- 貸金庫の中身は相続の対象かどうか
- 貸金庫を相続する流れ
- 亡くなった人が貸金庫を利用していたときの注意点
貸金庫の利用者か亡くなった場合、中身も遺産相続の対象となります。
例えば、貸金庫の中に保管されていた貴金属や現金、証券などは相続税の課税対象となるのでご注意ください。
亡くなった人が貸金庫を利用していた場合は、相続人全員の同意を得て金融機関にて貸金庫開錠手続きを行う必要があります。
そして、相続人全員が立会いのもと、貸金庫を開け中身を確認しなければなりません。
亡くなった人が貸金庫を利用していた場合、通常の相続手続きに加え、貸金庫の相続手続きも必要になることを理解しておきましょう。
本記事では、貸金庫を相続する流れや注意点を解説していきます。
なお、家族や親族が亡くなると貸金庫の相続手続き以外にも、様々な手続きが必要です。
相続手続きの流れについては、下記の記事で詳しく解説しているのであわせてお読みください。
目次
1章 貸金庫の中身は相続財産に含まれる
亡くなった人が貸金庫を利用していた場合、貸金庫に保管されていた中身は相続財産に含まれます。
亡くなった人が遺言書を用意していない場合は、貸金庫の中身についても遺産分割方法を決める必要があります。
加えて、貸金庫に保管されていた価値のある資産についても相続税の課税対象となるのでご注意ください。
貸金庫の中身と相続税についての関係は、本記事の3章で詳しく解説していきます。
次の章では、貸金庫を相続する流れを詳しく見ていきましょう。
2章 貸金庫を相続する流れ
亡くなった人が貸金庫を利用していた場合、相続人全員が同意した上で、貸金庫開錠の手続きを行わなければなりません。
貸金庫を相続する流れは、下記のように進めることが多いです。
- 相続人全員の同意を得る
- 貸金庫開錠の手続きを金融機関で行う
- 相続人全員が立会いのもと貸金庫を開錠する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
STEP① 相続人全員の同意を得る
まずは、相続人全員から貸金庫を開けることについて同意を得る必要があります。
亡くなった人が遺言書を作成していなかった場合、貸金庫の中身を含めて遺産は相続人全員の共有状態となるからです。
したがって、一部の相続人が貸金庫の中身を勝手に開けて中身を回収してしまうことは認められません。
金融機関としても、相続発生後に一部の相続人が勝手に貸金庫の中身を取ってしまうことを防ぐために、貸金庫の利用者が亡くなった後はすべての相続人が同意しないと貸金庫を開けられないと定めています。
貸金庫を開けることに相続人全員が同意したら、遺産分割協議書などにその旨を記載しておき、金融機関での手続きに移ります。
STEP② 貸金庫開錠の手続きを金融機関で行う
相続人全員が貸金庫を開けることに同意したら、金融機関にて開錠手続きを行いましょう。
亡くなった人が利用していた貸金庫を開錠するには、下記の書類が必要となることが多いです。
- 亡くなった人の除籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本および印鑑証明書
- 貸金庫の鍵
- 遺産分割協議書もしくは相続人全員の同意書
金融機関によって必要書類が異なる可能性もあるので、事前に確認しておくことをおすすめします。
加えて、書類提出から金融機関が実際に開錠許可を出すまでにはある程度の期間がかかるため、相続発生後は早目に貸金庫開錠手続きを行っておくと良いでしょう。
亡くなった人が遺言書を用意しており、貸金庫についても記載があれば、原則として遺言書の記載内容通りに貸金庫の相続手続きを進めます。
例えば、遺言書に「遺言執行者が貸金庫を開け、中身を取り出し、貸金庫の解約を行う」などと記載されていれば、遺言執行者が単独で貸金庫の相続手続きを行えます。
貸金庫の開錠手続きを相続人全員が協力して行えないことが予想される場合や、特定の人物に貸金庫の中身を譲りたい場合は、相続発生前に遺言書を作成しておくと良いでしょう。
STEP③ 相続人全員が立会いのもと貸金庫を開錠する
金融機関側の必要書類確認作業が完了したら、相続人全員が立会いのもと、貸金庫を開錠します。
相続トラブルを避けるために、亡くなった人の貸金庫を開錠するときには、相続人全員の立会いが求められることが多いです。
しかし、欠席する相続人が委任状を提出する、司法書士などが代理人として立ち会う場合、一部の相続人が欠席していても貸金庫を開錠できる可能性があります。
貸金庫を開錠し、中身を取り出したら他の遺産と同様に、遺産分割協議を行い、遺産をそれぞれの相続人が受け継ぎます。
貸金庫は大切な書類や貴金属などを保管しておくのに適していますが、遺言書や保険証券など遺族が確認する必要のある書類を保管するのは避けた方が良いでしょう。
先ほど解説したように、貸金庫を開錠するには相続人全員の同意や必要書類の提出などを行う必要があり、時間と手間がかかるからです。
遺言書を貸金庫に保管してしまうと、貸金庫の開錠手続きが完了するまで遺族は遺言書の内容を確認できなくなってしまいます。
結果として、遺産分割協議のやり直しや相続トラブルが発生するリスクも増えてしまうのでご注意ください。
3章 貸金庫の中身は相続税の課税対象となる
本記事の冒頭で解説したように、亡くなった人の貸金庫の中身も相続税の課税対象となるのでご注意ください。
なお、相続税は遺産それぞれにかかるのではなく、遺産の合計額に対してかかります。
