- 空き家を所有したときにかかる税金
- 空き家にかかる固定資産税が最大6倍になるまでの流れ
- 相続した空き家を活用、処分する方法
誰も住んでいなく活用されていない空き家でも、固定資産税は毎年課税されてしまいます。
使い道のない空き家を所有しているだけで、固定資産税をはじめとした維持費がかさんでしまいます。
更に、空き家の管理状態が悪く特定空き家に指定されると、固定資産税が最大6倍になってしまう恐れもあるので注意が必要です。
もし亡くなった方が住んでいた自宅を相続し空き家のままになっている場合には、そのままにせず売却や活用に関しても検討するのが良いでしょう。
本記事では、空き家の固定資産税が6倍になってしまう理由や空き家を所有し続けるリスクを解説していきます。
空き家を相続するリスクについては、下記の記事で解説しているので、あわせてお読みください。
目次
1章 空き家を所有するとかかる税金
誰も住んでいなく使っていない空き家は、所有しているだけで固定資産税や都市計画税がかかります。
他にも、空き家を相続したときには、相続税がかかることも理解しておきましょう。
空き家を所有すると、かかる税金は、主に下記の通りです。
- 固定資産税・都市計画税
- 相続税・登録免許税
- 所得税・住民税
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1 【所有しているとかかる】固定資産税・都市計画税
固定資産税および都市計画税は毎年1月1日時点の不動産所有者に対して課税されるので、空き家であっても所有者が固定資産税を負担しなければなりません。
なお、相続登記を行っていなくても、登記上の所有者がすでに亡くなっている場合には、相続人が固定資産税の納税義務者となります。
固定資産税および都市計画税は毎年発生するため、活用していない空き家でも所有し続ける限り、固定資産税や都市計画税がかかることを理解しておきましょう。
また、固定資産税の計算式は「固定資産税評価額×1.4%」ですが、住宅用地に関しては固定資産税評価額が最大6分の1まで減額されます。
空き家に関しても住宅用地が適用されているので、空き家を更地にしてしまうと固定資産税が最大6倍に上がってしまう恐れがある点にも注意しなければなりません。
1-2 【相続するとかかる】相続税・登録免許税
亡くなった人が所有していた空き家を相続すると、相続税および登録免許税がかかります。
登録免許税とは、亡くなった人から相続人へ空き家および土地の名義変更手続きをしたときにかかる税金です。
相続税は空き家や土地だけでなく、遺産総額に対してかかるため預貯金や株式など他の遺産と合わせて計算をする必要があります。
登録免許税は、相続登記の場合は「不動産の固定資産税評価額×0.4%」で計算可能です。
例えば、2,000万円の空き家を相続した場合の登録免許税は、8万円です。
これまで相続登記は義務化されておらず、相続人の意思によって行うとされていました。
しかし、2024年4月からは相続登記が義務化され、相続発生から3年以内に相続登記をしない場合には10万円以下の過料が科される恐れがあります。
なお、相続登記の義務化は過去に発生した相続においても適用されます。
そのため、まだ相続登記がおすみでない土地をお持ちの人は早めに手続きをすませましょう。
相続登記は自分でも行えますが、司法書士に依頼すれば数万円程度で代行可能です。
グリーン司法書士法人でも相続登記に関する相談をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。
1-3 【売却するとかかる】所得税・住民税
空き家を売却し利益が発生すると、譲渡所得税および住民税がかかります。
土地や空き家を売却したときには「売却代金-(取得費+譲渡費用)」で計算できる譲渡所得に対して税金がかかる仕組みです。
なお、相続した空き家を3年以内に売却した場合、譲渡所得から3,000万円控除できる「相続空き家の3,000万円特別控除の特例」を利用できる可能性があります。
相続空き家の3,000万円特別控除の特例は、節税効果が非常に大きいので相続した空き家を売却する際には、適用要件を満たしているか確認しておきましょう。
