遺留分の時効は1年もしくは10年!時効を中断する方法とは

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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 5
 この記事を読んでわかること

  • 遺留分の時効および起算点
  • 遺留分の時効を中断する方法
  • 遺留分侵害請求を行う流れ

亡くなった人の配偶者や子供、両親には「遺留分」と呼ばれる遺産を最低限度受け取れる権利が用意されています。
例えば、亡くなった人が「長男にすべての遺産を遺す」「内縁の妻にすべての財産を遺す」と遺言書を作成していた場合、亡くなった人の配偶者や子供は遺留分侵害額を請求できる可能性があります。

ただし、遺留分には「遺留分侵害を知ってから1年」もしくは「相続開始から10年」の時効が設定されているのでご注意ください。
時効が成立すると遺留分を請求できないので、時効を迎えそうなときには内容証明郵便を相手に送り時効を中断させましょう。

本記事では、遺留分の時効はいつか、時効を迎える前に遺留分侵害額請求を行う流れや注意点を解説します。
遺留分については、下記の記事でも詳しく解説しているので、あわせてお読みください。

相続遺留分とは?請求できる人や割合・請求方法を徹底解説

1章 遺留分の時効は1年もしくは10年

遺留分の時効は1年もしくは10年

亡くなった人の配偶者や子供、両親には遺留分が用意されており、亡くなった人が偏った内容の遺言書を用意していた場合などは遺留分侵害額請求を行えます。
ただし、遺留分侵害額請求には、下記の時効が設定されており、時効を迎えてしまうと請求できなくなるのでご注意ください。

  • 相続開始・遺留分侵害を知ってから1年
  • 相続開始から10年

それぞれの時効および起算点について、詳しく見ていきましょう。

1-1 相続開始・遺留分侵害を知ってから1年

遺留分侵害額請求は「遺留分権利者が相続開始および自分が遺留分を侵害されていることを知ってから1年以内」と時効が設定されています。
例えば、亡くなった人が「内縁の妻に全財産を遺す」「長男にすべての財産を遺す」などといった遺言書を作成していたことを知った場合は、知った日から1年経過すると時効を迎えてしまいます。

なお、時効を迎えていても、支払う側が任意で支払うことは可能です。

1-2 相続開始から10年

遺留分侵害額請求は「相続開始から10年」経過すると、時効を迎えてしまいます。
厳密にはこの効力を「除斥期間」といい、期間経過した時点で、自動的に請求できなくなります。
例えば、亡くなった人と長年疎遠であり、死亡した事実すら知らないと遺留分侵害額請求を行えないまま時効を迎えてしまう恐れもあるでしょう。

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2章 遺留分の時効を中断する方法

先ほどの章で解説したように、遺留分侵害額請求の時効は「遺留分権利者が相続開始および自分が遺留分を侵害されていることを知ってから1年」と非常に短く設定されています。
「遺言書の内容に納得いかない」と思ったときには、遺留分侵害請求の時効が迫っているケースも、十分に考えられます。

遺留分侵害額請求の時効を成立させるには、遺産を多く受け取った人物に対して内容証明郵便を送付しましょう。
内容証明郵便を送ると日付が記載されているため、確実に時効をストップできます。

また、内容証明郵便を送ることで相手方が遺留分侵害額相当分の金銭を支払ってくれ、遺留分トラブルを解決できる可能性があります。


3章 遺留分侵害額請求を行う流れ

遺留分侵害額請求を行う方法は法律で決められているわけではないので、まずは相手方と話し合いをして円満解決を目指しましょう。
相手方が話し合いに応じてくれない場合は、内容証明郵便の送付や遺留分侵害額請求調停、訴訟を起こすことも検討しましょう。

