- 所有権保存登記って何?
- どんな手続きをするの?
- いくら費用がかかるの?
など「所有権保存登記」について、わからないことが沢山あると思います。
所有権保存登記とは、
「新築した建物の所有者が誰であるか公に記録しておくもの」で不動産登記の一種です。
不動産の所在、面積、所有者などの情報を法務局という役所で記録・管理する制度を不動産登記といいます。
所有権保存登記に法的な義務はありませんが、すみやかに登記しておかないと、次のようなリスクがあるので注意が必要です。
- 自分の建物であることを証明できない
- 住宅ローン等の銀行融資を受けられない
本記事では「所有権保存登記」について、手続方法や費用まで詳しく解説したいと思います。
目次
1章 所有権保存登記とは
所有権保存登記とは、「新築した建物の所有者が誰であるか」を記録しておくために行う不動産登記であり、その不動産について初めて行う所有権登記です。
所有権保存登記を行えば新築した建物が自分の所有物であると公に証明でき、売却時や不動産を担保に入れる際に建物の所有権が自分にあることを証明可能です。
1-1 不動産登記とは
不動産登記は、不動産に関する情報を公に記録しておくため「所在、面積、用途、所有者など」を法務局で記録・管理する制度です。
不動産に名前を書いておくことはできないので、不動産登記制度により様々な情報を記録し、公衆が知ることのできる状態(公示)にして、不動産に関する権利を守っているのです。
このような不動産に関する記録は「登記記録」や「登記簿」と呼ばれており、現在では電子化されています。
この登記記録を書面に印刷したものを「登記事項証明書」といい、法務局で600円程度の手数料を支払えば誰でも自由に登記事項証明書を取得することができます。
1-2 所有権保存登記を行うシチュエーション
不動産を取得したシュチエーションによって、登記の種類は変わります。
建物を新築した場合、最初の所有者を記録するため「所有権保存登記」を行います。
中古住宅や土地を買った場合、所有者が変わったことを記録するため「所有権移転登記」を行うことになります。
所有権移転登記について詳しく知りたい方はこちら
1-3 所有権保存登記がされた登記記録の見方を知ろう
登記記録には不動産の情報や権利関係がわかりやすく記載されており、不動産ごとに「表題部」「甲区」「乙区」の3つの区分が設けられています。
それぞれの区分の特徴は以下のとおりです。
「表題部」・・・不動産の情報
(所在や地番(家屋番号)、種類、構造、面積、取得原因と日付など)
「甲区」・・・・不動産の所有権に関する情報
(所有者の氏名住所、売買や相続など取得した原因と日付)
「乙区」・・・・不動産の所有権以外の権利に関する情報
(抵当権や賃借権などの権利を保有している者の氏名住所、権利の内容、権利を取得した原因と日付)
登記簿謄本のサンプルで登記記録の内容を確認してみましょう。
登記記録のうち「表題部」に記録される情報は「建物表題登記」といい、所有権保存登記の前に先行して登記申請する必要あります。
建物表題登記は、構造の確認や床面積を測量した結果を登記申請しなければならないので、一般的には「土地家屋調査士」という国家資格を持った専門家が行います。
なお、建物表題登記は、建物の完成後(またはその所有権を取得した日)から1ヶ月以内に申請しなければならないという申請期限と法的義務があるので注意が必要です。
表題登記について詳しく知りたい方はこちら
未登記建物は違法!登記をする方法と未登記建物を相続する際の手続き
注)「権利部」の所有権保存登記に申請期限や法的義務はありません。
新築建物の登記は、以下のように「建物表題登記」⇒「所有権保存登記」の2段階で行う必要があります。
【新築したときの登記の順番】
STEP① 建物表題登記(法的な期限、義務あり)
専門家に依頼する場合は「土地家屋調査士」
↓↓↓建物表題登記の完成後↓↓↓
STEP② 所有権保存登記(法的な期限、義務なし)
専門家に依頼する場合は「司法書士」
2章 所有権保存登記の必要書類
所有権保存登記に必要な書類は以下のとおりです。
次に、それぞれの書類について詳しく説明したいと思います。
2-1 住民票
建物の所有者となる人が複数いる場合は、全員の住民票の写しが必要です。
一つの住民票(同一世帯)に所有者全員の名前があれば、1通で大丈夫です。
2-2 住宅用家屋証明書
住宅用家屋証明書は、所有権保存登記に絶対に必要な書類ではありませんが、この証明書があれば、登記申請の際に法務局へ支払う登録免許税が大きく軽減されます。
住宅用家屋証明書の交付を受けるには、一定の条件を満たしている必要がありますが、一般的なマイホームであれば条件を満たしていると考えていいでしょう。
主な条件は以下のとおりです。
【主な一定条件】
- 個人が自己居住用のために取得(新築)したものであること
- 住宅面積が家屋全体の90%を超えること
- 新築後または取得後1年以内に登記を受けるものであること
- 床面積が登記簿上50㎡以上あること
- マンションの場合は、耐火建築物、準耐火建築物、低層集合住宅のいずれかに該当すること
他の細かい条件は、市区町村役場のHPで確認してください。
住宅用家屋証明書は、新築建物のある市区町村役場での、申請により1通1300円で取得することができます。
住宅用家屋証明書の申請に必要な書類は以下のとおりです。
【一般的な必要書類】
①住宅用家屋証明書の申請書(役所もしくは役所のHPで取得可)
②住民票の写し
③建物表題登記の完了証または建物の登記事項証明書
④建築確認通知書の副本
