遺留分を渡したくないと主張できる?生前にできる7つの遺留分対策

「遺言書通りに遺産をもらっただけなのに、相続人から遺留分を請求された」

このようなご相談をよくいただきます。

遺留分とは、相続人に認められている最低限の遺産取得分です。相続人が、遺言書などによって遺産が受けられない場合には、相続人が、遺産を受け取った人に対して遺留分を請求する権利があります。

請求される方にとっては、なるべく支払いたくないというのが正直なところでしょう。

しかし、遺留分は法律で認められた権利であり、基本的に拒否することはできません。

そのため、遺留分はしばしば相続トラブルの原因になります。

遺留分によるトラブルを回避するためには、生前にしっかり対策しておくことが大切です。

この記事では、

・遺留分の請求について
・遺留分によって生じるトラブル
・生前にできる遺留分対策
・遺留分を請求する権利が剥奪されるケース

などについて解説します。


1章 遺留分を渡したくないと請求を拒否することは難しい

冒頭でもお話したとおり、遺留分を渡したくないからと言って、請求を拒否することは難しいのが現実です。

まずは「遺留分請求を拒否」することはなぜ難しいのか、詳しく解説します。

1−1 遺留分の請求は法律で認められている権利

遺留分とは、法律上、相続人に認められている最低限の遺産取得分です。これを請求する権利を「遺留分侵害額請求権」と言います。

例えば、遺言書などで「長男に遺産をすべて譲る」と書かれていたとしても、他の相続人(たとえば次男)は長男に対して遺留分を請求することが可能です。

遺留分とは?遺留分を渡したくないと主張できる?生前にできる7つの遺留分対策

仮に、その遺言書に「遺留分は認めない」と書いてあったとしても、遺留分を請求する権利はあります。

つまり、遺留分請求を拒否する方法は、法律上一切ないということです。

1−2 話し合いをした上で請求を取り下げてもらうことは可能

前述したとおり、遺留分の請求を拒否することはできませんが、請求側との合意の上で遺留分請求を取り下げてもらうことは可能です。

そもそも、遺留分は遺留分侵害額請求権を持つ相続人が、請求をしなければ支払う義務はありません。

「支払いをしたくない」「払えない」という場合には、相手方と話し合った上で、請求を取り下げてもらうという手段もあります。

1−3 遺留分を請求できる人と請求できる割合

遺留分を請求する権利は、相続人であれば誰でも有しているわけではありません。

法律上、遺留分を請求する権利を有しているのは、以下の人と定められています。

  • ・配偶者
  • ・子供・代襲相続人
  • ・親や祖父母などの直系尊属

ご覧のとおり、兄弟姉妹や甥姪には遺留分が認められないというところがポイントです。

また、配偶者や子供などに認められる遺留分は、法律で定められた相続分(法定相続割合)の2分の1となります。

ですので、認められる遺留分は、相続人の立場によって異なります。具体的な割合は以下のとおりです。

法定相続人遺留分備考
配偶者のみ1/2
配偶者+子配偶者1/4子が複数人いる場合は均等に分配
1/4
配偶者+両親などの直系尊属配偶者2/6
  • ・親が複数人いる場合は均等に分配
  • ・被相続人に最も近い世代のみが相続人となる。親、祖父母ともに存命の場合でも、親のみが相続人となります。
両親などの直系尊属1/6
子のみ1/2
両親などの直系尊属のみ1/3親が複数人いる場合は均等に分配

遺留分についてより詳しく知りたい方はこちらを御覧ください。


2章 遺留分が原因でトラブルになるケース

遺留分は、相続においてトラブルの原因となることは少なくありません。

遺言書を作成する場合など、遺留分が関わるケースでは、どのようなトラブルが生じる可能性があるのか理解しておく必要があるでしょう。

具体的には、以下のようなトラブルが想定されます。

  • ・把握していない相続人が遺留分を請求してくる
  • ・家族間で納得した上での遺言書にも関わらず請求される
  • ・遺留分を支払う資金がない

それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。

2−1 把握していない相続人が遺留分を請求してくる

・疎遠な前妻との子
・認知していない愛人との子
・認知していない子ども(非嫡出子)

など、家族が把握していない相続人がいるケースは少なくありません。

上記のような子供も、法律上「子」として扱われるため、同等に相続権があります。

被相続人としては「一緒に暮らし、育てた子供たちだけに相続させたい」という思いから、遺言書を作成したかもしれません。

しかし、法律上相続権を持つ人であれば、遺留分を請求する権利があるため、いくら遺言書があっても遺留分を請求してくる可能性があります。

家族からすれば、見知らぬ人が「相続人だから」と突然遺留分を請求されたとなれば、戸惑うことになるでしょう。

このような事にならないよう、3章で紹介するような対策をしておく必要があります。

2−2 家族間で納得した内容の遺言書にも関わらず遺留分を請求される

生前に家族で遺産分割の内容について話し合い、全員が納得した内容で遺言書を作成している方もいらっしゃるでしょう。

例えば、以下のようにです。

・同居している長男が不動産をもらう
生前よく面倒を看ていた長女が遺産のほとんどをもらう
・お墓を継ぐ長男が、遺産のすべてをもらう

遺産分割は、家族が納得していれば、法律に従う必要はありません。

しかし、全員が納得している遺産分割内容にも関わらず、相続人の家族が口を出してきたり、前妻との子や愛人の子がいたりする場合、思わぬ形で遺留分を請求される可能性があります。

