高齢になり一戸建ての管理が難しいと感じたときや2階、3階建ての住宅に住むのが大変だと感じたときに、老後はマンションで生活すべきだろうかと考える人もいるのではないでしょうか。
老後にマンションへ引っ越せば、今よりも利便性が高い場所で住める可能性がありますし、ワンフロアで生活できます。
一方で、マンションへ引っ越すと環境の変化もありますし、分譲マンションを購入した場合、固定資産税などの費用がかかります。
老後の住まいをマンションにするか一戸建てにするかは、資産や周辺環境、どんな生活を送りたいかによってベストな選択肢が異なります。
後悔ない選択をするには、資金計画や持ち家の処分、活用方法を吟味しておくのがおすすめです。
本記事では、老後にマンション暮らしをするメリット、デメリットやマンションの選び方を解説します。
目次
1章 老後にマンション暮らしをする4つのメリット
老後の住まいをマンションにすれば、駅近の物件など利便性の高い物件を選びやすくなります。
また、2階建てなどの一戸建てと異なりワンフロアで生活できるため、足腰が弱くなってきた人にも向いています。
老後にマンション暮らしをするメリットは、主に下記の4つです。
- 徒歩や公共交通機関の利用が便利な場所に住める
- ワンフロアで生活ができる
- 管理や修繕を管理会社に任せられる
- セキュリティ面で安心できる
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1 徒歩や公共交通機関の利用が便利な場所に住める
老後にマンションに移り住めば賃貸・分譲に限らず、自由に住む場所を決められます。
年を取るにつれ長距離の買い物が億劫になり、公共交通機関の利用もままならなくなった人も利便性が高いマンションを選ぶことにより生活しやすくなるはずです。
約20~30年前に家を建てた時と現在とでは周りの建物や店が随分変わることも考えられるため、マンションに引っ越すことにより、さらに街に近い場所に住むことができます。
さらに老後は通院の頻度も増えると予想されるため、かかりつけの病院の近くに住むことによって、何かあってもすぐに診てもらえる点もメリットといえるでしょう。
1-2 ワンフロアで生活ができる
老後をマンションで過ごす場合、一戸建てと違いワンフロアで生活可能です。
家族向けの持ち家でずっと暮らしていたが、老夫婦2人だけで暮らすには広くて持て余すという方も少なくありません。
家によっては2階建て、3階建てとなり、掃除や洗濯物の家事作業で階段を上り下りするのも大変です。
マンションの場合、ワンフロアでの生活なので家事作業が楽になり負担が減ります。
また配偶者がすぐに目に届くところにいるので、万が一のことがあってもすぐに発見できるのもメリットといえるでしょう。
最近では建物のバリアフリー化が進んでいるマンションもあり、そういったマンションを選ぶとより安心できるはずです。
1-3 管理や修繕を管理会社に任せられる
老後にマンションに住むメリットのひとつは、建物や土地を自分で管理や修繕する必要がない点です。
マンションの共用スペースや建物が劣化しても管理会社が修繕を手配してくれるので、修繕の手配をこちらでする必要がありません。
また、庭や廊下、郵便周りなども全て管理人が清掃してくれるのもメリットでしょう。
戸建てに住んでいた場合に必要になる煩わしいメンテナンスを行わずにすむので、心理的にも楽になります。
その分、管理費や修繕費を払う必要はありますが、毎日の手間や修繕の負担を考えると全て任せられるのはマンションの長所でもあります。
1-4 セキュリティ面で安心できる
一戸建てと比較した場合のマンションのメリットは、セキュリティがしっかりしているところです。
入口がオートロックになっているマンションを選ぶと、不審者が入りにくいためトラブルの原因を防げます。
さらに老人を狙って訪れる悪徳な勧誘や業者が来ても、カメラ付きインターホンで分かるので居留守を使いやすいです。
身に覚えのない来客以外は対応する必要がなく、顔を合わせなくて良いのは、高齢者でも安心して暮らしやすいといえるでしょう。
