親子には扶養義務があるため、お金がない親の面倒を完全に放棄することは難しい場合があります。
ただし、子供が親の生活費や介護費用をすべて負担する必要はなく、できる範囲で手助けすれば良いとされています。
お金がない親の生活費や介護費用について、「できれば面倒を見たくない」「どこまで子供が負担しなければならないのか」と悩む方もいるでしょう。
親子には法律上の扶養義務がありますが、子供が自分の生活を犠牲にしてまで親を支える必要があるとは限りません。
親に援助が必要な場合でも、まずは自分たちの生活を守り、できる範囲で援助しましょう。
また、援助をする際にお金を出すだけではなく、自治体に相談したり、支援制度を活用できないか調べたりすることも大切です。
本記事では、お金がない親の面倒を拒めるのか、子供ができるサポート、親が利用できる制度についてわかりやすく解説します。
目次
1章 お金のない親の面倒を見たくない場合に放棄できる?
結論から言うと、親の面倒を子供が完全に放棄することは難しい場合があります。一方で、子供にも自分の生活があるので、親の借金や生活費、介護費用を無制限に負担しなければならないわけではありません。
1-1 親子は互いに扶養義務がある
民法では、直系血族および兄弟姉妹は互いに扶養する義務があると定められています。
親子は直系血族にあたるため、親が生活に困窮している場合、子供にも一定の扶養義務が生じる可能性があります。
ただし、扶養義務があるからといって、親の生活費や介護費用を子供がすべて支払わなければならないわけではありません。
親に対する扶養義務は、基本的には子供自身の生活を犠牲にしてまで尽くすものではなく、自分の収入や資産、家庭状況などを踏まえ、可能な範囲で援助するものと考えられているからです。
1-2 親の介護を放棄すると保護責任者遺棄罪に問われる可能性がある
親の面倒を見たくないからといって、介護が必要な親を危険な状態のまま放置すると、刑法上の責任を問われる可能性があります。
刑法では、老年者や幼年者などを保護する責任のある人が、これらの人を遺棄したり、生存に必要な保護をしなかったりした場合、保護責任者遺棄罪が成立する可能性があるとされています。
例えば、同居している親が自力で食事や排泄、通院などを行えない状態であるにもかかわらず、必要な介助をせずに放置した場合などは罪に問われる恐れがあります。
とはいえ、子供が必ず自宅で親を介護しなければならないわけではありません。
自分で介護することが難しい場合には、地域包括支援センター、ケアマネジャー、自治体の福祉窓口などに相談することも検討しましょう。
1-3 親子の縁を完全に切ることはできない
親との関係が悪い場合、「親子の縁を切りたい」と考える方もいるでしょう。
しかし、日本の法律上、実の親子関係を一方的に解消する制度はありません。
戸籍を分けたり、親と別居したり、連絡を取らないようにしたりすることはできますが、それによって法律上の親子関係そのものが消えるわけではありません。
そのため、親子関係が残っている以上、扶養義務や相続関係が問題になる可能性はあります。
2章 「親の面倒を見たくない」と感じるのは珍しいことではない
「お金のない親の面倒を見たくない」と感じると、自分は冷たいのではないかと罪悪感を覚える方もいるかもしれません。
しかし、親の介護や生活支援をしたくないと感じることは、決して珍しいことではありません。
過去に親との関係が良くなかった場合や、親が金銭管理をしてこなかった場合には、子供側が「なぜ自分がしなければならないのか」と感じてしまうこともあるでしょう。
親子関係が良好だとしても、子供側に家庭や仕事があり、親の面倒まで手が回らないと感じることもあるかもしれません。
大切なのは、感情だけで「全部拒否する」「全部背負う」と決めてしまわないことです。
特に、自分だけで背負わず、自治体の窓口や地域包括支援センターなどに相談し、必要な支援を受けられるように環境を整えることが重要といえるでしょう。
3章 お金がない親のために子供ができるサポート
お金がない親を支える方法は金銭的な援助だけではなく、子供自身の生活を守りながら、できる範囲でサポートすることが大切です。
親の状況によっては、直接お金を渡すよりも、公的制度の利用や手続きの支援をした方が、長期的な解決につながる場合もあります。
ここでは、お金がない親のために子供ができる支援方法をいくつか紹介します。
3-1 介護費用や生活費を援助する
