- 相続放棄の却下率は何%程度か
- 相続放棄の却下率が低い理由
- 相続放棄の申立てが却下されてしまうケース
- 相続放棄の申立てを却下されないようにする方法
相続放棄をする際には、家庭裁判所に申立てをする必要があります。
相続放棄をするにあたり「却下されたらどうしよう」「申立てが認められなかったらどうしよう」と不安に感じる人もいるのではないでしょうか。
相続放棄の却下率は約️0.2%と非常に低く、相続放棄が認められない可能性はほぼないといえるでしょう。
相続放棄の要件はそれほど厳しく設定されていなく、要件を明らかに満たしていないケース以外は受理されるからです。
本記事では、相続放棄の却下率や申立てが認められないケースについて詳しく解説します。
相続放棄については、下記の記事で詳しく解説しているのであわせてお読みください。
目次
1章 相続放棄の却下率は約0.2%
相続放棄の却下率は例年0.2%であり、非常に低いです。
例えば、令和4年の司法統計によれば、相続放棄の申立て件数の合計は27万5,359件であったのに対し、却下件数は400件となっており、却下率は0.15%となっています。
相続放棄の申立て件数および却下件数は年によって変動はありますが、いずれも却下率は非常に低く0.2%程度を推移しています。
2章 相続放棄の却下率が低い理由とは
先ほど解説したように、相続放棄の却下率は非常に低いです。
却下率が低い理由としては、相続放棄できる要件は厳しくないことや要件を明らかに満たしていない場合以外は受理されると決められていることがあげられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1 相続放棄できる要件は厳しくない
相続放棄が認められる要件は非常に少なく、下記の2つしかありません。
- 熟慮期間内に家庭裁判所で申立てを行う
- 法定単純承認が成立していない
熟慮期間とは、自分が相続人であると知ってから3ヶ月以内です。
法定単純承認とは、亡くなった人の財産を勝手に処分するなどのように「相続する意思がある」と判断されてしまう行為を指します。
このように、相続放棄の要件が少ないのは、相続放棄が認められないと、亡くなった人が遺した多額の借金を相続人が受け継いでしまい非常に不利益が大きいからとされています。
2-2 要件を明らかに欠いている場合以外は受理されるから
相続放棄の申立ては要件を満たしていないことが明らかなケース以外では、受理されます。
家庭裁判所へ相続放棄の申立てがあった際には、事実関係に深く立ち入った調査・検討を行うことは予定されていないからです。
このように、相続放棄は申立ての要件が少なく、要件を明らかに欠いている場合以外は受理されます。
一方で、相続放棄の却下率が0%でないことから分かるように、相続放棄の申立てが却下されるケースも一部存在します。
次の章では、相続放棄の申立てが却下されるケースを詳しく見ていきましょう。
3章 相続放棄の申立てが却下されるケース
相続放棄の申立ては、要件を明らかに満たしていない場合には却下されてしまいます。
具体的には、下記のケースに該当すると相続放棄の申立てが却下される可能性があるのでご注意ください。
- 正当な理由がなく相続税の申立て期限を過ぎたケース
- 遺産を処分・使用してしまったケース
- 申立書類の不備を修正しないケース
- 照会書・質問状に回答しない・回答に不備があるケース
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1 正当な理由がなく相続税の申立て期限を過ぎたケース
正当な理由がなく、相続放棄の申立て期限を過ぎてしまうと、申立てが却下される恐れがあります。
相続放棄の申立て期限とは、自分が相続人であると知ってから3ヶ月以内です。
「自分が相続人であると知ってから」と記載されているように、相続放棄の申立て期限は相続人と亡くなったの関係や相続時の状況によって下記のように変わります。
相続人 | 相続放棄の期限の起算点 |
配偶者・子供(成人済み) | 原則として、死亡の事実を知ったときから3ヶ月以内 |
子供(未成年) | 親権者(通常は親)が「未成年者が相続人となった事実を知ったときから3ヶ月以内」 |
両親や兄弟姉妹、甥・姪 | 自分より先の順位の相続人全員が相続放棄し、自分が相続人となった事実を知ったときから3ヶ月以内 |
ただし、相続放棄の申立て期限の起算点は柔軟な運用がされており、自分が相続人であると知ったときは自己申告でも問題ありません。
そのため、相続から時間が経っていても相続放棄が認められる可能性もあるので、相続放棄できるか不明な場合は司法書士や弁護士に相談してることをおすすめします。
3-2 遺産を処分・使用してしまったケース
亡くなった人の遺産を勝手に処分、使用してしまうと、相続放棄の申立てが却下されてしまうのでご注意ください。
遺産を勝手に処分、使用する行為は、遺産を相続する意思があるとされ、法定単純承認に該当するからです。
なお、亡くなった人の預貯金を引き出して使うなどの他にも、亡くなった人の自宅の片付けや携帯電話の解約などでも遺産の処分とみなされる恐れがあるのでご注意ください。
相続放棄を考えるのであれは、法定単純承認を避けるために自己判断するのではなく、相続放棄に詳しい司法書士や弁護士に相談した上で、亡くなった人の自宅の片付けなどを行う必要があります。
また、相続放棄の申立てを行うと、家庭裁判所から照会書が届く場合があります。
照会書には「相続財産を使いましたか?」と記載されているので使っていなければ「いいえ」と回答しましょう。
