借金を相続する範囲はどこまで?相続人の確認方法や相続放棄について

借金を相続する範囲はどこまで?相続人の確認方法や相続放棄について
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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 6
この記事でわかること

  • 借金を相続する範囲はどこまでなのか
  • 借金を相続する相続人が誰か確認する方法
  • 故人の借金を相続したくないときの対処法
  • 相続放棄をする際の注意点

相続と聞くと預貯金や不動産などプラスの財産を受け継ぐイメージが強いかもしれませんが、実際には借金などマイナスの財産も相続の対象になります。
そのため、故人に借金があった場合は、相続人が返済義務を受け継ぎます。

相続人になる人物や優先順位は法律によって決められており、配偶者や子供だけでなく、両親や兄弟姉妹、さらには甥や姪まで相続人となる可能性もあるのでご注意ください。

本記事では、借金を相続する範囲や相続人を確定する方法、相続放棄の注意点を解説します。


1章 借金を相続する範囲はどこまで?

借金は現金や預貯金のようなプラスの財産と同じく、相続の対象に含まれます。
そのため、故人が借金や未払いの債務などを遺していた場合、その負債は相続人が受け継ぎます。

本章では、故人の借金を誰が受け継ぐのかについて解説します。

1-1 配偶者

配偶者は常に相続人になり、借金を含む相続財産を引き継ぐ立場となります。
遺言や生前の取り決めがあっても、法律上の「相続人」から外れることはありません。

ただし、配偶者のみがすべての遺産を相続するわけではなく、他の相続人と分け合う形となり、借金もその割合に応じて負担することになります。

1-2 子供や孫

故人の子供は相続順位1位であり、他の親族より優先して遺産を相続します。
故人に子供が複数いれば、人数で均等に分割して相続することとなります。

また、相続発生時に子供がすでに亡くなっている場合は、その子供の子、つまり孫が代襲相続人となる仕組みです。

相続放棄と代襲相続の関係性をスッキリ解説!【事例イラスト付き】

1-3 両親や祖父母

故人に子供や孫といった直系卑属がいない場合、次に相続人となるのは被相続人の父母です。
父母もすでに亡くなっているときは、さらに上の世代である祖父母が相続人となります。

この場合も相続するのは財産だけでなく、借金も含まれます。

1-4 兄弟姉妹や甥・姪

故人に子供や孫がおらず、両親や祖父母もすでに他界している場合には、兄弟姉妹が相続人となります。
兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その子供、つまり甥や姪が代襲相続人となります。
ただし、兄弟姉妹の場合は代襲相続は1代限りという制限があるため、甥や姪の子供が相続権を持つことはありません。

このように、故人の借金を受け継ぐ人物は、法律によって決められています。
そのため、相続発生時には相続人が誰であるかを特定することが重要です。
次の章では、相続人が誰かを確認する方法を解説します。

甥・姪が相続人になるための条件とは?代襲相続の重要ポイント
相続権とは?|法定相続人の範囲と相続割合をわかりやすく解説
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2章 相続人が誰か確認する方法

借金を含む相続財産を承継するのは、法律によって決められた相続人です。
しかし、家族や親族が亡くなったとき、自分が相続人に当たるのかどうか、あるいは他にどのような相続人がいるのか、すぐにわからないことも多いでしょう。

相続人が誰かを確認する際には、故人の戸籍謄本類を収集していく必要があります。

遺産分割協議/死亡時から遡って出生までの戸籍謄本を取得しよう

上記のように、故人が亡くなったときの戸籍謄本類からさかのぼって取得していき、生まれてから死亡するまでの連続した戸籍謄本類を収集しましょう。
故人の家族関係が複雑な場合や、本籍地を何度も異動している場合には、司法書士や行政書士に相続人調査を依頼することも可能です。

相続人調査(戸籍収集)とは?詳しい手順から方法まで専門家が簡単解説

3章 借金を相続したくない場合には相続放棄をする

故人が借金を遺して亡くなった場合、相続放棄することも検討しましょう。
相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しなくなる手続きであり、最初から相続人ではなかった扱いになります。

相続放棄をするには、家庭裁判所に申立てをする必要があり、手続き方法や必要書類は、主に以下の通りです。

手続きする人相続放棄する人
法定代理人
提出先故人の住所地を管轄する家庭裁判所
費用収入印紙:800円
連絡用の郵便切手代:数千円程度
必要書類相続放棄申述書(裁判所窓口またはHPからダウンロード)
故人の死亡および相続人であることがわかる戸籍謄本
故人の住民票除票または戸籍附票
など
相続放棄って難しい?手続きの流れとポイントを徹底解説!【初心者向け】

4章 相続放棄をする際の注意点

故人に借金がある場合、返済義務を受け継がないようにするために相続放棄を検討することもあるでしょう。
ただし、相続放棄をする際には、以下のような点に注意しなければなりません。

  • 相続放棄と相続分の放棄は異なる手続きである
  • 相続放棄には期限が設定されている
  • 相続人全員が放棄すると次の順位に相続権が移る
  • 相続放棄するとプラスの財産も相続できない
  • 受け継ぎたい財産がある場合には限定承認を検討する
  • 故人が亡くなる前に相続放棄することはできない
  • 遺産の使用・処分をすると相続放棄が認められない恐れがある

