亡くなった両親と同居していなかった。自分は小規模宅地等の特例(家なき子の特例)を使えるのだろうか…?
結論からお伝えすると、亡くなった人と同居していなくても、小規模宅地等の特例は使えます。
具体的には、小規模宅地等の特例のひとつである「家なき子の特例」の適用条件を満たせば可能です。
参考:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
※厳密には、「(1) 居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者(注4)のうち日本国籍を有しない者ではないこと」も満たしている必要があります。
ただし、家なき子の特例の要件は複雑で「誰が相続するのか」「どのタイミングで不動産を手放すのか」によって、適用できるかどうかが変わります。
実際に家なき子の特例を上手に活用できず、税負担が重くのしかかってしまった事例もあります。
【家なき子の特例が適用できなかったケース】
|
「早く売却して現金を分けよう」と急いで進めた結果、本来なら適用できた家なき子の特例が適用できず、数百万円から数千万円の無駄な税金を支払うことは避けたいでしょう。
そこで本記事では、家なき子の特例の要件や基礎知識、活用時の注意点をまとめて解説します。
家なき子の特例の適用対象者だったときに有効活用していくためにも、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1章 同居していない人も小規模宅地等の特例を適用できる(家なき子の特例)
冒頭でもお伝えしたとおり、亡くなった人と同居していなくても、小規模宅地等の特例は使えます。(家なき子の特例の要件を満たしている場合)
家なき子の特例とは、亡くなった人と同居していなかった親族が一定の要件を満たす場合に、取得した自宅の宅地に対して小規模宅地等の特例を適用できる制度です。
以下は、家なき子の特例の立ち位置を表すイメージ図です。
| 家なき子の特例の補足 |
「家なき子の特例」は士業の間などで使われている通称で、法律上の正式名称ではありません。小規模宅地等の特例は本来「同居していた親族」が対象です。 ところが、「特定居住用宅地等」の要件のなかに例外規定があり、この部分だけを切り取って業界内で「家なき子の特例」と呼んでいます。 |
例えば、実家を離れて賃貸アパートで暮らしていた子が実家の宅地を相続した場合でも、家なき子の特例の要件を全て満たせば、宅地の相続税評価額が減額され、相続税を抑えられる可能性があります。
しかし、家なき子の特例は、持ち家を親族などに売却して形式上の要件を満たすなど、制度の趣旨に沿わない利用を防ぐため、2018年度の税制改正で厳格化されました。
そのため、家なき子の特例に該当するケースは、現在はかなり限定的となっています。
参考:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
参考:財務省「所得税法等の一部を改正する法律案要綱」
▼小規模宅地等の特例の概要は、下記の記事で詳しく解説しています
2章 同居していない人が小規模宅地等の特例(家なき子の特例)を使える要件
家なき子の特例では、次の(1)から(6)の要件をすべて満たす必要があります。
| 家なき子の特例が適用される要件 |
(1) 居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者(注4)のうち日本国籍を有しない者ではないこと。 (2) 被相続人に配偶者がいないこと。 (3) 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)がいないこと。 (4) 相続開始前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族または取得者と特別の関係がある一定の法人(注5)が所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。)に居住したことがないこと。 (5) 相続開始時に、取得者が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと。 (6) その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること。 |
引用:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
例えば、賃貸マンションで暮らしている別居の子供がいる場合に
- 親に配偶者や同居親族がいない
- 自分や配偶者などが所有する家には住んでいない
- 現在の賃貸マンションを所有したことがない
- 相続した親の自宅の土地を申告期限まで所有する
という要件を満たしたケースは、家なき子の特例の対象になります。