2章 【注意】「特定空き家」「管理不全空き家」に指定されると固定資産税が最大6倍になる
人が住んでいる住宅同様に固定資産税の減額特例が適用されている空き家ですが、荒れ果ててしまい「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定されると、減額特例が適用されなくなってしまいます。
下記の住宅は、特定空き家や管理不全空き家として、指定されてしまいます。
特定空き家 | 放置すれば倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある空き家 |
管理不全空き家 | このまま放っておくと特定空き家になりそうな物件 |
そのため、特定空き家や管理不全空き家に指定されてしまうと、固定資産税が最大6倍になってしまうので注意が必要です。
次の章では、特定空き家と指定されるまでの流れを紹介していきます。
管理不全空き家については、下記の記事でも詳しく解説しています。
3章 特定空き家と指定されるまでの流れ
特定空き家はすぐに指定されるわけではなく、所有者に対して問い合わせや助言、指導を行ったにもかかわらず是正されない場合に指定されてしまいます。
特定空き家と指定されるまでの流れは、以下の通りです。
STEP1:自治体に空き家の苦情や相談が届けられる
STEP2:自治体が空き家の調査を行う
STEP3:空き家の所有者に問い合わせがくる
STEP4:空き家の所有者に助言・指導が行われる
STEP5:空き家の所有者に勧告・命令が行われる
STEP6:空き家取り壊しの行政代執行が行われる
それぞれ詳しく解説していきます。
STEP① 自治体に空き家の苦情や相談が届けられる
まずは、近隣住民から自治体宛に空き家の苦情が相談が届けられて、問題となっている空き家の存在が明らかになる場合が多いです。
近隣に空き家があると、以下のリスクやデメリットがあります。
- 倒壊リスク
- 火災リスク
- 犯罪リスク
- 周辺の景観悪化
このように様々なリスクやデメリットがあるので、空き家に関する苦情は多く自治体に寄せられています。
STEP② 自治体が空き家の調査を行う
空き家に関する苦情や相談を受けた自治体は、実際に空き家がどんな状態か調査を行います。
調査の結果、所有者の管理状態に問題があると判断した場合には、所有者への問い合わせを行います。
STEP③ 空き家の所有者に問い合わせがくる
空き家の管理状態に問題があると自治体が判断したら、まずは空き家の所有者に問い合わせを行います。
いきなり無断で特定空き家と指定されるわけではないので、ご安心ください。
STEP④ 空き家の所有者に助言・指導が行われる
問い合わせへの回答によっては、自治体が空き家の所有者に対して、助言や指導を行います。
助言や指導の内容は、主に以下の通りです。
- 空き家の除却
- 空き家の修繕
- 樹木の伐採
助言や指導に従い、空き家の状態を改善できれば、特定空き家には指定されません。
STEP⑤ 空き家の所有者に勧告・命令が行われる
自治体が空き家の所有者に対して行った助言や指導に従わない場合、更に強制力のある勧告や命令が行われます。
勧告により、特定空き家として指定されれば、住宅用地の減額特例を受けられなくなります。
翌年から固定資産税の金額が大幅に上がってしまうので、ご注意ください。
勧告にも従わない場合には、自治体から空き家の管理状態改善に関する命令が出されます。
命令に従わないと50万円以下の罰金が科される恐れもあります。
STEP⑥ 空き家取り壊しの行政代執行が行われる
自治体の命令に従わない場合、自治体が強制的に空き家を取り壊し、かかった費用を所有者に請求する「行政代執行」が行われる場合もあります。
このように、空き家を放置してしまい特定空き家として指定されると、固定資産税や解体費用などの費用がかかるので注意が必要です。
また、使用予定のない空き家を所有し続けることは、固定資産税がかかる以外にも管理義務が発生し続けるなどのリスクがあります。
次の章では、空き家を所有し続けるリスクやデメリットを詳しく見ていきましょう。
