誰も住んでいなく活用されていない空き家でも、固定資産税は毎年課税されてしまいます。
使い道のない空き家を所有しているだけで、固定資産税をはじめとした維持費がかさんでしまいます。
更に、空き家の管理状態が悪いと固定資産税が最大6倍になってしまう恐れもあるので注意が必要です。
もし亡くなった方が住んでいた自宅を相続し空き家のままになっている場合には、そのままにせず売却や活用に関しても検討するのが良いでしょう。
本記事では、空き家の固定資産税が6倍になってしまう理由や空き家を所有し続けるリスクを解説していきます。
1章 空き家にかかる固定資産税とは
誰も住んでいなく使っていない空き家は、所有しているだけで固定資産税がかかります。
固定資産税は毎年1月1日時点の不動産所有者に対して課税されるので、空き家であっても所有者が固定資産税を負担しなければなりません。
なお、相続登記を行っていなく、登記上の所有者がすでに亡くなっている場合には相続人が固定資産税の納税義務者となります。
固定資産税の計算式は「固定資産税評価額×1.4%」ですが、住宅用地に関しては固定資産税評価額が最大6分の1まで減額されます。
空き家に関しても住宅用地が適用されているので、空き家を更地にしてしまうと固定資産税が最大6倍に上がってしまう恐れがあります。
1-1 「特定空き家」に指定されると固定資産税が最大6倍になる
人が住んでいる住宅同様に固定資産税の減額特例が適用されている空き家ですが、荒れ果ててしまい「特定空き家」に指定されると、減額特例が適用されなくなってしまいます。
そのため、特定空き家に指定されてしまうと固定資産税が最大6倍になってしまうので注意が必要です。
特定空き家とは所有者の管理が悪く、倒壊や火災リスクが高い建物が指定されてしまいます。
次の章では、特定空き家と指定されるまでの流れを紹介していきます。
2章 特定空き家と指定されるまでの流れ
特定空き家はすぐに指定されるわけではなく、所有者に対して問い合わせや助言、指導を行ったにもかかわらず是正されない場合に指定されてしまいます。
特定空き家と指定されるまでの流れは、以下の通りです。
STEP1:自治体に空き家の苦情や相談が届けられる
STEP2:自治体が空き家の調査を行う
STEP3:空き家の所有者に問い合わせがくる
STEP4:空き家の所有者に助言・指導が行われる
STEP5:空き家の所有者に勧告・命令が行われる
STEP6:空き家取り壊しの行政代執行が行われる
それぞれ詳しく解説していきます。
STEP1 自治体に空き家の苦情や相談が届けられる
まずは、近隣住民から自治体宛に空き家の苦情が相談が届けられて、問題となっている空き家の存在が明らかになる場合が多いです。
近隣に空き家があると、以下のリスクやデメリットがあります。
- 倒壊リスク
- 火災リスク
- 犯罪リスク
- 周辺の景観悪化
このように様々なリスクやデメリットがあるので、空き家に関する苦情は多く自治体に寄せられています。
STEP2 自治体が空き家の調査を行う
空き家に関する苦情や相談を受けた自治体は、実際に空き家がどんな状態か調査を行います。
調査の結果、所有者の管理状態に問題があると判断した場合には、所有者への問い合わせを行います。
STEP3 空き家の所有者に問い合わせがくる
空き家の管理状態に問題があると自治体が判断したら、まずは空き家の所有者に問い合わせを行います。
いきなり無断で特定空き家と指定されるわけではないので、ご安心ください。
STEP4 空き家の所有者に助言・指導が行われる
問い合わせへの回答によっては、自治体が空き家の所有者に対して、助言や指導を行います。
助言や指導の内容は、主に以下の通りです。
- 空き家の除却
- 空き家の修繕
- 樹木の伐採
助言や指導に従い、空き家の状態を改善できれば、特定空き家には指定されません。
STEP5 空き家の所有者に勧告・命令が行われる
自治体が空き家の所有者に対して行った助言や指導に従わない場合、更に強制力のある勧告や命令が行われます。
勧告により、特定空き家として指定されれば、住宅用地の減額特例を受けられなくなります。
翌年から固定資産税の金額が大幅に上がってしまうので、ご注意ください。
勧告にも従わない場合には、自治体から空き家の管理状態改善に関する命令が出されます。
命令に従わないと50万円以下の罰金が科される恐れもあります。
STEP6 空き家取り壊しの行政代執行が行われる
自治体の命令に従わない場合、自治体が強制的に空き家を取り壊し、かかった費用を所有者に請求する「行政代執行」が行われる場合もあります。
このように、空き家を放置してしまい特定空き家として指定されると、固定資産税や解体費用などの費用がかかるので注意が必要です。
3章 相続した空き家を所有し続けるリスク
空き家の中には、亡くなった方の自宅を相続したものの活用できずにそのままになってしまっているものもあります。
相続した空き家を所有し続けるのには、固定資産税がかかる以外のリスクやデメリットもあります。