他にも階層が高い部屋を選べば外からの侵入者を防止できるので、1人で暮らす高齢者の泥棒対策としてもマンション暮らしは有効です。
2章 老後にマンション暮らしをする4つのデメリット
マンション暮らしにはワンフロアで生活できる、セキュリティがしっかりしているなどのメリットがある一方で、管理費用がかかるなどのデメリットがあります。
老後にマンションに住むデメリットは、下記の4つです。
- 費用が思ったよりかかってしまう
- 環境の変化に対応する必要がある
- 災害時や点検時はエレベーターが使えなくなる
- 貯金がなくなり家賃やローンが払えなくなる
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 費用が思ったよりかかってしまう
マンション住まい毎月一定の家賃(もしくは住宅ローン)と管理費を払えば良いと思いがちですが、マンションでは家賃の更新費用や保険など様々な費用がかかります。
マンションを購入した場合、家賃や管理費の他に修繕積立費用と固定資産税も付いてきますし、中古マンションを購入すると老朽化により修繕積立費用が値上がりする恐れもあります。
老後の住まいとしてマンションを購入し住宅ローンを組んだものの支払額が負担になるケースも珍しくありません。
老後の暮らしということもあり「20年くらい住めれば」と思って短期でローンを組むと、支払いできずに老後破産に繋がってしまう可能性もあります。
老後にマンションに引っ越す際は、想定外の費用が発生しても余裕があるくらいの予算を立てておきましょう。
すでに一戸建てなど持ち家を所有している人がマンションに移り住む場合は、持ち家の活用や売却についてもシミュレーションをしておく必要があるでしょう。
2-2 環境の変化に対応する必要がある
何十年以上住んだ家を手放したものの環境の変化に対応しきれず、マンションに引っ越したのを後悔してしまう可能性もあります。
慣れ親しんだ環境を離れ老後に新しい生活を始めることが思ったよりもストレスとなり、上手く人間関係を構築できない場合もあるでしょう。
マンションに引っ越したものの隣人トラブルや騒音などに悩まされる可能性もあります。
これらのことは引っ越しまでは予想できないことが多いものの、いざ直面すると想像以上の悩みとなってしまうことも珍しくありません。
賃貸マンションに住むならまだしも、購入してしまった場合はそこに骨を埋める覚悟で住まなければいけないため慎重な判断が必要です。
2-3 災害時や点検時はエレベーターが使えなくなる
高層マンションの購入などで後悔するケースが多いのが、災害問題です。
数年前の台風の影響により武蔵小杉のタワーマンションが浸水したニュースは記憶に新しいかと思いますが、災害など緊急時にはエレベーターが長期間使えないことがあるのを覚えておきましょう。
また、エレベーターは安全のために定期的に点検を行います。点検の際にはエレベーターが使えないのでご注意ください。
買い物を終えて大荷物で帰っている最中に点検中で使えない、なんて事態もあるかもしれません。
高層階はセキュリティー面では安全かもしれませんが、何かあれば階段で上り下りしなければいけないことも考えてマンションを選びましょう。
2-4 貯金がなくなり家賃やローンが払えなくなる
マンションを賃貸もしくは購入したものの想定外の出費によって貯金が減っていき、家賃やローンを払うのが難しくなってしまうケースもあります。
老夫婦が2人ともまだ元気だからといってマンションを購入したものの、数年後に配偶者が要介護になってしまい多額の介護費用がかかってしまう可能性もゼロではありません。
1人あたりの介護費用は約500万円といわれており、単純計算で2人合わせると1,000万円かかる計算です。
元気で動けるうちはいまいちピンとこないかもしれませんが、ローンが残っている間に介護が必要になる可能性もあります。
マンションに移り住む際には、将来の介護の可能性なども考慮し、余裕を持った資金計画を立てなければなりません。
3章 【結論】一戸建てとマンションどっちがおすすめ?