遺留分侵害額請求を行う流れは、下記の通りです。

  1. 話し合いをする
  2. 内容証明郵便を送付する
  3. 遺留分侵害額請求調停を申立てる
  4. 遺留分侵害額請求訴訟を起こす

それぞれ詳しく解説していきます。

STEP① 話し合いをする

遺留分侵害額請求は調停や訴訟などの手続きを行わなくても、相手方と合意すれば解決できます。
まずは、相手方に遺留分を侵害していることおよび侵害分の金銭を支払ってほしいことを伝えましょう。

相手が遺留分について理解していなかった場合、問題を把握すればすぐに金銭を支払ってくれることもあります。
相手が内容に合意したら、後々のトラブルを避けるためにも合意書を作成してもらい、支払いを受けましょう。

STEP② 内容証明郵便を送付する

相手方が話し合いに応じてくれない場合や、遺留分侵害額請求の時効が迫っている場合は、内容証明郵便を送りましょう。
内容証明郵便は相手が受け取ったことを証明できますし、相手方に真剣さを伝えることもできるので話し合いよりも問題を解決しやすくなります。

内容証明郵便と請求書を送ったら、相手と話し合って遺留分侵害額の清算方法を取り決めて支払を受けましょう。

STEP③ 遺留分侵害額請求調停を申立てる

内容証明郵便を送っても相手が合意してくれない場合や無視される場合は、家庭裁判所にて遺留分侵害額請求を申立てましょう。
調停では、調停委員会に仲介してもらって相手と話し合いを行い解決を目指します。

合意できたら、調停が成立し、合意内容に従って金銭を支払ってもらえます。

STEP④ 遺留分侵害額請求訴訟を起こす

調停による話し合いでも合意してもらえない場合は、地方裁判所で「遺留分侵害額請求訴訟」を起こしましょう。
訴訟は調停と異なり、裁判所が遺留分侵害額の支払い命令を出してくれますが、遺留分が侵害された証拠を用意しなければなりません。

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4章 遺留分侵害額請求時に起きやすいトラブル例

遺留分侵害額請求時には、相手方が話し合いに応じてくれないなどの他にも、遺言書の有効性や遺産の評価方法でトラブルに発展する恐れもあります。
遺留分侵害額請求時に起きやすいトラブル例は、下記の通りです。

  • 不動産の評価方法で揉める
  • 遺言書の有効性で揉める
  • 養子縁組の有効性で揉める
  • 過去に行われた贈与で揉める
  • 生前の預金口座からの出金で揉める

それぞれ詳しく見ていきましょう。

4-1 不動産の評価方法で揉める

遺留分侵害額請求を行う際に、不動産の評価方法で揉めてしまうことも多いです。
不動産の評価額は下記のように複数あり、それぞれ異なる価格が設定されていることがほとんどだからです。

路線価と他の不動産評価額の関係

前提として、遺留分権利者は多くの遺留分を受け取りたいため不動産をより高額な実勢価格で評価したいと考えることが多いです。
一方で、遺留分を侵害された側はできるだけ遺留分を渡したくないため、不動産を相続税評価額や固定資産税評価額で評価したいと考えるでしょう。

両者の間で意見が分かれてしまい、遺留分をいくら渡すのかなかなか合意にいたらないことも多いです。
当事者同士の解決が難しい場合は、遺留分トラブルに精通した司法書士や弁護士に相談する、遺留分侵害額請求調停や訴訟を起こすことも検討しましょう。

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4-2 遺言書の有効性で揉める

遺留分侵害額請求を起こすときには、あわせて遺言書の有効性を問うケースも多いです。
「長男にすべての財産を遺す」などといった遺言書が用意されている場合、そもそも遺言書が無効であれば、遺産は法定相続分で受け継ぐことができるため、遺留分権利者の相続分も増えると考えられるからです。

したがって、遺言書の内容に納得できない相続人は、遺言書の有効性を問い、あわせて遺留分侵害額請求の両方を行うケースも多いです。

「故人が遺した遺言書は従うもの」と考える人もいるかもしれませんが、遺言書を作成時に遺言者が認知症だった、遺言書が脅迫などにより無理やり作成されたものである場合には、遺言書が無効になる可能性もあります。
遺言書の有効性について納得できない場合には、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談してみることをおすすめします。

