
- 同性パートナーは相続権を持つのか
- 同性婚で相続対策をしていない場合に生じるリスク
- 同性婚のパートナーがすべき4つの法律手続き
現在の日本では、同性婚は法的に認められておらず、同性パートナーが互いの相続人になることはできません。
そのため、長年連れ添ったパートナーであっても、遺言などの対策をしていなければ、遺産を一切受け取れない恐れもあります。
このような事態を防ぐためにも、同性のパートナーに遺産を遺したい方は、元気なうちに遺言書の作成や任意後見制度の活用などといった相続対策をしておくことを強くおすすめします。
本記事では、同性婚のパートナーは相続権を持つのか、同性パートナーがしておきたい法律手続きを解説します。
目次
1章 同性パートナーへの相続権は原則として認められない
同性パートナーは法律上の配偶者ではないため、相続権は原則として認められません。
本章では、同性パートナーの相続に関する取り扱いについて、詳しく解説していきます。
1-1 法律によって相続人になれる人物・順位は決まっているから
日本の法律では、相続人になれる人物と優先順位を以下のように決めています。
同性パートナーは法定相続人の範囲に含まれないため、基礎控除の算定人数に加えることはできません。
常に相続人になる | 法律上の配偶者 |
---|---|
第1順位 | 子供や孫 |
第2順位 | 両親や祖父母 |
第3順位 | 兄弟姉妹や甥・姪 |
配偶者は常に相続人になりますが、この「配偶者」とは法律上の婚姻関係にある相手に限られており、内縁関係や同性パートナーは含まれません。
そのため、いくら長年にわたり共同生活を営んでいたとしても、同性パートナーには相続権が発生しません。
仮に、パートナーとして故人と同居していた住居であっても受け継ぐことはできないのです。
1-2 同性婚は法律婚として認められていないから
現在の日本の法律では、同性婚は認められていません。
いくつかの自治体ではパートナーシップ制度が導入されていますが、これは法的な婚姻制度とは異なり、あくまで行政サービス上の便宜や象徴的な制度に留まっています。
法的に婚姻関係と認められない限り、相続においては「他人」として扱われるため、パートナーが遺産を受け取るには遺言などの対策をしなければなりません。
何も対策をしていなければ、故人の遺産は法定相続人にすべて受け継がれてしまいます。
2章 同性婚で相続対策をしていない場合に生じるリスク
同性パートナーは互いに法定相続人となれないため、遺言などで対策しておかないと、以下のようなリスクが生じてしまいます。
- 同性パートナーに一切の相続分がないため、財産を受け取れない
- 同居していた住居が故人名義の場合、退去を求められる恐れがある
- 故人名義の預貯金が凍結され、引き出せなくなる
- 相続人(故人の両親や兄弟姉妹)とトラブルになる可能性がある
- 介護・看取りなど貢献した事実がまったく相続に反映されない
上記のように、同性パートナーが相続対策をしていないと、パートナーの死後に残された側が生活基盤を失う恐れがあります。
3章 同性婚のパートナーがすべき4つの法律手続き
同性パートナーは互いに何かあったときに備えて、以下のような対策をしておくことを強くおすすめします。
- 遺言書の作成
- 任意後見制度の利用
- 死後事務委任契約の締結
- 身元保証契約の締結
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 遺言書の作成
同性パートナーに財産を遺したいのであれば、遺言書を作成しましょう。
遺言書を作成しておけば、法定相続人ではない同性パートナーにも財産を承継させられます。
遺言書にはいくつかの形式がありますが、原本の改ざんや紛失のリスクがなく、最も信頼性の高い公正証書遺言の作成をおすすめします。
遺言書を作成する際には、遺言執行者も選任しておきましょう。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために手続きを行う人です。
遺言執行者を選任しておけば、単独で遺産の名義変更手続きを行えますし、相続人に遺言書の内容を伝えてくれます。
遺言執行者は相続人や受遺者がなることもできますが、遺言書の作成を依頼した司法書士や弁護士を選任すれば、作成時の意図や遺志も伝えてもらえます。
3-2 任意後見制度の活用
パートナーが認知症などで判断能力を失った際に、財産を管理したり、契約行為を代わりに行いたいのであれば、任意後見制度を利用すると良いでしょう。
任意後見制度とは、将来自分の判断能力が不十分になったときに備えて、支援してくれる人とその内容を事前に契約しておく制度です。
任意後見制度では、後見内容と後見人を自由に選べるため、同性パートナーや司法書士・弁護士などの専門家を後見人として選ぶことも可能です。
例えば、自分が施設に入所する際の手続きを同性パートナーに任せたい場合には、任意後見制度を利用すると良いでしょう。
3-3 死後事務委任契約の締結
自分が亡くなった後に生じる様々な手続きを同性パートナーに任せたい場合には、死後事務委任契約を結んでおきましょう。
人が亡くなった後には、以下のような様々な手続きが発生します。
- 火葬
- 埋葬
- 役所関連の手続き
- 家財・遺品整理
- 未払金の精算
これらの手続きは通常であれば家族や親族が行うものとされており、法律上は他人である同性パートナーが行えない可能性があります。
死後事務委任契約を生前に結んでおくことで、パートナーに対して死後の手続きを委任できます。
これにより、葬儀の方法や納骨場所の希望なども伝えやすくなりますし、安心して最期を迎えるための準備を行えるでしょう。
3-4 身元保証契約の締結
同性パートナーが互いの身元保証人になりたいのであれば、身元保証契約を結んでおく必要があります。
病院に入院する際や施設に入所する際には、身元保証人を用意しなければならない場合もあります。
法律上、配偶者や家族として認められない同性パートナーが身元保証人になるためには、事前に身元保証契約を結んでおくと良いでしょう。
4章 【注意】養子縁組をするとパートナーシップ制度の対象外となってしまう
同性パートナーにとって、相続対策や医療・介護に関する意思決定を可能にする手段として「養子縁組」があります。
養子縁組をすれば法的な親子関係が生じるので、相続権や扶養義務、病院での説明を受ける権利など多くの権利を得られます。
一方で、養子縁組をすることで、現行のパートナーシップ制度や将来の同性婚の対象外となってしまう恐れがあります。
将来日本で同性婚が法律で認められた場合、養子縁組をしていると法律婚ができなくなる恐れがあります。
現在の法律では、養親と養子は離縁した後でも、婚姻できないと決められているからです。
ただし、現在の養子縁組や婚姻は異性婚を前提とした法律となっているため、同性婚が認められる際に養子に関する法律も変わる可能性はあるでしょう。
まとめ
同性パートナーは互いの相続人となることができないため、遺言書の作成や任意後見制度の活用、死後事務委任契約の活用などといった対策が必要不可欠です。
財産が確定しない若い年代でもできる相続対策はあるので「自分たちにはまだ早い」と考えるのではなく、年代に合った対策をしていきましょう。
グリーン司法書士法人では、同性パートナーの相続対策についての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。