- いとこは遺産相続できるか
- いとこが遺産相続できるケース
- いとこが遺産相続するときの注意点
いとこは相続人ではないため、遺産相続することができません。
相続人になれる人物は法律によって決まっており、配偶者や子供、両親、兄弟姉妹などです。
ただし、亡くなった人に相続人がいなく故人が特別縁故者として認められたケースや故人が遺言書を用意していたケースでは、いとこも遺産を受け継げます。
特別縁故者として認められるには、家庭裁判所への申立ても必要ですし、認められるまでには半年から1年近くかかることも多いです。
そのため、いとこに確実に遺産を遺したいのであれば、元気なうちに遺言書を作成しておくのが良いでしょう。
本記事では、いとこは相続人になれるのか、いとこが遺産を相続する方法を詳しく解説していきます。
1章 いとこは遺産相続することができない
本記事冒頭で解説したように、いとこは相続人ではないため、通常は遺産を受け継げません。
相続人になれる人物および優先順位は、法律によって下記のように決められています。
常に相続人になる | 配偶者 |
第一順位 | 子供や孫 |
第二順位 | 親や祖父母 |
第三順位 | 兄弟姉妹や甥・姪 |
上記のように、相続人になれる親族の範囲は、甥・姪までであり、いとこは相続人になれません。
1-1 身寄りのないいとこの遺産は誰が受け継ぐ?
生涯に渡り独身の人も増えているため、亡くなったいとこに身寄りがいなく、相続人になれる人物がいないこともあるでしょう。
いとこに身寄りがいない場合、下記の優先順位によって遺産が受け継がれます。
- 受遺者・債権者
- 特別縁故者
- 国庫
亡くなった人が遺言書を用意していた場合、遺言書にて指定された受遺者が遺産を相続します。
他にも、亡くなった人が借金を遺していた場合は、債権者が残債と遺産を清算可能です。
そして、受遺者や債権者では相続しきれなかった分は、特別縁故者が相続します。
特別縁故者とは、亡くなった人と特別な関係にあった人であり、特別縁故者として認められると、相続人がいない場合に遺産の全額または一部を受け取れます。
なお、特別縁故者は条件を満たせば自動的に認められるわけではなく、家庭裁判所にて手続きを行わなければなりません。
特別縁故者の申請方法や必要書類は、本記事の3章で解説します。
そして、特別縁故者がいなかった場合、最終的に身寄りのない人の遺産は国のものとなってしまいます。
2章 いとこが遺産相続できるケース
本記事の1章で解説したように、いとこは相続人ではないため、原則として遺産を相続できません。
一方で、亡くなった人が遺言書を作成していた場合や亡くなった人のいとこが特別縁故者として認められた場合は、遺産を相続可能です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1 遺言書にていとこが財産を受け継ぐと指定されている
亡くなった人が遺言書を用意しており、いとこに財産を遺すと指定していた場合は、いとこが遺産を受け継げます。
亡くなった人が遺言書を用意していた場合、原則として遺言書の内容通りに遺産分割を行うと決められているからです。
また、遺言書であれば相続人以外の第三者にも財産を遺せます。
身寄りがいなく遺産が国のものとなるくらいであれば、仲が良かったいとこに遺産を譲りたいと考えるのであれば、遺言書を作成しておくのが良いでしょう。
2-2 いとこが特別縁故者として認められた
いとこが特別縁故者として認められた場合、相続人ではありませんが遺産を受け取れます。
特別縁故者として認められると、相続人がいない場合に遺産の全額または一部を受け取れます。
特別縁故者として認められるには、下記の条件を満たさなければなりません。
- 亡くなった人と生計を同じくしていた者
- 亡くなった人の療養看護に努めた者
- 亡くなった人と特別の縁故があった者
また、条件を満たせば自動で特別縁故者として認められるわけではなく、家庭裁判所に申請して認められる必要があります。
特別縁故者として認められるには、申立てから半年近くかかることも多い点にも注意しましょう。
次の章では、特別縁故者として申立てする方法や必要書類を解説します。
3章 特別縁故者の申立て方法・必要書類
特別縁故者として遺産を受け取るには、家庭裁判所で申立てをしなければなりません。
特別縁故者として認められ、亡くなったいとこの遺産を受け取るまでの流れは、下記の通りです。
- 相続財産管理人選任の申立て
- 相続財産管理人の選任
- 債権者・受遺者へ申出の公告
- 相続財産の精算・債務の弁済
- 相続人の捜索
- 相続人不存在が確定
- 特別縁故者への財産分与審判の申立て
- 特別縁故者の認定
上記のように、特別縁故者として認められ遺産を受け取るには、亡くなったいとこの相続人が1人もいないことを確定させなければなりません。
相続人不存在が確定した後に行う特別縁故者への財産分与審判の申立て方法および必要書類は、下記の通りです。
申立てする人 | 特別縁故者の要件を満たす人物 |
申立て先 | 亡くなった人が最後に住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所 |
申立て期限 | 相続人不存在が確定してから3ヶ月以内 |
申立て費用 | 収入印紙:800円分 連絡用の郵便切手代 |
必要書類 | 財産分与審判申立書 申立人の戸籍謄本 亡くなった人の戸籍謄本(除籍謄本) |
4章 いとこが遺産相続するときの注意点
いとこが遺産を受け取るときには、相続税が2割加算になることに注意しなければなりません。
加えて、遺言書を用意する場合は受遺者であるいとこが先に亡くなる可能性についても考慮する必要があります。