親に収入や預貯金が少ない場合、子供が介護費用や生活費を援助することも考えられます。
例えば、毎月一定額を仕送りしたり、医療費や介護サービスの自己負担分を支払ったりする方法があるでしょう。
ただし、援助する際は、子供自身の家計に無理がない範囲で行うことが重要です。
親の生活が苦しいからといって、子供が自分の生活費や教育費、住宅ローンの返済などを犠牲にしてまで援助する必要はありません。
また、親の金銭管理に問題がある場合には、現金をそのまま渡すよりも、家賃や介護費用などを子供が直接支払う方が有効な場合もあります。
他にも、兄弟姉妹がいる場合には、一人だけが負担を抱え込まないように、費用負担の割合や役割分担を話し合っておくと良いでしょう。
3-2 情報収集や手続きをサポートする
親にお金がない場合、子供が直接費用を負担する前に、公的制度や支援サービスを利用できないか確認してみましょう。
高齢の親の場合、資産状況や要介護の状態によっては、以下のような支援制度を活用できる可能性もあるからです。
- 介護保険サービス
- 生活保護
- 医療費の負担軽減制度
- 自治体独自の高齢者支援制度
しかし、親が高齢であったり、病気や認知症の症状があったりすると、自分で制度を調べたり、役所に相談したりすることが難しい場合も多々あります。
このようなときは、子供が情報収集や手続きのサポートをするだけでも大きな助けになるはずです。
3-3 親を子供の扶養に入れる
親の収入が少ない場合、一定の要件を満たせば、親を子供の扶養に入れられる可能性があります。
扶養に入れれば、子供側は所得税や住民税の扶養控除を受けられる場合があります。
他にも、健康保険上の扶養に入れられれば、親が自分で国民健康保険料を負担しなくて済む場合があります。
ただし、税法上の扶養と健康保険上の扶養では、要件が異なるため、事前に確認することが大切です。
例えば、税法上の扶養控除は、親の合計所得金額などが要件になります。
一方、健康保険上の扶養は、親の年収や子供からの仕送り状況、生計維持関係などが確認されます。
また、75歳以上の親は原則として後期高齢者医療制度に加入するため、子供の勤務先の健康保険の扶養には入れません。親の年齢によって利用できる制度が異なる点にも注意しましょう。
4章 お金がない親が利用できる制度
親にお金がない場合、子供がすべての費用を負担する前に、公的制度や資産活用の方法を確認することが大切です。
子供だけで抱え込まず、自治体や専門家に相談しながら、親に合った支援策を検討しましょう。
4-1 生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度とは、低所得世帯や高齢者世帯、障害者世帯などを対象に、生活再建に必要な資金を貸し付ける制度です。
窓口は、各市区町村の社会福祉協議会であり、貸付対象となる資金は、主に以下の通りです。
- 生活再建までの生活費
- 住宅入居費
- 一時的に必要な生活費
- 福祉用具の購入費
- 住宅改修費
介護などで急にお金が必要になった場合には、制度の利用を検討しても良いでしょう。
ただし、貸付制度である以上、原則として返済が必要です。
親に返済の見込みがない場合や、すでに生活が大きく困窮している場合には、生活保護など別の制度を検討した方が良いケースもあります。
4-2 老齢年金の繰上げ受給
親が60歳以上65歳未満で、まだ老齢年金を受給していない場合には、老齢年金の繰上げ受給を検討できる場合があります。
老齢年金は原則として65歳から受給しますが、60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受け取ることも可能です。
繰上げ受給を利用すれば、65歳を待たずに年金を受け取れるため、当面の生活費を確保しやすくなります。
一方で、繰上げ受給をすると年金額は減額され、その減額は原則として一生続きます。
4-3 生活保護
親に収入や資産がほとんどなく、年金や子供からの援助だけでは最低限度の生活を維持できない場合には、生活保護の利用を検討できます。
生活保護は、資産や能力、他の制度などを活用しても生活に困窮する人に対し、国が最低限度の生活を保障する制度です。
生活保護を申請する際、親族による扶養が確認される場合があります。
ただし、子供に扶養義務があるからといって、必ず親を引き取ったり、生活費を全額負担したりしなければならないわけではありません。
