終活とは自分の最期や亡くなった後の準備を行うことです。
身寄りなしの「おひとりさま」の中には、自分が亡くなって困る家族もいないし、終活をする必要はないと考えている人もいるのではないでしょうか。
しかし、身寄りなしのおひとりさまも終活をすべきであり、しておかないと孤独死や防犯問題により、親族やご近所の人に迷惑をかけるリスクがあります。
終活としてやるべきことはたくさんあるため、元気なうちに自分ができることから進めていくのが良いでしょう。
本記事では、身寄りなしのおひとりさまが終活をすべき理由、行うべき終活について詳しく解説していきます。
終活については、下記の記事でも詳しく解説しているのでご参考にしてください。
目次
- 1 1章 身寄りなしの「おひとりさま」が終活すべき5つの理由
- 2 2章 身寄りなしの人が行うべき終活
- 2.1 2-1 エンディングノートを作成する
- 2.2 2-2 見守りサービスの利用を検討する
- 2.3 2-3 老後資金の計画を立てる
- 2.4 2-4 自分の持ち物を整理しておく
- 2.5 2-5 相続対策や遺言書の準備をしておく
- 2.6 2-6 認知症対策をしておく
- 2.7 2-7 葬儀やお墓の準備をしておく
- 2.8 2-8 介護や入院の準備をしておく
- 2.9 2-9 延命治療について決めておく
- 2.10 2-10 身元保証サービスの利用を検討する
- 2.11 2-11 死後事務委任契約の利用を検討する
- 2.12 2-12 自分が亡くなった後のペットの飼い主を見つける
- 2.13 2-13 残りの人生を楽しむためやりたいことリストをつくる
- 3 3章 身寄りなしの人が終活を始めるタイミング
- 4 まとめ
1章 身寄りなしの「おひとりさま」が終活すべき5つの理由
終活は「家族や子供に迷惑をかけないために行うもの」というイメージを持っており、自分には身寄りがないためする必要はないと感じている人もいるのではないでしょうか。
しかし、身寄りなしの「おひとりさま」であっても終活を行うべきであり、行わないと下記の5つのリスクがあります。
- 孤独死の恐れがある
- 身元保証人や身元引受人を用意できない恐れがある
- 希望しない人に財産が受け継がれる恐れがある
- 希望していない形で葬儀や埋葬が行われる恐れがある
- 近所の人や親戚に迷惑をかける恐れがある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1 孤独死の恐れがある
終活をせず、高齢者向けの見守りサービスなどを利用しないでいると、孤独死してしまったときに誰にも気付いてもらえないリスクがあります。
孤独死は決して珍しいケースではなく、下記のように東京都区部では孤独死は増加傾向となっています。
上記のグラフを見てわかるように、65歳以上の孤独死は年々増え続けており高齢化により今後も増え続けることが予想できます。
孤独死して長期間誰にも気づかれない、具合が悪いが悪いときに誰も頼れないなどの事態を防ぐために終活をして自分に何かあったときに頼れるサービスを利用することも検討しましょう。
1-2 身元保証人や身元引受人を用意できない恐れがある
配偶者や子供がいない人は、何かあったときの身元保証人や身元引受人を用意できないリスクがあります。
普段の生活を送っていて身元保証人や身元引受人が必要になる機会は少ないですが、病院への入院や介護施設への入所時には身元保証人や身元引受人が必要となることが多いです。
子供がいなく身寄りがない人はいざというとき施設入所や入院ができず困ることがないように、元気なうちに身元保証サービスの利用を検討するのもおすすめです。
1-3 希望しない人に財産が受け継がれる恐れがある
終活をしていないと、自分が亡くなったときに希望していない人物に遺産がわたってしまう恐れがあります。
遺言書の作成など相続対策をしていない場合、故人の財産は相続人が受け継ぎます。
相続人の順位は法律によって決められており、下記の通りです。
配偶者 | 常に相続人になる |
第一順位 | 子供や孫 |
第二順位 | 親や祖父母 |
第三順位 | 兄弟姉妹や甥姪 |
例えば、配偶者や子供がいない人が亡くなったときには、仲が悪く長年疎遠だった兄弟姉妹に財産が受け継がれる恐れがあります。
