
- 葬儀費用は遺産から払っても良いのか
- 遺産から払える葬儀費用・払えない葬儀費用
- 遺産から葬儀費用を払うときの注意点
葬儀にかかる費用は決して安くはなく、誰がどのように負担するのか悩まれる方も多いものです。
葬儀費用を誰が負担するかは法律で決められているわけではなく、相続人同士で分担しても良いですし、遺産から支払う形でも問題ありません。
遺産から葬儀費用を支払った場合には、相続税の債務控除を適用できる場合もあります。
本記事では、葬儀費用を遺産から支払うことは可能なのか、債務控除を適用できる葬儀費用について解説します。
目次
1章 葬儀費用は遺産から払っても良い
家族や親族が亡くなり、その葬儀にかかる費用について「誰が負担すべきか」「遺産から支払ってよいのか」と悩む方は決して少なくありません。
結論から言えば、葬儀費用は遺産から支払っても問題ありません。
葬儀費用を遺産から支払った場合、相続税を申告する際にその費用を債務控除として申告することも可能です。
本章では、葬儀費用の取扱いについて、詳しく解説していきます。
1-1 葬儀費用を負担する人物は法律で決められていない
まず前提として、葬儀費用を誰が負担するかについて法律では定められていません。
一般的には、喪主が費用を立て替えることが多く、相続人が話し合って分担するケースも見られます。
もし、故人が遺言書で「葬儀費用は長男が負担する」などと指定していた場合には、それに従うこともあるでしょう。
故人の遺産の中から葬儀費用を支払うことは、一般的にも認められており、相続人全員の合意があれば問題ありません。
1-2 相続税申告でも葬儀費用を債務控除できる
遺産から支払った葬儀費用は、相続税申告時に債務控除の対象となります。
債務控除とは、故人が遺した借金や葬儀費用を控除して相続税の課税対象額を計算することです。
債務控除を漏れなく申告できれば、その分だけ相続税の負担を軽減できます。
そのため、故人の遺産から葬儀費用を支払った場合には、債務控除の対象となるかどうか、税理士に相談してみても良いでしょう。
2章 遺産から払える葬儀費用・払えない葬儀費用
故人の遺産から、葬儀費用を支払うことは基本的には問題ありません。
しかし、一部の費用は相続税の債務控除の対象とならないので、注意しましょう。
2-1 遺産から払える葬儀費用
以下のような費用を遺産から支払った場合、相続税を計算する際に債務控除を適用できます。
- 通夜・葬儀・告別式の会場使用料や設営費用
- 僧侶・神官などへの読経料・謝礼(お布施)
- 火葬費用
- 霊柩車など遺体の搬送費用
- 死亡診断書や埋火葬許可証の取得費用
- ドライアイス・納棺用品などの遺体保存に必要な費用
- 遺体の搬送が遠方からの場合の交通費
ただし、上記の費用について債務控除を適用する際には、領収書や明細などを保管しておきましょう。
2-2 遺産から払えない葬儀費用
一方、以下のような費用は遺産から払ったとしても、債務控除の対象とならないのでご注意ください。
- 香典返しの費用(返礼品の購入費や送料など)
- 法事・法要にかかる費用(初七日、四十九日、一周忌など)
- 会葬御礼の品物代(粗供養品など)
- 仏壇や仏具の購入費用
- 墓石や納骨堂の購入費用
- 会場や親族の食事代(仕出し・精進落としなど)
上記の費用は、宗教的・文化的慣習に基づくものではありますが、法律上は故人の死亡に直接起因する必要最小限の支出とはされません。
また、香典については故人ではなく、喪主に支払われるものと考えられるので、香典返しは債務控除の対象とすることはできません。
3章 遺産から葬儀費用を払う際の注意点
故人の遺産から葬儀費用を支払う場合には、以下の点などに注意しておきましょう。
- 領収書や明細書を保管しておく
- 預貯金の仮払い制度を利用する
- 相続放棄をしても遺産から葬儀費用を払うことはできる
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 領収書や明細書を保管しておく
葬儀費用を遺産から支払った場合、領収書や費用の明細書を保管しておきましょう。
領収書や明細書は債務控除を申請する際にも必要ですし、支払った金額や内容を明確にしておくことで、相続人同士のトラブルも防ぎやすくなるからです。
例えば、喪主が立て替えて支払った場合に、後からその金額を遺産から受け取ろうとすると、他の相続人から「遺産を使い込んでいるのではないか」と疑われることがあります。
このような疑念を防ぐためにも、いつ・どこで・何の費用を・いくら支払ったのかがわかる書類を整えておくことが大切です。
3-2 預貯金の仮払い制度を利用する
葬儀費用を故人の預貯金から支払う際、相続手続きが完了していない状態では銀行口座が凍結されており、自由に引き出すことができません。
故人の銀行口座が凍結されており、葬儀費用を引き出せない場合には、預貯金の仮払い制度を活用しましょう。
預貯金の仮払い制度とは、相続人が金融機関に申し出ることで、一定額まで故人の預貯金を引き出せる制度です。
相続人全員で手続きする必要はなく、相続人が単独で手続きできる点がメリットであり、引き出せる上限額は以下のいずれか低い金額です。
- 死亡時の預貯金残高×法定相続分×3分の1
- 150万円
3-3 相続放棄をしても遺産から葬儀費用を払うことはできる
相続放棄をする場合、故人の遺産を使用・処分してはならないと決められています。
しかし、相続放棄をする場合でも、遺産から葬儀費用を支払うことは認められています。
とはいえ、葬儀費用が高額すぎる場合には、遺産の使用や処分と判断される恐れもあるのでご注意ください。
相続放棄をする場合、遺産から葬儀費用を支払いたいと思っても自己判断するのではなく、司法書士や弁護士に相談しながら対応していくことを強くおすすめします。
まとめ
葬儀費用は、法律上誰が負担すべきか明確には定められておらず、遺産から支払うことも可能です。
また、遺産から葬儀費用を支払った場合、相続税申告で債務控除を申請できます。
ただし、香典返しなど一部の費用については、債務控除を適用できないのでご注意ください。
また、遺産から葬儀費用を支払う場合には、後々のトラブルを防ぐためにも領収書や明細書を大切に保管しておきましょう。
このように、家族や親族が亡くなったときには、様々なことについて慎重に判断し、適切な対応をしなければなりません。
自分で判断が難しい場合や、疑問点がある場合には、相続に精通した司法書士や弁護士に相談することもおすすめします。
グリーン司法書士法人では、相続手続きについての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。