「暮らしている家が古くなってきた」
「相続した家が古い・・・」
このように「古い家」の扱いや処分についてお悩みの方が多くいらっしゃると思います。
古い家を持つと、今後どうしていけばよいか頭を悩ますことになります。また、自身で暮らすためにはリフォームが必要なこともあり、かかる費用のことも心配でしょう。
実際、古い家は「管理や売却」が難しいとされています。
また、長期間放置すると、倒壊する可能性に加え、さらには害虫・害獣、犯罪の温床となり、近隣住民へ被害を与えてしまうなど様々な危険性があります。
処分したいけど、売却は難しい。放置しておいても危険…。
このように、古い家は扱いが非常に難しいのです。
では、どのように対処すればよいのでしょうか? 古い家のリスクやデメリットを理解した上で、家の状況に合わせて上手に活用することが大切です。
この記事では、古い家の基準から、デメリット、活用方法などについて解説します。
1章 古い家の基準とは
「古い家」と言われても、どこからが「古い家」なのか分かりませんよね。
一般的に古い家の基準は、以下の2点です。
- 築年数が20年を超えているか否か
- 現在の耐震基準を満たしているか否か
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1 築20年を超えている家
(参照:国土交通省『中古住宅流通、リフォーム市場の現状』より引用)
上記は、国土交通省が公開している中古戸建て住宅の価格査定例です。
木造建築の場合、耐用年数が22年であるため、一般的に築20年を超えると「古い家」とされ、市場価値はなくなります。
さらに、築40年を超えると、建築構造に関わらず資産価値はほぼ0になると言われています。
1-2 「旧耐震基準」の家
築年数の他に、その家が「旧耐震基準」「新耐震基準」どちらで建てられたかということも、「古い家」の基準になります。
家を建てる際、一定の耐震基準をクリアしなければいけないと建築基準法で決められています。
現在は「震度6〜7の地震に耐えられる」ことが最低基準ですが、1981年以前は「震度5程度まで耐えられる」ことを基準としていました。前者を「新耐震基準」、後者を「旧耐震基準」と呼びます。
この「旧耐震基準」で建てられた家は、現在の耐震基準に満たないことから売却のハードルは余計に高くなります。
しかし、1981年以前に建てられたからと言って、必ず旧耐震基準で建てられているとは限りません。耐震補強などをして、耐震性能が上がっている可能性があります。
その場合は、補強工事関連の書類や耐震診断の結果などを提示することで、売却時に有利になるでしょう。
2章 古い家を所有するデメリット
古い家は、新築物件に比べ様々なデメリットがあります。
これから古い家を相続する方、あえて古い家を購入しようと考えている方などは、デメリットについて理解しておく必要があるでしょう。
2-1 売却しにくい
1章でも述べた通り、木造建築の家は20年程度で市場価値がなくなります。
つまり、「土地にほぼ価値のない建物が建っている」状態で売却をすることになるのです。
「古い家が風情があって良い」と好んで購入する方がいれば良いですが、一般的に新築物件や比較的新しい中古物件が人気な今、古い家を売却するのは難しいと言えます。
また、土地のみ売却することになったときは「建物の解体費用」がかかります。一般的な一戸建てでも80~150万円かかるので、費用負担が重くのしかかります。
2-2 増改築ができない可能性がある
土地に家を建てる際、建築基準法で決められた「容積率」と「建ぺい率」の基準を遵守しなければいけません。これらは「土地に対してどのくらいの大きさの建物が建てられるか」という基準です。
容積率と建ぺい率の基準は、年々厳しくなっており、昔の基準で建てられた面積の建物は、現在の基準には適していない可能性があります。
もし、古い基準で建てられた家を増改築する場合には、現在の基準に合わせなければいけません。
昔より基準が狭くなっている現在では、増築は難しいでしょう。また、改築する場合でもかなり制限があり、大掛かりな工事になった上、結果的には狭くなってしまうという可能性もあります。
2-3 土地の境界があいまい
古い家が立つ土地の場合、隣家との境界が曖昧になっていることがあります。土地の境界は、実はトラブルになりやすい問題です。
「自身の土地かと思っていた庭に車庫や物置を設置したら、その部分は隣家の土地だった」ということは珍しくありません。隣家が土地の売却などをきっかけに、土地の測量を行った際にその事実に気づき、トラブルになる可能性があるのです。
そのため、今後暮らす場合もですが、売却する場合でも、土地の境界線については明確にしておく必要があります。
境界の決めるための測量は、土地家屋調査士や測量士という専門の業者に頼む必要があり、費用は30〜100万円程度かかります。
2-4 水道管の工事が必要なケースも
水道管の口径は、現在では20mm以上が一般的ですが、古い家の場合、水道管の口径が13mmと、小さい可能性があります。
建て替えをする場合には、水道管ごと交換しなければいけません。また、口径に問題がなくても、水道管が劣化している場合は交換が必要です。
3章 古い家を放置するのは危険!