また、社宅や会社の寮で暮らしている別居の子供がいて
- 親が一人暮らしをしていた
- 相続開始前3年以内に持ち家に住んでいない
- 相続した親の自宅の土地を申告期限まで所有する
という要件を満たしたケースも、家なき子の特例の対象になります。
今回は、「(1)「居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者(注4)のうち日本国籍を有しない者ではないこと。」を除いた、主な5つの要件を噛み砕いて説明します。
- 被相続人に配偶者がいないこと
- 相続開始の直前に亡くなった人の自宅に同居していた相続人がいないこと
- 相続開始前3年以内に一定の者が所有する家屋に住んでいないこと
- 相続開始時に居住している家屋を過去一度も所有したことがないこと
- 相続した宅地を相続税の申告期限まで所有していること
2-1 被相続人に配偶者がいないこと
1つ目は、亡くなった人に配偶者がいないことです。下記のようなケースが該当します。
【亡くなった人に配偶者がいないケースの例】
|
例えば、父・母・子供の3人家族で既に父が他界し子供は独立、一人で母が家に住んでいた場合、母が亡くなるとこの要件に該当します。
一方で、父・母・子供の3人家族で、父と母が一緒に実家に住んでいる場合は、この要件に該当しません。
2-2 相続開始の直前に亡くなった人の自宅に同居していた相続人がいないこと
2つ目は、相続開始の直前に亡くなった人の自宅に同居していた相続人がいないことです。下記のようなケースが該当します。
【相続開始の直前に亡くなった人の自宅に同居していた相続人がいないケースの例】
|
例えば、亡くなった人が実家で一人暮らししており、子供と別居していた場合は要件に該当します。
一方で、亡くなった父と相続人である子供、孫が実家で同居していた、亡くなった父と相続放棄した長男がマンションで同居していた(相続放棄の有無ではなく、本来相続人かどうかで判断されます)などの場合は要件から外れてしまいます。
2-3 相続開始前3年以内に一定の者が所有する家屋に住んでいないこと
3つ目は被相続人が亡くなった日(=相続開始日)から遡って3年以内に宅地を相続する本人が、自分・配偶者・3親等内の親族などの所有する家に住んでいないことです。
一定の者が所有する家屋は自分や配偶者が所有している住宅だけでなく、以下のような住宅も含まれます。
【一定の者が所有する家屋の基準】
|
例えば、被相続人と同居していない子供が、第三者の所有する賃貸住宅に住んでいる場合は、一定の者が所有する家屋に該当しないので家なき子の特例が使える可能性があります。
一方、宅地を取得する本人が、自分で購入したマンションや戸建て住宅に住んでいる場合や、親が所有する住宅に住んでいる場合は、この要件を満たさず、原則として家なき子の特例を利用できません。
2-4 相続開始時に居住している家屋を過去一度も所有したことがないこと
4つ目は、相続人が相続開始時に住んでいる家屋を、過去に一度も所有したことがないことです。
これは、自宅を形式的に手放して持ち家がない状態にして、家なき子の特例を利用する行為を防ぐために、2018年の税制改正で追加されました。例えば、下記のようなケースを見てみましょう。
【過去に家を所有している例】 15年前:相続人がマンションを購入して住む |
この場合「2-3 相続開始前3年以内に一定の者が所有する家屋に住んでいないこと」という要件だけでは、10年前にマンションを売却しているので家なき子の特例の対象になっていました。
しかし、改正後は「一度マンションを売却して相続税対策をする」ことができなくなったので、3年以上前に売却していても、過去に所有していた同じ家に住み続けている場合は、家なき子の特例が適用されません。
2-5 相続した宅地を相続税の申告期限まで所有していること
5つ目は、相続した宅地を相続税の申告期限まで所有していることです。
相続によって宅地を取得した人は、相続開始から10ヶ月以内に納付する相続税の申告期限まで、その宅地を所有していなければなりません。
例えば、父が亡くなり、長男が父から自宅の土地を相続したとしましょう。
このとき、「相続税の納税資金が足りないから」「誰も住まない実家を早く手放して兄弟で現金を分けたいから」と焦ってしまい、申告期限が来る前に売却(引き渡し)を完了させてしまうケースは非常に危険です。
特例が否認され、数百万円単位の払わなくてもよかった相続税が課されてしまいます。
一方で、父から相続した土地を売却したいと考えていても、相続税の申告期限まで所有していれば家なき子の特例を利用できる可能性があります。
このように、家なき子の特例は要件が複雑で「自分は適用されるのか」判断することが難しいケースが多いです。
そうなる前に、グリーングループと一緒に「家なき子の特例の適用対象かどうか」を確認してみませんか?