4章 相続した空き家を所有し続けるリスク・デメリット
空き家の中には、亡くなった方の自宅を相続したものの活用できずにそのままになってしまっているものもあります。
相続した空き家を所有し続けるのには、固定資産税がかかる以外のリスクやデメリットもあります。
相続した空き家を所有し続けるリスクやデメリットは、主に下記の通りです。
- 維持費がかかり続ける
- 空き家や土地の管理義務が発生する
- 空き家には住宅用火災保険を使えない
- 売却や活用がどんどん難しくなる恐れがある
それぞれ見ていきましょう。
4-1 維持費がかかり続ける
本記事で解説したように、空き家を相続すると、誰も住んでいないにもかかわらず固定資産税が毎年かかります。
特定空き家に指定されないように、空き家を適切に管理するのであれば、税金以外にも建物の修繕費用などもかかります。
4-2 空き家や土地の管理義務が発生する
相続した空き家や土地に関しては、所有者が管理義務を負う必要があります。
空き家を放置し、近隣住民とトラブルになった際には損害賠償に発展する恐れもあるのでご注意ください。
空き家の放置によりトラブルが起きるケースは、主に以下の通りです。
- 建物が倒壊し近隣住宅の塀や建物を壊してしまう
- 空き家が犯罪に使われてしまう
- 空き家が放置されていて周辺の景観悪化につながる
- 空き家で外注や害獣が発生し、近隣住宅にも入り込んでしまう
管理義務を怠り、トラブルとなった場合には解決のために更に費用がかかる可能性もあります。
4-3 空き家には住宅用火災保険を使えない
空き家であっても火災リスクはあるので、人が住んでいる住宅同様に火災保険に加入しておくことが望ましいです。
しかし、空き家は住宅用火災保険に加入できず、これまで加入していた火災保険を引き継ぐことができないのでご注意ください。
火災保険は建物の用途によって分かれているため、加入できたとしても住宅物件ではなく一般物件扱いになり火災保険料も増えてしまう可能性が高いです。
4-4 売却や活用がどんどん難しくなる恐れがある
「いつか売却や活用をしたい」と思っていても、空き家の立地や状態によっては、売却や活用がどんどん難しくなる恐れがあります。
例えば、空き家が田舎にあり人口減少が予想されるのであれば、土地や空き家の買い手は将来的に見つかりにくくなるでしょう。
売却や活用を先延ばしにした結果、空き家の買い手が見つからない、希望条件で売却できないなどのリスクもあります。
5章 空き家の固定資産税を滞納したときに起きること
本記事で解説したように、人が住んでいない空き家であっても所有者が固定資産税を納税する必要があります。
空き家の固定資産税を払えないと、下記の流れで督促や差押えが行われる恐れがあります。
- 延滞金が発生する
- 自治体から督促状が届く
- 財産調査が行われる
- 空き家や預貯金などの財産を差し押さえられる
空き家などの不動産が差押えとなった場合、競売によって処分されるため、通常の売却よりも売却代金が低くなってしまう可能性が高いです。
したがって、空き家の固定資産税を払うのが難しい場合は、放置するのではなく、競売となる前にご自身で売却活動を行うことをおすすめします。
6章 相続した空き家を活用・処分する5つの方法
相続した空き家はそのままにしておいても、維持費がかかるので活用もしくは売却してしまうのもおすすめです。
相続した空き家を活用する方法は、主に以下の通りです。
- 空き家を賃貸として貸し出す
- 空き家を更地にして貸し出す
- 空き家を売却してしまう
- 空き家を寄付・贈与してしまう
- 更地にして相続土地国庫帰属制度を利用する
それぞれ詳しく解説していきます。
6-1 空き家を賃貸として貸し出す
空き家をそのまま賃貸として貸し出すことができれば、初期費用を抑えつつ空き家を活用できます。
ただし田舎にある空き家など、借り手が見つかりにくいかもしれません。
他人に貸すのが難しい場合には、親族に貸し出し活用してもらうのも選択肢のひとつです。
6-2 空き家を更地にして貸し出す
空き家の建物部分に需要がないのであれば、一度更地にしてから他人に貸し出すのもおすすめです。
