親が高齢になると実家をリフォームして親子で同居するケースもあるでしょう。
親が定年した後に実家をリフォームして同居する場合、親名義の家のリフォーム費用を子供が負担する場合もあります。
しかし、親名義の建物を子供がリフォームすると贈与税がかかる可能性がありますし、子供はリフォーム費用に対して住宅ローン控除を適用できない点に注意が必要です。
親名義の建物を子供がリフォームする場合、親から子へ建物の売却もしくは贈与をした方が良いケースもあります。
本記事では、親名義の建物を子供がリフォームした場合の税金の取扱いやリフォーム費用に贈与税がかからない方法を紹介します。
目次
1章 親名義の建物を子供がリフォームすると贈与税がかかる
親名義の建物を子供がリフォームした場合、リフォーム費用に対して贈与税がかかる可能性があります。
親名義の建物を子供がリフォームする場合、リフォーム費用は子供から親への贈与として扱われるからです。
贈与税には110万円の基礎控除額があり、基礎控除を上回った分に対して贈与税がかかってしまいます。
なお、贈与税は「贈与をした側」ではなく「贈与を受けた側」にかかる税金です。
そのため、本記事で紹介している親名義の建物のリフォーム費用を子供が負担した場合は、親に対して贈与税がかかります。
2章 親名義の建物を子供がリフォームすると住宅ローン控除も適用できない
親名義の建物を子供がリフォームした場合、子供が金融機関で借り入れたリフォーム費用は住宅ローン控除を適用できません。
住宅ローン控除の適用要件には「住宅ローンの名義人が住んでいる自宅であること」という項目があるからです。
親名義の建物のリフォーム費用を子供が負担した場合は、ローンの名義人と異なるため住宅ローン控除を適用できません。
結果として、贈与税がかかる可能性だけでなく住宅ローン控除による節税効果も得られない恐れがあります。
3章 親名義の建物を子供がリフォームする方法
本記事の1章および2章で解説したように、親名義の建物のリフォーム費用を子供が負担してしまうと、贈与税がかかる、借入金に対して住宅ローン控除を適用できない恐れがあります。
子供が払うリフォーム費用の税負担を軽くするためには、リフォーム時に親から子へ建物の名義変更を行わなければなりません。
親から子へ建物の名義変更を行うには①売却もしくは②贈与の2種類の方法があります。
それぞれ見てきましょう。
3-1 親から子へ建物を売却してからリフォームする
リフォーム予定の建物を親から子へ売却しておけば、子供は自分が所有する建物をリフォームしただけであり贈与税がかかることはありません。
なお、リフォーム費用にかかる贈与税を節税する目的だけであれば、建物部分だけの売却でも良いでしょう。
土地と異なり建物は築年数によって価値が下がるため、売却額も安く抑えられる可能性が高いからです。
また、リフォーム時に親から子に建物を売却する際には、下記の点に注意が必要です。
- 売却する建物の価値が高い場合、親に譲渡所得税がかかる恐れがある
- 市場価格より著しく低い金額で売却した場合、みなし贈与と判断され子供に贈与税がかかる恐れがある
- 土地と建物の名義人が異なる状態で土地の所有者が亡くなると、相続トラブルに発展する恐れがある
譲渡所得税とは、不動産などを売却して発生した利益に対してかかる税金です。
みなし贈与とは本来の市場価格より著しく低い金額で売却した場合、市場価格と実際の売却額との差額の贈与があったとみなされる制度です。
建物部分の名義は子供に移し土地は親が所有したまま、親が亡くなり相続が発生すると相続人や相続財産の状況によってはトラブルに発展する可能性もあります。
場合によっては、建物を売却してもらった子供以外の相続人が土地の権利を平等に主張し共有名義で相続せざるを得ないケースもあるでしょう。
このように、親から子へ建物を売却する際には税金や将来発生する相続対策など考慮しなければならない点が多いです。
そのため、自分たちで売却手続きを行うのではなく相続対策に詳しい司法書士や税理士に相談しながらすすめるのが良いでしょう。
3-2 親から子に建物を贈与してからリフォームする
売却ではなく、親から子にリフォーム予定の建物を贈与してしまっても、リフォーム費用に対して贈与税がかからなくなります。
建物は築年数とともに価値が下がるので、リフォーム予定の建物によっては贈与後にリフォームした方が贈与税の負担が少なくすむ可能性があります。
また、建物の評価額が高額であり贈与税が負担になるのであれば、相続時精算課税制度を利用するのも良いでしょう。
相続時精算課税制度とは、60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫に対して行われる贈与が2,500万円まで非課税になる制度です。
ただし、贈与財産は贈与者が亡くなったときに相続財産と合算して相続税の計算対象となります。
相続時精算課税制度を利用すれば、一度に建物を贈与してしまっても贈与税がかかることはありません。
しかし、相続時精算課税制度には相続税の直接的な節税効果はないので、事前にシミュレーションして制度を利用すべきかどうかを検討する必要があります。
相続や生前贈与に詳しい税理士であれば、相続時精算課税制度を利用すべきかの判断も可能ですので、まずは相談するのが良いでしょう。
まとめ
親名義の建物を子供が費用を負担してリフォームするときには、贈与税がかかる恐れがあります。
また、子供がリフォーム費用を金融機関で借り入れたとしても、借入金に対して住宅ローン控除を適用できなくなる点にも注意しなければなりません。
子供が負担するリフォーム費用に贈与税がかからないようにするには、リフォーム前に親から子に建物を売却もしくは贈与しておくのが良いでしょう。
ただし、売却時や贈与時にも譲渡所得税や贈与税などがかかる恐れがあるので事前にシミュレーションをした上でどの方法が良いか決定しなければなりません。
また、土地の所有者と建物の所有者が異なる状態で相続が発生すると、権利関係が複雑になり相続トラブルも発生しやすくなります。
そのため、リフォーム後は相続対策や認知症対策もあわせて行っていく必要があるでしょう。
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