家なき子の特例の対象なのか、他の特例、控除が使えそうかなど、手元に残る資金を最大化するご提案ができます。まずはお気軽に、ご家族の状況やお悩みをお話ください。
電話で気軽に聞きたい方はこちらをクリック
メールでじっくり聞きたい方はこちらをクリック
LINEで聞きたい方はこちらをクリック
※平日9時〜20時 / 土日祝9時〜18時まで営業。年末年始以外は営業しております。
3章 小規模宅地等の特例(家なき子の特例)には適用できる限度面積がある
ここまで家なき子の特例が適用できる要件を解説してきましたが、この要件に該当していればどの土地でも減額の対象となるとは限りません。
下記のように、限度面積は330平方メートルまでと定められています。
【被相続人等の居住の用に供されていた宅地等】
|
参考:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
例えば、相続した宅地の面積が400平方メートルだった場合は、330平方メートルは特例の対象ですが、残りの70平方メートルは特例の対象外です。
家なき子の特例を利用すると、どの程度減税できるのか、簡単にシミュレーションをしてみました。
【シミュレーションの要件】
|
家なき子の特例が適用されると、相続税は0円です。適用されないと310万円もかかってしまいます。
| 計算例 | |
| 家なき子の特例を 適用した場合 |
→相続税は0円 |
| 家なき子の特例を 適用しない場合 |
→相続税は310万円 |
もちろん、他の相続財産や債務の金額、法定相続人の人数などによって、基礎控除額や実際の相続税額は異なりますが、家なき子の特例を適用できれば税負担を軽減できる可能性があるでしょう。
4章 同居していない人が小規模宅地等の特例(家なき子の特例)を活用するときの注意点
家なき子の特例の概要が分かったところで、活用していくときの注意点をご紹介します。
注意点を知らないまま進めると「誰に相続するのか」「宅地をいつ手放すのか」で失敗するリスクがあります。家なき子の特例を確実に使っていくためにも、参考にしてみてください。
| 家なき子の特例活用時の注意点 |
|
4-1 共有名義にする場合は特例の要件を満たす持分だけが対象になる
相続する宅地を共有名義にする場合は、家なき子の特例の要件を満たす持分のみが減額の対象になります。
例えば、父が亡くなり、9,000万円の宅地を兄弟で2分の1ずつ取得したとしましょう。
このとき、兄弟の両方が家なき子の特例の要件をすべて満たすのはハードルが高いです。長男は適用の要件を満たしていても、次男が自身の持ち家に住んでいる場合は要件から外れてしまいます。
例えばこの状態で、家なき子の特例を使うと、下記のように長男の持分しか減額できません。
| 家なき子の特例の有無 | 概要 |
| 長男 家なき子の特例を適用 |
|
| 次男 持ち家があり家なき子の特例を使えない |
|
長男が単独で相続する場合と共有名義にする場合の、家なき子特例適用後の相続税を比較してみましょう。
| 相続のパターン | 計算例 |
| 長男が単独で相続する場合 |
→相続税は0円 |
| 長男と次男で共有名義にする場合 |
→相続税は120万円 |
※上記は「兄弟どちらも親と同居していなかった場合」の計算です。もし次男が親と同居していた場合は、次男の持分には「同居親族の特例」が適用されますが、長男の持分には「家なき子の特例」は適用できなくなります。(家なき子の特例は、同居している相続人が一人でもいると使えないためです)
安易に共有名義にしてしまうと、税負担が大きくなる可能性があります。
誰がどのように宅地を相続するべきか、しっかりと検討してご家族にとって最適な経路を見つける必要性があるでしょう。
4-2 宅地の売却タイミングを考える必要がある
「2-5 相続した宅地を相続税の申告期限まで所有していること」でも触れたように、家なき子の特例を適用するには宅地の売却タイミングを考える必要があります。
家なき子の特例を適用するための絶対条件として、「相続税の申告期限(亡くなった日から10ヶ月)までは、その土地を持ち続けること」というルールがあります。
そのため、「誰も住まない実家だから早く手放したい」と焦ってしまい、申告期限が来る前に売却(引き渡し等の所有権移転)を済ませてしまうと、要件から外れて特例が使えなくなってしまいます。
なお、同居していた親族向けの特例とは異なり、家なき子の特例には「実家に居住しなければならない」という要件はありません。そのため、相続後にご自身が実家に引っ越す必要はなく、申告期限までしっかりと保有した「後」であれば、売却しても原則として特例はそのまま適用されます。
もし実家の売却を予定している場合は、特例を確実に活用して税負担を抑えるためにも、不動産を手放すスケジュール(引き渡しのタイミング)には十分注意しましょう。
