亡くなった人が所有していた借地権は、相続財産に含まれます。
借地権を相続する際には、地主の許可などは不要であり手数料の支払いも不要です。
とはいえ相続人がすでに自宅を所有している場合など、借地権および建築された建物の使い道に困る、活用予定がないケースもあるでしょう。
その場合は、地主に建物を買い取ってもらうなどの方法で借地に建てた家を処分することも検討しましょう。
本記事では、借地に建てた家を処分する方法や建物の解体費用の相場を解説します。
借地権の相続については、下記の記事で詳しく解説していますのでご参考にしてください。
目次
1章 借地に建てた家を処分する6つの方法
自分が所有している土地に建築した家を処分するときとは違い、借地に建てた家を処分するには地主の協力を得て、手続きを行う必要があります。
借地に建てた家を処分する方法は、主に下記の6つの方法があります。
- 地主に建物を買取してもらう
- 地主と協力して底地と建物を同時売却する
- 第三者に建物のみを売却する
- 賃貸物件として貸し出す
- 更地にして返還する
- 相続放棄する
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1 地主に建物を買取してもらう
借地権や建物の活用予定がない場合は、地主に借地権と建物を買取してもらうのが最もおすすめです。
借地権を地主に売却する場合は、地主に譲渡承諾料を支払う必要がありません。
また定期借地権以外は正当事由がない限り地主が、借地権の更新を拒否することはできないため、地主の中には「借地権を買い取りたい、返却してほしい」と考えている人もいます。
そのため、「借地権と建物を手放したい相続人」と「借地権を返却してほしい地主」の利害が一致する可能性もあり、売却がうまくいきやすいケースもあるでしょう。
ただし、地主に借地権や建物を売却する場合は、下記の売却条件について話し合う必要があります。
- 建物ごと買い取ってもらえるか
- 建物を取り壊した状態で借地権を買い取ってもらうか
- 解体費用は売主、買主のどちらが負担するか
- 借地権をいくらで売却するか
1-2 地主と協力して底地と建物を同時売却する
地主が借地権を返却してほしいと考えていない、むしろ底地を処分したいと考えているのであれば、地主と借地権者が協力して底地と建物を同時売却するのもおすすめです。
底地と建物の同時売却であれば、買主にとっては通常の土地および建物と同じ扱いになるため、活用や将来の売却がしやすくなるのがメリットです。
地主と借地権者が同時売却するときには売却価格の配分を決定する必要がありますが、借地権割合が目安となります。
例えば、借地権割合が60%の土地が2,000万円の場合は借地権者が1,200万円、地主が800万円と分配します。
しかし地主側の心理として、借地権者より自分の取り分が少なくなるのは納得できないと思う人もゼロではありません。
このようなケースでは地主と借地権者で売却代金の分配方法について揉め、なかなか同時売却を進められなくなる恐れがあります。
当事者同士で解決が難しいことも多いので、底地と建物の同時売却をする際には、同時売却に強みを持つ不動産会社に依頼するのが良いでしょう。
1-3 第三者に建物のみを売却する
地主に借地権および建物を買い取ってもらえなかった場合や同時売却が上手くいかない場合は、第三者に借地権や建物を売却することも検討しましょう。
ただし、借地権を第三者に売却する際には地主から許可を得る必要があり、借地権者は地主に対して譲渡承諾料を支払うことが一般的です。
万が一、地主が許可してくれない場合は、借地非訟事件手続きを行えば裁判所が地主にかわり許可をしてくれます。
さらに、借地権については登記されていないことが多いので名義変更手続きは不要なことが多いですが、建物に関しては亡くなった人から相続人へ名義変更手続きを行わなければなりません。
建物の名義変更手続きは、法務局にて相続登記の申請を行います。
相続登記が完了していないと、売却手続きを行えないので、早めにすませておくのが良いでしょう。
これまで相続登記は義務化されておらず、相続人の意思によって行うとされていました。
しかし、2024年4月からは相続登記が義務化され、相続発生から3年以内に相続登記をしない場合には10万円以下の過料が科される恐れがあります。
なお、相続登記の義務化は過去に発生した相続においても適用されます。
そのため、まだ相続登記がおすみでない不動産をお持ちの人は早めに手続きをすませましょう。
相続登記は自分でも行えますが、司法書士に依頼すれば数万円程度で代行可能です。
グリーン司法書士法人でも相続登記に関する相談をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。
1-4 賃貸物件として貸し出す
借地権付き建物の売却が思うようにいかない場合や地主が許可をしてくれない場合は、自分で住むのではなく賃貸物件として活用するのも良いでしょう。
借地権の売却と異なり、第三者に貸し出すのみであれば地主の許可は不要です。
そのため、土地の立地が良い場合や賃貸需要があるエリアの場合は賃貸経営も検討してみましょう。
加えて、雨漏りや外壁の修繕など経年劣化に対応するリフォームであれば、地主の許可も必要ありません。
一方で、建物の増改築や大規模リフォームをする際には地主の許可が必要になるのでご注意ください。