どれだけ家族が納得している内容だったとしても「これは家族で決めたことだから」と遺留分の請求を突っぱねることはできません。

また、遺言内容について家族(相続人)の同意を得ていないケース」では、揉める可能性が非常に高いと言えます。

2−3 遺留分を支払う資金がない

遺留分は、原則として現金で支払わなければいけません。

遺言書で受け取る遺産のほとんどが不動産で、そこに遺留分を請求された場合でも、どうにかして現金で支払わなければならないのです。

受け取った不動産を売却できれば、その売却益で支払うことは可能です。

しかし、同居している住宅を受け取ったようなケースでは、不動産を売却して資金を捻出することも難しいでしょう。

そのような場合には、自身の資産から捻出する必要があります。

遺留分を請求される可能性がある人には、現金を生前贈与したり、別途生命保険の受取人にしておくなど、対策をしていくことが大切です。


3章 生前にできる遺留分トラブルの対策7選

遺留分によるトラブルを回避するには、生前に対策しておくことが大切です。

生前にできる対策は主に以下の7つです。

  • ・遺言書の付言事項を活用する
  • ・生命保険などで遺留分の資金を遺しておく
  • ・財産を生前に整理する
  • ・生前贈与をする
  • ・養子縁組をする
  • ・遺留分を生前放棄してもらう
  • ・専門家を遺言執行者に選任する

これらの対策は選択的でなく、必要な範囲で複合的に行っておくことが大切です。

それでは詳しく見てきましょう。

3−1 遺言書の付言事項を活用する

遺言書には、「付言事項」といって、補足の内容を自由に記載することができます。

例えば、「家族で話し合って納得した内容だから、遺留分の請求は控えるように」「家族で揉めないよう、円満に解決するように」など、遺言を作成した人の「想い」について書くことができるのです。

付言事項を見て、相続人たちが不要なトラブルを起こさないよう、思いとどまってくれるかもしれません。

ただし、付言事項には法的効力はないため、相続人に必ず従わせることはできませんので、注意してください。

付言事項の記載例

「長男に不動産を残したのは、同居していた家に今後もそのまま住まわせてやりたいとの想いからです。
また、古い考えと言われるかも知れませんが、長男がお墓を継いでくれることも理由の一つです。

どうか私が亡くなった後に、遺産相続の件でトラブルなどを起こさないでください。あの世から見守り、家族みんなが仲良く過ごしてほしいと願っています。」

3−2 生命保険などで遺留分の資金を遺しておく

遺留分は現金で支払わなければいけません。そのため、遺言で受け取った財産のほどんどが不動産のような場合に、遺留分を請求されると、「支払うだけの資金がない」という状況に陥る可能性があります。

生命保険に加入し、遺留分を請求されそうな相続人を受取人としておけば、遺留分を生命保険金から捻出することができます。

生命保険は、死亡後に手続きをすれば、速やかに保険金が支給されます。そのため、遺留分を請求された場合に、迅速に支払うことができ、早期解決が望めます。

3−3 財産を生前に整理する

遺言書などで特定の人に偏って渡すのは、「不動産が1つしかない」というケースが多いと思います。

そのような事にならないよう、あらかじめ

  • 大きな土地を分筆する(複数に分ける)
  • 1棟のアパートを売却して、別途、複数のワンルームマンションを購入する

など、相続人に平等に渡せるよう、生前に整理しておくのが良いでしょう。

土地の分筆についてはこちらを御覧ください。

3−4 生前贈与をする

孫など、相続人以外の人に財産を渡したいのであれば、生前贈与をしておくのも良いでしょう。

ただし、相続開始前の一年間に行われた贈与については、遺留分の対象となるので注意が必要です。

一括で大金を生前を贈与してしまうと、高額な贈与税が課税されますので、非課税枠の110万円を数年かけて贈与することをおすすめします。

なにか事情があり、大金を贈与したいのであれば、相続時精算課税制度や、贈与における控除・特例を利用するようにしましょう。

なお、法律で決められた相続人(法定相続人)への生前贈与については、相続開始前の10年間に行われた贈与についても、遺留分の対象となるため、対策としてはおすすめできません。

