ解説していきます。

6-1 信頼できる相談先を見つける

等価交換を行う際には、信頼できる相談先を見つけておきましょう。
デベロッパーなどから不動産の等価交換を提案された場合「デベロッパーに任せておけば安心で不動産に関する知識は不要」と言われるかもしれません。
しかし、デベロッパーの提案内容のまま等価交換を行うと、土地の所有者の利益が減ってしまう恐れもあります。

また、デベロッパーと等価交換を行うのではなく、個人間で不動産の等価交換を行う場合には、交渉時や手続き時に第三者の専門家も交えておくと後のトラブル発生を防げるはずです。
等価交換を相談できる専門家は、主に以下の通りです。

  • 司法書士:登記など不動産に関する手続きを代行してくれる
  • 税理士:等価交換にかかる税金の相談に乗ってくれる
  • デベロッパー:土地活用に関するノウハウが豊富

等価交換でどんな建物を建てたいか、どんな相手と等価交換を行うかによって必要な相談先は変わってきます。
まずはどんな等価交換を行いたいのか、収益性や相続対策など優先させたいことを自分で決め、適切な相談先を見つけるのが良いでしょう。

6-2 売却や他の活用方法も検討しておく

土地の活用方法や処分方法は等価交換以外にも、いくつかあります。
等価交換を行う前に、他の活用方法や売却も検討して自分や所有している土地に合った方法を選ぶのがおすすめです。
例えば、土地活用には以下の方法もあります。

  • 土地を更地のまま貸し出す
  • 土地を更地のまま売却する
  • 自己資金で建物を建てて貸し出す
  • 駐車場経営やトランクルーム経営
  • 太陽光発電

例えば、駅から遠い土地や田舎にある土地などで等価交換を行っても収益が見込めない土地は、太陽光発電を検討しても良いかもしれません。
自己資金が用意できるのであれば、そもそも等価交換ではなく自分で建物を建ててしまうのも良いでしょう。

土地活用は長い年月にわたりますし、大きなお金が絡む問題なので、慎重に判断するのがおすすめです。

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まとめ

不動産の等価交換とは、土地の所有者が土地を提供し、デベロッパーなどが建設費用を負担して土地開発を行う方法です。
土地の所有者は建設費用を負担する必要がないので、土地は持っているもののまとまった資金がない方にも向いています。

一方で等価交換を行うと、土地の権利を一部手放す必要があるので、先祖代々受け継いでいた土地に対して行うのはためらってしまう場合もあるでしょう。
等価交換にはメリットとデメリットがあるので、事前に収益の見込み額や他の活用方法も検討しておくのが重要です。

また、相続した土地を等価交換する際には、事前に相続登記をすませておく必要があります。
相続登記は2024年から義務化されるので、まだおすみでない方は早めにすませておきましょう。
相続登記は自分で行うこともできますが、司法書士などの専門家に代行してもらうとスムーズかつ確実です。

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