相続した古い家を、どう扱っていいか分からず放置している方もいらっしゃるかもしれません。
人が暮らしているのであればまだ良いですが、空き家として放置するのは非常に危険です。
ここでは、古い家を放置する危険性について紹介します。
3-1 固定資産税が6倍になる可能性がある
古い家を放置し続け、「特定空き家」と認定されると、固定資産税や都市計画税の軽減措置が受けられなくなります。
通常、建物が建っている土地は、固定資産税が1/6、都市計画税は1/3に軽減されています。つまり、「特定空き家」となると、固定資産税は従来の6倍、都市計画税は3倍の税金を納めなければいけなくなるのです。
空き家は、近隣住民への被害があるとして、自治体から処分するよう指導・勧告を受けることがあります。それでも従わなかった場合に「特定空き家」に認定される可能性があります。
固定資産税・都市計画税の軽減措置とは?
居住用の家が建っている土地については、固定資産税の課税評価(固定資産課税評価額)が軽減されています。つまり、一般的にみなさんが支払っている固定資産税・都市計画税はその軽減措置を受けての税額となっているのです。
固定資産税 | 都市計画税 | |
敷地面積200㎡以内 | 課税標準額×1.4%×1/6 | 課税標準額×0.3%×1/3 |
敷地面積200㎡を超える | 課税標準額×1.4%×1/3 | 課税標準額×0.3%×2/3 |
更地 | 課税標準額×1.4% | 課税標準額×0.3% |
「特定空き家」になると、この軽減措置が受けられなくなるため、実質「固定資産税が6倍・都市計画税が3倍になる」こととなります。
3-2 老朽化が進み倒壊の危険がある
家は放置したままにすると、急速に老朽化が進みます。定期的に風通しをしなければ湿気や結露などで腐敗がすすみ、どんどん家が傷んでしまうのです。地震や豪雨などの災害時に倒壊してしまうかもしれません。
もし、空き家のままにしておくとしても、定期的に家を訪れ、メンテナンスをする必要があります。
空き家管理の方法について詳しく知りたい方はこちら
3-3 近隣住民に迷惑をかける可能性がある
空き家のままにしておくと、害虫が湧いたり、害獣が住み着くことがあります。そのような害虫・害獣が近隣の家に入り込み、被害を与える可能性があります。
また、空き家というのは放火や空き巣などの犯罪発生率が高くなる傾向になります。「空き家には盗むものがないから大丈夫」と思うかもしれませんが、その家が狙われたことで近隣住民に不安を与えますし、他の家が標的にされることもあるのです。
4章 古い家の活用方法
古い家を放置するのは、前章で紹介したような危険性があります。
そのため、適切に対処する必要があります。
ここでは、古い家の対処方法について解説します。
活用前にまずは「古い家の名義」を確認しよう!
