未登記建物は相続登記義務化の対象外!それでも放置してはダメな理由

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司法書士山中泉

 監修者:山中泉

この記事を読む およそ時間: 5
 この記事を読んでわかること

  • 未登記建物は相続登記の義務化の対象なのか
  • 未登記建物を放置するリスク・デメリット
  • 未登記建物を登記申請する方法

2024年4月から相続登記が義務化され、相続から3年以内に登記申請をすませないと3万円以下の過料が発生する恐れがあります。
亡くなった人が所有していた土地や建物の相続登記をしようとしたとき、建物が登記されていない「未登記建物」と気付く場合もあるでしょう。

未登記建物とは、名前の通り、不動産の「登記」をしておらず、登記記録上の所有者や所在が不明な状態である建物です。

結論から言うと、未登記建物は相続登記の義務化の対象から外れますが、表題登記の申請義務に違反する恐れがあるので、速やかに登記申請をすませましょう。
本記事では、未登記建物とは何か、相続登記義務化の対象なのかを解説します。


1章 未登記建物とは

未登記建物とは

未登記建物とは、不動産の「登記」をしておらず、登記記録上の所有者や所在が不明な状態である建物です。
未登記建物は登記されないまま放置されてしまうことが多く、所有者が亡くなり相続人が相続手続きを進めていて未登記建物の存在に気付くことも多いです。

未登記建物かどうかを確認するには、役所から毎年届く固定資産税納税通知書を確認するのが最も手軽です。
固定資産税納税通知書の家屋番号が空欄もしくは未登記と記載されている場合は、未登記建物の可能性があります。

未登記建物とは?放置するリスク・デメリットや登記方法を簡単解説

2章 未登記建物は相続登記の義務化の対象外である

本記事の冒頭でも解説しましたが、未登記建物は相続登記の義務化の対象外となります。
相続登記の義務化とは、2024年4月から始まった制度で、相続から3年位内に登記申請をすませないと、10万円以下の過料が発生する恐れがあります。

相続登記の義務化の対象は、下記のように記載されているからです。

(相続等による所有権の移転の登記の申請)

第76条の2

1 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

「所有権の登記名義人」とは、登記の権利部に記載されている権利者を示します。
未登記建物は権利部が設定されていない不動産のため、登記名義人は存在しません。
そのため、未登記建物は相続登記義務化の対象外であるといえます。

しかし、相続登記義務化の対象外だからといって、未登記建物は表題登記の申請義務に該当する恐れがありますし、放置すると様々なリスクやデメリットがあります。
未登記建物の表題登記申告義務違反について詳しく見ていきましょう。

相続登記の義務化は2024年4月!法改正で変更される4つのポイント

2-1 未登記建物は表題登記の申請義務違反に該当する恐れがある

未登記建物は相続登記の義務化の対象にはなりまさんが、表題登記の申請義務違反に該当する恐れがあります。
建物を新築した所有者は、不動産を取得した日から1ヶ月以内に表題登記の申請をしなければいけないと法律で決められており、違反すると10万円以下の過料が課される恐れがあるからです。

しかし、私は司法書士歴15年ですが、実際に未登記で過料を支払ったケースを耳にしたことはありません。
そのため、実務上では未登記建物についてそこまで厳しくチェックされていないのかもしれません。

ただし、相続登記が義務化されることもありますし、今後は国や自治体が所有者不明・状態がわからない不動産を減らしたいと考え、未登記建物の過料についても厳しくする可能性はゼロではありません。

また、未登記建物を放置すると、活用や売却が難しいなどのデメリットがあります。
次の章では、未登記建物を放置するリスクやデメリットを解説していきます。


3章 未登記建物を放置するリスク・デメリット

未登記建物をそのままにすると、表題登記の申請義務に該当するだけでなく、下記のリスクやデメリットがあります。

  1. 固定資産税が高くなる
  2. 住宅ローンが組めない
  3. 活用・売却が難しい
  4. 底地所有者へ対抗できない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

3-1 固定資産税が高くなる

建築されている建物が未登記建物の場合、土地にかかる固定資産税の軽減措置が適用されず、固定資産税が最大6倍になる恐れがあります。
土地に住宅が建っていると、住宅用地の特例が適用され、土地の固定資産税が最大で6分の1、都市計画税が3分の1まで減額されます。

一方で、建築されている建物が未登記建物の場合、住宅が建っていると自治体が把握していない可能性もあり、土地の固定資産税計算時に住宅用地の特例が適用されない恐れがあるので注意が必要です。
自治体が定期的に行う定期確認で建物の建設状況を把握してもらうまでは、軽減措置が適用されず固定資産税が高くなる恐れがあります。

