家を相続したものの自分は住む予定がなく、家自体も古くて借り手が見つからないケースもあるでしょう。
その場合には、相続した家を壊し更地にして活用や売却を検討するのもおすすめです。
相続した家を壊して更地にすると、空き家の管理コストがかからなくなりますし、更地にした方が買い手が見つかりやすく売却しやすい可能性もあります。
ただし、相続した家を壊すときには解体費用がかかりますし、更地になると土地にかかる固定資産税が最大6倍になるので注意が必要です。
本記事では、相続した家を壊したときの手続きの流れや費用相場をわかりやすく解説します。
不動産を相続したときの手続きは、下記の記事で詳しく解説していますのでご参考にしてください。
1章 相続した家を壊すメリット
家を相続したものの活用予定がない場合、建物を壊した方が活用や売却をしやすくなる可能性があります。
また、相続した家は相続人が管理義務を負いますが、空き家を壊せば倒壊リスクや空き家が犯罪に利用されるリスクをなくせます。
相続した家を壊すメリットを詳しく見ていきましょう。
1-1 相続した空き家を管理しなくてすむ
故人が遺した家を相続すると誰も住んでいない空き家であっても、相続人が管理義務を負います。
空き家を相続すると固定資産税もかかりますし、放置した空き家が壊れて近隣住民や通行人に被害が及ぶと損害賠償を請求される恐れもあります。
相続したものの活用予定のない家を解体してしまえば、空き家の倒壊リスクや犯罪に使用されるリスクをなくせます。
1-2 相続した土地を売却しやすくなる
故人が遺した家が古い場合、土地と家をセットで売却しようとしてもなかなか買い手が見つからないケースもあるでしょう。
一方で、家を壊し更地にした場合、購入者も建物を建設しやすくなり活用の幅が広がります。
そのため、更地の方が建物付きの土地より売却しやすいケースも多いです。
2章 相続した家を壊すデメリット
相続した家を壊すと管理コストがかからなくなる一方で、土地の固定資産税が上がるなどのデメリットがあります。
また、相続した家の築年数が浅く立地も良い場合には、更地にしなくても買い手が見つかる可能性もあるでしょう。
相続した家を壊すデメリットを詳しく解説していきます。
2-1 固定資産税の金額が上がる
相続した家を壊すと、建物にかかる固定資産税は払わなくて良くなります。
一方で、空き家を取り壊して更地になると、土地にかかる固定資産税が最大6倍になってしまうのでご注意ください。
固定資産税の計算式は「固定資産税評価額×1.4%」ですが、住宅が建っている土地に関しては固定資産税が最大6分の1まで減額される「住宅用地の減額特例」が用意されているからです。
住宅用地の特例の適用要件には、家に人が住んでいるかどうかは含まれません。
そのため、空き家が建っている土地も固定資産税は最大6分の1まで減額されています。
相続した家を壊す際には、土地にかかる固定資産税がいくらになるのかシミュレーションをしておきましょう。
2-2 家の状態・立地次第では更地にしないでも売れる可能性がある
相続した家の築年数が浅い、立地が良いケースでは、わざわざ更地にしなくても古家付土地として売却できる可能性があります。
古家付土地として売却できれば解体費用を負担しなくてすむので、試しに売却活動をしてみて売れる見込みが低い場合にのみ家の解体に踏み切っても良いでしょう。
ただし、相続した家と土地の両方を売却する場合には、家と土地それぞれの名義変更手続きです。
相続した不動産の名義変更手続きは、法務局で相続登記の手続きを行います。
解体費用や余計な売却費用をかけずにスムーズに売却したいのであれば、以下の手順で相続手続きや売却手続きを進めるのが良いでしょう。
- 不動産会社にて売却査定をしてもらう
- 相続した不動産の売却方法・戦略を決める
- 決定した売却方法の内容をもとに、相続人全員で遺産分割協議を行う
- 相続登記を行う
- 不動産を売却する
不動産の売却はタイミングも重要なので、売り時を逃さないためにも売却活動と合わせて遺産分割協議や不動産の名義変更手続きをすませておかなければなりません。
遺産分割協議や相続登記は遺産分割協議で誰に取得させるか、売却時の税金控除の特例活用など大事なポイントがいくつかあります。
自分で判断する前に弊社のような相続の専門家に相談することをおすすめします。
3章 相続した家を壊した時の手続きの流れ
相続した家を壊して更地にするには、解体手続きと同時に不動産の遺産分割や相続手続きも行わなければなりません。
具体的には、下記の流れで相続した家の取り壊しを進めましょう。
- 相続した家の所有者情報を確認する
- 相続人調査を行う