また、現金や預貯金以外の遺産については、相続時に適正な評価をしなければならない点にも注意しましょう。
貸金庫の中身で多い資産の相続税評価額の計算方法は、下記の通りです。
資産の種類 | 評価方法 |
現金 | 額面通り |
預貯金 | 相続開始時点の残高 |
宝飾品 | 相続開始時点の時価 |
不動産の権利証 | 相続税評価額(路線価方式・倍率方式) |
保険証書 | 保険契約の内容によって異なる |
特に、不動産の相続税評価額を計算するには、相続や税金に関する専門的な知識が必要な場合もあります。
自分で計算するのが難しい場合やミスなく計算したい場合は、相続に詳しい税理士に相談するのがおすすめです。
3-1 税務署は貸金庫の契約状況も把握できる
「亡くなった人が利用していた貸金庫の中身なんてバレない」と考えている人も、中にはいるのではないでしょうか。
結論としては、亡くなった人の貸金庫の利用状況尾は税務署に把握されている可能性が高いです。
税務署は金融機関を調査する権限を有しているため、貸金庫の利用状況についても確認できるからです。
また、税務署は個人の資産状況や資産の動きについてもチェックしているため、多額の預貯金を引き出し貸金庫に現金として預けたケースなどもマークされている恐れがあります。
貸金庫の中身だからと考えて相続税を申告しないでいた場合、税務署から指摘を受ける可能性は十分にあるでしょう。
相続税の申告漏れは延滞税や無申告加算税などが発生してしまいますし、資産隠しや申告逃れが悪質だと判断されると重加算税もかかってしまうのでご注意ください。
4章 故人が貸金庫を利用していたときの注意点
亡くなった人が貸金庫を利用していたときには、本記事の2章で解説したように、相続人全員で開錠手続きや開錠時の立会いを行う必要があります。
何らかの理由で会場の立会いが難しい相続人がいる場合は、事前に金融機関に相談しておきましょう。
亡くなった人が貸金庫を利用していたときの注意点は、主に下記の通りです。
- 相続人全員が集まることができない場合は金融機関に相談する
- 貸金庫の鍵が見つからないと作成費用がかかる
- 貸金庫の返還時に料金精算を求められる場合がある
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 相続人全員が集まることができない場合は金融機関に相談する
本記事の2章で解説したように、貸金庫を開錠する際には原則として相続人全員の立会いが求められることが多いです。
何らかの事情で参加することができない相続人がいる場合は、金融機関に事前に相談してみましょう。
司法書士などの専門家が代理人に同意すればすむ場合もありますし、委任状の提出や同意書の提出をすれば出席しなくてもすむ場合もあるからです。
なお、金融機関によっては公証人の立会いを求める場合もあるのでご注意ください。
公証人とは、ある事実について公的な証明を行ってくれる専門職であり、貸金庫の中身や貸金庫開錠時に不正がなかったことを証明し「事実実験公正証書」という書面を作成してくれます。
4-2 貸金庫の鍵が見つからないと作成費用がかかる
亡くなった人が貸金庫を利用していたものの遺族が鍵を見つけられないケースも、中にはあるでしょう。
亡くなった人が利用していた貸金庫のカギを見つけられない場合は、再作成が必要となるため別途費用がかかります。
貸金庫の鍵の再作成にかかる費用は15,000~30,000円程度です。
なお、貸金庫の鍵は金融機関や支店ごとに異なるため、遺族が鍵を見つけられない場合は金融機関に鍵の形状を問い合わせてみても良いでしょう。
そもそも、指紋認証式や暗証番号形式で鍵が手元にないケースもありますし、鍵だけ見ても貸金庫の鍵とすぐに判断できないケースもあるからです。
4-3 貸金庫の返還時に料金精算を求められる場合がある
貸金庫を利用していた人が亡くなると、貸金庫を金融機関に返還する際に料金精算を求められる場合もあります。
貸金庫の中身は相続の対象になりますが、貸金庫そのものは相続人が受け継げず、いったん解約になるからです。
もし、亡くなった人が利用していた貸金庫を相続人がそのまま利用したい場合は、解約手続きを行った後、相続人名義で契約しなおす必要があります。
加えて、貸金庫の料金の支払い方法は1年分を前払いするケースが多く、解約時には残り期間分の料金が精算され、相続人に返金されます。
一方で、貸金庫の更新日前に持ち主が亡くなり、貸金庫の更新日後に解約手続きが完了した場合、未払の料金を支払わなければなりません。
まとめ
亡くなった人が利用していた貸金庫の中身も相続の対象となり、遺産分割や相続税の申告が必要です。
そして、亡くなった人が利用していた貸金庫を開錠する際には、相続人全員の同意や立会いが必要となることを理解しておきましょう。
税務署は亡くなった人が貸金庫を利用していたかどうかや資産状況についても、かなり正確に把握しています。
貸金庫に入っていた資産について隠しておき、相続税申告から逃れることは難しいのでご注意ください。
家族や親族が亡くなったときには、貸金庫の相続手続き以外にも様々な手続きを行わなければなりません。
自分たちで相続手続きを行うのが難しい場合やどのような流れで進めるべきか判断にまよってしまう場合は、相続に詳しい司法書士や行政書士に相談するのが良いでしょう。
グリーン司法書士法人では、相続手続きについての相談をお受けしています。
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