相続放棄について司法書士や弁護士に相談すれば、照会書への回答方法についてもアドバイスを受け取れます。
3-3 申立書類の不備を修正しないケース
相続放棄の申立て書類に不備があり、そのまま修正しないでいると申立てが却下される恐れがあります。
相続放棄の申立て書類に不備があった場合、家庭裁判所から連絡が届くので修正や書類の追加提出に応じましょう。
相続放棄について、司法書士や弁護士に依頼すれば必要書類の収集や作成にも対応してもらえます。
3-4 照会書・質問状に回答しない・回答に不備があるケース
相続放棄の申立て後に家庭裁判所から届く照会書に回答しない、回答に不備があると申立てが却下されてしまいます。
照会書が届いたときには、放置せず早めに回答しましょう。
4章 相続放棄が却下されたときには異議申立ても行える
万が一、相続放棄の申立てが却下されたときは、即時抗告によって異議申立てを行えます。
即時抗告を行える期間は、審判告知日から2週間以内と決められているのでご注意ください。
また、即時抗告で相続放棄の却下を覆すには、却下が不当である証拠を用意しなければなりません。
自分で即時抗告の手続きや必要な証拠を用意するのは難しいため、相続放棄に詳しい司法書士や弁護士に相談するのがよいでしょう。
5章 相続放棄を却下されないようにする方法
相続放棄が却下される可能性は低いですが、少しでも却下の確率を減らしたいのであれば、司法書士や弁護士に相続放棄の申立てを相談しましょう。
他にも、下記の対策をとれば、相続放棄が却下されるリスクを減らせます。
- 司法書士・弁護士に相続放棄を相談する
- 相続放棄の期限を過ぎる前に申立てを行う
- 期限に間に合わない場合は熟慮期間の伸長申立てを行う
- 自己判断で故人の遺産を処分・片付けない
それぞれ詳しく解説していきましょう。
5-1 司法書士・弁護士に相続放棄を相談する
相続放棄の申立ては自分で行うこともできますが、リスクを抑えるために司法書士や弁護士に相談するのがおすすめです。
司法書士や弁護士であれば、申立てに必要な書類を収集してくれるだけでなく、下記の業務にも対応してくれます。
- 相続財産調査や相続人調査を行い、相続放棄すべきかの判断をしてくれる
- 相続放棄する際に、故人の実家の片付けや遺品整理についてのアドバイスをくれる
- 相続放棄申立て後に届く照会書への回答方法についてアドバイスをくれる
確実に相続放棄したい場合や相続放棄すべきか迷っている場合は、相続放棄に強い司法書士や弁護士に依頼することを強くおすすめします。
5-2 相続放棄の期限を過ぎる前に申立てを行う
相続放棄の申立て期限までに必要書類の収集が間に合わない場合は、揃っている書類と申述書のみだけでも提出しておきましょう。
書類が不足している状態でも申立てを行えば受け付けしてもらえますし、不足している書類は揃った時点で提出すれば問題ありません。
5-3 期限に間に合わない場合は熟慮期間の伸長申立てを行う
相続放棄の期限までに相続財産調査が完了せず、相続放棄すべきかの判断が間に合わない場合は、熟慮期間の伸長申立てを行いましょう。
熟慮期間の伸長申立てを行えば、相続放棄の期限を延長してもらえます。
ただし、熟慮期間の伸長申立てを行うときには、下記の点に注意しましょう。
- 相続放棄の期限の延長が認められるのは1~3ヶ月程度
- 相続放棄の期限の延長が認められるのは、申立てした人のみ
熟慮期間の伸長申立て方法および必要書類は、下記の通りです。
申立てする人 | 相続放棄の期限を延長したい人 |
申立て先 | 故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
費用 |
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必要書類 |
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上記のように、熟慮期間の伸長申立てを行う際には、故人と申立人(相続放棄したい相続人)の関係性を証明する戸籍謄本類を提出しなければなりません。
故人の甥・姪が熟慮期間の伸長申立てを行う場合は、必要書類の数が増えるため、申立てを自分で行うのが難しい点にも注意しておきましょう。
5-4 自己判断で故人の遺産を処分・片付けない
相続放棄したいのであれば、自己判断で故人の遺産を処分、片付けるのはやめましょう。
故人の遺産を処分してしまうと、相続放棄が認められなくなる恐れがあるからです。
下記については、特に注意しておきましょう。
- 故人の自宅を片付ける
- 故人の遺品を形見分けする
- 故人の携帯電話を受け継ぐ、勝手に解約する
- 故人の借金を遺産から支払う
- 故人の入院費や葬式費用を遺産から支払う
上記については、問題とならないケースもありますがリスクがあるため、自己判断で行うのはおすすめできません。
どうしてもしたいのであれば、相続放棄に詳しい司法書士や弁護士に相談して対応方法をアドバイスしてもらいましょう。
まとめ
相続放棄が却下される確率は0.2%程度であり、非常に低いです。
しかし、故人の遺産を勝手に使用、処分するなどをした場合は、相続放棄が却下され認められない恐れもあります。
相続放棄が却下されると、故人の借金を受け継がながればならず、非常に重い負担がのしかかります。
万が一のリスクに備えて、相続放棄を検討するときは司法書士や弁護士に相談しておくとよいでしょう。
グリーン司法書士法人では、相続放棄についての相談をお受けしています。
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