また、相続人になる人物が誰もいない場合は最終的に遺産は国のものとなってしまいます。
特定の団体やお世話になった病院に寄付したい、お世話になった知人に財産を遺したいなどの場合は遺言書を作成しておきましょう。
1-4 希望していない形で葬儀や埋葬が行われる恐れがある
身寄りがない人が亡くなった場合、自分が希望していない形で葬儀や埋葬が行われる可能性があります。
家族がいない人が亡くなった場合は親族に葬儀や埋葬が依頼されます。
そして、親族が葬儀や埋葬を断った場合や戸籍をたどっても親族がいない場合は自治体が火葬や埋葬を行いますが、あくまで最低限のものです。
- 葬儀の形式や内容に希望がある
- 埋葬方法や場所に希望がある
上記のケースでは元気なうちに葬儀やお墓の手配をしておき、親族の負担を減らす、自分の意思を明確にしておくことも大切です。
1-5 近所の人や親戚に迷惑をかける恐れがある
身寄りがない人や終活をせずに孤独死してしまう、認知症になってしまうと近所の人や親戚、その他さまざまな人に迷惑をかけてしまいます。
例えば、孤独死してしまい誰にも発見されなければ異臭や虫の発生などの問題が発生し近隣住宅にも影響が出るはずです。
他にも身寄りがない人が病院にかかり亡くなると、遺体の安置や戸籍謄本をたどり親族がいないか探す作業を自治体が行う場合もあります。
親族がいたとしても長年疎遠だった場合は、突然死亡の連絡を受けて困惑する、遺品整理や葬儀などを負担に感じる人もいるでしょう。
このように、身寄りのない人が終活をせず老後を迎えてしまうと、様々なリスクがあります。
周囲に迷惑をかけず自分らしい最期を迎えるためにも、次の章で紹介する終活を行っていくのがおすすめです。
2章 身寄りなしの人が行うべき終活
終活と一言で言ってもやるべきことは様々であり、生活状況や年齢、心身の状態によってやるべきことが変わってきます。
身寄りなしの人が行うべき終活は、主に下記の通りです。
- エンディングノートを作成する
- 見守りサービスの利用を検討する
- 老後資金の計画を立てる
- 自分の持ち物を整理しておく
- 相続対策や遺言書の準備をしておく
- 認知症対策をしておく
- 葬儀やお墓の準備をしておく
- 介護や入院の準備をしておく
- 延命治療について決めておく
- 身元保証サービスの利用を検討する
- 死後事務委任契約の利用を検討する
- 自分が亡くなった後のペットの飼い主を見つける
- 残りの人生を楽しむためやりたいことリストをつくる
上記を参考にまずは自分ができることから進めていくのが良いでしょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 エンディングノートを作成する
エンディングノートを用意しておけば、遺された親族や友人、知人に自分の感謝の気持ちを伝えられますし、必要情報をまとめておけば死後の手続きもしやすくなります。
エンディングノートとは、もしものときに備えて自分の人生の最期について希望や思いを記しておくノートです。
エンディングノートは遺言書と異なり法的拘束力はありませんし、決まった形式もありません。
お手持ちのノートなどをエンディングノートとしても良いですし、書店や文房具店では専用のものも販売されています。
自分でエンディングノートを作成する際には、まずは下記の項目を書くのが良いでしょう。
- 自分自身のこと
- SNSなどのデジタル情報
- 家族へのメッセージやこれまでの感謝
- 家族に関する情報や家系図
- 友人や親戚の連絡先
- ペットのこと
- 介護や延命治療などの希望
- 葬儀の希望
- 遺言書や相続に関すること
- 保有している財産
グリーン司法書士法人でも無料でダウンロードできるエンディングノートを用意しておりますので、ぜひお気軽にご利用ください。
2-2 見守りサービスの利用を検討する
配偶者や子供などがいなく身寄りがない人は、見守りサービスの利用を検討しましょう。
見守りサービスを利用すれば、自分に何かあったときに気付いてもらいやすくなり孤独死を防げます。
身寄りがない人におすすめの見守りサービスは、主に下記の通りです。
- 訪問看護サービス
- 宅食サービス
- 見守り家電
見守り家電は一定時間反応がない場合、指定した人物に連絡が届くサービスです。