いとこが遺産を相続するときの注意点は、主に下記の通りです。
- いとこが遺産相続すると相続税が2割加算される
- 財産を受け継ぐいとこが先に亡くなる可能性もある
- 相続対策だけでなく認知症対策も行う
- 相続対策だけでなく身元保証サービスも利用しておく
- 相続対策だけでなく死後事務委任手続きも行う
それぞれ詳しく見ていきましょう。
4-1 いとこが遺産相続すると相続税が2割加算される
いとこが遺産相続すると、相続税が2割加算となるのでご注意ください。
亡くなった人の配偶者や子供、両親以外が遺産を相続したときには、相続税が2割加算されると決められているからです。
相続税は累進課税制度を採用しているため、遺産が高額になればなるほど税負担も重くなってしまいます。
特別代理人もしくは遺言書などで亡くなったいとこの遺産を受け継ぐ場合は、相続税がいくらになるかも事前にシミュレーションしておくと安心です。
4-2 財産を受け継ぐいとこが先に亡くなる可能性もある
いとこに財産を遺す遺言書を用意する場合、受遺者となるいとこが先に亡くなる可能性についても考えておきましょう。
いとこ同士は年齢が近い場合もあり、どちらが先に亡くなるかの予想が難しいこともあるからです。
受遺者が先に死亡してしまった場合、代襲相続は発生せず、すでに死亡している受遺者について書かれた部分の遺言書は無効になってしまいます。
身寄りがなく、いとこやその子供などの親族に遺産を譲りたいのであれば、予備的遺言も定めておきましょう。
例えば「いとこがすでに死亡している場合は、いとこの子◯◯が遺産を受け継ぐ」と予備的遺言を設定しておけば、不測の事態にも備えられます。
予備的内容まで考慮した遺言書を作成するには、相続対策についての専門的な知識や経験が必要です。
自分たちで漏れのない内容を作成するのは難しいので、相続対策に詳しい司法書士や弁護士に相談するのが良いでしょう。
4-3 相続対策だけでなく認知症対策も行う
自分に身寄りがいなく、遺産を受け継ぐ人物がいないと心配な場合は、相続対策を行うだけでなく認知症対策も行っておきましょう。
認知症になり判断能力を失ってしまうと、資産管理や法的手続きを行うことができなくなってしまうからです。
自分が認知症になったときに適切な財産管理や契約、法的手続きのサポートをしてもらいたい場合は、下記の方法で認知症対策を行っておくのがおすすめです。
- 家族信託
- 任意後見制度
- 生前贈与
- 遺言書の作成
家族信託とは、自分の家族に財産の管理や運用、処分を任せる制度です。
柔軟な財産管理を行るのが特徴であり、契約内容を工夫すれば自分が所有している賃貸用不動産の管理なども家族や親族に任せられます。
上記のように、認知症対策には複数の方法があり、それぞれメリットとデメリットがあります。
認知症対策に精通した司法書士や弁護士であれば、自分の資産や家族の状況に合った対策方法を提案できるので、まずは相談してみるのが良いでしょう。
4-4 相続対策だけでなく身元保証サービスも利用しておく
身寄りのない人は自分に何かあったときのために、相続対策だけではなく、身元保証サービスの利用も検討しておきましょう。
身元保証サービスとは、名前の通り、高齢者の日常支援や病院への入院、施設への入居をする際に保証人になってくれるサービスです。
身元保証サービスを利用すれば、身寄りのない高齢者も日常生活のサポートや入院、入居時の身元保証を行ってもらえます。
身元保証サービスごとに提供しているサービス内容が異なるため、利用の際には各社、各団体のサービス内容を比較検討することが大切です。
4-5 相続対策だけでなく死後事務委任手続きも行う
身寄りがなく相続人がいないことが予想されるのであれば、遺言書作成などの相続対策だけでなく、死後事務委任手続きも利用しておくと良いでしょう。
死後事務委任手続きとは、自分が亡くなった後の様々な事務手続きを行ってもらうように、生前のうちに契約しておくことです。
人が亡くなった際には、下記のように様々な手続きが発生します。
- 通夜や葬儀
- 納骨・埋葬
- 電気やガス等の停止
- 入院していた病院や介護施設の費用の支払い
- 自宅や介護施設の片付け
これらの手続きが通常親族が行いますが、身寄りがない人や親族に負担をかけたくない人は、死後事務委任手続きを利用し、自分が亡くなった後の手続きをスムーズにしておくと良いでしょう。
死後事務委任手続きを依頼する相手は自由に選べますが、司法書士など法律の専門家に依頼するケースが多いです。
グリーン司法書士法人では、業務として死後事務委任手続きを受けておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
まとめ
いとこは相続人ではないため、原則として遺産を相続することはできません。
いとこに遺産を相続させたいのであれば、自分が元気なうちに遺言書を作成しておくのが良いでしょう。
また、いとこ同士は年齢が近いことも考えられるため、受遺者が先に亡くなるリスクに備え予備的遺言も記載しておくことをおすすめします。
予備的内容まで考慮した遺言書を作成するには、専門的な知識が必要となるので、遺言書の作成に詳しい司法書士や弁護士に依頼することもご検討ください。
なお、身寄りがない人は相続対策の他にも認知症対策など、自分に何かあったときのための対策をしておかなければなりません。
資産状況や頼れる親族の有無によっては、認知症対策や身元保証サービス、死後事務委任手続きの利用も県つしましょう。
グリーン司法書士法人では、相続対策や認知症対策についての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください