成年後見人は解任できる!解任事由や申し立て方法・必要書類について

成年後見人は解任できる!解任事由や申し立て方法・必要書類について
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 6

成年後見人とは、認知症や知的障がいの人などのかわりに契約や法的手続きを行い生活をサポートする人物です。
なお、成年後見制度によってサポートされる人物は「被後見人」と呼ばれます。

成年後見人は家庭裁判所によって選ばれ、その後は原則として被後見人が亡くなるまで後見業務を行います。
ただし、成年後見人が後見業務を行わない場合や適切な財産管理をしなかった場合は解任も可能です。

ただし、成年後見人の解任が認められるケースは限られているので、解任前には解任できるケースに該当しているか確認しておくと良いでしょう。

成年後見人の解任手続きは、家庭裁判所に申立てをして行います。
本記事では、成年後見人を解任できるケースや解任方法を解説します。

成年後見制度については、下記の記事で詳しく解説しているのでご参考にしてください。

成年後見制度とは?利用方法からメリットデメリットまで簡単理解!

1章 成年後見人は解任できる

成年後見人の解任は可能ですが、家庭裁判所の許可が必要です。
解任のためには、相応の理由が求められ、理由が不十分な場合、解任が認められない可能性があります。

例えば、下記の理由では成年後見人の解任が認められない可能性が高いです。

  • 成年後見人に支払う報酬が負担になっている
  • 成年後見人と家族で方針がずれている
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2章 成年後見人を解任する前にすべきこと

成年後見人の解任はすべてのケースで認められるわけではなく、成年後見人が不正をしていた、物理的に貢献業務を行うのが不可能になったなどの理由が必要です。
そのため、成年後見人の解任を希望する場合は、事前に解任できるケースに該当するか確認し、裁判所が納得するだけの証拠を用意しておきましょう。

次の章では、成年後見人を解任できるケースについて詳しく解説します。


3章 成年後見人を解任できるケース

成年後見人の解任事由は①不正な行為、②著しい不行跡、③その他後見の任務に適しない事由と決められています。
専門用語ではわかりにくいので、解任事由に該当する主なケース4つを解説していきます。

  1. 財産管理方法が不適切だった
  2. 家庭裁判所への報告を行わなかった
  3. 成年後見人の職務を行わなかった
  4. 成年後見人が業務を行えなくなった

それぞれ見ていきましょう。

3-1 財産管理方法が不適切だった

成年後見人が行う財産管理が不適切だった場合は、解任事由に該当します。

  • 被後見人の財産を私的に使用、横領した
  • 成年後見人が行った支出の中に使途不明金がある
  • 成年後見人が勝手に被後見人の財産を処分してしまう
  • 成年後見人がリスクの高い金融商品を購入してしまう

上記は、財産管理に問題があったとされてしまいます。

なお、成年後見人に悪気がなく「普通預金より利息が高いから利回りの良い金融商品に切り替えよう」などと考えた上での行動だとしても家庭裁判所に認められない可能性が高いです。

柔軟な財産管理を行いたいのであれば家族信託・任意後見制度を利用しよう

成年後見制度では被後見人の重要な財産の処分には、家庭裁判所の許可が必要です。
そのため、成年後見制度では柔軟な財産管理を行うことは難しくなります。

賃貸用不動産の運用やリフォームなど、柔軟な財産管理を行いたいのであれば、家族信託や任意後見制度の利用をご検討ください。
家族信託や任意後見制度では、あらかじめ契約した内容に基づいて財産管理を行えます。

ただし、家族信託や任意後見制度は委託者や被後見人が認知症になり判断能力を失っていると利用できないのでご注意ください。

家族信託と後見人制度どちらを選ぶべき?ケースや費用を徹底比較
【簡単解説】任意後見人とは?役割や仕事内容から手続きの流れ

3-2 家庭裁判所への報告を行わなかった

成年後見人は被後見人の財産状況や後見業務に関する報告をしなければなりません。
そのため、家庭裁判所への報告を怠った場合や指示に従わなかった場合も解任事由に該当します。

成年後見人は後見事務報告書や被後見人の財産目録を定期的に提出する必要があるので、忘れずに行いましょう。

成年後見人とは?必要になる6つのケースと知っておくべき5つの注意点

3-3 成年後見人の職務を行わなかった

成年後見人が被後見人の財産管理や身上監護などを行わなかった場合や被後見人を虐待していたケースも解任事由にあたります。

成年後見人が職務を行わない、被後見人に不適切な言動や虐待をしている場合は証拠を集め、家庭裁判所に解任を申し立てましょう。

3-4 成年後見人が業務を行えなくなった

成年後見人が病気になり入院した、転勤により引っ越して後見業務を続けることが難しくなった場合も解任事由に該当します。


4章 成年後見人の解任手続き方法・必要書類

先ほどの章で解説したように、成年後見人が職務違反行為などの不正をしている場合は、後見監督人や被後見人の親族などが成年後見人の解任申立てを行えます。
解任申立ての流れは、下記の通りです。

  1. 解任事由に該当する証拠を集める
  2. 解任申立書を作成する
  3. 成年後見人の解任申立てを行う

それぞれ見ていきましょう。

STEP① 解任事由に該当する証拠を集める

家庭裁判所に成年後見人の解任を認めてもらうには、裁判所が納得するだけの証拠を集めなければなりません。
後見人の家族や親族のみでは証拠集めが難しい場合は、専門家に相談しながら進めていきましょう。

STEP② 解任申立書を作成する

解任申立書には決まった形式がないので、自分で作成しなければなりません。
作成時には下記の項目を記載します。

  • 申立人の氏名および住所
  • 日付
  • 申立内容
  • 申立事由

解任申立書に記載すべき内容がわからない場合は、事前に被後見人の住所地を管轄する成年後見人相談窓口もしくは家庭裁判所に確認しておくと安心です。

STEP③ 成年後見人の解任申立てを行う

解任申立書の作成が完了したら添付書類や手数料を用意し、被後見人の住所地を管轄する家庭裁判所で申立て手続きを行いましょう。
申立て後は家庭裁判所が調査や審判を行い、成年後見人が解任事由にあたるかどうか判断します。

解任申立て方法や必要書類は、下記の通りです。

申立てできる人
  • 被後見人
  • 被後見人の親族
  • 成年後見監督人
  • 検察官
申立て先被後見人の住所地を管轄する家庭裁判所
費用
  • 収入印紙:800円分
  • 連絡用の郵便切手代:数千円程度
必要書類
  • 解任申立書
  • 申立人の戸籍謄本
  • 申立人と本人の関係がわかる戸籍謄本
  • 解任事由を証明する資料 など

5章 成年後見人を解任させるときの注意点

成年後見人を解任しても成年後見制度の利用は続くため、解任後は速やかに次の成年後見人を選ばなければなりません。
その他にも、成年後見人を解任する際には下記の3点に注意しましょう。

  1. 成年後見人を解任しても後見制度の利用は続く
  2. 成年後見人が情報開示を拒んだら監督処分の申立てをする
  3. 専門家が成年後見人なら懲戒請求の申立ても検討する

それぞれ解説していきます。

5-1 成年後見人を解任しても後見制度の利用は続く

成年後見人を解任しても、成年後見制度の利用自体が中止されるわけではありません。
成年後見制度の利用自体は、原則として被後見人が亡くなるまで続きます。

そのため、成年後見人が解任されたら、他にも後見人がいるケースを除き家庭裁判所が新たな成年後見人を選任します。
新たな成年後見人を選任する際の申立書の「申立ての理由」には、下記を記載しましょう。

01_allegation

5-2 成年後見人が情報開示を拒んだら監督処分の申立てをする

成年後見人を解任するには、解任事由にあたる行為をしていた証拠の提出が必要です。
証拠を集めようとしたときに、成年後見人が情報開示を拒む場合は、監督処分の申立てを行いましょう。

家庭裁判所に監督処分の申立てを行えば、家庭裁判所が成年後見人の後見業務が行っているか調査をしてくれます。

監督処分を行うには、被後見人の住所地を管轄する家庭裁判所に下記を記載した申立書を提出しましょう。

  • 申立書のタイトルは「監督処分の申立て」とする
  • 申立人の氏名および住所
  • 成年後見人の後見業務、被後見人への対応の中で特にひどいものを簡潔にまとめたもの
  • 成年後見人の後見業務、振る舞いに関する証拠(あれば)
  • 家庭裁判所から成年後見人に対してしてほしい処分、行動をまとめたもの

調査の結果、解任事由に該当することが判明すれば、解任申立てを行わなくても家庭裁判所が職権で辞任勧告を出す場合もあります。

5-3 専門家が成年後見人なら懲戒請求の申立ても検討する

司法書士や弁護士などの専門家が成年後見人になっているのであれば、懲戒請求の申立ても検討しましょう。
懲戒請求の申立てを行うと、専門家が所属する司法書士会や弁護士会などの監督機関が調査を行います。

調査の結果、成年後見人として不適切だったと判明すれば懲戒処分にできます。
ただし、懲戒請求の申立てを行えば成年後見人との関係が悪化することが予想できるので、自己判断で行わず成年後見人とのトラブルに詳しい専門家に相談してから行いましょう。


まとめ

成年後見人が財産管理や身上監護などの後見業務を適切に行わない場合や病気や引っ越しなど後見業務を継続できない事情がある場合、成年後見人の解任が認められる場合があります。
ただし、成年後見人を解任しても成年後見制度の利用は続くので、新たな成年後見人が家庭裁判所によって選任されます。

成年後見人の振る舞いや業務に不信感を持つ場合は、まずは解任事由に該当する証拠を集めることから始めましょう。
ただし、証拠集めの家庭で成年後見人との折り合いが悪くなる恐れもありますし、証拠がなかなか集まらない可能性もあります。

そのため、成年後見人に不信感を持つ場合や解任を求めたい場合は、自己判断せず専門家に相談するのが良いでしょう。
また、成年後見制度は一度利用を開始すると途中で辞められないので、制度を利用すべきか慎重に判断することも大切です。

グリーン司法書士法人では、成年後見制度を始めとする認知症対策に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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よくあるご質問

成年後見人は解任できますか?

成年後見人が後見業務を行わない場合や適切な財産管理をしなかった場合は解任も可能です。
成年後見人の解任をする際には、家庭裁判所での申立てが必要です。

成年後見人の解任申立てをできる人は誰?

成年後見人の解任申立てを行えるのは、下記の人物です。
・被後見人
・被後見人の親族
・成年後見監督人
・検察官
▶成年後見人の解任申立てについて詳しくはコチラ

成年後見人を解除する流れは?

成年後見人を解除する流れは、下記の通りです。
STEP① 解任事由に該当する証拠を集める
STEP② 解任申立書を作成する
STEP③ 成年後見人の解任申立てを行う

成年後見人は辞任できる?

やむを得ない事情がある場合、成年後見人を辞任できますが、簡単にやめることはできません。
「面倒になった」「忙しい」などの理由は認められないのでご注意ください。

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