地積規模の大きな宅地とは?評価単位や条件・相続時の注意点について

地積規模の大きな宅地とは?評価単位や条件・相続時の注意点について
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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 4

面積が広い土地を相続した場合、地積規模の大きな宅地が適用され、土地の相続税評価額が軽減される場合があります。
面積が広大な土地は道路を建築しないと住宅を建てられないなどの事情があり、評価額よりも使用価値が下がり扱いにくい特徴があるからです。

地積規模の大きな宅地の適用要件および評価方法は複雑なので、故人が広大な土地を所有していた場合は相続に詳しい専門家に相談するのが良いでしょう。
また、地積規模の大きな宅地の評価単位は1筆単位ではなく画地単位であり、遺産分割方法によっては要件を満たせなくなる恐れがあるので注意しなければなりません。

本記事では、地積規模の大きな宅地とは何か、評価単位や要件、注意点を解説します。


1章 地積規模の大きな宅地とは

地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の地積の宅地です。
地積とは、登記簿などに記載されている土地の面積です。

地積規模の大きな宅地の中には、土地の使い勝手が悪く評価額と本来の価値がそぐわないものがあります。
例えば、土地の中に道路を通さないと住宅が建てられない、かといって大規模マンションやアパートを建築するのも難しい土地は使い勝手が悪く扱いに困ってしまう場合もあるでしょう。

このような土地を相続した際の税負担を軽減するために、地積規模の大きな宅地に該当した土地は相続税評価額を軽減できる制度が用意されています。
なお、地積規模の大きな宅地は平成30年に新設された制度であり、それまでは面積が大きい土地の相続に関しては「広大地」という制度が用意されていました。

広大地と地積規模の大きな宅地の違いについて、詳しく見ていきましょう。

1-1 広大地との違い

地積規模の大きな宅地は平成30年に新設された制度であり、それまでは広大地という制度が活用されていました。
広大地は、適用要件が判定があいまいな部分があり、土地を受け継いだ人と税務署の間で適用可否について争うことも少なくありませんでした。

このような問題を受け、誰でも適用可否の判断を正しく行えるように新設されたのが地積規模の大きな宅地です。
地積規模の大きな宅地は、4つの要件が定められており、それぞれを確認していけば適用可否を判断可能です。

次の章では、地積規模の大きな宅地の適用要件を詳しく解説していきます。

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2章 地積規模の大きな宅地として認められる土地

地積規模の大きな宅地として認められるのは、下記の面積を上回る土地です。

三大都市圏500㎡以上の宅地
三大都市圏以外1,000㎡以上の宅地

三大都市圏に該当するのは、下記の地域です。

  • 首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地又は同条第4項に規定する近郊整備地帯
  • 近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域又は同条第4項に規定する近郊整備区域
  • 中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域

加えて、面積に関する要件を満たしても下記に該当する宅地は地積規模の大きな宅地から除外されてしまいます。

  • 市街化調整区域に所在する宅地(開発行為を行うことができる区域を除く)
  • 都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地
  • 指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地
  • 財産評価基本通達22-2に定める大規模工場用地

3章 地積規模の大きな宅地の評価方法

地積規模の大きな宅地の要件を満たす場合、土地の相続税評価額を軽減可能です。
評価方法は相続した土地が路線価地域に所在するか倍率地域に所在するかで下記のように変わります。

【路線価地域の場合】

評価額=正面路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率等×規模格差補正率×地積(㎡)

【倍率地域の場合】

下記のうち、いずれか低い金額

  • 宅地の基準年度の固定資産税評価額×評価倍率
  • 宅地の標準的な間口・奥行を有する宅地であるとした場合の1㎡あたりの価額×普通住宅地区の奥行価格補正率×不整形地補正率等×規模格差補正率×地積(㎡)

規模格差補正率とは、地積規模の大きな宅地の評価額計算時に用いる補正率であり土地の所在地および地積によって決まります。
規模格差補正率の計算や地積規模の大きな宅地に該当する場合の評価額は非常に複雑なので、面積が大きい土地を相続した場合は相続に詳しい税理士に相続税申告を依頼するのが良いでしょう。


4章 地積規模の大きな宅地を相続したときの注意点

地積規模の大きな宅地の評価単位は1筆単位ではなく画地単位で行われます。
土地を遺産分割すると画地が分割され、地積規模の大きな宅地を適用できなくなる恐れがあるのでご注意ください。

また、地積規模の大きな宅地に限らず、亡くなった人の土地を受け継いだ際には名義変更手続きが必要です。
面積が大きな土地を相続したときには、下記の点に注意しましょう。

  1. 面積の判定は筆単位ではなく画地単位で行われる
  2. 土地を遺産分割すると画地も分割される場合がある
  3. 共有分割はリスクがあるのでおすすめできない
  4. 不動産を相続すると名義変更手続きが必要になる

それぞれ詳しく解説していきます。

4-1 面積の判定は筆単位ではなく画地単位で行われる

地積規模の大きな宅地を適用する際の面積は、1筆単位ではなく1画地単位で判定します。
「筆」とは登記簿に登録されている土地の単位であり、「画地」は土地の評価上の単位です。