3-2 住宅ローンが組めない

未登記建物は抵当権が設定できないため、建物を担保にできず住宅ローンを組むことができません。

逆に言えば、過去に住宅ローンを組んで住宅を建設した場合、建物を担保にするために登記申請をしているため未登記建物である可能性は低いともいえるでしょう。

3-3 活用・売却が難しい

未登記建物のままでは、活用や売却も難しくなってしまいます。
未登記建物の状態では、先ほど解説したように土地に固定資産税の軽減措置が適用されない、住宅ローンを組めないなどの恐れがあるからです。

したがって、未登記建物を売却は禁止されていないものの、現実的には買手が見つからず売却できない可能性が高いです。

3-4 底地所有者へ対抗できない

未登記建物は、建物の所有権を第三者へ主張できません。
第三者が所有する土地の上に建物が建っている場合、建物そのものの所有権だけでなく、土地の貸借権についても底地所有者に権利を主張できなくなってしまうのでご注意ください

  • 相続によって建物や土地の所有者が変わった
  • ちょっとしたトラブルなどで底地所有者の気が変わった

上記の事態が発生し、建物ごと立ち退きを命じられた場合は、建物を取り壊すしか選択肢がなくなってしまいます。


4章 相続した未登記建物を登記申請する方法

相続した建物が未登記建物だった場合は、表題部および権利部の登記申請が必要です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

4-1 表題部を登記する

「表題部」の登記とは、「建物の情報」を登録するもので主に下記の情報を登録します。

  • 建物がどこにあるか
  • どのような構造か
  • 大きさはどの程度か
  • いつ建築されたか

表題部の登記には専門的な間取り図面の作成なども必要になるので、自分で行うのは現実的ではありません。
表題部の登記は、土地家屋調査士に依頼すれば代行してもらえます。

登記申請の方法および必要書類は、下図の通りです。

申請できる人
  • 建物所有者
  • 土地家屋調査士
申請先建物の住所地を管轄している法務局
費用
  • 登録免許税:かからない
  • 土地家屋調査士への報酬:8~12万円程度
必要書類
  • 登記申請書
  • 印鑑証明書
  • 申請人の住民票
  • 固定資産税の納付証明書
  • 建物図面、各階平面図
  • 建築確認書及び検査済証
  • 建築代金の領収書
  • 施工業者からの引き渡し証明書
    など

必要書類のうち、下記については建物を新築した際に手渡しされるため、未登記建物の登記申請時には紛失している可能性もあるでしょう。

  • 建物図面、各階平面図
  • 建築確認書及び検査済証
  • 建築代金の領収書
  • 施工業者からの引き渡し証明書

書類が手元にない場合は土地家屋調査士に相談し、改めて作成してもらうか代わりになる書類を教えてもらいましょう。
また、土地家屋調査士に依頼すれば上記書類の作成だけでなく、登記申請書の作成も行ってもらえます。

4-2 権利部を登記する

「権利部」の登記とは、「建物の所有者」に関する情報を登録するものです。
権利部の登記も表題部の登記と同様に、必要書類をすべて揃え建物の所在地を管轄する法務局へ提出すれば完了します。

権利部の放棄方法および必要書類は、下記の通りです。

申請できる人
  • 建物所有者
  • 司法書士
申請先建物の住所地を管轄している法務局
費用
  • 登録免許税:不動産評価額×0.4%
  • 司法書士への報酬:2~3万円程度
必要書類
  • 登記申請書
  • 申請者の住民票
  • 委任状(司法書士に依頼する場合)

権利部の登記は、所有者の情報を登記するだけで良いので、書類集めは表題部に比べて簡単です。
ただし、登記申請に間違いがあった場合には申請書の作成し直しや再提出が必要になるので、手続きに不慣れな人は司法書士に依頼することをおすすめします。

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まとめ

未登記建物は相続登記義務化の対象ではありませんが、表題登記の申請義務違反に該当する恐れがあります。
表題登記の申請義務違反も過料が発生する恐れがありますし、未登記建物は売却しにくいなどのリスクもあるので、できるだけ早く登記申請をすませましょう。

未登記建物の場合は、表題部および権利部の登記申請が必要です。
登記申請は自分で行うこともできますが、司法書士や土地家屋調査士に依頼も可能です。

グリーン司法書士法人では、登記申請についての相談をお受けしています。
初回相談は無料ですし、信頼できる土地家屋調査士の紹介も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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