
目次
第5回:遺言書がある場合・ない場合で何が変わる?
〜相続の流れはここで大きく分かれます〜
これまでの回で、
- 相続とは何か
- 誰が相続人になるのか
- 相続財産の内容
- 相続放棄という制度
について解説してきました。
今回は、相続の流れを大きく左右する
「遺言書」について、もう少し踏み込んでお話しします。
遺言書とは何か?
遺言書とは、亡くなった方が生前に
「自分の財産を、誰に、どのように引き継いでほしいか」
を記した文書です。
法律上、有効な形式で作成されていれば、原則としてその内容が優先されます。

遺言書がある場合は、それよりも遺言の内容が優先されます。
つまり、財産の分け方を自分で決められるということです。
遺言書がある場合の流れ
有効な遺言書がある場合、
原則として相続人同士で分け方を話し合う必要はありません。
たとえば、
- 妻にすべての財産を相続させる
- 自宅は長男へ
- 預金は子ども3人で均等に
などと具体的に書かれていれば、その内容に従って手続きを進めます。

「誰が何をもらうか」の争いが起きにくくなります。
これは非常に大きなメリットです。
遺言書がない場合は「遺産分割協議」
一方、遺言書がない場合には、相続人全員で分け方を決める必要があります。
これを遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)といいます。
相続人全員が合意しなければ成立しないため、
家族・親族関係によっては、これが大きな壁となることもあります。

遺言書があるかどうかで、精神的負担は大きく変わります。
遺言書の種類と違い
遺言書には、主に次の形式があります。
① 自筆証書遺言
遺言者が全文を自分で書く形式です。
メリット
- 費用がかからない
- 手軽に作成できる
デメリット
- 形式不備で無効になることがある
- 紛失・改ざんのリスク
- 家庭裁判所での「検認」が必要(※)
※検認とは、家庭裁判所で遺言書の内容や状態を確認する手続きです。

本人はしっかり遺言を遺したつもりでも、法律上は成立していないことがあるのです。
自筆証書遺言で特に多い失敗例
- 財産の特定があいまい(例:「預金を渡す」だけ)
- 不動産の表示が不正確
- 「気持ち」だけ書いて具体的な分配がない
- 一部だけ書いて他の財産が抜けている

財産の表示は非常に重要です。
② 公正証書遺言
公証役場で、公証人という法律の専門家が作成する遺言書です。
メリット
- 形式不備が起きにくい
- 原本が公証役場に保管される
- 家庭裁判所の検認が不要
デメリット
- 費用がかかる
- 証人が2名必要

特に財産が複数ある場合や、相続人どうしの関係に不安がある場合は、
公正証書遺言の方が安全です。
なぜ公正証書遺言を勧めるのか?
理由は大きく3つあります。
① 無効リスクが極めて低い
公証人が法律に基づいて作成するため、形式不備の心配がほぼありません。
② 紛失しない
原本が公証役場に保管されます。
③ 手続きがスムーズ
検認が不要なため、相続開始後の流れが速いです。

公正証書遺言は、その負担を大きく減らしてくれます。
遺言書があっても争いは起こる?
遺言書があれば絶対に安心、というわけではありません。
たとえば、
- 特定の子に大きく偏った内容
- 理由が何も説明されていない分配
このような場合、不満が残り、トラブルの元となることがあります。

内容をどう書くかは、専門家と相談しながら検討する価値があります。
生前対策としての遺言書
遺言書は、亡くなった後のための書類ですが、実は生前対策として非常に重要です。
- 内縁のパートナーに財産を渡したい
- 特定の子に事業を承継させたい
- 不動産を分けにくい場合
こうしたケースでは、遺言書が事実上不可欠になります。

相続は環境や状況で大きく変わります。
遺言書は“家族への最後のメッセージ”とも言えます。
まとめ
今回のポイントは、
- 遺言書があると原則その内容が優先される
- 遺言書がない場合は遺産分割協議が必要
- 自筆証書遺言にはリスクがある
- 公正証書遺言は安全性が高い
- 内容の書き方が非常に重要
という点です。

不安があれば、早めにご相談ください。
次回予告
第6回:遺産分割協議とは?
〜話し合いで気をつけるべきポイント〜







