「婿養子」とは、妻の両親と「養子縁組」をしている男性です。
その一方で「婿」は妻の両親とは養子縁組をせずに、妻との婚姻時に「妻の氏」を名乗ることを選択した男性です。
婿養子は妻の両親と普通養子縁組を結んでいるので、妻の両親と実両親両方の相続人になれます。
また、法定相続分に関しては妻や妻の兄弟姉妹と同じ割合となります。
その他、遺留分や相続放棄に関しても婿養子は実子同様の扱いを受けることが可能です。
本記事では、婿養子が誰の相続人になれるのか、妻の両親の遺産を婿養子が受け取れないケースについて解説していきます。
目次
1章 婿養子と婿の違い
婿養子の相続について詳しく解説する前に、あらためて「婿養子」と「婿」の違いをハッキリさせておきましょう。
「婿養子」とは、妻の親と養子縁組をしている男性を指します。
その一方で「婿」は、妻の親と養子縁組をせずに、妻と結婚したときに「妻の氏」を名乗ることを選択した男性を指しています。
妻の親と養子縁組をしているかの違いによって、婿養子と婿が誰の相続人になれるのかが変わってきます。次の章では、婿養子が誰の相続人になれるのか詳しく確認していきましょう。
2章 婿養子は妻の両親と実両親の両方の相続人になれる
婿養子は妻の両親と実両親の両方の相続人になれます。
婿養子は妻の両親と普通養子縁組を行うことによって、親子関係を結んでいるからです。
また、普通養子縁組を行っても実両親との親子関係は継続するので、婿養子は実両親が亡くなっても相続人になれます。
例えば、以下のケースの婿養子の法定相続分を計算してみましょう。
- 相続人は配偶者、長女A、婿養子B、次女C
- 相続財産は預貯金6,000万円
実子も養子も法定相続分は変わらないので、各相続人の法定相続分は以下の通りです。
- 配偶者:預貯金3,000万円
- 長女A、婿養子B、次女C:それぞれ預貯金1,000万円ずつ
このように、妻の親と養子縁組を行い婿養子になった場合には、妻の両親の財産を相続可能です。
ただし、婿養子であっても妻の両親の遺産を相続できない場合もあります。
次の章で詳しく確認していきましょう。
3章 婿養子が妻の両親の遺産を相続できないケース
婿養子と妻の両親が養子縁組を解消したケースや故人が遺言書を遺していた場合には、婿養子であっても妻の両親の遺産を相続できない可能性があります。
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 養子縁組を解消したケース
何らかの理由で一度結んだ養子縁組を解消した場合には、妻の両親と婿養子の間の親子関係が消滅します。
そのため、妻の両親が亡くなり相続が発生したとしても、婿養子が相続人になることはありません。
養子縁組を解消するには、離縁届を市区町村役場に提出する必要があります。
また、離縁届の提出には養親と養子の合意が必要です。
3-2 亡くなった人が遺言書を用意していたケース
妻の両親が遺言書を作成していた場合には、遺言書の内容に従って遺産分割が行われます。
遺言書に婿養子以外の人物に財産を相続させると記載されていた場合、婿養子であっても妻の両親の財産を相続できません。
ただし、妻の両親と養子縁組した婿養子には、実子同様に遺留分があります。
遺留分とは、亡くなった人の遺産を最低限度受けとれる権利です。
遺言書の内容が婿養子の遺留分を侵害していた場合には、侵害額相当の金銭を遺産を受け取った人物に対して請求できます。
4章 婿養子の相続に関するよくある質問
最後に、婿養子の相続に関するよくある質問を回答とともに紹介していきます。
婿養子の相続は判断に迷ってしまう部分も多いので、あらかじめ疑問点を解決しておくと安心です。
- 婿養子は妻と離婚したら義両親の相続人から外れる?
- 婿養子は相続放棄できる?
- 婿養子は相続税の2割加算の対象に含まれる?
それぞれ詳しく確認していきましょう。
4-1 婿養子は妻と離婚したら義両親の相続人から外れる?
婿養子は妻と離婚しただけでは、妻の両親の相続人から外れません。
妻との離婚によって妻との婚姻関係は解消できますが、妻の両親と婿養子の親子関係は解消できないからです。
「妻と離婚した婿養子に財産を遺したくない」「相続人から外したい」と考える場合には、離縁届を提出し、婿養子との養子縁組を解消しなければなりません。
離縁届の提出方法および必要書類は、下記の通りです。
提出できる人 |
|
提出先 |
のいずれか |
必要書類 |
|
4-2 婿養子は相続放棄できる?
婿養子も他の相続人同様に相続放棄することは認められています。
例えば、妻の両親から婿養子として事業を継ぐことを期待されていたとしても、相続放棄自体は可能です。
ただし、相続放棄をするには相続開始から3ヶ月以内に、家庭裁判所への申立手続きが必要です。
相続放棄の申立手続きの概要と必要書類は、下記の通りです。
提出先 | 故人の住所地を管轄する家庭裁判所 |
手続きする人 | 相続放棄する人(または法定代理人) |
手数料の目安 |
|
必要なもの |
など |
4-3 婿養子は相続税の2割加算の対象に含まれる?
婿養子は相続税計算時に2割加算の対象にはなりません。
婿養子は妻の両親が亡くなった際には、妻や妻の兄弟姉妹等と同様の取り扱いを受けるからです。
その一方で、妻の両親と養子縁組をせずに「婿」として遺言書を通じて遺産を受け取った場合には、相続税の2割加算の対象となってしまうのでご注意ください。
まとめ
婿養子は妻の両親と養子縁組を結んでいるので、妻の両親と実両親両方の相続人になれます。
養子であっても法定相続分は実子と変わらないので、妻の両親の相続が発生した際の法定相続分は、妻や妻の兄弟姉妹と同じです。
ただし、婿養子と妻の両親が養子縁組を解消した場合や妻の両親が遺言書で婿養子以外の人物に財産を遺すと指定していた場合には、婿養子であっても妻の両親の遺産を受け取れません。
ただし、婿養子には実子同様に遺留分が用意されているので、遺言書の内容が遺留分を侵害していた場合には、遺留分相当額の金銭を請求可能です。
妻の両親と養子縁組を結んでいる婿養子は、相続では実子同様に扱われます。
しかし、妻の兄弟姉妹等の他の相続人からしたら「納得がいかない」と感じてしまい不満を持つこともあるかもしれません。
婿養子と他の相続人との間の相続トラブルを回避したいのであれば、遺言書の作成や生前贈与等の相続対策もおすすめです。
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