5章 同居していない人が小規模宅地等の特例(家なき子の特例)を使える要件は複雑!自己判断が後悔につながる
ここまで解説してきたように、家なき子の特例が適用されると、相続税が数十万~数百万円単位で抑えられる可能性があります。
しかし、要件が非常に複雑なので、安易な判断で進めてしまうと本来使えたはずの特例が使えなくなるリスクがあります。
例えば「誰に相続すれば家なき子の特例が使えるのか」「どのタイミングで宅地の売却を検討すればいいのか」などを見誤ると、適用できずに重い税負担がのしかかります。
実際に、何となく相続登記を進めてしまい家なき子の特例が適用されず、相続税負担が大きく膨らんだ例もあります。
【適用されるはずの家なき子の特例が使えなかった例】 相続人の中に、自分名義の家を持たず賃貸に住み家なき子の特例の要件を満たすAさんがいました。本来であれば、Aさんが実家を100%単独で相続すれば家なき子の特例が適用され、相続税を大きく減らせます。 しかし、ご家族は「実家には誰も住まないから早く売って現金で分けよう」と考え、不動産会社に売却の相談に行きました。 不動産会社から「売却をスムーズに進めるために、とりあえず代表者の名義で相続登記を済ませましょう」と提案され、不動産会社から紹介された司法書士によって登記が進みました。 その結果、家なき子の特例は一切使えなくなってしまいました。本来なら払わずに済んだはずの多額の税金を課されることになり、家族全体の手元に残る現金が大幅に減ってしまいました。 |
また、ご家族の状況によっては家なき子の特例だけでなく、他の控除や特例も活用できる可能性があります。
このようなバランスを見ながら、どのように手元に残る資金を最大化していくか、戦略を練って進めないと「こんなはずではなかった」と後悔することになります。
6章 同居していない人が小規模宅地等の特例(家なき子の特例)を使うなら専門家に聞いてみよう
家なき子の特例を確実に使い、手元に残る現金を最大化するには、相続手続きの段階から「将来宅地をどうしたいのか」などを考え進める必要があります。
しかし、この判断は非常に難しく、一つでも間違えると家なき子の特例が適用されず、多額の相続税に苦しむことになります。
そうならないためにも、相続登記を進める段階で相続に関する相談件数が累計55,193件(2025年10月末現在)と実績が豊富なグリーングループと一度お話してみませんか?
グリーングループは相続手続きと税務、不動産が連携してワンストップでサポートできる体制が整っています。
家なき子の特例が適用されるのかの判断はもちろんのこと、不動産の出口戦略や将来のトラブル回避まで念頭に置いた提案ができます。
また、相続登記は「誰もが同じ方法で進める」ものではなく、ご家族の資産や状況、思いを踏まえて最適な経路を見つけることが非常に重要です。
グリーングループは今までのノウハウを駆使しながら、家なき子の特例に限定せずにさまざまな可能性を模索して提案することも可能です。
実際にグリーングループにご相談いただいたご依頼主様からは「安心できた」などの声をいただいています。
特に、相続税が結局いくらになるのか正確な金額を知りたい方ほど、Webで調べるよりも専門家に直接聞いたほうが早く答えにたどり着けます。
まずは一度、専門家に聞いてみませんか?
まとめ
本記事では、被相続人と同居していなくても小規模宅地等の特例が使える可能性がある「家なき子の特例」について詳しく解説しました。最後に、この記事の内容を簡単に振り返ってみましょう。
〇家なき子の特例とは、亡くなった人と同居していなかった親族が一定の要件を満たす場合に、取得した自宅の宅地に対して小規模宅地等の特例を適用できる制度
〇家なき子の特例が適用される要件は下記のとおり
- 被相続人に配偶者がいないこと
- 相続開始の直前に亡くなった人の自宅に同居していた相続人がいないこと
- 相続開始前3年以内に一定の者が所有する家屋に住んでいないこと
- 相続開始時に居住している家屋を過去一度も所有したことがないこと
- 相続した宅地を相続税の申告期限まで所有していること
〇家なき子の特例を活用するときの注意点は下記のとおり
- 共有名義にする場合は特例の要件を満たす持分だけが対象になる
- 宅地の売却タイミングを考える必要がある
〇家なき子の特例は複雑だからこそ自己判断で進めると後悔する可能性がある
家なき子の特例は適用されると相続税の減税効果が見込めますが「適用されるか見極めること」や「不動産の出口戦略を見据えて進める」ことが難しいケースがあります。
だからこそ無理に自己判断で進めようとしないで、知見のある専門家と一緒に進めるようにしましょう。

