それぞれ詳しく解説していきます。

4-1 相続放棄と相続分の放棄は異なる手続きである

相続放棄とよく似た手続きに相続分の放棄がありますが、両者は全く異なる手続きなので注意しなければなりません。

相続放棄は家庭裁判所に申立てをして行うもので、放棄が認められると、最初から相続人でなかったことになります。
したがって、プラスの財産はもちろん、マイナスの財産も一切相続しません。

一方で、相続分の放棄とは、遺産分割協議の中で自分の取り分を放棄することです。
相続分の放棄は裁判所を通さないものであり、あくまで遺産分割上の取り分を譲るだけです。

したがって、相続人としての地位に影響は一切なく、借金の返済義務は残ったままとなります。
そのため、故人の借金の返済義務を相続したくない場合には、相続放棄をしましょう。

相続分の放棄とは?相続放棄との違いやおすすめな人の特徴について

4-2 相続放棄には期限が設定されている

相続放棄期限起算点図/相続放棄の期限のスタート地点

相続放棄には、自分が相続人であると知ってから3ヶ月以内という申立て期限が設定されています。
期限を過ぎてしまうと、原則として相続放棄が認められなくなるのでご注意ください。

しかし、相続の状況によっては、相続放棄の期限までに相続人調査や相続財産調査が完了しない場合や、相続放棄の申立てに必要な書類を収集しきれない場合もあるでしょう。
そのような状況では、熟慮期間伸長の申立てをして、相続放棄の期限を延長してもらう必要があります。
熟慮期間伸長の申立て方法や必要書類は、下記の通りです。

手続きする人相続放棄の期限を延長したい人
提出先故人の住所地を管轄する家庭裁判所
費用収入印紙:800円
連絡用の郵便切手代:数千円程度
必要書類家事審判申立書
故人の住民票除票もしくは戸籍附票
伸長を求める相続人の戸籍謄本
故人と相続人の関係性を証明する戸籍謄本類
など
【相続放棄の期限は3ヶ月】延長方法と期限を過ぎたときの対処法

4-3 相続人全員が放棄すると次の順位に相続権が移る

相続放棄を相続人全員が行った場合、相続権は次の順位に移ります。
例えば、子供達が全員放棄すると両親が相続人となり、両親も放棄すれば兄弟姉妹が相続人となる仕組みです。

そのため、故人に借金があり相続放棄する場合には、次に相続人となる人物に相続放棄したことや理由を伝えておくと良いでしょう。

子供が相続放棄すると法定相続人は誰になる?孫も相続放棄が必要?

4-4 相続放棄するとプラスの財産も相続できない

相続放棄をすると、故人の借金だけでなく、預貯金や土地などといったプラスの財産も相続できなくなるのでご注意ください。

そのため、故人に借金があり相続放棄する場合には、借金などのマイナスの相続財産と預貯金などのプラスの相続財産のどちらが多いかを確認しておくと良いでしょう。

4-5 受け継ぎたい財産がある場合には限定承認を検討する

故人に借金があるものの、どうしても相続したい遺産がある場合には、限定承認を検討しましょう。
限定承認とは、故人のプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続することです。

限定承認事例1

例えば、先祖代々受け継いできた土地などがある場合には、限定承認すればその土地を相続できます。
ただし、限定承認は相続人全員で手続きする必要があるので、1人でも相続人が反対した場合は行えません。

限定承認はこれを読めば分かる!選択すべき3つのパターンとメリット

4-6 故人が亡くなる前に相続放棄することはできない

故人が借金をしていることがわかっている場合には、相続が発生する前に相続放棄したいと考える方もいるでしょう。
しかし、相続発生前に相続放棄を行うことは認められません。

相続放棄は生前にできない!代わりにできる【5つの方法】を簡単解説

4-7 遺産の使用・処分をすると相続放棄が認められない恐れがある

遺産を使用したり処分したりすると、相続放棄が認められなくなる恐れがあるのでご注意ください。

遺産の使用や処分は、相続する意思があるとみなされ単純承認となってしまうからです。
遺産の使用や処分は、故人の預貯金を引き出して使うことや不動産の売却などが該当します。

加えて、状況によっては、以下のような行為も遺産の使用や処分に該当する恐れがあるのでご注意ください。

  • 故人の預貯金を引き出す
  • 故人の実家を解体・売却する
  • 故人が結んでいた賃貸契約を解約する
  • 遺品整理をする
  • 故人の車を処分する
  • 遺産から故人の借金を払う
  • 故人の入院費を払う
  • 故人の携帯電話を解約する

確実に相続放棄したいのであれば、早い段階で司法書士や弁護士に相談しながら、上記のような手続きを進めていくことをおすすめします。

相続放棄後にしてはいけないことは?認められる行為とは?
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まとめ

故人が遺した借金は相続財産に含まれるため、相続人が受け継ぎます。
相続人になる人物は、故人の配偶者や子供などであり、法律によって明確に決められています。

故人が借金を遺している場合には、相続放棄も検討しましょう。
相続放棄をすれば、個人の借金の返済義務を負わなくてすみますが、プラスの財産も一切相続できなくなってしまいます。

相続放棄すべきか判断に迷ったときや、確実に申立てを完了したいときには、相続放棄には精通した司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。

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