- 解体費用の見積もりを取得する
- 相続人全員で遺産分割協議を行う
- 解体工事を行う
- 建物滅失登記を行う
- 更地の名義変更手続きを行う
それぞれ詳しく解説していきます。
STEP① 相続した家の所有者情報を確認する
まずは、相続した家の登記簿謄本(登記事項証明書)を取得し所有者情報を確認しましょう。
故人が生前住んでいたからといって、家を故人が単独所有していたとは限らないからです。
- 相続した家が故人をはじめとする複数人による共有状態だった
- 相続した家に抵当権がついたままだった
- 故人が住んでいた家がそもそも借家で名義人は故人ではなかった
上記のケースでは、そもそも家が相続財産に含まれない可能性もありますし、勝手に解体してトラブルに発展する恐れもあります。
不動産の所有者情報は、下記のように登記簿謄本の「権利部」の項目に記載されています。
登記簿謄本の取得方法および必要書類は、下記の通りです。
申請できる人 | 誰でもできる |
申請先 | 最寄りの法務局 |
申請費用 | 1通につき600円 |
申請方法 |
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必要書類 |
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STEP② 相続人調査を行う
相続した家の名義人が故人であると確認できたら、相続人調査を行い相続人全員を特定しましょう。
相続した家の解体や遺産分割協議には、相続人全員の合意が必要だからです。
相続人調査を行う際には、故人の生まれてから死亡するまでの連続した戸籍謄本を収集します。
具体的には、故人が死亡した時点の戸籍謄本から遡って取得していくのが良いでしょう。
戸籍謄本の取得方法や必要書類は、下記の通りです。
手続きする人 |
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手続き先 | 本籍地のある市区町村役場 |
費用 |
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必要書類 | 申請書 本人確認書類 委任状(代理人が取得する場合) 返信用の封筒・切手(郵送で請求する場合) |
STEP③ 解体費用の見積もりを取得する
相続した家を壊す場合、解体費用の見積もりを取得しましょう。
先ほど解説したように解体時には相続人全員の合意が必要であり、費用を負担する人物や割合も決めなければならないからです。
解体費用の見積もりは業者ごとで金額が異なる可能性もあるので、複数の業者に見積もりをもらっておきましょう。
STEP④ 相続人全員で遺産分割協議を行う
相続した家を取り壊す費用相場がわかったら、相続人全員で遺産分割協議および相続した家の取り扱いについて話し合いましょう。
遺産分割協議とは、相続人全員で誰がどの遺産をどれくらいの割合で相続するかを決定する話し合いです。
- 相続した家を取り壊すかどうか
- 相続した家の解体費用を負担する相続人
- 家を壊した後の更地を相続する人
- 家を壊した後の更地の活用、処分方法
単純に遺産の分割方法について話し合うだけでなく、上記まで決めておくと後々のトラブルの発生を回避できます。
誰が遺産を相続するか、相続した家の取り扱いなどが決まったら、話し合った内容を遺産分割協議書にまとめましょう。
STEP⑤ 解体工事を行う
相続人全員が家の解体に同意したら、工事の申し込みをしましょう。
地域に解体業者は複数あるはずなので、STEP③で解説したように複数の業者で相見積もりを取り、信頼できる業者を選びましょう。
なお、相続した建物を解体する場合は亡くなった人から相続人に名義変更をしなくても解体可能です。
STEP⑥ 建物滅失登記を行う
相続した家を解体したら、建物滅失登記を行いましょう。
建物滅失登記は建物を取り壊したときに行う登記であり、解体から1ヶ月以内に行うこととされています。建物滅失登記を行わないと不動産登記法違反で10万円以下の過料が科される恐れがありますし、取り壊したはずの空き家に固定資産税がかかり続けてしまいます。
建物滅失登記の手続き方法および必要書類は、下記の通りです。
手続きする人 | 相続人 |
手続き先 | 建物の所在地を管轄する法務局 |
費用 |
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必要書類 |
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なお、相続した家を取り壊し建物滅失登記を行う場合、相続人全員で行う必要はなく相続人が単独で行えます。