解体費用はかかりますが更地にした場合、賃貸住宅以外の活用も検討でき、建物を残しておくよりも借り手を探しやすくなります。
ただし、1章で解説したように空き家を解体し更地にした場合には住宅用地の特例が適用されなくなり、翌年以降の固定資産税が最大6倍になってしまうのでご注意ください。
6-3 空き家を売却してしまう
空き家の活用が難しい場合もしくは手間をかけたくない場合には、売却してしまうのも良いでしょう。
空き家を売却する際には、以下の2つの方法があります。
- 空き家を残したまま売却する
- 空き家を更地にしてから売却する
建物付きではなかなか売却できない場合には、空き家を解体後に売却することを検討してみてはいかがでしょうか。
また、相続した空き家を売却する場合、相続空き家の3,000万円控除の特例を利用できる可能性があります。
相続空き家の3,000万円控除の特例を適用できれば、売却益から3,000万円も控除できるので、譲渡所得税を大幅に節税可能です。
なお、相続した空き家を活用するにしても売却するにしても、まずは相続登記が必要です。
まだ相続登記がすんでいないのであれば、早めに名義の変更登記をしておきましょう。
相続登記は自分で行うこともできますが、司法書士に依頼した方がスムーズかつ確実です。
6-4 空き家を寄付・贈与してしまう
空き家を手放したいものの買い手が見つからない場合は、寄付も検討しましょう。
本記事で解説したように、空き家であっても固定資産税や維持費がかかるので、タダであっても手放したほうが良いケースもあります。
寄付する先は、国や自治体だけでなく、一般企業や公益法人等なども受け付けてくれる可能性があります。
他にも、空き家の隣に住宅が建っていてれば、住民が空き家や土地を引き取ってくれる可能性もあるでしょう。
ただし、あまりにも老朽化が進んでいて「利用価値がない」と判断されれば、国や自治体であっても寄付を拒否される可能性があるのでその点は留意しておきましょう。
また、一般企業への寄付の場合、利益を得ていなくても「みなし譲渡所得」として譲渡所得税の課税対象になる可能性がある点にもご注意ください。
6-5 更地にして相続土地国庫帰属制度を利用する
空き家の売却、寄付も難しい場合は、建物を解体して相続土地国庫帰属制度を利用することも検討しましょう。
相続土地国庫帰属制度とは、相続等で取得した土地を国に帰属(渡すことが)できる制度です。
ただし、すべての土地で利用できるわけではなく、建物がある土地や境界がはっきりしていない土地には適用できません。
そのため、相続土地国庫帰属制度を利用する際には、空き家を解体する、隣地との境界を確定させるなどの作業が必要となります。
また、相続土地国庫帰属制度を利用する際には、①審査手数料1万4,000円と②土地1筆につき20万円程度の負担金を納めなければなりません。
とはいえ、将来にわたり固定資産税や維持費がかからなくなることや次世代に活用、売却が難しい土地を受け継がなくてすむ点は、大きなメリットといえるでしょう。
まとめ
誰も住んでいない空き家に対しても、毎年1月1日時点の所有者に対して固定資産税が課税されます。
空き家の固定資産税には、住宅用地の減額特例が適用されているので、建物を解体し更地にすると固定資産税が値上がりしてしまいます。
しかし、空き家の管理状態が悪く「特定空き家」に指定されてしまうと、住宅用地の減額特例が適用されなくなり、翌年の固定資産税が最大6倍まで高くなってしまうのでご注意ください。
空き家は固定資産税の他にも維持費がかかりますし、所有者に対して管理義務も発生します。
相続した空き家をそのままにしてしまっている場合には、活用や売却も検討するのがおすすめです。
なお、相続した空き家を活用もしくは売却する際には、事前に相続登記をすませておく必要があります。
相続登記は自分で行うこともできますが、不安であれば司法書士への依頼もご検討ください。
グリーン司法書士法人では、相続登記を始めとした相続手続きに関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能なので、まずはお気軽にお問い合わせください。