⑤認定申請書の副本及び認定通知書の写し(特定認定長期優良住宅の場合のみ)
※市区町村によって、必要書類が異なりますので詳しくは役場のHPで確認してください。
2-3 登記申請書
登記申請書は、登記してもらう情報を法律に従ってまとめたものです。
司法書士へ依頼する場合は、司法書士が作成しますが、自身で申請する場合は自ら作成する必要があります。
一戸建てを新築した場合の登記申請書の様式は次のとおりです。
申請書ひな型は法務局のHPからダウンロードできます。
2-4 委任状
委任状は司法書士や第三者に登記申請を委任する場合に必要な書類です。
新築した人が自ら申請する場合は、委任状は必要ありません。
3章 所有権保存登記の申請方法
所有権保存登記の申請は、新築した不動産の所在地を管轄している法務局へ、登記申請書を含む必要書類を持参または郵送する方法で行います。
全国の法務局の管轄はこちらのサイトから調べることができます。
申請書に不備や間違いがあると、手続きが遅れたり、場合によっては一旦申請を取り下げなければならなくなる可能性もあるため、ご自身で申請される場合は、作成した書類などを持って事前に法務局へ行ってチェックしてもらうことをオススメします。
4章 所有権保存登記にかかる費用
所有権保存登記にかかる費用は主に以下の3点です。
不動産の価格によってかかる費用は増減しますが、おおよその目安としては以下のとおりです。
【所有権保存登記にかかる費用の目安】
※不動産の価格1000万円の場合
- 住宅用家屋証明書あり(司法書士へ依頼なし) 2~3万円
- 同上 (司法書士へ依頼あり) 4~6万円
- 住宅用家屋証明書なし(司法書士へ依頼なし) 4~5万円
- 同上 (司法書士へ依頼あり) 6~8万円
次にそれぞれの費用を詳しく見ていきましょう。
4-1 登録免許税
登録免許税は一律の額ではなく、新築した「不動産の価額」をもとに算出することになります。
登録免許税を算出する計算式は次のとおりです。
「不動産の価額」✕「税率」=登録免許税額
「不動産の価額」は建物完成後の期間によって、以下のとおり基準となる指標が変わります。
- 建物完成後1年経過・・・固定資産評価額
- 建物完成後1年以内・・・基準表をもとに算出
【建物完成後1年経過の場合】
建物の完成後、1年以上経っている場合は固定資産税評価額を役所が算出しているので「固定資産税評価額=不動産の価額」として計算します。納税のために毎年送られてくる固定資産税課税明細書か、固定資産評価証明書を役所で取得します。
【建物完成後1年以内の場合】
建物完成から1年以内の場合は、固定資産税評価額の算出がされていないので、各都道府県で年度ごとに決められた「基準」に沿って不動産の価額を算出します。
算定基準のサンプルは以下のとおりです。
不動産の価額の算出には「不動産の種類・構造の平米単価」と「延べ床面積」が必要になります。
仮に算定基準のサンプルをもとに計算すると次のとおりになります。
「居宅・木造・120平米」
91,000(居宅・木造)✕120(延床面積)=10,920,000円(不動産の価額)
上記の方法で算出した不動産の価額に税率を掛けて登録免許税を算出します。
所有権保存登記についての税率は次のとおりです。
不動産の価額の1000分の4(0.4%)
軽減税率が適用される場合(住宅用家屋証明書を添付する場合)
不動産の価額の1000分の1.5(0.15%)
4-2 必要書類の準備費用
必要書類の準備にかかる費用は次のとおりです。
住宅用家屋証明書・・・1300円
4-3 司法書士費用
一般的な一戸建ての所有権保存登記を依頼した場合の費用目安は「2~4万円」です。
5章 所有権保存登記は司法書士へ依頼した方がいい?
結論から言うと、建築資金として銀行からの融資を受ける場合は、建築会社や銀行からの要請により司法書士へ依頼することになります。
なぜなら、以下の手続きを一連で行う必要があり、ミスは絶対に許されないからです。
【銀行融資があるときの一連の流れ】
(STEP①)所有者への建物引き渡し
(STEP②)銀行からの融資
(STEP③)建築費用の支払い
(STEP④)所有権保存登記の手続き
(STEP⑤)担保設定の手続き(抵当権設定登記)
自己資金で建築するときは、そのような制限がないため自身で登記手続きを行うことができます。
時間に余裕がある方はチャレンジしてみるのも一つでしょう。
司法書士へ依頼すると費用が2~4万円かかりますが、何度も法務局へ行ったり、慣れない手続きや書類作成のストレスを比較衡量し、検討するのがベストです。
まとめ
所有権保存登記についてご理解いただけましたでしょうか。
所有権保存登記は、建物を新築した人が自分の所有権を明示するために行う、不動産登記の一種です。
人生最大の買い物である新築マイホームですので、司法書士へ依頼して速やかに手続きされることをおすすめいたします。
よくあるご質問
所有権保存登記は誰がする?
所有権保存登記は建物の建設などにより取得した人が行います。
▶所有権保存登記について詳しくはコチラ所有権保存登記の申請の流れは?
所有権保存登記の申請は、新築した不動産の所在地を管轄している法務局へ登記申請書を含む必要書類を持参または郵送する方法で行います。
必要書類は、
・住民票の写し
・住宅用家屋証明書
・登記申請書
・委任状
があります。
詳しくは下記リンク先をご参考にしてください。
▶所有権保存登記の必要書類保存登記にかかる費用相場は?
1,000万円のの不動産の保存登記にかかる費用相場は、2~8万円程度です。
▶保存登記の費用相場について詳しくはコチラ