一戸建てに住むべきかマンションに住むべきかは、健康状態や資産、現在の住まいによっても異なるため、一概にどちらがおすすめであるとは言えません。
しかし、確実に言えることは老後の資金に余裕がない限りは分譲マンションの購入はおすすめできません。
マンションに引っ越すことにより利便性やバリアフリー住居などのメリットはあるものの、固定資産税や将来の修繕費など追加でコストがかかる可能性が高いからです。
マンションに移り住むよりは、今の持ち家を介護用にリフォームした方が費用を抑えられる場合もあるでしょう。
老後の住まいとして一戸建て、マンションがおすすめな人の特徴をそれぞれ紹介します。
一戸建てがおすすめな人 |
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賃貸マンションがおすすめな人 |
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分譲マンションがおすすめな人 |
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3-1 老後の住まいに賃貸マンションと分譲マンションはどちらがおすすめ?
老後はマンションに住むと言っても、賃貸マンションに住むのか思い切ってマンションを購入して分譲マンションに住むのかで大きく異なります。
賃貸マンションと分譲マンションのメリット、デメリットはそれぞれ下記の通りです。
メリット | デメリット | |
賃貸マンション |
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分譲マンション |
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賃貸契約の場合、住んでいるマンションが資産とならないため、自分が亡くなった後の相続手続きの手間や相続トラブルをなくせます。
子供がすでに持ち家を所有していて、不動産を遺す必要がない場合は賃貸マンションの契約を検討しても良いでしょう。
一方で、分譲マンションは住宅ローンを組む場合は老後破産しないかシミュレーションしなければなりません。
また、年齢によっては住宅ローンの審査自体が通らない恐れもあります。
4章 老後に住むマンションの選び方・基準
老後の住まいとしてマンションの賃貸、購入を検討している場合は高齢になっても暮らしやすい間取りやマンションを選ぶ必要があります。
具体的には、下記の項目を意識してマンションを選ぶのが良いでしょう。
- 管理・修繕の負担が少ない
- バリアフリーに対応している
- セキュリティ面で安心できる
- 立地の利便性が優れている
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 管理・修繕の負担が少ない
老後に住むマンションを選ぶ際には、管理費や修繕費の負担も必ず確認しておきましょう。
分譲マンションを一括購入した場合も、管理費や修繕費の負担は必要になるからです。
年金暮らしになったとしても管理費や修繕費を負担できるのか、マンション全体の大規模修繕や建て替えに対応できるだけの修繕積立金が用意されているのかを確認することが大切です。
4-2 バリアフリーに対応している
老後に住むマンションであれば、バリアフリー対応の部屋がおすすめです。
マンションに引っ越したばかりのときは夫婦ともに元気でも、体調を崩す、車椅子生活になる可能性もゼロではないからです。
具体的には、下記の間取りや設備の部屋を選ぶのが良いでしょう。
- 玄関から部屋までに段差がない
- 廊下が車椅子も通れるくらいの広さがある
- トイレや浴室スペースが広い
- 扉が引き戸である
- 家事しやすい導線となっている
分譲マンションを購入した場合、購入後にバリアフリーに対応するためリフォームも可能です。
しかし、廊下を広げるなど大規模なリフォームは難しい可能性が高いので、物件選びの段階で将来にわたり不便なく住めそうか確認しておきましょう。
4-3 セキュリティ面で安心できる
マンションは一戸建てと比較してオートロックや防犯カメラなどの設備があり、セキュリティ面で優れているのが強みです。
実際に入居するマンションを選ぶ際には、セキュリティ面がしっかりしているか警備員や管理人は常駐しているかの確認をしておくと安心です。
4-4 立地の利便性が優れている