遠方に親族がいる場合は、見守り家電を利用すれば何かあったときに気付いてもらえます。
また、上記を利用するほかにも地域のイベントに定期的に参加する、散歩の習慣を持ち近隣住民と交流を持つことも大切です。
2-3 老後資金の計画を立てる
終活をする際に老後資金の計画を立てておくと、残りの人生の不安を減らせますし自分らしい人生を過ごせます。
老後資金の計画をする際には、下記の3つの金額を調べましょう。
- 今の生活費
- 現在の貯金額
- もらえる年金額
生活費のうち、年金で補いきれない部分に関しては貯蓄を切り崩して賄います。
- 不足分を切り崩しても貯蓄は足りそうか
- 介護費用や入院費用は用意できそうか
上記を確認しておくと安心です。
万が一、今のままでは老後資金が足りないと判明した場合には、自宅を担保にした借入や自宅のリースバックなども検討しておきましょう。
2-4 自分の持ち物を整理しておく
身動きが取りにくくなる老後に向けて、自分の持ち物を整理して減らすのも終活のひとつです。
持ち物を整理するのは体力もかかりますし、非常に時間がかかるので早めに始めるのが良いでしょう。
また目に見える持ち物を整理し減らすだけでなく、デジタルデータも整理しておくと、自分が亡くなったときの親族の負担を減らせます。
2-5 相続対策や遺言書の準備をしておく
身寄りがない人が亡くなると、疎遠だった兄弟姉妹や甥、姪に財産が受け継がれる可能性があります。
また、相続人が誰もいない場合は最終的に遺産が国のものとなってしまいます。
自分が希望する人物に財産を遺したいのであれば、遺言書の作成など相続対策を進めましょう。
遺言書を用意しておけば、血縁関係のない人物にも財産を遺せます。
ただし、法的拘束力を持つ遺言書を作成するには要件を満たす必要がありますし、相続財産や遺言内容によって記載すべき内容は変わってきます。
そのため、自分の希望に沿った遺言書の作成や相続対策をしたいのであれば、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談するのもおすすめです。
2-6 認知症対策をしておく
相続対策や遺言書の作成を行うのであれば、あわせて認知症対策をしておくことをおすすめします。
認知症になり判断能力を失うと、遺言書の作成や生前贈与などの相続対策を行えなくなりますし、自分の財産の処分や契約行為もできなくなるからです。
自分が認知症になった後も希望の生活や自分らしい人生を送るためには、元気なうちに「任意後見制度」を利用しましょう。
任意後見制度とは、将来自分の判断能力が不十分になったときに備えて、支援してくれる人と支援してもらう内容を事前に契約しておく制度です。
任意後見制度は自分が元気なうちに後見人になってくれる人物と契約する制度なので、財産の管理や運用、処分についてある程度自由に決められます。
2-7 葬儀やお墓の準備をしておく
自分が亡くなった後、希望通りの葬儀や埋葬をしてもらうために準備をしておくのも終活では大切です。
身寄りがない人が亡くなると、自治体が戸籍をたどり親族に遺体の引き取りや葬儀を依頼します。
親族が断るもしくは親族がいない場合は、自治体が最低限の火葬や埋葬を行います。
希望の土地にお墓を用意したい場合やお葬式に来てほしい人物がいる場合は、元気なうちにお墓や葬儀の手配をしておくのも良いでしょう。
2-8 介護や入院の準備をしておく
老後になり具合が悪くなったときのために、介護や入院の準備もしておくと安心です。
具体的には、下記の準備をしておきましょう。
- かかりつけの病院の情報をまとめておく
- 日常的に飲んでいる薬の情報をまとめておく
- 将来入居したい介護施設があれば調べておく
- 介護施設の見学をしておく
介護施設の見学は、体力も必要なので元気なうちから始めておくのがおすすめです。
2-9 延命治療について決めておく
延命治療や終末期医療など、自分の最期についても考えておくと医療機関に自分の意思を示しやすくなります。
身寄りがない人は延命治療や終末期医療について家族や親族が意思を示してくれるとは考えにくいので、元気なうちに自分で意思表示をしておくことが大切です。
意思表示をする際には、エンディングノートに記載しておく、延命治療拒否に関する文書を公証人に認証してもらうなどの方法があります。