遺言書に認められる10個の効力と遺言書が無効になるケースを解説

4-3 養子縁組の有効性で揉める

相続対策で養子縁組を行っていた場合は、養子縁組の有効性でトラブルに発展することも多いです。
養子縁組をすると法律上の親子関係が生じるため、養子は養親の実子同様に相続人になります。

例えば、故人が「長男に全財産を遺す」と遺言書を作成していた場合、次男や長女など他の相続人の遺留分を減らすため、長男の子や長男の妻を養子にすることもあります。
しかし、養子縁組の際に故人が認知症であり判断能力を失っていた場合は、養子縁組が無効になり、結果として自分の遺留分が増える可能性もあるでしょう。

このように、相続の内容に納得がいかない場合は、養子縁組の無効を主張しつつ、遺留分侵害額請求を行うことが多いです。

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4-4 過去に行われた贈与で揉める

遺留分侵害額請求では、故人が行っていた生前贈与について揉めることも多いです。

遺留分権利者は受け取れる遺留分を増やすために、できるだけ遺留分の計算対象を増やしたいと考えます。
そのため、遺留分権利者は過去の生前贈与も特別受益として、遺留分の計算対象に含めるべきであると主張するケースが多いです。
一方で、遺留分侵害額請求された人は支払う金額を減らすために、過去の生前贈与は遺留分の計算対象に含めないと主張するはずです。

なお、過去の贈与が遺留分の計算対象に含まれるかは、下記のようによって決まります。

過去の贈与が遺留分の計算対象に含まれるか

具体的には、下記に該当する贈与は生前贈与を遺留分の計算対象に含めます。

  1. 死亡前1年以内に行った生前贈与
  2. 遺留分権利者に損害を与えると知ってて行った生前贈与
  3. 相続人への生前贈与(特別受益)

例えば、遺留分侵害額請求をされた人は「生前贈与は特別受益に該当しない」「遺留分を侵害することを知らずに贈与を受けた」と主張するはずです。
両者の意見が対立していると、遺留分トラブルの解決は難しいため、遺留分トラブルに詳しい司法書士や弁護士に相談して、過去の生前贈与が遺留分の計算対象に含まれるか判断してもらうことも検討しましょう。

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4-5 生前の預金口座からの出金で揉める

遺留分侵害額請求の際には、故人が生きていたときの預金の引き出しについて揉めることも多いです。
例えば、遺産を多く受け取った人物が生前故人の面倒を見ており、日常的に預金を引き出し故人の買い物を手伝っていた場合は、他の相続人に遺産の使い込みを疑われる可能性もあるでしょう。

一方で、遺留分侵害額請求をされた側からしてみれば、故人の面倒を見ていただけなのに遺産の使い込みを疑われ納得できない、不本意だと感じるはずです。
遺産の使い込みについては証拠が集まりにくいことがほとんどのため、問題の解決が難しく、仮に解決できたとしても当事者同士で遺恨が残る恐れもあるでしょう。

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まとめ

遺留分侵害額請求の時効は、「遺留分侵害を知ってから1年」もしくは「相続開始から10年」です。
時効を迎えてしまうと、遺留分侵害額請求を行えなくなるのでご注意ください。

特に「遺留分侵害を知ってから1年」の時効は非常に短いので、時効を迎えそうな場合は相手方に内容証明郵便を送り時効をストップさせましょう。
また、内容証明郵便の送付は時効を中断させるだけでなく、遺留分侵害額請求を行う役割も果たします。

遺留分侵害額請求は相手方との話し合いや内容証明郵便の送付で解決できますが、場合によっては当事者同士の意見がぶつかり合い解決が難しい場合もあります。
当事者同士の解決が難しい場合には、遺留分トラブルに詳しい司法書士や弁護士に相談するのがおすすめです。

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