高齢になると車の運転も難しくなりますので、免許返納後の暮らしを見越して利便性が高い立地のマンションを選びましょう。
具体的には、下記の立地にあるマンションが老後の住まいとして適しています。
- バス停や駅が近く公共交通機関を利用しやすい
- 病院やスーパーなど生活に必要な施設が徒歩圏内にある
5章 老後にマンションへ引っ越す際に行う準備
老後にマンションへ引っ越す際には後悔がないように、下記の準備をしておきましょう。
- 資金の準備・計画をする
- 持ち家の住宅ローンが残っている場合は借り換えや繰り上げ返済を検討する
- マンションへの引っ越し時期を決める
- 現在の住まいの活用や処分方法を考える
それぞれ詳しく解説していきます。
5-1 資金の準備・計画をする
マンション住み替え時には、将来必要になるであろう生活費や医療費、介護費を考慮して住み替え費用を捻出できるかシミュレーションしてみましょう。
マンションへに住み替える際には、賃貸にしろ購入にしろ高額な費用がかかるからです。
老後の資金計画を立てる際には、下記の情報を集めましょう。
- 退職金の金額
- 年金受給額
- 定年退職後の生活費の予測
- 介護費用
- 葬儀費用
なお、令和3年における65歳以上の無職夫婦の世帯の消費支出の平均額は約22.8万円です。
上記のデータを集め老後の資金計画を立ててみて、マンションへの住み替えが難しいと判明するケースもあるでしょう。
その場合は、住み替えではなく持ち家のリフォームなどを検討すれば、費用も抑えつつ生活しやすい住環境を整えられる可能性があります。
5-2 持ち家の住宅ローンが残っている場合は借り換えや繰り上げ返済を検討する
現在、持ち家に住んでいて住宅ローンを支払い中の場合は、マンションへ引っ越す前に支払い中の住宅ローンを整理しておくことをおすすめします。
老後破産を防ぐためにも、現在の持ち家の住宅ローンと引っ越すマンションの家賃もしくは住宅ローンの二重払いとなる状態を避けるべきだからです。
持ち家の住宅ローン支払い中の人が、マンションに引っ越す場合の選択肢は下記の2種類です。
- 持ち家の売却金でローンを一括返済する
- 持ち家の住宅ローンの残りとマンションを購入するための資金分を併せて借りる
「持ち家を処分し住宅ローンの残債を支払おう」と計画した場合、持ち家の築年数や状態によっては売却金額が低くなり計画通りにいかない恐れがあります。
老後にマンションに引っ越す場合は、現在の住まいの活用方法や処分方法についても計画することが大切です。
5-3 マンションへの引っ越し時期を決める
高齢になり住まいをマンションに移す場合は、住み替える年齢も決めておきましょう。
「定年後に物件を探そう」と思っていても、すぐに希望の物件が見つかるとは限りませんし、高齢になってからでは物件を見つけるのも大変だと感じる可能性があります。
5-4 現在の住まいの活用や処分方法を考える
持ち家に住んでいる人がマンションへの住み替えを検討している場合は、現在の住まいの活用や処分についても計画しておきましょう。
持ち家をそのままの状態にしておくと建物が傷んでしまいますし、管理コストもかかり続けてしまうからです。
持ち家の売却に成功すればマンションの購入費用や引っ越し費用に充てられます。
持ち家の活用や処分方法は、主に下記の3種類です。
- 売却する
- 第三者や家族、親族に貸す
- 家族や親族に譲る
まずは、持ち家の市場価値を調べるために不動産会社に査定依頼をしてもらうのも良いでしょう。
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まとめ
老後はマンションに移り住めば、一戸建てと異なりワンフロアで生活できますし、防犯面でも安心できます。
一方で、マンションへ住み替える場合は費用がかかることや環境が変化することに注意しなければなりません。
老後の住まいを選ぶには物件選びだけでなく、老後どんな生活をしたいかや資金計画を考えておく必要があります。
まずは老後の生活費や年金受給額を確認し、マンションへの住み替え費用を捻出できるか計算してみましょう。
さらに、持ち家に住んでいる人がマンションに移り住む場合は、持ち家の活用や処分、生前贈与などを検討しなければなりません。
不動産や資産、家族の状況によってベストな方法は異なるので、相続対策や不動産活用、売却に詳しい専門家に相談しながら行うのが良いでしょう。
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