任意後見人や親族以外の身元保証人は本人のかわりに延命治療の判断や医療行為の同意を行うことはできませんが、あらかじめ本人が用意していた意思表示に関する書類を医師や病院に提出することは可能です。
2-10 身元保証サービスの利用を検討する
身寄りがない人は介護施設への入所や病院への入院に備え、身元保証サービスの利用を検討しましょう。
身元保証サービスとは、高齢者の日常支援や病院への入院、施設への入居をする際に保証人になってくれるサービスです。
身元保証サービスを利用すれば、身元保証人や身元引受人を探す必要はなく、遠方に住んでいる親族に負担をかける心配もありません。
ただし、身元保証サービスの利用には費用がかかりますし、事業者ごとにサービス内容が異なるので、利用前には確認しておきましょう。
グリーン司法書士法人の関連団体でも身元保証サービスを提供していますので、お気軽にお問い合わせください。
2-11 死後事務委任契約の利用を検討する
自分が亡くなった後に頼れる家族や親族がいない場合は、死後事務委任契約を利用しましょう。
死後事務委任契約とは、人が亡くなったときに発生する様々な事務手続きを依頼する契約です。
死後事務委任契約を利用すれば、下記の手続きを依頼できます。
- 通夜や葬儀
- 納骨・埋葬
- 電気やガス等の停止
- 入院していた病院や介護施設の費用の支払い
- 自宅や介護施設の片付け
死後事務委任契約を結ぶ相手は自由に選べますが、身寄りがない人は司法書士などの法律の専門家に依頼するのが良いでしょう。
グリーン司法書士法人でも、死後事務委任契約をお受けできますので、お気軽にお問い合わせください。
2-12 自分が亡くなった後のペットの飼い主を見つける
身寄りがなくペットを飼っている人は、自分が亡くなった後の飼い主も見つけておきましょう。
信頼できる親族や知人にお願いするのが理想ですが、難しい場合は動物愛護団体などに相談しておくと安心です。
2-13 残りの人生を楽しむためやりたいことリストをつくる
終活とは残りの人生を自分らしく過ごすための準備ですので、老後資金などや相続対策などだけでなく、残りの人生を楽しむ準備もしておきましょう。
具体的には、残りの人生でやってみたいことのリストを作成するのがおすすめです。
作成したリストは誰にも見せる必要がないので、自分に正直な気持ちで作成しましょう。
残りの人生でやりたいことリストを作れば、毎日の生活に張り合いが生まれ、より行動的に過ごせるはずです。
3章 身寄りなしの人が終活を始めるタイミング
終活を始めるタイミングに決まりはありませんが、自分が元気なうちから始めておくと余裕を持って行えます。
そのため、あえて年齢を指定するのであれば60代中盤から70代にかけて始めていくのが良いでしょう。
特に、終活の中でも下記の作業は体力や気力が必要で時間もかかるので、早めに始めておくと安心です。
- 介護施設の見学
- 相続税対策
- 相続トラブル対策
- 遺言書の作成
- 身辺整理
終活の中には遺言書の作成や相続税対策など、法律や税金に関する専門的な知識が必要なものもあります。
このような終活を行う際には、相続に詳しい司法書士や弁護士、税理士などの専門家に相談しながら行うのがおすすめです。
まとめ
身寄りなしの人も終活を行うべきであり、終活を行っていないと孤独死をして誰にも発見されないリスクや身元保証人を用意できず施設への入所や病院への入院ができないなどのリスクがあります。
このようなリスクを避けるためにも、身寄りがない人は老後、見守りサービスや身元保証サービスの利用を検討しましょう。
終活を行う時期に決まりはありませんが、認知症になり判断能力を失ってしまうとできなくなるので元気なうちに始めることが大切です。
また、相続対策や認知症対策などは専門的な知識が必要になるので、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談しながら進めましょう。
グリーン司法書士法人では、相続対策や認知症対策に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料ですし、身元保証サービスの紹介も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。