原則として1筆が1画地として扱われますが、2筆の土地に1つの建物がまたがって建築されている場合は2筆を1画地として扱います。
したがって、複数の筆からなる土地でも一体的に利用されている場合は、1画地として地積規模の大きな宅地に該当する可能性があります。

4-2 土地を遺産分割すると画地も分割される場合がある

遺産分割によって、相続人が土地を分割して受け継ぐ場合は分割後の土地を1画地として評価します。
そのため、故人が広大な土地を所有していても分割方法によっては、地籍規模の大きな宅地を適用できない可能性があるのでご注意ください。

具体例とともに見ていきましょう。

  • 故人は三大都市圏にある土地600㎡を所有していた
  • 相続人は配偶者および長女であり、それぞれ土地を2分の1ずつに分割して相続した

上記のケースでは、相続人はそれぞれ300㎡ずつの土地を受け継いでおり、三大都市圏の面積要件を満たしていません。
したがって、地積規模の大きな宅地に該当せず、相続税評価額を軽減することはできません。

地積規模の大きな宅地を適用したい場合は、土地を分割せずに共有分割や相続人の1人が単独で受け継ぐ必要があります。
例えば、先ほどのケースであれば配偶者と長女が土地を共有分割すれば評価単位は600㎡となり、三大都市圏の面積要件を満たします。

4-3 共有分割はリスクがあるのでおすすめできない

土地を分割せずに共有分割であれば、相続人ごとに画地が分割されずに地積規模の大きな宅地を適用しやすくなります。
しかし、共有分割にはリスクがあるので、そもそもあまりおすすめできません。

共有分割のリスクは、主に下記の通りです。

  1. 将来所有者がどんどん増えていってしまう
  2. 共有持分のみを買い取ってもらえるケースは少ない
  3. 土地のすべてを売却するには所有者全員の同意が必要
  4. 土地を自由に活用しにくい

上記のように、共有分割は受け継いだ土地の売却や活用が難しく、将来的に権利関係が複雑になる恐れがあります。
そのため、地積規模の大きな宅地を適用したいがために共有分割を選択するのは避けた方が良いでしょう。

加えて、地積規模の大きな宅地を適用するためだけに共有分割を選択しており、実態は土地を分割しているケースでは税務署に地積規模の大きな宅地の適用を否認される可能性があります。

土地の共有持分はトラブルのもと!共有持分でできることと処分方法

4-4 不動産を相続すると名義変更手続きが必要になる

地積規模の大きな宅地にかかわらず、土地や建物を相続すると、亡くなった人から相続人へ名義変更手続きが必要です。
不動産の名義変更手続きは、法務局にて相続登記を行います。

相続登記をする際には登記申請書の作成や必要書類の収集が必要であり、相続人が平日日中に仕事をしているケースや故人が複数の不動産を所有していたケースでは申請の準備をするだけでも大変です。
そのようなケースでは、相続登記を自分で行うのではなく、司法書士に依頼することもご検討ください。

2024年から相続登記が義務化されます

これまで相続登記は義務化されておらず、相続人の意思によって行うとされていました。
しかし、2024年4月からは相続登記が義務化され、相続発生から3年以内に相続登記をしない場合には10万円以下の過料が科される恐れがあります。
なお、相続登記の義務化は過去に発生した相続においても適用されます。
そのため、まだ相続登記がおすみでない土地をお持ちの人は早めに手続きをすませましょう。
相続登記は自分でも行えますが、司法書士に依頼すれば数万円程度で代行可能です。
グリーン司法書士法人でも相続登記に関する相談をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。

相続登記の義務化は2024年4月!法改正で変更される4つのポイント

まとめ

故人が遺した土地の面積によっては、地積規模の大きな宅地を適用でき、土地の相続税評価額を軽減できる可能性があります。
地籍規模の大きな宅地は面積などの要件が設定されているため、故人が遺した土地の面積が広い場合は適用可否を確認してみるのが良いでしょう。

また、故人が遺した土地の面積が地籍規模の大きな宅地の要件を満たす場合でも、遺産分割方法によっては要件を満たさなくなってしまう恐れがありますのでご注意ください。
土地にかかる相続税の負担を軽減したいのであれば、遺産分割の段階から相続に詳しい税理士に相談するのが良いでしょう。

加えて、亡くなった人の不動産を受け継いだ場合は相続登記が必要です。
相続登記は自分で行うこともできますが、司法書士に数万円程度で依頼も可能です。

グリーン司法書士法人では、相続登記に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料であり、信頼できる税理士の紹介も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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よくあるご質問

地積規模の大きな宅地とは?

地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の地積の宅地です。

地積規模の大きな宅地の評価はどのように行う?

地積規模の大きな宅地の要件を満たす場合、下記の方法で土地の評価額を計算します。

評価額=正面路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率等×規模格差補正率×地積(㎡)

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