生活保護法上、扶養義務者による扶養は保護に優先するとされていますが、実際に援助できるかどうかは子供の収入や生活状況によって判断されます。
4-4 公的介護施設への入居
親に介護が必要で、自宅での生活が難しい場合には、公的介護施設への入居を検討しましょう。
高齢者施設にはいくつか種類がありますが、代表的なものは以下の通りです。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
特に、特別養護老人ホームは、民間の有料老人ホームと比べて費用を抑えやすい傾向があります。
所得や預貯金が一定以下の場合には、食費や居住費の負担を軽減する制度を利用できる可能性もあります。
ただし、特別養護老人ホームは原則として要介護3以上の人が入所対象となるなど、一定の条件があります。
また、地域によっては待機者が多く、すぐに入居できない場合もあるので、早めに地域包括支援センターやケアマネジャーに相談しましょう。
4-5 リースバック・リバースモーゲージ
親が自宅を所有しているものの、現金収入が少ない場合には、リースバックやリバースモーゲージといった方法も選択肢のひとつです。
リースバックとは、自宅を不動産会社などに売却した上で、賃貸借契約を結び、そのまま住み続ける方法です。
まとまった売却代金を得られる一方で、売却後は家賃を支払う必要があります。
リバースモーゲージとは、自宅を担保にして金融機関などから融資を受け、親が亡くなった後に自宅を売却して返済する仕組みです。
自宅に住み続けながら生活資金を確保できる可能性がありますが、対象となる不動産や年齢、推定相続人の同意などに条件が付くことがあります。
これらの方法は、自宅を活用して資金を作れる反面、将来の住まいや相続に大きく影響します。
契約内容を十分に確認せず利用すると、家賃負担が重くなったり、相続人とのトラブルにつながったりする恐れもあります。
自分たちで判断が難しい場合には、専門家に相談した上で利用すべきか判断することも検討しましょう。
まとめ
親子には互いに扶養義務があるため、お金がない親の面倒を完全に放棄することは難しい場合があります。
また、介護が必要な親を危険な状態で放置すると法的責任を問われる可能性もあるのでご注意ください。
一方で、子供が生活費や介護費用をすべて負担する必要はありません。
親に収入や資産がなく、子供も援助が難しい場合には、必要に応じて生活保護や介護保険制度の利用なども検討しましょう。
親の介護や支援は子供だけで抱え込む必要はありません。
自分たちだけで解決が難しい場合や利用できる制度・支援について知りたい場合には、地域包括支援センターや自治体の福祉支援の窓口に相談することが大切です。
よくあるご質問
お金がない親の面倒を拒むことはできますか?
お金がない親の面倒を完全に拒むことは、法律上難しい場合があります。
民法では、親子などの直系血族は互いに扶養義務を負うと定められているためです。
ただし、扶養義務があるからといって、子供が親を必ず自宅に引き取ったり、親の生活費や介護費用をすべて負担したりしなければならないわけではありません。
親への支援は、子供自身の生活を維持できる範囲で考えることが基本とされているからです。親にお金がない場合、経済的な援助をしなければなりませんか?
親にお金がない場合でも、子供が必ず経済的な援助をしなければならないとは限りません。
親子には扶養義務がありますが、子供が自分の生活を犠牲にしてまで親の生活費を負担する義務があるわけではないからです。
親への援助を求められた場合は、まず自分の収入や支出、家族構成、将来必要になる教育費や老後資金などを確認しましょう。
その上で、無理のない範囲で援助できるかを判断することが大切です。
援助する場合でも、毎月の仕送り額や負担する費用の範囲を明確にしておくと、後々のトラブルを防ぎやすくなります。親が生活保護を申請すると子供に必ず連絡(扶養照会)が行きますか?
親が生活保護を申請すると、福祉事務所から子供などの扶養義務者に対して、援助が可能かどうか確認される場合があり、これを扶養照会といいます。
ただし、生活保護を申請したからといって、子供に必ず扶養照会が行われるわけではありません。
扶養照会を行うかどうかは、親族との関係性や援助の可能性、申請者本人の事情などを踏まえて判断されます。
例えば、過去に虐待やDV、著しい不仲などの事情がある場合には、扶養照会が行われないこともあります。











