両親が共に亡くなり子供のみが相続人となる二次相続では、相続税の負担が重くなる、相続トラブルが発生しやすいなどの傾向があります。
二次相続が発生してから行える相続税対策やトラブル対策には限りがあるので、可能であれば父親もしくは母親が亡くなったときから二次相続対策を行っておくのが良いでしょう。
また、相続税対策や相続トラブル対策は、遺産に不動産が含まれるときは特に重要になってきます。
納税資金の用意や両親が共に亡くなったときの不動産の分割方法について、事前に考えておくと安心です。
本記事では、遺産に不動産が含まれるときに特に行っておきたい二次相続対策を解説します。
目次
1章 二次相続とは
二次相続とは、両親(夫婦)がともに亡くなった際の「相続」のことです。
先に発生した相続を「一次相続」、その後、残された配偶者が亡くなった相続を「二次相続」といいます。
二次相続では、下記の理由により、一次相続よりも相続税の負担が重くなりやすいのが特徴です。
- 相続税の配偶者控除を利用できない
- 小規模宅地等の特例を適用できない可能性がある
- 相続税の基礎控除や生命保険金、死亡退職金の非課税枠が減る
加えて、相続人が子供たちだけになることで、遺産分割協議時にそれぞれが自分の取り分を主張しやすいなどの理由で相続トラブルが発生しやすいのも特徴です。
特に、遺産に分割しにくい土地などの不動産が含まれる場合は、相続トラブルが発生しやすくなるのでご注意ください。
そのため、二次相続では①相続税の節税対策と②相続トラブルの防止の2つを軸に対策しておく必要があります。
二次相続が発生してからでは行える対策に限りがあるので、可能であれば父親もしくは母親が亡くなった段階で二次相続対策を行っておきましょう。
次の章では、遺産に不動産が含まれる場合に行うべき二次相続対策を解説します。
2章 遺産に不動産が含まれるときにすべき二次相続対策
先ほどの章で解説したように、二次相続対策をする際には、相続税対策と相続トラブルの防止の両方を対策しておく必要があります。
特に、遺産に不動産が含まれる場合は相続税の納税資金を用意するのが難しくなる、遺産分割しにくいなどの理由から、入念に二次相続対策を行わなければなりません。
具体的には、下記の方法で二次相続対策をしておくのが良いでしょう。
- 配偶者居住権を設定する
- 一次相続で故人の自宅を同居している子に相続させる
- 自宅を賃貸併用住宅に建て替える
- 二次相続の納税資金を用意しておく
- 子供を受取人にした生命保険に加入しておく
- 生前贈与を行う
- 相次相続控除を活用する
- 配偶者が相続した後に家族信託しておく
それぞれ詳しく紹介していきます。
2-1 配偶者居住権を設定する
父親もしくは母親が亡くなったときに、遺された配偶者が自宅に住み続けるのであれば、配偶者居住権を設定しておきましょう。
配偶者居住権とは、遺された配偶者が「自宅に住み続けるための権利」です。
配偶者居住権を設定すると、自宅の所有権を①居住権(使う権利)と②負担付き所有権に分けることが可能です。
そして、居住権は遺された配偶者が亡くなり二次相続が発生したときに消滅します。
そのため、一次相続で配偶者が自宅の所有権をすべて相続するよりも二次相続における自宅の評価額を下げられる可能性があります。
配偶者居住権は自動で設定されるわけではなく、利用時には設定登記が必要です。
そのため、配偶者居住権を利用する際には、二次相続対策に詳しい司法書士に相談するのが良いでしょう。
2-2 一次相続で故人の自宅を同居している子に相続させる
父親もしくは母親が亡くなる一次相続が発生したときに、実家で同居している子供がいるなら、子供に自宅を受け継いでもらうことも検討しましょう。
故人の自宅を受け継いだ際に小規模宅地等の特例を配偶者以外が適用する場合、同居が適用要件に含まれているからです。
一次相続が発生した時点では年齢が若く、子供が故人と同居していた場合でも、二次相続発生時には年齢を重ね子供が結婚やマイホーム購入などで別居している恐れもあります。
二次相続時に小規模宅地等の特例の適用要件から外れている可能性も考慮して、可能であれば一次相続の段階で子供が小規模宅地等の特例を適用するのも良いでしょう。
先ほど解説した配偶者居住権と小規模宅地等の特例は、併用可能です。
例えば、亡くなった人が所有していた自宅に配偶者居住権を適用し、下記のように相続したとします。
- 配偶者:居住権を相続
- 同居していた子供:負担付き所有権を相続
上記のケースでは、配偶者および同居していた子供の双方が小規模宅地等の特例を併用可能です。
配偶者居住権と小規模宅地等の特例により、一次相続および二次相続の税負担を大幅に軽減できる可能性もあるでしょう。