また、建物滅失登記を自分で行うのではなく、土地家屋調査士に依頼も可能です。
STEP⑦ 更地の名義変更手続きを行う
取り壊した家の建物滅失登記が完了したら、更地を故人から相続人に名義変更手続きをしましょう。
相続した土地の名義変更手続きは法務局にて、相続登記を行います。
なお、相続した家に関しては解体が決定しているのであれば、相続登記をしなくても取り壊し後に建物滅失登記を行うだけで問題ありません。
相続した家を取り壊し、更地を活用もしくは処分する場合には相続登記が必要なので、早めに手続きをすませるのがおすすめです。
これまで相続登記は義務化されておらず、相続人の意思で行うものとされていました。
しかし、相続登記されず放置された土地が増え続けている問題への解決を目的とし、2024年4月から相続登記が義務化されます。
相続登記が義務化されると、相続発生から3年以内に相続登記をすませないと、10万円以下の過料が科される恐れがあるのでご注意ください。
相続登記の義務化は過去に発生した相続についても適用されるので、まだ相続登記がおすみでない土地をお持ちの人は早めに手続きをすませましょう。
相続登記は自分でも行えますが、司法書士であれば数万円程度で相続登記を代行できます。
4章 相続した家を壊した時の費用相場
相続した家を壊すときの費用相場は、建物の構造や大きさによって異なります。
建物の構造別の解体費用の坪単価相場は、下記の通りです。
建物の構造 | 1坪あたりの解体費用相場 |
木造住宅 | 3~5万円程度 |
鉄骨造住宅 | 4~6万円程度 |
RC造住宅 | 6~8万円程度 |
例えば、木造住宅で50坪の家を解体する場合には150~180万円程度かかります。
解体費用の相場は依頼する業者によっても変わってくるので、複数の業者で相見積もりを取得するのがおすすめです。
4-1 費用を負担するのは相続人
相続した家の解体費用を負担するのは、相続人です。
遺産分割協議で誰が家や土地を相続するか話し合うときに、解体費用を負担する人や割合も話し合っておきましょう。
遺産分割協議の結果、相続した家や土地を売却し代金を各相続人で分配する「換価分割」を行うと決まった場合には、解体費用を売却時の諸経費に含めて計算できます。
相続した家が大きく解体費用がかさむ場合や相続人の手持ちの現金が少ない場合など、解体費用の工面が難しいケースもあるでしょう。
相続した家の解体費用を払うのが難しい場合には、下記の利用や方法もご検討ください。
- 補助金の活用
- 空き家解体ローン
- 解体費込みで買主を探す
自治体によりますが、空き家問題を改善するために補助金を設けているところも多いです。
相続した家を解体すべきかどうかも含め、司法書士などの相続の専門家や不動産会社と相談しながら判断していくのが良いでしょう。
相続した家や土地の名義変更手続きも含め、グリーン司法書士法人へお気軽にご相談ください。
まとめ
相続した家が古く活用や売却が難しいときには、取り壊して更地の状態で活用や処分を考えても良いでしょう。
ただし、相続した家の解体に反対する相続人がいると、取り壊しができないもしくは後からトラブルに発展する恐れがあります。
相続した家を壊すときには、必ず相続人全員で家の取り壊しや解体費用を負担する人について話し合っておきましょう。
また、空き家を取り壊し更地を活用、売却しようと考えている場合には、活用や売却前に相続登記をしなければなりません。
相続した不動産の活用や処分に関しては、不動産や相続人の状況によってベストな選択肢が異なります。
活用方法に悩んだ際には、相続した不動産の活用、売却に詳しい不動産会社への相談がおすすめです。
グリーン司法書士法人では、相続登記に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料ですし、相続した不動産の活用、売却に強い不動産会社への紹介も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
相続した未登記の建物は解体できる?
相続した家に関しては解体が決定しているのであれば、相続登記をしなくても取り壊し後に建物滅失登記を行うだけで問題ありません。
▶相続した家の解体について詳しくはコチラ亡くなった人の家の名義変更はいつまで?
2024年からは相続登記が義務化され、相続から3年以内に相続登記をしないと10万円以下の過料が科される恐れがあります。
相続登記の義務化は過去に発生した相続についても適用されるので、早めに名義変更をすませておきましょう。
▶相続登記の義務化について詳しくはコチラ