
- 遺言書の内容に納得いかず無効にしたいときの対処法
- 遺言無効確認調停・訴訟に時効はあるのか
- 遺言書が無効になるケース
遺言書の内容に納得がいかない場合でも、すぐに無効になるとは限りません。
要件を満たした遺言書は法的な効力を持つため、単なる不公平感や感情的な不満では覆せないのが実情です。
しかし、遺言の方式に不備があったり、遺言者に判断能力がなかったりする場合は、無効を主張できる可能性があります。
本記事では、遺言書を無効にしたいときの手続きや注意点、無効が認められるケースについて解説します。
目次
1章 遺言書の内容に納得いかず無効にしたいときの対処法
遺言書の内容が不公平に感じられたり、作成時の状況に疑問を抱いたりした場合、「この遺言書を無効にしたい」と考える相続人もいるでしょう。
ただし、遺言書は法的な効力を持つ重要な書面であり、単に「納得できない」だけでは無効にはできません。
遺言書を無効にしたいときには、以下の方法で対処する必要があります。
ここでは、遺言書の無効を主張したい場合に取り得る4つの方法を解説します。
- 遺産分割協議
- 遺言無効確認調停
- 遺言無効確認訴訟
- 遺留分侵害額請求
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1 遺産分割協議
相続人全員が遺言の内容に納得していない場合には、遺産分割協議にて新たに遺産の分け方を決めることも可能です。
例えば、遺言書で「長男に全財産を相続させる」と記載されていても、他の相続人全員が同意すれば、財産を平等に分けられます。
ただし、反対する相続人が1人でもいる場合には、遺産分割協議は成立しません。
その場合は、次に紹介する調停や訴訟で遺言書の無効について主張する必要があります。
1-2 遺言無効確認調停
一部の相続人が遺言の有効性に納得できない場合には、家庭裁判所に「遺言無効確認調停」を申し立てることが可能です。
遺言無効確認調停では、調停委員が間に入り、当事者同士の話し合いをサポートします。
調停の目的はあくまで「合意の成立」であり、裁判所が強制的にその遺言書を無効と判断するわけではありません。
例えば、「遺言者が認知症だった」「署名や押印が本人のものではない」といった疑念がある場合、調停でその根拠や証拠をもとに話し合いが進められます。
合意が成立すれば調停調書が作成され、法的拘束力を持ちますが、合意に至らなければ「不成立」として終了し、次の訴訟へと手続きが進むことになります。
1-3 遺言無効確認訴訟
遺言無効確認調停で解決しなかった場合には、遺言無効確認訴訟を提起します。
遺言無効確認訴訟では、遺言書が法律上の要件を満たしていない場合や、遺言者に遺言能力がなかった場合などに、遺言の無効を求めて争います。
訴訟では、診療記録や筆跡鑑定、証人の証言などをもとに、遺言の有効・無効が裁判所によって最終的に判断されます。
判決で無効と認められた場合、その遺言書は法的効力を失います。
1-4 遺留分侵害額請求
遺言書が法的に有効であり無効にするのが難しい場合でも、内容が偏っている場合には、遺留分侵害額請求を行えます。
遺留分とは、故人の配偶者や子供などの一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分です。
例えば、「次男には何も相続させず、長男にすべて相続させる」と書かれた遺言書があっても、次男には遺留分が認められます。
遺留分は遺言より優先されるため、この場合は、次男が長男に対して遺留分侵害額請求を行えます。
2章 遺言無効確認調停・訴訟に時効はない
遺言無効確認の調停や訴訟には、時効がありません。
遺言が有効か無効かという問題は、「権利の存否」に関わるものであり、時間の経過で失われる性質のものではないからです。
例えば、遺言書が偽造された場合や、遺言書作成当時の遺言者に判断能力がなかった場合などは、10年や20年経過していても、法的には無効を主張できます。
とはいえ、遺言無効確認調停や訴訟で、遺言書の無効を認めさせるには、他の相続人や裁判所を納得させるだけの証拠が必要です。
相続発生から時間が経過してしまうと、それだけ証拠も集まりにくくなってしまうでしょう。
そのため、時効がないといえど、できるだけ早く遺言無効確認調停や訴訟を起こすことをおすすめします。
3章 遺言書が無効になるケース
遺言書は、要件を満たさない場合には自動的に無効となります。
遺言書が無効になるケースは、主に下記の通りです。
| 遺言書の種類 | 無効になるケース |
|---|---|
| すべての遺言 |
|
| 自筆証書遺言 |
|
| 公正証書遺言 | 不適切な証人を立てた |
自筆証書遺言は自分で気軽に作成できるメリットがありますが、形式の不備による無効リスクがあります。
確実に遺言内容を実行してもらいたいのであれば、相続に精通した司法書士や弁護士に相談しながら、公正証書遺言を作成するのが良いでしょう。作成時は司法書士や公証人に確認してもらうのが安全です。
4章 【注意】検認手続き前に遺言書を開封しても無効にならない
法務局による保管制度を利用していない自筆証書遺言や秘密証書遺言は、家庭裁判所による検認手続きをしなければなりません。
とはいえ、検認手続きを行う前に遺言書を開封してしまっても、遺言が無効になることはありません。
ただし、家庭裁判所に提出せず遺言書を開封した者は5万円以下の過料に科せられる可能性があるのでご注意ください。
まとめ
遺言書の有効・無効を判断するには、作成当時の状況を示す証拠が欠かせません。
家庭裁判所による検認手続きが済んでいても、形式不備や意思能力の欠如などが明らかになれば、後から無効が認められる場合もあります。
納得できない遺言に直面した際は、感情的に行動するのではなく、まず専門家へ相談し、最適な手段を選択しましょう。
グリーン司法書士法人では、遺言書の作成や相続手続きについての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
検認手続きをした後に遺言書が無効になることはありますか?
はい、検認手続きを終えた後でも遺言書が無効になる可能性はあります。
家庭裁判所による検認手続きは「遺言の内容を有効と認める手続き」ではなく、遺言の存在と状態を確認するだけの手続きに過ぎないからです。
例えば、家庭裁判所で検認を受けて封が開けられたとしても、後から次のような事情が判明すれば、遺言無効確認の調停や訴訟によって無効が認められるケースがあります。
・遺言者が遺言作成時に認知症などで判断能力を欠いていた
・他人による強要や詐欺で遺言が作成された
・遺言書の偽造・変造が発覚した遺言書が無効になったらどのように手続きすれば良いですか?
遺言書が無効と判断された場合、その遺言は初めから存在しなかったものとして扱われます。
したがって、相続は遺言書がない場合と同様に、遺産分割協議を行う必要があります。遺言書を無効にできる確率は高いですか?
結論から言えば、遺言書を無効にできる確率は決して高くありません。
裁判で無効が認められるのは、形式的な要件の欠落や、明確な証拠による意思能力の欠如が立証された場合など、限られたケースに留まるからです。
特に、公正証書遺言の場合、公証人と証人の立会いのもと作成されるため、偽造や意思能力欠如を立証するのは非常に困難でしょう。
そのため、遺言無効確認調停や訴訟を起こす際には、遺言書が無効にならなかった場合に備え、遺留分侵害額請求もあわせて行っておくことをおすすめします。