相続した家の場合、名義は亡くなった人のままです。
相続登記という名義変更手続きをして、相続した人の名義にする必要があります。
直ぐに売却する場合でも、必ずこの手続きは行わなければなりません。
まずは、家や土地の名義がどうなっているかを確認しましょう。不動産の名義は、登記事項証明書で確認することができます。登記事項証明書は法務局に行けば取得が可能です。
空き家を相続した人が知っておくべき5つの問題点とその対処方法
相続登記について詳しく知りたい方はこちらのをご覧ください。
相続登記とは【司法書士が徹底解説】放置するリスクから手続きの流れまで
4-1 古家付き土地で売却する
築年数が古く、売却しにくい中古物件の場合「古家付き土地」として売り出すことを検討しましょう。
「古家付き土地」とは、その名前の通り古くなって価値がなくなった「土地」のことです。
解体する費用がかからない代わりに、その分土地の価格を下げて販売することが一般的です。
比較的安価に買えますし、自分好みにリフォームできることから、実はニーズが高く>、売却しやすくなる傾向にあります。
売却するコツ
- なるべく早く売る
家は、年々老朽化が進み、価値が下がっていきます。築20年で市場価値がほぼ0になるとはいえ、築20年と築30年では、20年のほうが需要が高くなります。売却する予定があるのであれば、できるだけ早く売却のために動き出しましょう。 - 家にあった不動産業者を選ぶ
売却しようとしている家にあった不動産業者を選びましょう。どうしても「見積もりを高く出してくれたから」「大手だから」という理由でしまいがちですが、最も大切なのは結果的に売却できるかどうかです。見積もりが高くても、大手であっても、売却できなければ意味はありません。
不動産業者には、都心のマンションに強いところ、地方の中古物件に強いところなど、それぞれ得意分野があります。大手の業者よりも、地域の老舗の業者の方が売却に強いケースもあるでしょう。土地柄や家の状況などを鑑みて、業者選びをすることが大切です。
4-2 リフォームする
古家付き土地でも売却が難しい場合や、これから古い家に暮らす場合はリフォームするのも良いでしょう。
活用しやすい間取りにしたり、水回りをキレイにしたりすることで買い手がつきやすくなります。
また、古い家の持ち味を活かした「古民家カフェ」を開きたいと思っている方にも需要があり、そういった人に向けて貸し出すこともできる可能性があります。
ただし、2章でも解説した通り、建ぺい率や容積率の影響で増改築が難しいこともあるので注意が必要です。
また、リフォームをする際は、現在の耐震基準に満たすよう耐震補強も施すようにしましょう。
4-3 解体して売却する/駐車場として活用する
家の老朽化が進み、古家付き土地でも売却が難しい場合や、リフォームもできないような場合は解体することも検討しましょう。
解体して更地にすれば土地として売却することが可能ですし、駐車場などに活用することも可能です。土地を貸し出すのも良いでしょう。
しかし、解体には当然費用がかかります。
解体費用の相場は、木造建築の場合で坪単価3〜5万円程度です。一般的な一戸建ての坪数は30〜40坪ですので、90〜200万円程度の費用がかかります。
なお、更地にした場合、固定資産税・都市計画税の軽減措置が受けられなくなり、税額が高くなりますので注意が必要です。
まとめ
家は築20年をすぎると、ほとんど価値がなくなります。
しかし、扱いに困ったからと言って放置するのは、様々な危険性があるため決しておすすめできません。
古家付き土地として売却したり、リフォームして活用したりと、何かしらの活用方法を模索するべきでしょう。もし、売却もリフォームも難しい場合は、解体することも検討しなければいけません。
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よくあるご質問
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古い家の築年数は何年?
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木造建築の場合、耐用年数が22年であるため、一般的に築20年を超えると「古い家」とされ、市場価値はなくなります。
建物の構造に関わらず、築40年を超える家は資産価値がなく古い家として扱われます。
▶古い家の活用方法について詳しくはコチラ
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古い家の危険性・デメリットは?
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古い家を所有するデメリットは、主に下記の通りです。
・売却しにくい
・増改築ができない可能性がある
・土地の境界があいまい
・水道管の工事が必要なケースも
▶古い家のデメリットについて詳しくはコチラ