2-3 自宅を賃貸併用住宅に建て替える
一次相続で配偶者が自宅を相続した後に、賃貸併用住宅に建て替えるのも二次相続対策として有効です。
賃貸住宅は貸家として相続税評価額を計算するため、自分で使用する不動産よりも相続税評価額を下げられるからです。
加えて、賃貸住宅を建てている土地は小規模宅地等の特例を適用できます。
二次相続で賃貸併用住宅を受け継いだ子供が引き続き賃貸経営を続ける場合は、相続した土地200㎡までの相続税評価額を50%軽減可能です。
2-4 二次相続の納税資金を用意しておく
一次相続と比較して、二次相続では相続税の税負担が重くなることが多いため、下記の方法で納税資金を用意しておくと良いでしょう。
- 事前に財産を処分し現金化しておく
- 生命保険を活用して納税資金を用意する
上記の方法で納税資金を用意しておくのがおすすめです。
特に、遺産の中で土地などの不動産が占める割合が多いと、納税資金を用意するのが難しくなる傾向があるのでご注意ください。
納税資金を用意するには、相続財産がいくらあるのか、相続税がいくらあるのかをシミュレーションしておくことも大切です。
2-5 子供を受取人にした生命保険に加入しておく
子供を受取人にした生命保険に加入しておけば、相続税を節税可能です。
生命保険金は相続税の課税対象に含まれるものの「法定相続人の数×500万円」の非課税枠が用意されているからです。
そのため、預貯金を貯蓄性の高い生命保険に切り替えておけば、相続税を節税できる可能性があります。
また、生命保険金は受取人固有の財産として扱われるため、遺産分割協議が完了する前に受け取り可能です。
相続人同士の仲が悪く遺産分割協議で揉めることが予想される場合は、各相続人を受取人にした生命保険に加入してしまうのも良いでしょう。
2-6 生前贈与を行う
一次相続や二次相続が発生する前に、子供や孫に生前贈与しておけば遺産を減らせるため、相続税の負担を軽くできます。
贈与税には、年間110万円の基礎控除が用意されており、控除内であれば贈与税の申告や納税は必要ありません。
そのため、贈与税の基礎控除の範囲内で贈与を毎年繰り返せば数百万円以上も遺産を減らせる可能性があります。
ただし、生前贈与のうち下記に該当するものは、相続発生時に贈与財産を相続税の計算対象に含める必要があるのでご注意ください。
- 相続人や受遺者に行った贈与のうち、相続発生3~7年以内に行われた贈与
- 相続時精算課税制度を利用して行った贈与
2-7 相次相続控除を活用する
一次相続から10年経たないうちに二次相続が発生した場合は、相次相続控除を適用可能です。
相次相続控除とは、10年以内に複数の相続が発生した場合、二次相続で発生する相続税の負担を一部軽減してもらえる制度です。
ただし、相次相続控除は狙って発生させられるものではないので、基本的には本章で紹介した二次相続対策をあわせて行っておくことをおすすめします。
また、相次相続控除の計算は非常に複雑なので、相続に詳しい税理士に計算および申告を依頼するのが良いでしょう。
2-8 配偶者が相続した後に家族信託しておく
遺産に不動産が含まれ一次相続で配偶者が相続した場合は、遺された配偶者が元気なうちに家族信託をしておきましょう。
家族信託とは、信頼する家族に自分の財産の管理や運用、処分を任せる制度です。
家族信託の契約を結んでおけば、遺された配偶者が認知症になり判断能力を失ったとしても、受託者である子供が自宅の売却などを行えます。
自宅の売却代金を介護施設の入所費用に充てるなども可能であり、介護費用が不足する、配偶者が亡くなるまで自宅を処分できなくなるなどのリスクを減らせます。
ただし、家族信託の契約書作成や手続きには専門的な知識が必要です。
自分で手続きを行うことは現実的ではないので、認知症対策や家族信託に詳しい司法書士や弁護士に相談しながら行うのが良いでしょう。
まとめ
二次相続対策は、相続税の節税と相続トラブルの両方を対策しておくことが大切です。
特に遺産に不動産が含まれる場合は、相続税の納税資金を用意しにくい、遺産分割しにくく相続トラブルが発生しやすいなどの点に注意しなければなりません。
二次相続の遺産に不動産があることが予想される場合は、配偶者居住権の設定や賃貸併用住宅への建て替えなどの対策も行っておきましょう。
二次相続対策には複数の方法があり、ベストな選択肢は相続人や資産状況によって変わってきます。
そのため、自分たちに最も合う方法で対策したいのであれば、二次相続対策に詳しい司法書士や弁護士、税理士に相談することもご検討ください。
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