生前贈与について詳しくは、こちらをご覧ください。

3−5 養子縁組をする

遺留分を請求できる割合は、遺産を取得できる割合に比例します。相続人の取得割合が少なければ、その分遺留分を減らすことが可能です。

養子縁組をして、相続人を増やせば、各相続人の相続分は減り、遺留分も減ることとなります。

ただし、親子関係を形成する意思が認められず、遺留分対策や相続税対策のための養子縁組と判断された場合、養子縁組が無効となる可能性も否めません。

3−6 遺留分を生前放棄してもらう

遺留分は、生前に放棄してもらうことも可能です。

遺留分を請求しそうな相続人がいる場合、生前に遺留分放棄をしてもらうのが良いでしょう。

ただし、遺留分を放棄してもらう場合には、遺留分を請求する権利を持つ人が、自ら家庭裁判所に遺留分放棄の許可を申し立てる必要があります。無理やり放棄させることはできません。

遺留分の生前放棄には要件がある

遺留分の生前放棄の申立が認められるためには、以下のような要件が必要です。

  • ・遺留分を放棄すべき合理的な理由がある
  • ・遺留分権利者に相当な対価が与えられている

上記の要件とは、わかりやすく言うと、

次男には生前に経済的な援助を行ったので、遺産は渡さないが、遺留分は放棄してほしい」

などの理由が必要ということです。

そのため、生前に遺留分の放棄をしてもらうのは、ハードルが高いと言えます。

遺留分の放棄について詳しくはこちらをご覧ください。

3−7 専門家を遺言執行者に選任する

遺言執行者とは、遺言の内容を実行する人です。

相続人たちが遺言執行者になり、遺言の内容を実行(相続手続き)することは可能ですが、下記のような理由から相続人間で揉めてしまう可能性もあります。

  • ・家族なので感情的になりやすい
  • ・遺言書を無理やり書かせたのではないかとの疑惑
  • ・法的な質問をされても正確な回答ができない

遺言執行者に司法書士や弁護士を選任すれば、相続人たちも冷静になり、不公平な内容の遺言であっても納得しやすいでしょう。

また、遺言書の偽造などの疑惑が浮上する可能性も抑えられます。


4章 遺留分を請求する権利が剥奪されるケース

遺留分を請求する権利は、相続人であれば有していますが、

  • 相続欠格
  • 相続人廃除

によって相続権を剥奪された場合には、遺留分を請求する権利も失います。

それぞれ、どのような場合に該当するのか、詳しく見ていきましょう。

4−1 相続欠格

相続欠格とは、相続に支障をきたす犯罪行為や不法行為した場合に、法律上、強制的に相続権を剥奪することを言います。相続欠格で相続権を失えば、遺留分を請求する権利も同時に失います。

相続欠格に該当するのは、以下のようなケースです。

  • ・被相続人や相続人を殺害した、もしくは殺害しようとした
  • ・被相続人が殺害されたことを知りながら告発・告訴をしなかった
  • ・被相続人に詐欺や脅迫を行い遺言の作成や変更、取消を妨害した
  • ・被相続人に詐欺や脅迫を行い遺言の作成や変更、取消をさせた
  • ・遺言書の偽装・変造・破棄・隠蔽した

相続欠格は、相続人や被相続人の意思によるものではなく、上記の行為をした場合には【強制的に】相続権を失いますので、どんな手段を用いても、相続権・遺留分請求権を復活させることは、一切不可能です。

相続欠格について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

4−2 相続人廃除

相続人廃除とは、被相続人に対して不利益になる行為や、著しく不快にさせる行為をした人の相続権を、被相続人の意思をもって剥奪する制度です。

相続欠格と同様、相続人廃除をされた相続人は相続権を失うと共に、遺留分を請求する権利も失います。

相続欠格と異なるのは、相続人廃除は「被相続人の意思で行うこと」「被相続人の意思で、撤回ができること」です。

例えば、以下の行為がある場合には、被相続人は、相続人廃除をすることが可能です。

  • ・被相続人を虐待した
  • ・被相続人に対して重大な屈辱を与えた
  • ・被相続人の財産を不当に処分した
  • ・ギャンブルなどの浪費による多額借金を被相続人に返済をさせた
  • ・度重なる非行や反社会勢力へ加入
  • ・犯罪行為を行い有罪判決を受けている
  • ・愛人と同棲するなど不貞行為を働く配偶者
  • ・財産を目的とした婚姻
  • ・財産目当ての養子縁組

相続人廃除は、生前に裁判所に申し立てる方法と、遺言書に相続人廃除をする旨を記載する方法があります。

相続人廃除について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。


5章 まとめ

遺留分を請求する権利を有している人に、遺留分を請求された場合、それを拒否することは原則として不可能です。

それに加え、遺留分は現金で支払う必要があるため、相続においてトラブルの原因となることは少なくありません。

遺言書を作成する際には、遺留分にも配慮するようにしましょう。

また、遺留分をめぐるトラブルを回避するためには、生前にしっかりと対策しておく必要があります。

遺言書の作成や、生前対策については、自身の判断で行うのではなく、司法書士などの専門家にアドバイスを乞うようにしましょう。

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