1-5 更地にして返還する
建築されている建物が古くリフォームが必要な場合など、借地権の売却や活用が難しく、他に選択肢がなければ建物を取り壊し借地を地主に返還する方が良いケースもあります。
ただし、借地を相続した人にとっては損になってしまうのであまりおすすめはできず、最終手段と考えておくと良いでしょう。
地主に借地権や建物を買い取りしてもらえないのは惜しいと感じる人もいるかもしれませんが、更地にして借地権を返還してしまえば、地代の支払いや建物の管理コストは不要になります。
1-6 相続放棄する
相続した借地権および建物が不要であれば、相続放棄してしまうのも選択肢のひとつです。
相続放棄すれば、借地権や建物の管理義務は原則としてなくなり、処分方法について検討しなくてよくなります。
ただし、相続放棄は原則として取り消せない、他の財産も相続できなくなるなど下記のデメリットやリスクがあります。
- 借地権および建物だけでなく、他のプラスの財産も一切相続できなくなる
- 自分以外の人物が相続人になり負担がかかる恐れがある
- 相続放棄には「自分が相続人になってから3ヶ月以内」という申立て期限がある
- 相続放棄をすると原則として撤回できない
- 亡くなった人の財産を処分すると相続放棄できない
故人が借地権や建物の他に財産を有している場合は、相続放棄しない方が良いケースもあるでしょう。
相続放棄すべきかの判断をする際には、相続財産調査を行い故人が遺した財産の種類や価値を確認しなければなりません。
自分で相続放棄すべきか判断が難しい場合や相続放棄まで期限が迫っている場合は、相続放棄に精通した司法書士や弁護士に相談するのが良いでしょう。
2章 借地に建てた家を解体する費用相場
借地に建てた家を解体する際には、地主の許可が必要です。
また、解体費用は借地権者が負担するのが原則であり、解体費用の相場は下記の通りです。
建物の構造 | 1坪あたりの解体費用相場 |
木造住宅 | 3~5万円程度 |
鉄骨造住宅 | 4~6万円程度 |
RC造住宅 | 6~8万円程度 |
例えば、木造住宅で50坪の家を解体するには150~250万円程度かかります。
できるだけ解体費用の負担を抑えるためにも、複数の業者で見積もりを取得し比較検討するのがおすすめです。
3章 借地に建てた家の解体費用が払えないときの対処法
故人が借地に建てた家を受け継いだものの活用予定がなく、管理コストを負担したくない場合は建物の解体を検討する人もいるでしょう。
しかし、本記事の2章で解説したように建物の解体には100万円以上かかることも多いです。
借地に建てた家の解体費用を支払えないときには、自治体の補助を受ける、金融機関でローンを組むなどの対応が可能です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1 自治体の補助を受ける
空き家の老朽化や発生を防止するために、建物の解体費用に対して補助金を用意している自治体も多いです。
ただし、すべての解体で補助金を得られるわけではなく、下記のように要件を設定している場合もあります。
- 倒壊する危険がある建物
- 築年数
- 現在の耐震基準を満たしていない
- 補助金申請者の前年度の所得
また、補助金の支給先も国や地方自治体と複数あるため、利用できる補助金があるか知りたい場合は、地域の解体業者や不動産会社などに相談してみるのが良いでしょう。
3-2 ローンを組む
金融機関によっては、建物の解体工事専用のローンを用意している場合があります。
解体専用ローンもしくは融資の目的を定めていないフリーローンを利用すれば、解体費用を工面できます。
ただし、フリーローンは他のローンと比較して金利が高く設定されていることが多いのでご注意ください。建物の構造や大きさによっては数百万円程度の解体費用がかかる場合もあります。
自分で用意することが難しくローンを検討している場合は、金融機関にローンの条件や融資限度額を確認しておきましょう。
まとめ
借地権付き建物が不要になった場合や故人から受け継いだ借地権付き建物の活用予定がない場合は、建物や借地の処分を検討しましょう。
借地に建てた家の処分方法は複数あり、地主に借地権付き建物を買い取りしてもらう、地主と共同で底地と建物を売却してもらうなどの方法がおすすめです。
また、故人に借地権付き建物以外の財産がほとんどない場合や故人が借金を遺していたケースでは、相続放棄を検討した方が良いケースもあります。
相続放棄をする際には、自分が相続人であると知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所での申立て手続きが必要です。
スケジュールがタイトですので、相続放棄を検討している人や相続すべきか判断に迷っている人は、相続放棄に詳しい司法書士や弁護士に相談することもご検討ください。
グリーン司法書士法人では、相続放棄や相続手続きに関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
借地に建てた家を相続放棄できる?
相続した借地権および建物が不要であれば、相続放棄してしまうのも選択肢のひとつです。
相続放棄すれば、借地権や建物の管理義務は原則としてなくなり、処分方法について検討しなくてよくなります。借地に建てた家の相続はどうなる?
借地権および借地に建てた家も相続の対象になります。
▶借地の相続について詳しくはコチラ