詳しく確認していきましょう。
3-1 維持費がかかり続ける
空き家を相続すると、誰も住んでいないにもかかわらず固定資産税が毎年かかります。
特定空き家に指定されないように、空き家を適切に管理するのであれば、税金以外にも建物の修繕費用などもかかります。
3-2 空き家や土地の管理義務が発生する
相続した空き家や土地に関しては、所有者が管理義務を負う必要があります。
空き家を放置し、近隣住民とトラブルになった際には損害賠償に発展する恐れもあるのでご注意ください。
空き家の放置によりトラブルが起きるケースは、主に以下の通りです。
- 建物が倒壊し近隣住宅の塀や建物を壊してしまう
- 空き家が犯罪に使われてしまう
- 空き家が放置されていて周辺の景観悪化につながる
- 空き家で外注や害獣が発生し、近隣住宅にも入り込んでしまう
管理義務を怠り、トラブルとなった場合には解決のために更に費用がかかる可能性もあります。
【空き家を相続した際には相続登記が必要です】
空き家を相続したとしても相続登記が必要であり、更に2024年より相続登記を行うことが義務になります。
もし相続した土地の変更登記がお済みでないのであれば、まずは相続登記を行いましょう。
相続登記は司法書士に代行してもらうことも可能ですし、相続登記を司法書士に依頼すれば、土地活用の相談や必要に応じて不動産会社や税理士など別の専門家も紹介してもらえます。
相続登記の義務化に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
4章 相続した空き家を活用する方法3つ
相続した空き家はそのままにしておいても、維持費がかかるので活用もしくは売却してしまうのもおすすめです。
相続した空き家を活用する方法は、主に以下の通りです。
- 空き家を賃貸として貸し出す
- 空き家を更地にして貸し出す
- 空き家を売却してしまう
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 空き家を賃貸として貸し出す
空き家をそのまま賃貸として貸し出すことができれば、初期費用を抑えつつ空き家を活用できます。
ただし田舎にある空き家など、借り手が見つかりにくいかもしれません。
他人に貸すのが難しい場合には、親族に貸し出し活用してもらうのも選択肢のひとつです。
4-2 空き家を更地にして貸し出す
空き家の建物部分に需要がないのであれば、一度更地にしてから他人に貸し出すのもおすすめです。
解体費用はかかりますが更地にした場合、賃貸住宅以外の活用も検討でき、建物を残しておくよりも借り手を探しやすくなります。
ただし、1章で解説したように空き家を解体し更地にした場合には住宅用地の特例が適用されなくなり、翌年以降の固定資産税が最大6倍になってしまうのでご注意ください。
4-3 空き家を売却してしまう
空き家の活用が難しい場合もしくは手間をかけたくない場合には、売却してしまうのも良いでしょう。
空き家を売却する際には、以下の2つの方法があります。
- 空き家を残したまま売却する
- 空き家を更地にしてから売却する
建物付きではなかなか売却できない場合には、空き家を解体後に売却することを検討してみてはいかがでしょうか。
また、相続した空き家を売却する場合、相続空き家の3,000万円控除の特例を利用できる可能性があります。
相続空き家の3,000万円控除の特例を適用できれば、売却益から3,000万円も控除できるので、譲渡所得税を大幅に節税可能です。
なお、相続した空き家を活用するにしても売却するにしても、まずは相続登記が必要です。
まだ相続登記がすんでいないのであれば、早めに名義の変更登記をしておきましょう。
相続登記は自分で行うこともできますが、司法書士に依頼した方がスムーズかつ確実です。
まとめ
誰も住んでいない空き家に対しても、毎年1月1日時点の所有者に対して固定資産税が課税されます。
空き家の固定資産税には、住宅用地の減額特例が適用されているので、建物を解体し更地にすると固定資産税が値上がりしてしまいます。
しかし、空き家の管理状態が悪く「特定空き家」に指定されてしまうと、住宅用地の減額特例が適用されなくなり、翌年の固定資産税が最大6倍まで高くなってしまうのでご注意ください。
空き家は固定資産税の他にも維持費がかかりますし、所有者に対して管理義務も発生します。
相続した空き家をそのままにしてしまっている場合には、活用や売却も検討するのがおすすめです。
なお、相続した空き家を活用もしくは売却する際には、事前に相続登記をすませておく必要があります。
相続登記は自分で行うこともできますが、不安であれば司法書士への依頼もご検討ください。
グリーン司法書士法人では、相続登記を始めとした相続手続きに関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能なので、まずはお気軽にお問い合わせください。